新リース基準で不動産賃借料はどうなる?外形標準課税の「支払賃借料」と付加価値割を解説
おはようございます!代表の安田です。
2027年4月1日以後開始する事業年度から原則適用される新リース会計基準では、借手のリースについて、従来のオペレーティング・リースを含め、原則として使用権資産とリース負債を計上する会計処理へ移行します。
不動産の賃貸借についても、新リース会計基準上の「リース」の定義を満たせば対象となります。
その結果、これまで店舗や事務所の賃借料を「地代家賃」などで費用処理していた会社でも、新基準適用後は、
使用権資産の減価償却費
リース負債に係る利息費用
を計上することになります。
ここで注意したいのが、法人事業税の外形標準課税における付加価値割です。
会計上「地代家賃」がなくなっても、不動産のオペレーティング・リースに係る賃借料は、税務上、従来どおり付加価値割の「支払賃借料」に含めます。
令和7年度税制改正では、この取扱いが明確化されました。
本日は、新リース会計基準適用後の不動産賃借料と、外形標準課税の「支払賃借料」「支払利子」の取扱いについて税理士が解説します。
新リース会計基準では不動産賃貸借も「リース」に
新リース会計基準では、リースを、「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分」として整理しています。
この定義に該当する契約について、借手は原則として、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上することになります。
対象は機械や車両だけではありません。店舗、事務所、倉庫などの不動産賃貸借も含まれます。 ただし、短期リース・少額リースは除外されています。
従来の「地代家賃」が会計上なくなる場合がある
従来、不動産の賃貸借については、毎月の家賃を例えば次のように処理していました。
従来の主な処理 | 内容 |
地代家賃 | 店舗・事務所等の賃借料を費用処理 |
賃借料 | 不動産等の賃借料を費用処理 |
新リース会計基準の適用後は、対象となる不動産賃貸借について、会計上は主に次の項目を認識します。
新リース基準での主な処理 | 内容 |
使用権資産 | 不動産を使用する権利を資産計上 |
リース負債 | 将来支払うリース料相当額を負債計上 |
減価償却費 | 使用権資産を償却 |
利息費用 | リース負債に係る利息を費用計上 |
つまり、損益計算書上でこれまで「地代家賃100」と表示されていたものが、単純に同じ勘定科目で残るとは限りません。
この会計処理の変化が、外形標準課税の集計実務に影響します。
外形標準課税の付加価値割とは
法人事業税の外形標準課税では、一定の法人について「付加価値割」が課されます。
付加価値額は次の要素から構成されています。
構成要素 | 概要 |
報酬給与額 | 給与・賞与等 |
純支払利子 | 支払利子-受取利子 |
純支払賃借料 | 支払賃借料-受取賃借料 |
単年度損益 | 当期の所得等を基礎とする金額 |
今回問題になるのは、このうち「支払賃借料」です。
不動産賃借料は新リース基準後も「支払賃借料」
令和7年度税制改正では、外形標準課税の支払賃借料について、新リース会計基準導入後の取扱いが明確化されました。
結論は、不動産のオペレーティング・リースに係る賃借料は、従来どおり付加価値割の「支払賃借料」に含めるというものです。
つまり、会計上、地代家賃として費用計上しなくなった↓外形標準課税でも支払賃借料ではなくなるということではありません。
会計上の表示方法が変わっても、外形標準課税上の取扱いは基本的に変わらない点が重要です。
新リース基準で税務上の取扱いが変わったわけではない
リース取引に係る付加価値割について、新リース会計基準に伴う特段の変更はない
とされています。
したがって、今回の改正は、「不動産賃借料を新たに付加価値割へ含める」という改正ではありません。
もともと支払賃借料に含まれていたものについて、新リース基準導入後も従来どおり取り扱うことを明確にしたものです。
なぜ改正でわざわざ明確化されたのか
理由は、会計上の勘定科目が変わることで支払賃借料の集計漏れが生じる可能性があるためです。
従来は、
地代家賃
賃借料
などの勘定科目を集計すれば、不動産賃借料を比較的容易に把握できました。
ところが新リース基準適用後は、
減価償却費
利息費用
として会計処理されます。
これまで「地代家賃」等から支払賃借料を集計できた一方、新基準適用会社ではその方法が使えなくなるため、自治体等から計上漏れを懸念する声が挙がっていました。
実務で特に注意したい「集計漏れ」
例えば、これまで外形標準課税の申告資料を作成するときに、「地代家賃」勘定の年間金額をExcelへ転記するという方法を採用していた会社を考えます。
新リース基準適用後も同じ集計方法を続けると、不動産賃借料の一部または全部が「地代家賃」に計上されていないため、支払賃借料を過少に申告する可能性があります。
<会計処理と税務集計のイメージ>
項目 | 従来 | 新リース基準後 |
会計上の費用 | 地代家賃 | 減価償却費+利息費用 |
不動産賃貸借契約 | 存在 | 存在 |
外形標準課税 | 支払賃借料 | 従来どおり支払賃借料 |
集計方法 | 地代家賃から容易に抽出 | 別途集計が必要 |
新リース基準への移行プロジェクトでは、会計仕訳だけでなく税務申告用データの抽出方法も見直す必要があります。
オペレーティング・リースとファイナンス・リースで取扱いが違う
今回の記事で最も整理しておきたいのが、この違いです。
外形標準課税上、オペレーティング・リースとファイナンス・リースで取扱いが異なります。
<付加価値割での取扱い>
税務上のリース区分 | 付加価値割 |
オペレーティング・リース | 賃借料を「支払賃借料」へ |
ファイナンス・リース | リース料自体は「支払賃借料」に含めない |
ファイナンス・リースの利息相当額 | 「支払利子」へ |
特に、新リース会計基準上は借手の会計処理が統一されていくため、会計処理だけを見て外形標準課税の区分を判定しないことが重要です。
「法人税法上のリース取引」は支払賃借料から除外
令和7年度税制改正では、付加価値割の「支払賃借料」について、法人税法上のリース取引に係るものを除くことも明確化されています。
いわゆるファイナンス・リースに該当する法人税法上のリース取引については、リース料そのものを支払賃借料とせず、利息相当額を「支払利子」として扱うとされています。
当期の「支払賃借料」は何を基準にする?
