外国会社の日本代表者はPEになる?登記義務と税務上の恒久的施設を税理士が解説
こんばんは!代表の安田です。
外国会社が日本でビジネスを始める場合、まず検討すべき論点の一つが「外国会社の登記」です。
海外法人が日本の顧客と継続的に取引を行う場合、会社法上、日本における代表者を定めて、外国会社の登記をしなければならないことがあります。
ここで実務上よく問題になるのが、その「日本における代表者」が、税務上の恒久的施設、いわゆるPEに該当するのかという点です。
外国会社にPEがあると判断されると、日本国内で生じた一定の事業所得について、日本で法人税等の申告・納税が必要になる可能性があります。
そのため、外国会社が日本に代表者を置く場合には、次のような疑問が生じます。
会社法上の日本代表者を登記したら、自動的にPEになるのか
日本に営業所を置かず、代表者だけを置く場合でも課税されるのか
弁護士や専門家を日本代表者にした場合、代理人PEになるのか
契約締結権限を持たせなければPEにならないのか
会社法の登記義務と法人税のPE判定はどう違うのか
結論からいうと、外国会社の日本における代表者を登記したからといって、直ちに代理人PEに該当するわけではありません。
PEに該当するかどうかは、日本代表者の肩書きだけでなく、外国会社との契約内容、実際の役務提供内容、契約締結への関与、事業上の権限などを踏まえて個別に判断されます。
この記事では、外国会社の登記義務と、日本における代表者がPEに該当するかどうかの考え方について解説します。
外国会社とは
会社法上の外国会社とは、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、日本の会社と同種または類似するものをいいます。
たとえば、米国法人、英国法人、シンガポール法人、香港法人、アイルランド法人など、日本以外の国の法律に基づいて設立された会社が該当します。
近年では、海外SaaS企業、海外EC事業者、海外ゲーム会社、海外コンサルティング会社、海外投資会社などが、日本の顧客向けにサービスを提供するケースも増えています。
外国会社が日本で一時的な取引をするだけであれば、必ずしも会社法上の登記が問題になるとは限りません。
しかし、日本で継続して取引を行なう場合には、会社法上、日本における代表者を定め、外国会社の登記をする必要があることがあります。
外国会社が日本で継続取引をする場合の登記義務
会社法では、外国会社が日本において継続して取引をしようとするときは、日本における代表者を定めなければならないとされています。
また、外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において継続して取引をすることができません。
外国会社の登記では、準拠法、日本における代表者の氏名・住所、公告方法など、一定の事項を登記します。
日本に営業所を設置する場合には、その営業所の所在地を管轄する登記所で登記します。
日本に営業所を設置しない場合には、日本における代表者の住所地を管轄する登記所で登記することになります。
ここでいう「日本における代表者」は、会社法上、外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有するとされています。
この文言だけを見ると、非常に強い権限を持つように見えます。
そのため、「日本における代表者を置いた時点で、税務上の代理人PEになるのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。
日本における代表者とは
外国会社の日本における代表者は、外国会社が日本で継続して取引をするために、会社法上定める必要がある者です。
日本における代表者のうち少なくとも1人は、日本に住所を有する者でなければなりません。
日本における代表者には、個人だけでなく法人を選任することも可能です。
また、弁護士などの専門家を日本における代表者として定めることもあります。
実務では、次のようなケースが考えられます。
外国会社が日本に支店を設け、日本支店長を日本代表者にする
外国会社が日本営業所を設け、責任者を日本代表者にする
日本に営業所を置かず、弁護士や専門家を日本代表者にする
日本のグループ会社や関連会社を通じて代表者を置く
法務・登記対応のためだけに日本代表者を選任する
重要なのは、日本代表者として登記されている者が、実際にどのような業務を行っているかです。
単に登記や送達対応のために置かれているのか、日本で営業活動や契約締結に関与しているのかによって、税務上の評価は変わります。
PEとは
