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法定調書の電子提出義務が30枚以上に拡大|2027年1月からの変更点と企業の対応

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 17 時間前
  • 読了時間: 11分

こんにちは!代表の安田です。


給与所得の源泉徴収票や報酬・料金等の支払調書など、税務署へ提出する法定調書について、電子提出義務の対象が拡大されます。


2027年1月1日以後に提出する法定調書から、電子提出義務の判定基準が、従来の「100枚以上」から「30枚以上」へ引き下げられます。


これまで電子提出義務の対象ではなかった中小企業でも、従業員数や支払調書の提出件数によっては、新たにe-Tax等による提出が必要になる可能性があります。


特に注意したいのは、電子提出義務の判定に使うのが、提出する年の枚数ではなく、前々年に提出すべきであった法定調書の枚数である点です。


たとえば、2025年中に提出すべき給与所得の源泉徴収票が30枚以上だった場合、2025年当時は電子提出義務がなくても、2027年に提出する同じ種類の法定調書は電子提出が必要になります。 国税庁も、2027年1月以後に提出する法定調書から、判定基準が100枚以上から30枚以上になると案内しています。


本日は、法定調書の電子提出義務化の内容、30枚以上の判定方法、対象となる提出手段、支店・事業所がある場合の注意点、企業が今から準備すべき事項を解説します。


法定調書とは

法定調書とは、所得税法などの規定に基づき、金銭等の支払いを行った事業者が税務署へ提出する資料です。代表的な法定調書には、次のようなものがあります。

  • 給与所得の源泉徴収票

  • 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票

  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

  • 不動産の使用料等の支払調書

  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書

  • 不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書


これらは、税務署が所得の支払状況を把握し、適正な課税を行うための重要な資料です。国税庁は、法定調書について必要に応じて調査を行うなど、適正な提出の確保に取り組んでいます。


2027年1月から何が変わるのか

法定調書の電子提出義務は、段階的に対象範囲が拡大されてきました。


以前は、法定調書の種類ごとに1,000枚以上提出する場合が電子提出義務の対象でした。その後、2021年1月以後の提出分から100枚以上へ引き下げられ、さらに2027年1月以後の提出分から30枚以上へ引き下げられます。


改正後の基準は次のとおりです。

提出時期

前々年の提出枚数

電子提出義務

2026年12月31日まで

100枚以上

対象

2027年1月1日以後

30枚以上

対象

提出枚数が30枚以上となれば、中小企業でも対象となる可能性があります。


たとえば、従業員が30人を超える会社では、給与所得の源泉徴収票について電子提出義務の対象になることが考えられます。また、従業員数が少なくても、外部の専門家や個人事業主への報酬支払いが多ければ、報酬・料金等の支払調書について30枚以上になる可能性があります。


判定するのは「前々年の提出枚数」

電子提出義務の判定で最も間違えやすいのが、基準年です。

判定対象となるのは、電子提出を行なう年の枚数ではなく、前々年に提出すべきであった枚数です。2027年に提出する法定調書については、2025年に提出すべきであった枚数を使って判定します。


具体例で確認してみましょう。


  • 給与所得の源泉徴収票が2025年に35枚だった場合

2025年に提出すべき給与所得の源泉徴収票が35枚であれば、2027年に提出する給与所得の源泉徴収票は電子提出義務の対象になります。

2025年の提出時点では、当時の基準が100枚以上であったため、紙で提出していたとしても問題ありません。

しかし、2027年の提出時には基準が30枚以上へ引き下げられているため、e-Tax等による提出が必要になります。


  • 2027年の提出枚数が30枚未満でも対象になる場合がある

2025年の提出枚数が30枚以上であれば、2027年の実際の提出枚数が30枚未満に減っていたとしても、原則として電子提出義務が生じます。

反対に、2025年は30枚未満で、2027年に初めて30枚以上になった場合には、その2027年提出分については、前々年基準では電子提出義務の対象にならないと考えられます。


このように、現在の従業員数や支払件数だけで判断せず、前々年の提出実績を確認する必要があります。国税庁も、2025年中に提出する法定調書が30枚以上となった場合、2027年に提出する法定調書についてe-Tax等による提出が必要になると案内しています。


