美術品の減価償却は200万円未満へ?通達改正案と既存資産の取扱いを解説
こんにちは!代表の安田です。
会社の応接室や店舗に飾る絵画などを購入したとき、税務上の減価償却ができるかは気になるポイントです。国税庁は令和8年10月30日、美術品等の判定基準を見直す通達改正案について意見募集を始めました。
改正案は取得価額の基準を1点100万円から200万円へ引き上げる内容ですが、令和8年10月31日時点では確定した取扱いではありません。金額の見直しと例外、取得済みの美術品への経過措置を整理します。
美術品は購入すれば必ず減価償却できるわけではない
減価償却は、設備などの取得価額を使用期間に応じて費用に配分する仕組みです。税務上、時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産に該当しません。美術品等はこの点を踏まえて判断します。
現行の法人税基本通達7-1-1と所得税基本通達2-14では、歴史的価値や希少価値があり、代替性のない古美術品等は、金額だけで判定しません。それ以外の美術品等については、1点100万円という取得価額の基準と、価値が減少するかどうかを組み合わせます。
改正案の金額基準と例外を確認する
今回の案は、基本的な判定の考え方を保ちつつ、100万円の基準を200万円に変更するものです。主な違いは次のとおりです。
取得価額等の区分 | 現行の基本的取扱い | 改正案の基本的取扱い |
|---|---|---|
100万円未満 | 原則、減価償却資産 | 原則、減価償却資産 |
100万円以上200万円未満 | 原則、減価償却しない | 原則、減価償却資産 |
200万円以上 | 原則、減価償却しない | 原則、減価償却しない |
歴史的・希少価値等がある代替不能なもの | 金額にかかわらず対象外 | 同じ考え方を維持 |
表の原則には例外があります。基準額未満でも、時の経過により価値が減少しないことが明らかなものは減価償却資産になりません。逆に、基準額以上でも、価値の減少が明らかなものは減価償却資産となる場合があります。
例えば、法人が取得する、不特定多数の人が利用する場所に設置された移設困難な装飾用の作品で、他の用途に転用しても美術品としての市場価値が見込まれないものなどは、通達の例示を踏まえた検討が必要です。「200万円以上なら絶対に不可」ともいえません。
適用予定日と取得済み資産の経過措置を分ける
改正案では、令和9年1月1日以後に取得する美術品等から新基準を適用する予定です。それより前に取得したものは原則として従来の扱いですが、一定の既存資産にも、新基準による減価償却を認める経過措置が盛り込まれています。
区分 | 改正案の経過措置 |
|---|---|
法人の既存資産 | 2027年1月1日以後最初に開始する事業年度からの取扱いを認める |
個人の既存資産 | 2027年1月1日に有する一定の美術品等を同日から対象とする取扱いを認める |
法人では、新基準で減価償却資産となる取得価額100万円以上の美術品等で、適用初年度に事業の用に供しているものが対象となる案です。
3月決算法人なら、令和9年4月1日開始の事業年度が適用初年度に当たります。単に令和9年1月から、すべての既存資産の処理が変わるという内容ではありません。
個人の案は、令和9年1月1日に有する、新基準で対象となる取得価額100万円以上の美術品等についての取扱いです。税務上は同日に取得・事業供用したものとする規定が示されています。いずれも最終的な通達で条件を再確認する必要があります。
150万円の絵画でも購入額が一度に経費になるわけではない
例えば、一般的な現代絵画を150万円で購入して事業で使用するケースでは、改正後の新基準によって減価償却資産に該当する可能性があります。ただし、作品の性質や取得時期、価値が減少しないことが明らかでないかなどを確認した上での判断です。
また、減価償却資産に該当することと、取得価額の全額を購入年の費用にすることは別です。通常は、適切な資産区分・耐用年数・償却方法と事業供用日を確認して償却額を計算します。200万円という判定基準を、少額資産の即時費用化の上限と取り違えないようにしましょう。
購入予定と固定資産台帳を整理しておく
経理担当者は、次の情報をそろえておくと、最終的な通達公表後の検討を進めやすくなります。これは実務上の準備としての提案です。
作品ごとの取得価額、取得日、事業供用日と設置場所
請求書・売買契約書、作品の内容が分かる写真や説明
歴史的・希少価値、代替性、市場価値に関する情報
既存資産の台帳計上額と、これまでの税務上の処理
意見募集の締切りは令和8年11月28日です。公表された案を前提に準備することはできますが、取得時期の決定や償却計算への反映は、取引の実態と最終公表内容を確認して行いましょう。
まとめ
美術品等の減価償却について、1点200万円を基準とする見直しが提案されています。現時点では意見募集段階であり、価値が減少しない作品の例外や既存資産の経過措置も重要です。対象作品の情報を台帳と証拠資料で整理し、最終的な通達を確認して判断してください。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
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