PEとは、Permanent Establishmentの略で、日本語では恒久的施設といいます。
外国法人が日本で事業を行なう場合、日本で法人税が課されるかどうかを判断するうえで、PEの有無は非常に重要です。
一般に、外国法人の事業所得は、その外国法人が日本国内にPEを有している場合に、日本で課税対象となる可能性があります。
PEには、大きく分けて次のような類型があります。
支店PE
支店PEとは、日本国内に支店、事務所、工場、作業場など、事業を行う一定の場所を有する場合です。
建設PE
建設PEとは、日本国内で一定期間を超える建設工事、据付工事、監督活動などを行う場合です。
代理人PE
代理人PEとは、日本国内において、外国法人に代わって一定の契約締結等を行う者がいる場合です。
外国会社の日本における代表者との関係で特に問題になりやすいのは、この代理人PEです。
代理人PEとは
代理人PEとは、外国法人のために日本国内で一定の役割を果たす者がいる場合に、その外国法人が日本にPEを有すると判断される類型です。
典型的には、日本国内にいる者が、外国法人に代わって事業に関する契約を反復して締結するような場合です。
また、形式的に契約書へ署名していなくても、契約締結のために反復して主要な役割を果たしている場合には、代理人PEに該当する可能性があります。
たとえば、次のような行為が問題になります。
日本で外国会社の商品・サービスの契約を反復して締結する
顧客との主要条件を実質的に決定する
外国会社に代わって契約交渉を行なう
契約締結に向けた主要な営業活動を日本で行なう
本国側が形式的に承認するだけの状態になっている
外国会社専属またはそれに近い形で活動している
一方で、代理人が外国法人から独立して通常の方法で業務を行なっている場合には、代理人PEに該当しないことがあります。
また、租税条約が適用される場合には、国内法だけでなく、該当する租税条約上のPEの定義も確認する必要があります。
日本における代表者=代理人PEではない
外国会社の日本における代表者は、会社法上、外国会社の日本における業務に関する裁判上・裁判外の行為をする権限を有するとされています。
このため、一見すると、代理人PEに該当するようにも見えます。
しかし、税務上のPE判定では、会社法上の代表者という形式だけで結論が決まるわけではありません。
日本における代表者が、外国会社の事業について実際にどのような役割を果たしているのかを確認する必要があります。
たとえば、日本代表者が次のような業務しか行なっていない場合、ただちに代理人PEに該当するとは限りません。
登記手続のための名義上の代表者
裁判書類や行政書類の送達対応
日本国内での連絡先機能
法務上の通知受領
外国会社の事業に関する契約締結権限を持たない
営業活動や価格交渉を行なわない
顧客との契約条件決定に関与しない
一方で、日本代表者が実際に日本で営業活動を行い、契約交渉や契約締結に反復して関与している場合には、代理人PEのリスクが高まります。
会社法上の権限と税務上の実態判断は別
会社法上の日本における代表者は、外国会社が日本で継続取引を行うために必要となる制度です。
これは、取引先や債権者保護、訴訟・送達などの観点から、日本国内に一定の責任主体を置くための制度といえます。
一方、法人税や租税条約におけるPEの判断は、外国法人が日本でどの程度実質的に事業活動を行っているかを判定するためのものです。
つまり、制度の目的が異なります。
会社法上は日本代表者として登記されていても、税務上は、その者が外国会社の事業活動にどのように関与しているかを見ます。
そのため、形式的には日本代表者であっても、実際には送達対応などに限定され、事業上の契約締結や営業活動に関与していなければ、代理人PEに該当しない可能性があります。
逆に、日本代表者として登記されていなくても、日本国内にいる者が外国会社のために契約締結等の主要な役割を果たしていれば、代理人PEに該当する可能性があります。
国税庁の文書回答事例の考え方
国税庁が公表した文書回答事例では、外国会社の日本における代表者について、外国会社の事業に係る権限を何ら有さず、裁判に係る送達等の行為のみを行なう場合には、日アイルランド租税条約上のPEには該当しないとされています。
ここで重要なのは、あくまで具体的な事実関係を前提に判断されているという点です。
国税庁の文書回答事例一般についても、照会で前提とされた事実関係や照会当時の法令に基づく回答であり、事実関係が異なる場合には、類似事例でも取扱いが異なる可能性があります。
そのため、「文書回答事例があるから、どの外国会社の日本代表者もPEにならない」と考えるのは危険です。