法定調書の種類ごとに判定する

電子提出義務の30枚基準は、法定調書全体の合計枚数で判定するわけではありません。

法定調書の種類ごとに判定します。


たとえば、2025年に提出すべき枚数が次のとおりだったとします。

  • 給与所得の源泉徴収票:35枚

  • 報酬、料金等の支払調書:20枚

  • 不動産の使用料等の支払調書:5枚


この場合、2027年に電子提出義務の対象になるのは、原則として給与所得の源泉徴収票です。


3種類を合計すると60枚ですが、法定調書の種類ごとに判定するため、報酬・料金等の支払調書や不動産の使用料等の支払調書まで自動的に義務対象になるわけではありません。


経理担当者は、法定調書合計表の合計枚数だけを見るのではなく、法定調書の種類別に提出枚数を確認する必要があります。


支店や事業所がある会社の判定方法

本店だけでなく、支店や事業所ごとに法定調書を提出している会社では、判定単位にも注意が必要です。


本店で一括提出しておらず、支店や事業所ごとに管轄税務署が異なる場合には、提出義務者となる支店・事業所ごとに判定します。


たとえば、次のような会社があるとします。

  • 東京本店:給与所得の源泉徴収票25枚

  • 大阪支店:給与所得の源泉徴収票20枚

  • 名古屋支店:給与所得の源泉徴収票10枚


会社全体では55枚ですが、各拠点がそれぞれ法定調書の提出義務者となっている場合、各拠点単位では30枚未満です。


この場合、単純に会社全体の55枚だけを見て電子提出義務を判断するのではなく、どの単位で税務署へ提出しているかを確認する必要があります。


反対に、すべての拠点分を本店で一括提出している場合には、本店が提出する枚数を基礎に判定することになります。


組織再編、支店統廃合、給与計算の集約などにより提出主体が変わっている会社は、特に注意が必要です。


電子提出の方法

電子提出義務の対象となった場合、必ずしもe-Taxの画面へ1件ずつ手入力しなければならないわけではありません。主な提出方法は次のとおりです。

  • e-Taxソフト

国税庁が提供するe-Taxソフトを利用して提出する方法です。

原則として、各種の法定調書を作成・送信できます。給与計算ソフトや会計ソフトで作成したデータを取り込める場合もあります。

ただし、利用者識別番号、電子証明書、利用環境などの事前準備が必要です。


  • e-Taxソフト(WEB版)

e-Taxソフトをパソコンへインストールせず、ブラウザ上で法定調書を作成・提出する方法です。

給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票、報酬・料金等の支払調書、不動産関係の支払調書など、一定の法定調書に対応しています。CSVデータを取り込んで送信することも可能です。


