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【適格合併】欠損金引継制限の「5年前の日」はいつ?法人税法57条の計算方法を具体例で解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
4 分前
読了時間: 14分

こんにちは!代表の安田です。


適格合併を行なう場合、被合併法人が保有する繰越欠損金を、合併法人へ引き継げるかどうかは重要な税務論点です。


適格合併では、一定の要件を満たすことで、被合併法人の未処理欠損金額を合併法人に引き継ぐことができます。


しかし、合併法人と被合併法人の支配関係が生じた時期によっては、法人税法57条3項に基づく欠損金の引継制限を受ける場合があります。


この判定で重要になるのが、「適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日」という基準日です。


例えば、3月決算法人が2027年4月1日に適格合併を行う場合、5年前の日はいつになるのでしょうか。


単純に5年を差し引くと2022年4月1日と考えがちですが、税法上の期間計算では、2022年3月31日となります。この1日の違いによって、欠損金の引継制限を受けるかどうかの判定が変わる可能性があります。


本日は、適格合併における未処理欠損金の引継ぎ、5年前の日の計算方法、支配関係の継続要件、みなし共同事業要件との関係について、具体例を交えて解説します。


適格合併では被合併法人の未処理欠損金を引き継げる

法人税法57条2項では、一定の適格合併が行われた場合、被合併法人の未処理欠損金額を合併法人に引き継ぐことができる旨が定められています。


例えば、次のようなケースです。

  • A社:合併法人

  • B社:被合併法人

  • B社には繰越欠損金がある

  • A社がB社を吸収合併する

  • 合併は法人税法上の適格合併に該当する


この場合、原則として、B社の未処理欠損金額をA社に引き継ぐことができます。

ただし、適格合併であれば無条件にすべての欠損金を引き継げるわけではありません。

法人税法57条3項では、一定の適格合併について、未処理欠損金額の引継制限が設けられています。


そのため、適格合併による欠損金の引継ぎを検討する際には、法人税法57条2項だけでなく、同条3項の適用関係も確認する必要があります。


欠損金の引継制限が問題となるのはどのような場合?

法人税法57条3項では、合併法人と被合併法人との間に支配関係がある場合について、一定の要件に該当しなければ、被合併法人の未処理欠損金額の引継ぎが制限されます。


この判定では、次のような要件が重要です。

<欠損金の引継制限を受けないための主な要件>

判定項目

内容

支配関係の継続

所定の基準日から継続して支配関係がある

みなし共同事業要件

合併が一定の共同事業要件を満たす

法人の設立時期

基準日より後に設立された法人に関する特別な取扱い

例えば、いわゆる「5年前の日」から継続して支配関係がある場合には、所定の要件を満たすことで、引継制限の対象外となります。


また、支配関係の継続期間が5年に満たなくても、みなし共同事業要件を満たすことにより、引継制限を受けない場合があります。


したがって、「支配関係が5年間ない=必ず欠損金を引き継げない」というわけではありません。


法人税法57条3項の「5年前の日」とは?

法人税法57条3項では、支配関係の継続期間を判定するための基準日が規定されています。

吸収合併の場合、基本となるのは次の日です。


  • 適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日

この表現で特に注意したいのは、次の2点です。

① 適格合併の日そのものから5年前を計算するわけではない

② 事業年度開始日から単純に5暦年を引いた日が、そのまま基準日になるわけではない


例えば、3月決算法人について、2027年4月1日から2028年3月31日までの事業年度に適格合併を行なう場合、基本的な計算の出発点は2027年4月1日です。


この場合の「5年前の日」は、2022年3月31日となります。

<具体例>

項目

日付

合併法人の事業年度開始日

2027年4月1日

適格合併の日

2027年4月1日

単純に5暦年を差し引いた日

2022年4月1日

税法上の「5年前の日」

2022年3月31日

このように、一般的な日付計算と税法上の期間計算では、結果が1日異なります。


なぜ2022年4月1日ではなく3月31日になるのか?