自社の日本代表者が実際にどのような業務を行うのか、契約書や業務フローに落とし込んで確認する必要があります。
PE判定で確認すべきポイント
外国会社の日本における代表者がPEに該当するかどうかを判断する際には、次の点を確認しましょう。
日本代表者が外国会社のために契約を締結するか
契約締結のための主要な役割を果たしているか
価格、数量、納期、契約条件などを実質的に決定しているか
日本の顧客との交渉を行なっているか
本国側の承認が形式的なものにすぎないか
日本代表者が外国会社専属で活動しているか
独立代理人として通常の方法で業務を行っているか
営業活動、マーケティング、顧客サポートの範囲はどこまでか
日本国内に事務所、倉庫、作業場などの拠点があるか
租税条約が適用される国の法人か
特に、契約締結権限があるかどうかだけでなく、契約締結に向けて主要な役割を反復して果たしているかが重要です。
形式上、契約書への署名は海外本社が行っていても、日本側で実質的な交渉や条件決定が完了している場合には、代理人PEの論点が生じます。
日本代表者を専門家に依頼する場合の注意点
外国会社が日本に営業所を置かず、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、コンサルタントなどの専門家を日本における代表者として登記するケースがあります。
この場合、専門家の役割が登記、送達、法務連絡、行政対応などに限定されているのであれば、代理人PEのリスクは相対的に低いと考えられます。
ただし、業務委託契約の内容があいまいで、実際には営業活動、顧客対応、契約交渉、代金回収、クレーム対応などを行っている場合には注意が必要です。
日本代表者を専門家に依頼する場合には、契約書で業務範囲を明確にしておきましょう。
たとえば、次のような事項を明記しておくとよいでしょう。
日本代表者としての登記手続対応
裁判上または裁判外の書類送達対応
行政機関からの通知受領
外国会社への連絡・転送業務
契約締結権限を有しないこと
価格交渉や販売条件決定を行わないこと
営業活動を行わないこと
顧客への勧誘や受注活動を行わないこと
契約書上だけでなく、実際の運用も一致していることが重要です。
日本子会社や関連会社が関与する場合
外国会社が日本市場で事業を行う際、日本子会社や関連会社が営業支援を行うことがあります。
この場合、日本子会社や関連会社が外国会社の代理人PEに該当しないかも検討が必要です。
たとえば、日本子会社が次のような役割を果たしている場合は注意が必要です。
外国会社の商品・サービスを日本顧客に継続的に販売している
外国会社のために契約条件を交渉している
契約締結に向けた主要な役割を果たしている
本国側が日本子会社の交渉結果をほぼそのまま承認している
日本子会社が外国会社専属または主として外国会社のために活動している
一方、日本子会社が自己の名義と責任で取引を行っている場合や、独立したサービス提供者として通常の条件で業務を行っている場合には、直ちに代理人PEになるとは限りません。
ただし、移転価格税制や役務提供対価の妥当性など、別の税務論点も発生します。
グループ会社間で日本市場対応を行う場合は、PE、移転価格、源泉税、消費税をあわせて確認することが大切です。
日本に営業所を設置する場合は支店PEにも注意
外国会社が日本に営業所や支店を設置する場合には、代理人PEだけでなく、支店PEの論点も生じます。
支店PEとは、外国法人が日本国内に事業を行う一定の場所を有する場合です。
たとえば、次のようなものが支店PEに該当する可能性があります。
日本支店
営業所
事務所
工場
作業場
一定の倉庫
商品引渡しやサービス提供の拠点
日本に固定的な事業拠点があり、そこで外国会社の事業活動が行なわれている場合には、支店PEに該当する可能性があります。
日本代表者を登記するだけのケースと、日本に実際の営業所を設置するケースでは、PEリスクが大きく異なります。
外国会社の登記を検討する際には、日本に営業所を置くのか、代表者のみを置くのか、事業活動の場所をどこに置くのかを整理しましょう。
租税条約の確認も必要
外国会社のPE判定では、日本の国内法だけでなく、その外国会社の本店所在地国と日本との租税条約も確認する必要があります。
租税条約に国内法と異なるPEの定義がある場合、その条約の適用を受ける外国会社については、租税条約上のPE定義が重要になります。
たとえば、代理人PEの範囲、独立代理人の取扱い、準備的・補助的活動の例外、建設PEの期間要件などは、条約によって異なる場合があります。
