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「建物付土地」と「土地」を交換すると税金はどうなる?法人税の圧縮記帳と消費税の注意点を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
11 時間前
読了時間: 12分

更新日:39 分前

おはようございます!代表の安田です。


会社が所有している土地や建物について、近隣の道路工事、再開発、区画整理、隣地との調整などをきっかけに、他者が所有する土地と交換することがあります。


「お金を受け取る売却ではなく、土地と土地を交換するだけだから、税金はかからないのでは?」


このように考えたくなる場面もあるでしょう。


しかし、税務上は、交換も原則として「時価で譲渡し、時価で取得した」ものとして取り扱われます。そのため、交換によって含み益がある資産を手放す場合には、法人税や消費税の検討が必要になります。


特に注意したいのが、「建物付土地」と「土地」を交換するケースです。

土地同士の交換であれば法人税の圧縮記帳を検討しやすい一方、建物部分が含まれると、同じように取り扱えない場合があります。


本日は、建物付土地と土地を交換する場合の法人税・消費税の注意点を、税理士の視点から解説します。


交換でも法人税がかかるのが原則

法人が固定資産を交換した場合、税務上は「資産を譲渡し、別の資産を取得した」と考えます。

つまり、交換で現金の授受がない場合であっても、譲渡した資産の時価と帳簿価額との差額に利益があれば、原則として譲渡益が発生します。


たとえば、帳簿価額が低い土地を、時価の高い土地と交換した場合には、その含み益が法人税の課税対象になる可能性があります。

  • 交換だから売却ではない

  • 現金を受け取っていない

  • 損益は発生していないはず


このように考えてしまうと、法人税の検討を漏らしてしまうことがあります。


一定要件を満たすと圧縮記帳が使える

法人税では、固定資産を交換した場合について、一定の要件を満たすと圧縮記帳の適用を受けられる制度があります。


圧縮記帳とは、交換によって取得した資産の帳簿価額を一定額減額することで、譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度です。


国税庁は、法人が所有する土地や建物等の固定資産を他者の固定資産と交換した場合、原則として時価で譲渡・取得したものとして所得計算を行う一方、一定要件を満たす交換については圧縮記帳の適用を受けられると説明しています。


ただし、圧縮記帳は「交換であれば何でも使える」という制度ではありません。

要件を満たさなければ、通常どおり譲渡益に対して法人税が課税されます。


圧縮記帳の主な要件

交換による圧縮記帳を使うためには、主に次のような要件を確認する必要があります。

  • 交換する資産が、土地、建物、機械装置、船舶、鉱業権など一定の固定資産であること

  • 譲渡資産と取得資産が同じ種類の資産であること

  • 土地と土地、建物と建物のように、資産の種類が一致していること

  • 譲渡資産も取得資産も固定資産であること

  • 棚卸資産として保有している土地や建物ではないこと

  • 交換する双方の資産を、それぞれ1年以上所有していること

  • 取得資産が、相手方において交換のために取得されたものではないこと

  • 取得資産を、譲渡資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること

  • 交換時の取得資産と譲渡資産の時価差額が、いずれか高い方の価額の20%以内であること


国税庁のタックスアンサーでも、交換時における取得資産と譲渡資産の価額の差額が、いずれか多い方の価額の20%相当額を超えないことなどが要件として示されています。


この20%要件は実務上とても重要です。

「大体同じくらいの価値だろう」と感覚で進めるのではなく、不動産鑑定評価、固定資産税評価額、路線価、近隣取引事例などを踏まえて、時価の妥当性を確認する必要があります。


「土地」と「土地」は同一種類だが、「建物」と「土地」は違う

今回のように、会社が所有する「建物付土地」と、相手方が所有する「土地」を交換する場合、最初に確認すべきなのは、交換対象を土地部分と建物部分に分けて考えることです。


土地と土地の交換であれば、同じ種類の資産として圧縮記帳の対象になり得ます。


一方、建物と土地は同じ種類の資産ではありません。


つまり、会社が「土地+建物」を譲渡し、相手方から「土地のみ」を取得する場合、土地部分については交換による圧縮記帳を検討できても、建物部分については同じようには扱えない可能性があります。


