副業をした会社員の確定申告|「20万円以下なら不要」の正しい判定方法を税理士が解説
- 安田 亮
- 20 時間前
- 読了時間: 13分
おはようございます!代表の安田です。
副業を認める企業が増え、会社員が本業以外から収入を得ることも珍しくなくなりました。
アルバイト、業務委託、Webライター、動画編集、フードデリバリー、講師、せどりなど、副業の形はさまざまです。
そこでよく聞かれるのが、次のような疑問です。
副業が20万円以下なら確定申告は不要ですか?
アルバイト代から給与所得控除を引いた後の金額で判定しますか?
業務委託で受け取った報酬は給与所得ですか?
所得税の申告が不要なら、住民税も何もしなくてよいですか?
副業の確定申告では、わずかな言葉の違いが結論を大きく左右します。特に重要なのが、「収入金額」と「所得金額」の違いです。
本日は、会社員が副業をした場合の所得区分、20万円基準の判定方法、必要経費、住民税の申告など、間違いやすいポイントを税理士が解説します。
副業の所得区分は働き方の実態で判断する
副業収入を得た場合、最初に確認すべきなのが所得区分です。
「アルバイト」「業務委託」「副業」といった名称だけでは、税務上の所得区分は決まりません。契約内容や実際の働き方を踏まえて、主に次のいずれに該当するかを判定します。
給与所得
事業所得
雑所得
不動産所得
譲渡所得など
副業で特に問題になりやすいのは、給与所得、事業所得、雑所得の3つです。
雇用契約によるアルバイトは給与所得
副業先と雇用契約を結び、勤務時間や勤務場所を指定され、勤務先の指揮命令を受けながら働く場合、その対価は通常、給与所得となります。
給与所得に該当しやすい例として、次のようなものがあります。
飲食店でのアルバイト
コンビニエンスストアでの勤務
別の会社での事務スタッフ
塾や学校に雇用されて行う講師業務
シフトに基づいて勤務する販売スタッフ
給与所得には、会社から支給される給料、賃金、賞与などが含まれます。
副業先から源泉徴収票が交付されている場合は、原則としてその記載内容を確定申告に使用します。
業務委託による副業は事業所得または雑所得
副業先と雇用契約ではなく、請負契約や業務委託契約を結んで報酬を受け取る場合、通常は給与所得ではありません。たとえば、次のような副業です。
Webライティング
デザイン制作
動画編集
プログラミング
コンサルティング
フードデリバリー
オンライン講師
写真撮影
ハンドメイド商品の販売
これらの所得は、事業としての規模や継続性などに応じて、事業所得または業務に係る雑所得となります。
国税庁は、業務に係る雑所得を、副業収入のうち営利を目的として継続的に行うものと説明しています。
事業所得と雑所得はどう判断する?
事業所得か雑所得かは、単に本人が「事業です」と考えているかどうかだけでは決まりません。一般的には、次のような事情を総合的に考慮します。
営利性があるか
継続して行なっているか
自己の責任と計算で行なっているか
仕事に費やす時間や労力
設備や資金の投入状況
収入金額や利益の規模
職業として社会的に認識できる程度か
帳簿を作成し、保存しているか
特に帳簿書類を作成・保存していない場合には、一般的に事業としての営利性や継続性などが認められにくいという考え方が示されています。
副業の売上があるというだけで、直ちに事業所得になるわけではありません。
契約書の名称だけで判断しない
契約書に「業務委託契約」と書かれていても、実態として勤務先の指揮命令を受け、時間や場所を拘束されて働いている場合には、給与所得と判断される可能性があります。
反対に、「アルバイト」「スタッフ」と呼ばれていても、実際には仕事の完成に対して報酬を受け、自分の責任で業務を行っている場合には、事業所得または雑所得となる可能性があります。
判断するときは、次の点を確認しましょう。
雇用契約か業務委託契約か
勤務時間や場所が拘束されているか
発注者から具体的な指揮命令を受けるか
仕事を断る自由があるか
仕事の完成に責任を負うか
必要な道具や経費を誰が負担するか
報酬が時間給か、成果物に対する金額か
損失が生じる可能性を本人が負っているか
税務上の処理を決める前に、契約書と実際の勤務状況を照らし合わせることが重要です。
「副業20万円以下なら申告不要」は誰にでも当てはまるわけではない
会社員の副業について、「20万円以下なら確定申告は不要」と説明されることがあります。
しかし、この20万円基準は、すべての人、すべての副業に一律に適用されるものではありません。代表的なケースは、次のような給与所得者です。
本業の給与を1か所から受けている
本業の給与が源泉徴収の対象である
本業の勤務先で年末調整を受けている
給与収入が年間2,000万円以下である
副業以外の理由で確定申告をする必要がない
このような人は、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告が不要となります。
大切なのは、副業の種類によって20万円判定に使う金額が違うことです。
業務委託の副業は「所得金額」で20万円を判定する
業務委託による副業が事業所得または雑所得に該当する場合、20万円基準は「収入金額」ではなく「所得金額」で判定します。
