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組織再編で不動産取得税を忘れていませんか?合併・会社分割で不動産を移転する際の注意点

  • 執筆者の写真: 安田亮
    安田亮
  • 11 分前
  • 読了時間: 12分

こんにちは!代表の安田です。


M&Aや事業承継、グループ内再編を検討する際、法人税や登録免許税、消費税、印紙税などは比較的よく話題になります。


一方で、意外と見落とされやすいのが「不動産取得税」です。

不動産取得税は、土地や建物を取得したときに都道府県から課される地方税です。

売買で不動産を取得した場合だけでなく、組織再編により不動産が移転する場合にも、不動産取得税が問題になることがあります。


特に、会社分割、合併、事業譲渡、株式譲渡を組み合わせたM&Aでは、

  • 法人税上は適格組織再編だから大丈夫

  • 登録免許税の軽減は確認した

  • 不動産はグループ内で移すだけだから税金は大きくないはず


と考えていると、後から不動産取得税の負担に気づくことがあります。


本日は、組織再編で不動産を移転する場合の不動産取得税の基本、合併・会社分割における非課税要件、実務上のチェックポイントについて、税理士の視点からわかりやすく解説します。


不動産取得税とは

不動産取得税とは、土地や建物を取得した人に対して、都道府県が課税する税金です。


不動産を購入した場合はもちろん、贈与、交換、建物の新築・増築などにより不動産を取得した場合にも課税対象になります。


不動産取得税は、登記の有無や有償・無償を問わず、不動産を取得した事実に着目して課税されます。


そのため、組織再編により会社間で不動産が移転する場合にも、原則として不動産取得税の課税関係を確認する必要があります。


税率は、原則として不動産の価格、通常は固定資産税評価額を基礎として計算されます。

ただし、土地や住宅については軽減措置が設けられている場合があります。また、組織再編に伴う不動産の取得についても、一定の要件を満たす場合には非課税となる取扱いがあります。


組織再編では法人税だけで判断しない

会社分割や合併を検討する場合、まず注目されるのは法人税上の適格要件です。


適格合併や適格分割に該当すれば、資産・負債の移転について帳簿価額で引き継がれ、譲渡損益の課税を繰り延べることができます。


しかし、法人税上の適格組織再編に該当することと、不動産取得税が非課税になることは、同じではありません。


法人税と不動産取得税では、根拠となる法律も要件も異なります。

法人税上は適格組織再編として処理できても、不動産取得税の非課税要件を満たさなければ、不動産取得税が発生する可能性があります。


M&Aや組織再編では、法人税、消費税、登録免許税、印紙税だけでなく、不動産取得税まで含めて全体の税負担を確認することが重要です。


合併による不動産取得税の取扱い

会社が合併により不動産を取得する場合、一定の要件を満たせば不動産取得税は非課税となります。


たとえば、適格合併に該当する場合、合併法人が被合併法人から不動産を承継しても、不動産取得税が非課税となる取扱いがあります。


ただし、ここでも注意が必要です。

法人税上の適格合併の要件と、不動産取得税上の非課税要件は、完全に同じではありません。


また、合併の形態、当事者間の支配関係、事業継続の有無、移転する資産や従業員の状況などによって、要件確認が必要になります。


単に「合併だから不動産取得税はかからない」と判断するのではなく、具体的なスキームに基づいて、地方税法上の非課税要件を確認する必要があります。


会社分割による不動産取得税の非課税要件

会社分割により不動産を取得する場合も、一定の要件を満たすと不動産取得税が非課税になります。


東京都主税局は、地方税法第73条の7第2号後段および地方税法施行令第37条の14に定める会社分割により不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税となると説明しています。


会社分割には、分割型分割と分社型分割があります。

不動産取得税の非課税要件では、分割の形態ごとに確認すべき事項があります。

たとえば、添付資料にあるように、分割型分割では、分割法人の株主等に分割承継法人の株式以外の資産が交付されないことや、交付される株式が分割法人株式の保有割合に応じて交付されることなどが問題になります。


分社型分割では、分割法人に対して分割承継法人の株式以外の資産が交付されないことがポイントになります。


また、共通要件として、分割事業に係る主要な資産・負債が分割承継法人へ移転していること、分割事業が分割承継法人において引き続き営まれることが見込まれていること、分割事業に係る従業者の一定割合が引き続き従事することが見込まれていることなどを確認する必要があります。