この違いには、国税通則法の期間計算のルールが関係しています。


国税通則法第10条第1項第1号では、期間計算について、原則として初日を算入しない取扱いが定められています。


法人税法57条3項の「5年前の日」の解釈でも、この初日不算入の考え方を踏まえて期間を計算します。


今回のケースでは、次のように整理されます。

<期間計算のイメージ>

日付

位置付け

2022年3月31日

5年前の日(基準日)

2022年4月1日

5年間の期間計算上の満了日

2027年3月31日

期間計算の起算日

2027年4月1日

合併法人の事業年度開始日

このように、2027年4月1日を基準として計算すると、「5年前の日」は2022年3月31日となります。


重要なのは、2022年4月1日に支配関係が生じた場合と、2022年3月31日に支配関係が生じた場合では、判定結果が異なるという点です。


具体例①:2022年3月31日から支配関係がある場合

A社とB社はいずれも3月決算法人で、2027年4月1日に適格合併を行なう予定とします。

また、両社は2022年3月31日から継続して支配関係にあるものとします。


<事例の前提>

項目

内容

合併法人

A社

被合併法人

B社

適格合併の日

2027年4月1日

事業年度開始日

2027年4月1日

5年前の日

2022年3月31日

支配関係が生じた日

2022年3月31日

このケースでは、2022年3月31日から合併まで継続して支配関係があります。

したがって、支配関係の継続期間に関する要件を満たします。


そのため、その他の要件を満たすことを前提として、法人税法57条3項による未処理欠損金の引継制限を受けない取扱いとなります。


具体例②:2022年4月1日から支配関係がある場合

次に、同じA社とB社について、支配関係が生じた日だけを1日遅らせてみましょう。


<事例の前提>

項目

内容

適格合併の日

2027年4月1日

事業年度開始日

2027年4月1日

5年前の日

2022年3月31日

支配関係が生じた日

2022年4月1日

この場合、2022年4月1日から2027年3月31日まで継続して支配関係があるとしても、2022年3月31日からの継続要件は満たしません。


したがって、みなし共同事業要件を満たす場合などを除き、未処理欠損金の引継制限を受けることになります。


2022年4月1日と2022年3月31日では、わずか1日しか違いません。

しかし、この違いが欠損金の引継制限の判定に影響します。


<支配関係発生日による比較>

支配関係発生日

5年前の日からの継続要件

引継制限

2022年3月30日

満たす

原則として制限なし

2022年3月31日

満たす

原則として制限なし

2022年4月1日

満たさない

原則として制限あり

2022年4月2日

満たさない

原則として制限あり

※両社が所定の期間を通じて存在し、適格合併まで支配関係が継続している場合を想定しています。また、みなし共同事業要件などの例外は考慮していません。


合併日が2027年10月1日でも「5年前の日」は同じ?

もう一つ注意したいのが、実際の合併日と事業年度開始日の関係です。


例えば、3月決算法人が2027年10月1日に適格合併を行なった場合を考えます。

この場合、適格合併の日は2027年10月1日ですが、その日の属する事業年度は2027年4月1日から2028年3月31日です。


したがって、欠損金の引継制限の判定における「5年前の日」は、原則として2022年3月31日となります。


<適格合併の日による比較>

適格合併の日

合併法人の事業年度開始日

5年前の日

2027年4月1日

2027年4月1日

2022年3月31日

2027年7月1日

2027年4月1日

2022年3月31日

2027年10月1日

2027年4月1日

2022年3月31日

2028年3月31日

2027年4月1日

2022年3月31日

※いずれも3月決算法人による通常の吸収合併を想定しています。新設合併では基準日となる日が異なります。


つまり、同じ事業年度内に行なわれる適格合併であれば、実際の合併日が異なっていても「5年前の日」は同じになるということです。


なお、適格合併によって新たに法人を設立する場合には、事業年度開始日ではなく、適格合併の日を基礎として判定する取扱いが定められています。


設立から5年未満の法人ではどう判定する?

ここまで紹介した事例は、合併法人と被合併法人が「5年前の日」より前から存在しているケースです。


しかし、実際には設立から5年未満の法人同士が合併することもあります。

法人税法57条3項では、支配関係の継続期間を判定する際に、次の3つの日が関係します。

  1. 適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日

  2. 被合併法人の設立の日

  3. 合併法人の設立の日


これらのうち最も遅い日を基準とする考え方が規定されています。

例えば、2027年4月1日に適格合併を行なうケースで、被合併法人が2023年4月1日に設立されていた場合、2022年3月31日からの支配関係を求めることはできません。


そのため、設立日以後の支配関係の継続状況を確認する必要があります。

ただし、設立から5年未満であれば、必ず設立日からの支配関係だけで引継制限を回避できるわけではありません。


法人税法施行令第112条では、設立日を用いた判定について一定の例外も定められています。特に、過去に組織再編成を行っている場合には、別途検討が必要です。


「5年前の日」の要件を満たさないと欠損金はすべて引き継げない?