所得金額は、次のように計算します。
副業の所得金額=副業収入-必要経費
たとえば、Webライターとして年間70万円の報酬を受け取り、通信費、取材交通費、パソコン関連費用などの必要経費が55万円だったとします。
収入70万円-必要経費55万円=所得15万円
他に給与所得・退職所得以外の所得がなく、20万円基準を利用できる会社員であれば、所得15万円は20万円以下であるため、原則として所得税の確定申告は不要です。
国税庁も、業務に係る雑所得について「総収入金額-必要経費」で所得金額を計算するとしています。
売上が20万円を超えても申告不要になる場合がある
業務委託の副業では、収入が20万円を超えていても、経費を差し引いた所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要となる場合があります。
反対に、収入が25万円で必要経費がほとんどない場合には、所得が20万円を超えるため、確定申告が必要になります。
副業が給与所得の場合は「収入金額」で判定する
本業とは別の会社に雇用され、副業先から給与を受け取っている場合は、判定方法が異なります。給与を2か所以上から受け取っている人は、原則として次の合計額が20万円を超えるかどうかで判定します。
年末調整されなかった給与の収入金額+給与所得・退職所得以外の所得金額
ここでいう副業給与は、給与所得控除後の所得金額ではなく、年末調整されなかった給与の収入金額を使用するのがポイントです。
<例:副業アルバイトの収入が70万円の場合>
本業の勤務先で年末調整を受け、副業先で年間70万円の給与を受け取ったとします。
この場合、給与所得控除を差し引いて20万円以下になるかどうかを判定するのではありません。
年末調整されていない副業給与の収入金額70万円が、そのまま20万円判定の対象になります。したがって、原則として所得税の確定申告が必要です。
「70万円から給与所得控除を引けば所得は20万円以下になるので申告不要」と考えるのは誤りです。
「収入」と「所得」の違いを整理しよう
副業の確定申告で最も間違いやすいのが、収入と所得の混同です。
副業の形態 | 20万円判定に使う金額 |
別の勤務先から受ける給与 | 年末調整されなかった給与の収入金額 |
業務委託による事業所得・雑所得 | 収入から必要経費を引いた所得金額 |
給与と業務委託の両方がある | 副業給与の収入金額+業務委託等の所得金額 |
たった2文字の違いですが、「収入」と「所得」を取り違えると、確定申告が必要かどうかの結論が変わることがあります。
副業が複数ある場合は合計して判定する
20万円基準は、副業1件ごとに判定するものではありません。
たとえば、次のような副業があったとします。
Webライターの所得:12万円
動画編集の所得:9万円
暗号資産取引の所得:5万円
合計所得は26万円です。
それぞれの所得は20万円以下ですが、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えるため、原則として確定申告が必要です。
副業の種類や取引先が複数ある場合には、すべての所得を漏れなく集計しましょう。
必要経費にできるもの
事業所得または雑所得では、副業収入を得るために直接必要となった費用を必要経費にできます。代表的なものとして、次のような費用が考えられます。
仕事に使用するパソコンや周辺機器
インターネット料金
携帯電話料金
業務用ソフトやクラウドサービスの利用料
取材や打合せの交通費
書籍や資料の購入費
外注費
販売手数料
商品の仕入代金
梱包費や送料
副業専用口座の振込手数料
自宅で仕事をする場合の家賃や電気代の一部
ただし、私生活にも使っている費用を全額経費にできるわけではありません。
たとえば、自宅のインターネットやスマートフォンを仕事と私生活の両方で使用している場合には、使用時間や利用状況など、合理的な基準で事業使用分を按分します。
また、パソコンなどの取得価額が一定金額以上であれば、購入時に全額を必要経費とせず、固定資産として減価償却が必要になることがあります。
領収書や帳簿を保存する
副業の所得を正しく計算するためには、収入と経費の証拠を残しておくことが欠かせません。少なくとも、次の資料を保存しましょう。
業務委託契約書
請求書
支払明細書
銀行口座の入出金明細
クレジットカード明細
領収書やレシート
交通費の記録
売上や経費を記録した帳簿
副業先から受け取った源泉徴収票
源泉徴収された報酬の支払調書
副業収入を事業所得として申告したい場合には、継続的な記帳と帳簿書類の保存が特に重要です。
20万円以下でも確定申告が必要になる場合
副業所得が20万円以下だからといって、必ず所得税の確定申告が不要になるわけではありません。たとえば、次のような場合には注意が必要です。
給与収入が2,000万円を超える場合
給与の年間収入金額が2,000万円を超える人は、年末調整の対象外となり、原則として確定申告が必要です。
医療費控除などを受けるため確定申告をする場合
副業所得が20万円以下であっても、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度などを理由に確定申告をする場合には、副業所得も併せて申告しなければなりません。