建物部分は、土地との交換において圧縮記帳の対象外となり、時価で譲渡したものとして譲渡益が発生する場合があります。


この点が、「建物付土地」と「土地」の交換で特に見落としやすいポイントです。


建物の時価評価が重要になる

建物付土地を交換する場合には、土地と建物の時価を分けて評価する必要があります。


たとえば、会社側が譲渡する資産の時価が次のような内訳だったとします。

  • 土地部分:7,000万円

  • 建物部分:3,000万円

  • 合計:1億円


一方、相手方から取得する土地の時価が1億円だったとします。


この場合、全体としては1億円同士の交換に見えます。

しかし、税務上は、土地部分と建物部分を分けて考える必要があります。

土地部分については、会社が7,000万円の土地を譲渡し、1億円の土地を取得するような形になります。


このとき、土地同士の交換における時価差額が、いずれか高い方の価額の20%以内に収まっているかを確認します。


一方、建物部分については、土地との交換では同一種類の資産とはいえません。

そのため、建物部分の時価相当額については、圧縮記帳の対象にならず、譲渡益の課税が問題になる可能性があります。


「調整差金なし」でも時価差額の確認は必要

交換契約では、当事者間で「調整差金なし」とすることがあります。

つまり、現金のやり取りをせず、資産同士をそのまま交換する形です。


しかし、税務上は、実際に現金を受け取ったかどうかだけで判断するわけではありません。

時価で見たときに、譲渡資産と取得資産の価額に差がある場合には、交換差金等の問題が生じます。


また、時価差額が20%を超えると、交換による圧縮記帳そのものが使えない可能性があります。


そのため、契約書に「調整差金なし」と書いてあるだけでは不十分です。

税務上は、各資産の時価がいくらなのか、差額がどの程度なのかを確認する必要があります。


契約書には時価の内訳を明記しておく

建物付土地と土地を交換する場合には、契約書に交換対象資産の時価内訳を明記しておくことが望ましいです。たとえば、次のような情報です。

  • 譲渡する土地の時価

  • 譲渡する建物の時価

  • 取得する土地の時価

  • 交換差金の有無

  • 建物の取壊しを誰が行なうか

  • 建物取壊し費用の負担者

  • 固定資産税等の精算

  • 消費税の取扱い

  • 土地部分と建物部分を区分した金額


契約書で金額の内訳が曖昧なままだと、後から税務処理を行う際に困ることがあります。

特に、建物部分の時価は法人税だけでなく、消費税にも影響します。


交換契約を締結する前に、税務上の処理を想定して契約書の記載を確認しておきましょう。


消費税では建物部分が課税売上になる

不動産の譲渡では、土地の譲渡は消費税の非課税取引です。


一方、建物の譲渡は原則として消費税の課税取引です。

したがって、建物付土地を交換する場合には、土地部分は非課税売上、建物部分は課税売上として消費税の計算に影響する可能性があります。


「交換だから消費税は関係ない」と考えるのは危険です。

交換であっても、資産の譲渡等に該当するため、消費税上の課税・非課税の判定が必要になります。


国税庁は、課税売上割合の計算について、分母の総売上高には国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額、つまり課税売上高、免税売上高、非課税売上高の合計額が含まれると説明しています。


そのため、土地部分の交換が非課税売上として大きく計上されると、課税売上割合が低下する可能性があります。


課税売上割合が大きく下がると仕入税額控除に影響する

消費税の計算では、課税売上割合が重要です。


課税売上割合が95%以上かどうかによって、仕入税額控除の計算に大きな影響が出る場合があります。


通常は課税売上割合が高い会社であっても、土地の譲渡や交換のような多額の非課税売上が発生すると、その課税期間だけ課税売上割合が大きく下がることがあります。


課税売上割合が95%を下回ると、通常であれば全額控除できていた仕入税額控除について、個別対応方式や一括比例配分方式による計算が必要になることがあります。


結果として、交換そのものによる消費税だけでなく、会社全体の仕入税額控除にも影響することがあります。


課税売上割合に準ずる割合の承認申請を検討する

土地の譲渡や交換など、臨時的な非課税売上が発生したことで課税売上割合が大きく下がる場合には、「課税売上割合に準ずる割合」の適用を検討することがあります。


これは、通常の課税売上割合が事業の実態を適切に反映しない場合に、一定の合理的な割合を用いることを税務署長に承認してもらう制度です。


国税庁は、課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出し、原則として適用を受けようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受ける必要があると説明しています。