ここも実務上、誤解しやすい点です。

法人税法57条3項の引継制限が適用される場合でも、必ずしも被合併法人の未処理欠損金額がすべて引継不能になるわけではありません。


引継制限では、主に次のような欠損金額が問題となります。

<引継制限の対象となる欠損金>

欠損金の種類

主な取扱い

支配関係が生じた事業年度より前に生じた一定の欠損金

引継制限の対象

支配関係が生じた事業年度以後の一定の欠損金

特定資産譲渡等損失額から成る部分について制限

上記の制限に該当しない欠損金

その他の要件を満たせば引継ぎを検討できる

したがって、支配関係の継続要件を満たさない場合には、欠損金がいつ発生したのかを確認する必要があります。


例えば、支配関係が生じる前から被合併法人に存在していた繰越欠損金については、引継制限の対象となる可能性があります。


一方、支配関係が生じた後の欠損金については、その発生原因や特定資産譲渡等損失額への該当性などを確認する必要があります。


「5年前の日」の要件を満たさないことと、「すべての繰越欠損金が引き継げないこと」は同じ意味ではありません。


みなし共同事業要件を満たせば引継制限を受けない場合がある

法人税法57条3項では、みなし共同事業要件についても重要な取扱いが定められています。

合併法人と被合併法人との間に、所定の期間にわたる支配関係がない場合でも、適格合併が一定の共同事業要件を満たせば、欠損金の引継制限を受けない場合があります。


みなし共同事業要件については、法人税法施行令第112条に規定されています。

この判定では、合併法人と被合併法人が営む事業の関連性や、事業規模等の要件が問題となる場合があります。


したがって、支配関係の継続期間を満たさない場合であっても、みなし共同事業要件を満たすかどうかを検討する必要があります。


ただし、今回の「5年前の日」の解釈と、みなし共同事業要件の判定は別の問題です。

実際の適格合併では、それぞれの要件を区分して検討することが重要です。


平成22年の国税庁Q&Aでも同じ取扱い

今回の「5年前の日」の考え方は、2026年になって初めて示されたものではありません。

国税庁が2010年(平成22年)10月6日に公表した法人税の質疑応答事例でも、同様の期間計算が示されています。


具体的には、適格合併の日の属する事業年度開始日が2011年4月1日の場合、「5年前の日」は2006年3月31日として説明されています。


<国税庁の過去事例との比較>

事業年度開始日

5年前の日

2011年4月1日

2006年3月31日

2027年4月1日

2022年3月31日

このように、平成22年度税制改正に関する過去の質疑応答事例でも、現在と同様の考え方が採られています。


そのため、今回の解釈は、突然新しく導入された取扱いではなく、従来から示されていた期間計算の考え方と整合するものといえます。


支配関係が生じた日も正確に確認する

「5年前の日」を正しく計算しても、実際に支配関係が生じた日を誤って把握していれば、判定を誤る可能性があります。


例えば、株式の取得によって支配関係が生じるケースを考えます。

株式譲渡契約を締結した日と、実際に株式の引渡しを受けた日が異なる場合があります。

法人税基本通達1-3の2-2では、株式の購入によって支配関係が生じる場合について、原則として株式の引渡しがあった日を判定日とする取扱いが示されています。


<具体例>

項目

日付

株式譲渡契約の締結日

2022年3月25日

株式の引渡日

2022年4月1日

支配関係が生じた日

原則として2022年4月1日

2027年4月1日開始事業年度の「5年前の日」

2022年3月31日

このケースでは、株式譲渡契約自体は2022年3月中に締結されています。


しかし、支配関係が生じた日が2022年4月1日であれば、5年前の日からの継続要件を満たさないことになります。


そのため、契約締結日だけでなく、株式の引渡日や株主権の移転状況まで確認する必要があります。


適格合併を検討する際の実務チェックリスト

適格合併による未処理欠損金の引継ぎを検討する場合、次の事項を確認しておくとよいでしょう。

確認項目

内容

合併の適格性

法人税法上の適格合併に該当するか

合併の効力発生日

適格合併を行なう日はいつか

合併法人の事業年度

合併日の属する事業年度の開始日はいつか

5年前の日

初日不算入の期間計算を踏まえて判定したか