国税庁も、確定申告を行う場合には、年末調整済みの給与所得を含め、申告対象となる所得を申告する必要があると案内しています。
年末調整を受けていない場合
本業を年の途中で退職し、再就職していない場合など、年末調整が完了していなければ、20万円基準だけで申告不要とは判断できません。
同族会社の役員が会社から賃貸料などを受け取る場合
同族会社の役員やその親族が、その会社から給与以外に貸付金の利子、店舗の賃貸料、機械の使用料などを受け取っている場合には、金額にかかわらず確定申告が必要となるケースがあります。
所得税の申告が不要でも住民税の申告は必要
所得税における20万円以下の申告不要制度は、住民税にはそのまま適用されません。
たとえば神戸市では、給与所得以外に所得がある給与所得者について、その所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要であっても、原則として住民税の申告が必要と案内しています。
したがって、
副業所得が20万円以下=税務上、何の手続も不要
ではありません。
所得税の確定申告を提出した場合、その申告内容は自治体へ連携されるため、通常は別途住民税の申告をする必要はありません。
一方、所得税の確定申告をしない場合は、住所地の市区町村へ住民税の申告が必要か確認しましょう。
会社に副業を知られたくない場合の注意点
副業について住民税の申告をすると、本業の給与に係る住民税と副業分の住民税が合算され、勤務先へ通知されることがあります。
ただし、副業が給与所得の場合は、本人の希望だけで副業分の住民税を必ず普通徴収にできるとは限りません。
また、事業所得や雑所得について普通徴収を選択した場合でも、自治体の処理や所得の内容によって希望どおりにならない可能性があります。
税務申告の方法だけで、副業が勤務先に絶対に知られないと断言することはできません。
勤務先の就業規則や副業申請制度も、事前に確認しておきましょう。
副業の確定申告で起こりやすいミス
1.副業の名称だけで給与所得と判断する
「アルバイト」と呼ばれていても、業務委託の実態であれば事業所得または雑所得となる可能性があります。
契約書と働き方を確認しましょう。
2.副業給与から給与所得控除を引いて20万円判定をする
副業が給与所得の場合、原則として年末調整されなかった給与の「収入金額」で判定します。
3.業務委託の売上だけで20万円判定をする
事業所得または雑所得の場合は、売上から必要経費を差し引いた所得金額で判定します。
4.副業を1件ずつ判定する
複数の副業がある場合は、対象となる金額を合計して判断します。
5.20万円以下だから住民税も申告しない
所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要となる場合があります。
6.医療費控除だけを申告し、副業を記載しない
確定申告をする場合には、20万円以下の副業所得も含めて申告する必要があります。
7.経費の領収書や記録を残していない
必要経費を計上するためには、その支出が副業に必要だったことを説明できる資料が必要です。
副業を始めたら確認したいチェックリスト
副業収入を得た人は、確定申告の前に次の点を確認しましょう。
本業の勤務先で年末調整を受けているか
本業の給与収入が2,000万円を超えていないか
副業は雇用契約か業務委託契約か
副業の所得区分は何か
副業先から源泉徴収票を受け取っているか
業務委託の収入と必要経費を集計したか
複数の副業を合計しているか
医療費控除などで確定申告をする予定があるか
所得税の申告が不要でも住民税申告が必要ではないか
契約書、請求書、領収書、帳簿を保存しているか
まとめ
会社員の副業に関する確定申告では、まず副業の所得区分を正しく判断する必要があります。
副業先と雇用契約を結んで働く場合は通常、給与所得です。一方、業務委託契約に基づき自己の責任で仕事を行う場合は、事業所得または雑所得となる可能性があります。
20万円基準の重要なポイントは、次のとおりです。
副業給与は、原則として年末調整されなかった給与の収入金額で判定する
業務委託の副業は、収入から必要経費を引いた所得金額で判定する
複数の副業がある場合は合計する
医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の副業も申告する
所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要となる場合がある
所得区分は契約名ではなく、実際の働き方で判断する
「20万円以下」という数字だけを見て申告不要と判断すると、無申告や申告漏れにつながるおそれがあります。
副業の契約形態が複雑な場合や、給与所得・事業所得・雑所得の判定に迷う場合には、確定申告前に税理士へ相談することをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。





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