ただし、承認には時間がかかる場合があります。

交換契約が決まってから慌てて検討するのではなく、非課税売上が多額に発生する可能性がある段階で、早めに税理士へ相談することが重要です。


翌期には不適用届出も忘れない

課税売上割合に準ずる割合は、臨時的な土地交換や不動産売却の影響を調整するために使うことがあります。


しかし、翌期以降も同じ割合を使い続けてよいとは限りません。

その期だけ土地交換により課税売上割合が大きく下がった場合には、翌期以降の事業実態に合わせて取扱いを見直す必要があります。


翌期には「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出することが注意点として挙げられます。承認申請を出すことだけでなく、その後の不適用手続きまでセットで管理することが大切です。


建物の取壊し費用にも注意

建物付土地を交換する場合、交換後に建物を取り壊すことがあります。


建物の取壊しをどちらが行なうのか、取壊し費用をどちらが負担するのかによって、税務処理が変わる可能性があります。


国税庁は、交換に当たって支出した譲渡資産についての仲介手数料、取外費、荷役費、運送保険料などのほか、土地の上にある建物を取り壊してその土地を交換した場合の取壊費用や、取壊しに伴う借家人への立退料なども、交換に係る譲渡経費に含まれると説明しています。


ただし、今回のように建物付土地として譲渡し、相手方が取壊しを行う場合には、建物の時価や取壊し費用の負担関係を契約上明確にしておく必要があります。


「相手方が取り壊すから関係ない」と考えるのではなく、その条件が交換資産の時価に反映されているかを確認しましょう。


第三者間取引でも油断はできない

会社と相手方が第三者間の取引であれば、基本的には恣意的な低額譲渡や寄附金の問題は起こりにくいと考えられます。


しかし、第三者間取引だからといって、税務上の検討が不要になるわけではありません。

  • 時価の算定

  • 土地と建物の区分

  • 圧縮記帳の要件確認

  • 消費税の課税・非課税区分

  • 課税売上割合への影響

  • 契約書の記載


これらは第三者間取引であっても必ず確認すべき事項です。

特に不動産交換では、当事者間では「等価交換」と考えていても、税務上は土地部分と建物部分の内訳により異なる処理が必要になることがあります。


実務で確認すべきチェックリスト

建物付土地と土地を交換する場合には、少なくとも次の項目を確認しましょう。

  • 譲渡資産の内容

  • 取得資産の内容

  • 土地部分と建物部分の時価

  • 固定資産税評価額、路線価、不動産鑑定評価などの資料

  • 交換差金の有無。

  • 時価差額が20%以内か。

  • 譲渡資産と取得資産が同一種類か

  • 双方が1年以上所有しているか

  • 取得資産を同じ用途に使用するか

  • 相手方が交換目的で取得した資産ではないか

  • 建物の帳簿価額

  • 建物部分の譲渡益

  • 圧縮記帳の対象となる範囲

  • 別表13(三)の作成要否

  • 消費税の課税売上・非課税売上の区分

  • 課税売上割合への影響

  • 課税売上割合に準ずる割合の承認申請の要否

  • 翌期の不適用届出の要否

  • 契約書への時価内訳の記載

  • 建物取壊し費用の負担者


これらを事前に整理しておくことで、交換後に「想定外の税負担が出た」という事態を防ぎやすくなります。


まとめ:建物付土地と土地の交換は「交換だから非課税」とは限らない

建物付土地と土地の交換では、現金のやり取りがなくても、法人税や消費税の検討が必要です。


法人税では、固定資産の交換について一定要件を満たせば圧縮記帳を使える可能性があります。


しかし、土地と建物は同じ種類の資産ではないため、土地部分は圧縮記帳の対象になっても、建物部分は対象外となる可能性があります。


また、交換時の時価差額が20%を超えると、土地部分についても圧縮記帳が使えなくなる可能性があります。


消費税では、土地部分は非課税売上、建物部分は課税売上として扱われます。

その結果、多額の土地の交換により課税売上割合が大きく下がり、仕入税額控除に影響することがあります。


場合によっては、課税売上割合に準ずる割合の承認申請を検討する必要もあります。

不動産交換は、売買よりも税務上の論点が見えにくい取引です。


「交換だから大丈夫」と思い込まず、契約前に時価評価、圧縮記帳、消費税、契約書記載を確認し、税引き後・消費税後の影響まで試算しておきましょう。



神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください


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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。

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