不動産のオペレーティング・リースについて、当期に法人税で損金算入される金額を、当期の支払賃借料として計上することとなります。
したがって、会計上の減価償却費や利息費用の単純合計をそのまま外形標準課税の支払賃借料にする、という考え方ではありません。
法人税上の取扱いと照合して集計する必要があります。
具体例で考える
例えば、会社が事務所を年間1,200万円で賃借しているとします。
新リース基準適用後、会計上は仮に、
使用権資産の減価償却費
リース負債の利息費用
として損益計上されることになります。
しかし、この契約が税務上オペレーティング・リースとして取り扱われる不動産賃貸借であれば、外形標準課税上は、当期に法人税で損金算入される不動産賃借料を「支払賃借料」として把握する必要があります。
会計上の「減価償却費」勘定だけを見ても、この税務上の支払賃借料は把握できません。
経理システムの改修も検討したい
新リース基準への対応では、リース管理システムを導入する会社も多いでしょう。
その場合には、外形標準課税用として少なくとも次の情報を抽出できるようにしておくと実務がスムーズです。
管理したい情報 | 用途 |
契約名 | 対象契約の識別 |
賃貸物件 | 土地・建物等の把握 |
会計上のリース区分 | 会計処理確認 |
税務上のリース区分 | 外形標準課税判定 |
年間賃借料 | 支払賃借料算定 |
法人税上の損金算入額 | 当期支払賃借料 |
利息相当額 | 支払利子算定 |
契約開始・終了日 | 年度按分等 |
特に、「会計上の分類」と「税務上の分類」を別々に管理できるようにしておくことが重要です。
新リース基準導入時のチェックリスト
外形標準課税の対象法人は、次の事項を確認しておくとよいでしょう。
チェック項目 | 確認内容 |
不動産契約 | 店舗・事務所・倉庫等を洗い出したか |
新リース基準 | 使用権資産を計上する契約を把握したか |
税務区分 | オペレーティング・リースか確認したか |
支払賃借料 | 法人税上の損金算入額を把握できるか |
支払利子 | FLの利息相当額を抽出できるか |
勘定科目 | 地代家賃だけを集計していないか |
システム | 税務申告用データを出力できるか |
税務申告 | 前年と集計方法が変わる点を共有したか |
新リース基準対応では「会計仕訳」だけを直さない
企業が新リース基準へ対応するときは、
契約の洗い出し
使用権資産の計上
リース負債の計算
注記対応
など、会計面に目が向きがちです。
しかし、実務では税務申告や管理資料への影響も同時に確認する必要があります。
今回の外形標準課税はその典型例です。
会計上「地代家賃」が消えたとしても、税務上の支払賃借料まで消えるわけではありません。
そのため、「仕訳が変わる」ことと「税務上の取扱いが変わる」ことを分けて考える必要があります。
よくある疑問
Q. 新リース基準で地代家賃を計上しなくなれば、付加価値割の支払賃借料もなくなりますか?
A. なくなりません。不動産のオペレーティング・リースに係る賃借料について、従来どおり付加価値割の「支払賃借料」に含めることが明確化されています。
Q. 新リース基準の導入で外形標準課税のルール自体が変わったのですか?
A. 資料では、リース取引に係る付加価値割の取扱いについて、新リース会計基準に伴う特段の変更はないとされています。
Q. ファイナンス・リースのリース料も支払賃借料ですか?
A. 法人税法上のリース取引に該当するファイナンス・リースについては、リース料は支払賃借料には当たらず、利息相当額を「支払利子」として計上するとされています。
Q. なぜ実務上注意が必要なのですか?
A. 従来は「地代家賃」等の勘定科目から支払賃借料を集計できましたが、新リース基準では減価償却費・利息費用になるため、従来と同じ集計方法では漏れが生じる可能性があるためです。
まとめ
新リース会計基準では、リースの定義を満たす不動産賃貸借についても、借手は原則として使用権資産とリース負債を計上します。
そのため、従来「地代家賃」などとして費用処理していた不動産賃借料が、会計上は使用権資産の減価償却費とリース負債の利息費用として処理されることになります。
しかし、外形標準課税の付加価値割については、税務上オペレーティング・リースとなる不動産賃貸借の賃借料を、従来どおり「支払賃借料」に含めます。
一方、法人税法上のリース取引に該当するファイナンス・リースについては、
リース料:支払賃借料には含めない
利息相当額:支払利子に含める
という取扱いです。
今回の改正で特に重要なのは、課税ルールそのものが大きく変わったことではなく、会計処理の変更によって「支払賃借料」の集計漏れが起きやすくなったことです。
外形標準課税の対象法人では、新リース基準への移行に合わせて、地代家賃等の勘定科目を起点とした従来の集計方法を見直し、リース契約台帳や税務上の損金算入額から支払賃借料を抽出できる体制を整えておきましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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