合併法人の設立日

基準日との関係を確認したか

被合併法人の設立日

基準日との関係を確認したか

支配関係の発生日

契約日と株式引渡日を区別しているか

支配関係の継続

合併まで途切れず継続しているか

みなし共同事業要件

該当性を検討したか

未処理欠損金額

発生年度別に把握しているか

特定資産譲渡等損失額

引継制限の対象となる部分がないか

根拠資料

株式譲渡契約書、株主名簿、登記簿等を保存しているか

特にグループ内再編やM&Aの直後に適格合併を行う場合には、支配関係の開始日が重要になります。


また、合併法人と被合併法人の設立時期が異なる場合や、過去に組織再編成を行っている場合には、判定が複雑になる可能性があります。


よくある質問

Q. 適格合併では繰越欠損金を必ず引き継げますか?

A.いいえ。原則として一定の未処理欠損金額を引き継ぐことができますが、法人税法57条3項に基づく引継制限が適用される場合があります。


Q. 2027年4月1日に適格合併を行なう場合、「5年前の日」はいつですか?

A. 3月決算法人で、2027年4月1日が合併日の属する事業年度開始日であれば、2022年3月31日です。


Q. 2022年4月1日から支配関係があれば、5年継続していると判断できますか?

A. 法人税法57条3項の「5年前の日」は2022年3月31日となるため、2022年4月1日からの支配関係では、原則としてその継続要件を満たしません。


Q. 合併日が2027年10月1日の場合も同じですか?

A. 3月決算法人であれば、合併日の属する事業年度開始日は2027年4月1日です。したがって、通常の吸収合併では「5年前の日」は2022年3月31日となります。


Q. 設立から5年未満の会社も欠損金を引き継げますか?

A. 一定の場合には、設立日を考慮した支配関係の継続要件によって判定します。

ただし、法人税法施行令に定められた例外もあるため、設立日だけで判断することはできません。


Q. 支配関係が5年間ない場合、欠損金の引継ぎはすべて認められませんか?

A. 必ずしもそうではありません。みなし共同事業要件を満たす場合などには、引継制限を受けないことがあります。また、引継制限が適用される場合でも、欠損金の発生時期や内容によって、引継ぎが認められる部分が残ることがあります。


Q. 株式譲渡契約の締結日が「支配関係が生じた日」ですか?

A. 必ずしもそうではありません。株式の購入によって支配関係が生じる場合、原則として株式の引渡日を基準に判定します。


まとめ

適格合併による未処理欠損金の引継ぎでは、法人税法57条3項の支配関係の継続要件が重要です。


今回のポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 適格合併では、一定の未処理欠損金額を合併法人に引き継げる

  • ただし、法人税法57条3項による引継制限が適用される場合がある

  • 支配関係の継続期間を判定する際には「5年前の日」が重要

  • 2027年4月1日開始事業年度の「5年前の日」は2022年3月31日

  • 2022年4月1日からの支配関係では、原則として継続要件を満たさない

  • 合併日ではなく、原則として合併日の属する事業年度開始日を基礎に計算する

  • 設立から5年未満の法人では、設立日を考慮した判定が必要になる

  • 支配関係の継続要件を満たさなくても、みなし共同事業要件を満たせば制限を受けない場合がある

  • 引継制限が適用されても、すべての欠損金が引き継げなくなるとは限らない

  • 株式の取得によって支配関係が生じた場合には、株式の引渡日等の確認が重要


特に重要なのは、「2027年4月1日の5年前は2022年4月1日」と単純に計算しないことです。


適格合併における未処理欠損金の引継制限では、1日違うだけで支配関係の継続要件に関する判定が変わる可能性があります。


また、支配関係の継続期間だけでなく、みなし共同事業要件、設立日、欠損金の発生時期なども重要です。


適格合併を検討する場合には、合併の効力発生日や支配関係が生じた日を正確に確認し、欠損金の引継制限の適用関係を事前に整理することをおすすめします。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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