従業員80%要件にも注意

会社分割に伴う不動産取得税の非課税要件では、従業員の引継ぎも重要です。

分割事業に係る従業者の80%以上が、分割承継法人の業務に従事することが見込まれていることが要件の1つとされています。


この要件は、単に書類上の人数だけを合わせればよいものではありません。

  • どの従業員が分割事業に従事していたのか

  • 分割後、誰が分割承継法人で業務に従事するのか

  • 兼務者や短時間勤務者をどう扱うのか

  • 役員は従業者に含まれるのか

  • 雇用契約の移転時期はいつか


このような点を整理する必要があります。

特に、不動産賃貸事業やホテル事業のように、不動産そのものが主要資産でありながら、運営委託や外部業者への委託が多い事業では、従業員要件の確認が難しくなることがあります。


組織再編の初期段階で、人員の引継ぎ計画も含めて検討しておくことが大切です。


事業継続要件を確認する

会社分割で不動産取得税の非課税を検討する場合には、事業継続要件も重要です。


分割により承継された事業が、分割承継法人で引き続き営まれる見込みがあることが求められます。


たとえば、ホテル事業を会社分割で承継する場合、単にホテル建物だけを移転するのではなく、ホテル運営に必要な資産・負債、契約、人員、許認可、顧客関係などがどのように承継されるのかを確認する必要があります。


事業譲渡に近い形で実態がある場合には説明しやすい一方、不動産だけを切り出すようなスキームでは、事業の承継といえるか慎重に確認する必要があります。


不動産取得税の非課税要件は、「不動産を移すこと」だけを見ているのではなく、組織再編として事業が承継される実態があるかどうかを見ています。


非適格組織再編では特に注意

法人税上、非適格組織再編に該当する場合には、移転資産・負債は原則として時価で譲渡されたものとして扱われ、譲渡損益が認識されます。


そのため、非適格分割や非適格合併では、法人税上の含み益課税、欠損金の利用制限、のれん、時価評価、株式譲渡との関係などが重点的に検討されがちです。


しかし、その一方で、不動産取得税の検討が後回しになることがあります。

非適格組織再編では、そもそも不動産取得税の非課税要件を満たせない可能性が高くなります。


その場合、移転する不動産の固定資産税評価額に対して不動産取得税が課税されるため、金額が大きくなることがあります。


特に、ホテル、商業施設、賃貸マンション、物流倉庫、工場、土地付き建物などを移転する場合には、必ず試算しておきましょう。


事業譲渡・株式譲渡との比較も必要

不動産を含む事業をM&Aで取得する場合、主なスキームとして、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併などがあります。


株式譲渡では、不動産の所有者である法人の株式を取得するだけで、不動産そのものの所有者は変わりません。


そのため、通常は不動産取得税は発生しません。

一方、事業譲渡で不動産を取得する場合には、不動産そのものを買主が取得するため、原則として不動産取得税が発生します。


会社分割や合併では、一定の要件を満たせば不動産取得税が非課税となる場合がありますが、要件を満たさなければ課税される可能性があります。


つまり、不動産取得税だけを見れば、株式譲渡が有利に見える場合があります。

しかし、株式譲渡では簿外債務や過去の税務リスクも引き継ぐことになります。


一方、事業譲渡や会社分割では、引き継ぐ資産・負債・契約を選別しやすいメリットがあります。


したがって、M&Aスキームを検討する際には、不動産取得税だけでなく、法人税、消費税、登録免許税、許認可、労務、契約、簿外債務、金融機関対応まで含めて比較する必要があります。


登録免許税との違いも押さえる

不動産を移転する場合、不動産取得税だけでなく、登録免許税も問題になります。


登録免許税は、不動産の所有権移転登記などを行なう際に課される国税です。

一方、不動産取得税は、不動産を取得した事実に対して課される都道府県税です。

この2つは別の税金です。


たとえば、登録免許税について軽減措置が使える場合でも、不動産取得税が非課税になるとは限りません。逆に、不動産取得税の非課税要件を満たしていても、登録免許税について別途確認が必要です。