  • eLTAXによる一括提出

給与所得の源泉徴収票については、地方税の給与支払報告書とあわせて、eLTAXから国税・地方税へ一括提出する方法があります。

給与支払報告書は市区町村へ、給与所得の源泉徴収票は税務署へ提出する必要がありますが、eLTAXの一元化機能を使えば、同じ給与データを利用して提出できます。

給与関係の法定調書が中心であれば、実務上はeLTAXの利用が便利なケースもあります。


  • 光ディスク等

大量の法定調書を提出する場合には、CDやDVDなどの光ディスク等を利用する方法も認められています。

ただし、媒体作成や提出管理の手間を考えると、通常の企業ではe-TaxまたはeLTAXの利用を検討することが一般的でしょう。


電子提出義務に違反した場合

電子提出義務の対象であるにもかかわらず、紙で提出した場合には、税務署から電子提出への是正を求められる可能性があります。


法定調書は、確定申告書のように税額を直接計算する書類ではありませんが、税務署が所得情報を把握するうえで重要な資料です。


電子提出義務の対象になった会社が、従来どおり紙で提出し続けることは避けるべきです。

また、提出期限直前に電子提出義務へ気付くと、利用者識別番号や電子証明書の準備、給与ソフトの設定、CSVデータの修正などが間に合わない可能性があります。


2027年になってから慌てるのではなく、早い段階で対象判定とシステム確認を行なうことが重要です。


企業が今から確認すべきこと

法定調書の電子提出義務拡大に備え、企業は次の手順で準備を進めるとよいでしょう。


1. 2025年の提出実績を確認する

まず、2025年中に提出すべきであった法定調書の枚数を確認します。

確認資料としては、次のようなものがあります。

  • 法定調書合計表

  • e-Taxの送信履歴

  • 紙で提出した法定調書の控え

  • 給与計算ソフトの提出履歴

  • 税理士事務所から受領した提出結果資料

法定調書の種類ごとに30枚以上だったかを確認してください。


2. 提出義務者ごとに判定する

本店、支店、営業所、工場などが別々に法定調書を提出している場合には、提出義務者ごとの枚数を確認します。

会社全体の従業員数だけで判断しないことが重要です。


3. 現在の提出方法を確認する

すでにe-TaxやeLTAXで提出している会社であれば、今回の改正による実務上の影響は限定的です。

一方、現在も紙で提出している場合には、次の点を確認します。

  • e-Taxの利用者識別番号を取得しているか

  • 電子証明書を利用できるか

  • eLTAXの利用届出を行っているか

  • 給与計算ソフトが電子提出に対応しているか

  • 支払調書データをCSV出力できるか

  • 税理士へ提出を依頼するか


4. 給与・会計ソフトの対応状況を確認する

給与計算ソフトや法定調書作成ソフトを利用している場合は、2027年提出分の電子提出に対応しているかを確認しましょう。

特に古いソフトや独自のExcelで管理している会社では、e-Taxへ取り込めるCSV形式に変換できない可能性があります。

ソフト会社のアップデート時期や追加料金の有無も確認しておく必要があります。


5. 税理士との役割分担を整理する

年末調整や法定調書の作成・提出を税理士へ依頼している場合には、電子提出義務化後も税理士側で対応するのかを確認します。

法定調書の作成は会社、提出だけ税理士というケースもあれば、データ作成から提出まで税理士へ依頼するケースもあります。

誰が提出枚数を判定し、誰が電子データを作成し、誰が送信するのかを明確にしておくと、提出漏れを防ぎやすくなります。


電子提出への移行にはメリットもある

電子提出義務化は、企業にとって追加対応となる面がありますが、電子化にはメリットもあります。主なメリットは次のとおりです。

  • 税務署へ持参・郵送する必要がない

  • 提出控えや受信通知を電子的に保存できる

  • CSVデータを利用すれば大量入力を省略できる

  • 給与支払報告書と源泉徴収票を一括提出できる

  • 提出状況をオンラインで確認しやすい

  • 紙の印刷・封入・保管コストを削減できる


国税庁によると、法定調書のe-Tax利用率はすでに7割を超えています。

義務化への対応だけでなく、年末調整・給与支払報告書・法定調書の作成から提出までを一体的に電子化する機会として検討することも有効です。


よくある誤解

  • 30枚以上ならすべての法定調書を電子提出する

いいえ。原則として法定調書の種類ごとに判定します。

給与所得の源泉徴収票が30枚以上でも、報酬・料金等の支払調書が30枚未満であれば、後者まで当然に義務対象となるわけではありません。


  • 2027年の提出枚数で判定する

いいえ。2027年に提出する場合は、前々年である2025年に提出すべきであった枚数で判定します。


  • 会社全体で30枚以上なら対象になる

提出義務者の単位によります。

支店や事業所ごとに別の税務署へ提出している場合には、原則として各提出義務者単位で判定します。


  • 電子提出とはe-Taxだけ

e-Taxのほか、一定の法定調書についてはeLTAX、クラウドサービス、光ディスク等による提出も可能です。


まとめ

2027年1月1日以後に提出する法定調書から、e-Tax等による電子提出義務の判定基準が、従来の100枚以上から30枚以上へ引き下げられます。


判定にあたっては、次の点が重要です。

  • 前々年に提出すべきであった枚数で判定する

  • 法定調書の種類ごとに判定する

  • 支店・事業所ごとに提出している場合は、提出義務者ごとに判定する

  • 2025年中に30枚以上提出していれば、2027年提出分から対象となる可能性がある


すでにe-TaxやeLTAXで提出している会社では、大きな影響はないと考えられます。


一方、現在も紙で法定調書を提出している会社は、2025年の提出枚数を確認し、電子提出義務の対象になるかを早めに判定する必要があります。


対象となる場合には、e-TaxやeLTAXの利用準備、給与・会計ソフトの確認、税理士との役割分担を進めておきましょう。


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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