また、BEPS対応により、代理人PEの範囲が見直されている条約もあります。
そのため、外国会社の国ごとに、次の点を確認する必要があります。
日本との租税条約があるか
PEの定義は国内法と異なるか
代理人PEの要件はどう定められているか
独立代理人の例外があるか
準備的・補助的活動の例外があるか
条約届出など必要な手続があるか
国ごとに取扱いが異なるため、海外本社が複数国にあるグループでは、会社ごとに確認しましょう。
PEに該当した場合の税務上の影響
外国会社が日本にPEを有すると判断された場合、日本で法人税等の申告・納税が必要になる可能性があります。
PEに帰属する所得について、日本で課税されるためです。
また、PEに該当する場合には、次のような実務対応が必要になることがあります。
日本での法人税申告
PE帰属所得の計算
本店とPE間の内部取引の整理
帳簿書類の作成・保存
消費税の課税事業者判定
源泉所得税の確認
地方税の申告
移転価格税制への対応
租税条約の適用関係の確認
PE課税では、日本で生じた売上を単純に申告すればよいわけではありません。
PEに帰属する所得を合理的に計算する必要があり、本店との機能・リスク・資産の配分も問題になります。
そのため、PEに該当する可能性がある場合は、事業開始前から税務体制を整えておくことが重要です。
日本代表者を置く際の実務チェックリスト
外国会社が日本における代表者を置く場合には、次の点を確認しましょう。
日本で継続して取引を行なう予定があるか
会社法上、外国会社の登記が必要か
日本に営業所を設置するか、代表者のみを置くか
日本代表者は個人か法人か
日本代表者の住所要件を満たしているか
日本代表者の業務範囲を契約書で明確にしているか
契約締結権限を持たせるか・営業活動や価格交渉を行うか
日本代表者が外国会社専属で活動するか
日本に固定的な事業拠点があるか
租税条約上のPE定義を確認しているか
法人税、消費税、源泉税の影響を検討しているか
会社法上の登記対応と税務上のPE判定は、別々に検討する必要があります。
登記だけを司法書士に依頼して終わりにするのではなく、税務上の影響もあわせて確認しましょう。
よくある誤解
外国会社の日本代表者とPEについて、実務上よくある誤解を整理します。
日本代表者を登記したら必ずPEになる
実際には、日本代表者の形式だけでPEが決まるわけではありません。契約内容や実際の業務内容を踏まえて判断します。
契約書に署名しなければ代理人PEにならない
形式的な署名権限がなくても、契約締結のために主要な役割を反復して果たしている場合には、代理人PEの論点が生じます。
日本に営業所がなければPEはない
営業所がなければ支店PEの可能性は下がるとしても、日本国内の代理人が契約締結等に深く関与していれば、代理人PEの問題は残ります。
海外法人名義だから日本の税務は関係ない
日本市場向けに継続的な事業活動を行う場合、日本での登記義務や税務申告義務が生じる可能性があります。
まとめ
外国会社が日本で継続して取引をしようとする場合、会社法上、日本における代表者を定め、外国会社の登記をする必要があります。
日本における代表者は、会社法上、外国会社の日本における業務に関する裁判上または裁判外の行為をする権限を有するとされています。
しかし、会社法上の日本代表者を登記したからといって、税務上ただちに代理人PEに該当するわけではありません。
PEに該当するかどうかは、日本代表者と外国会社との契約内容、実際の役務提供内容、契約締結への関与、営業活動、価格交渉、顧客との関係などを踏まえて個別に判断されます。
たとえば、日本代表者が外国会社の事業に関する権限を持たず、裁判書類や行政書類の送達対応などに限定されている場合には、代理人PEに該当しない可能性があります。
一方で、日本代表者や日本国内の関連会社が、外国会社に代わって契約を反復して締結したり、契約締結のために主要な役割を果たしたりしている場合には、代理人PEに該当するリスクがあります。
外国会社の日本進出では、会社法上の登記義務、PE判定、租税条約、法人税、消費税、源泉税、移転価格税制などを総合的に確認する必要があります。
日本代表者を置く場合は、業務委託契約や社内フローで権限範囲を明確にし、実際の運用が契約内容と一致しているかを確認しておきましょう。
外国会社の登記やPE判定で迷う場合は、国際税務に詳しい税理士へ早めに相談することをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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