M&Aや組織再編では、「登記費用」として司法書士報酬や登録免許税を見積もることは多いですが、不動産取得税は都道府県から後日納税通知書が届くため、見落とされやすい傾向があります。


クロージング後に想定外の税負担が発生しないよう、スキーム検討時に不動産取得税も試算しておきましょう。


不動産取得税は誰が負担するのか

不動産取得税は、不動産を取得した者に課されます。


したがって、会社分割で不動産を承継する場合には、原則として不動産を取得した承継会社側に課税されます。


ただし、M&Aの契約実務では、最終的な税負担を誰が負担するかについて、当事者間で取り決めることがあります。


たとえば、買主が負担するのか、売主が価格調整で負担するのか、税務リスクとして表明保証や補償条項に含めるのか、といった点です。


不動産取得税の金額が大きい場合、買収価格やスキーム選択に影響します。

特に、銀行やFAが作成した提案書では、法人税や登記費用は記載されていても、不動産取得税まで詳細に反映されていないことがあります。


税務・法務・M&A実務の担当者が連携し、契約書上の負担関係も含めて確認しておくことが重要です。


不動産取得税の試算で確認すべき資料

組織再編により不動産を移転する場合、不動産取得税の試算には、次のような資料が必要になります。

  • 固定資産税評価証明書

  • 登記事項証明書

  • 公図、地積測量図、建物図面

  • 固定資産税課税明細書

  • 不動産の所在地、用途、面積

  • 建物の構造、建築年月

  • 住宅用・非住宅用の区分

  • 組織再編契約書案

  • 分割計画書・合併契約書案

  • 承継する資産・負債の明細

  • 従業員の承継状況

  • 事業継続の内容がわかる資料。


不動産取得税は、時価や売買価格ではなく、原則として固定資産税評価額を基礎に計算します。


そのため、M&Aの取引価格だけを見ても正確な試算はできません。

固定資産税評価額を確認したうえで、非課税要件の適用可否を検討する必要があります。


組織再編で確認すべき税務チェックリスト

不動産を含む組織再編を検討する際には、少なくとも次の点を確認しましょう。

  • 法人税上、適格組織再編に該当するか

  • 非適格の場合、含み益課税や欠損金の引継ぎに影響がないか

  • 不動産取得税の非課税要件を満たすか

  • 登録免許税の軽減措置を使えるか

  • 移転する不動産の固定資産税評価額はいくらか

  • 不動産取得税を試算するといくらになるか

  • 不動産取得税の負担者を契約書で明確にしているか

  • 承継する主要資産・負債は整理されているか

  • 承継する従業員の人数や割合は要件を満たすか

  • 承継事業が再編後も継続される見込みがあるか

  • 許認可や契約の承継に問題がないか

  • 消費税や印紙税への影響はないか


組織再編は、1つの税目だけを見て判断すると危険です。


特に不動産を含む場合には、不動産取得税、登録免許税、固定資産税、消費税、法人税を横断的に確認する必要があります。


まとめ:組織再編で不動産を移すなら、不動産取得税を必ず確認する

M&Aやグループ内再編で不動産を移転する場合、不動産取得税の検討は欠かせません。


不動産取得税は、不動産を取得した事実に対して課される都道府県税です。

会社分割や合併により不動産を承継する場合でも、一定の非課税要件を満たさなければ、不動産取得税が発生する可能性があります。


法人税上の適格組織再編に該当するかどうかと、不動産取得税が非課税になるかどうかは、必ずしも同じではありません。特に、非適格分割や不動産を含む事業譲渡では、不動産取得税の負担が大きくなることがあります。


また、不動産取得税はクロージング時にすぐ支払う税金ではなく、後日、都道府県から納税通知書が届くことが多いため、M&Aの初期検討では見落とされがちです。


不動産を含む組織再編を検討する際には、

  • 法人税の適格要件

  • 不動産取得税の非課税要件

  • 登録免許税の軽減措置

  • 固定資産税評価額

  • 従業員の承継状況

  • 事業継続の見込み

  • 契約書上の税負担者

を早い段階で整理しておきましょう。


組織再編は、スキームを決めた後で税務上の問題に気づくと、修正が難しくなることがあります。特に不動産を含むM&Aでは、提案書の段階から不動産取得税の有無を確認し、必要に応じて都道府県税事務所や専門家に相談することをおすすめします。


神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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