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少額減価償却資産の上限が40万円未満へ|固定資産税特例との重複適用を税理士が解説

執筆者の写真: 安田亮
安田亮
11 分前
読了時間: 8分

おはようございます!代表の安田です。


中小企業がパソコン、工具、備品などを購入した場合、一定の要件を満たせば「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を利用し、取得時に全額を損金算入できる場合があります。


令和8年度税制改正では、この特例の金額基準が、30万円未満から40万円未満へ

引き上げられました。今回の改正でもう一つ注目したいのが、固定資産税の課税標準の特例との重複適用です。


従来、取得価額30万円未満という基準の関係から、工具・器具備品について両制度を重複して利用することはできませんでした。


しかし、少額減価償却資産特例が40万円未満へ拡大されたことで、取得価額30万円以上40万円未満の一定の工具・器具備品について、両特例を重複適用できるようになりました。


本記事では、今回の改正内容と、法人税・固定資産税それぞれの取扱いを整理します。


少額減価償却資産特例とは

中小企業者等が一定の減価償却資産を取得した場合、少額減価償却資産特例を利用することで、通常の減価償却ではなく、取得価額を損金算入できる場合があります。


今回の改正では、その取得価額基準が次のように変更されました。

項目

改正前

改正後

金額基準

30万円未満

40万円未満

したがって、例えば取得価額35万円の備品については、改正前は金額基準を超えていましたが、改正後は少額減価償却資産特例の対象となり得ます。


40万円未満なら固定資産税もかからない?

ここは誤解しやすいところです。

法人税で少額減価償却資産特例を利用して全額損金算入したからといって、固定資産税の償却資産申告の対象外になるわけではありません。


少額減価償却資産特例を適用した資産について、固定資産税上は申告対象となります。


つまり、法人税:取得時に全額損金算入固定資産税:償却資産として申告対象というケースがあり得ます。


<税目ごとの違い>

税目

少額減価償却資産特例を使った場合

法人税

一定の場合に全額損金算入

固定資産税

償却資産の申告対象となり得る

「会計上・法人税上で費用処理したから、償却資産税も関係ない」と考えないことが重要です。


固定資産税にも設備投資の特例がある

一方、一定の設備投資については、固定資産税の課税標準を軽減する特例があります。

賃上げ方針を盛り込んだ先端設備等導入計画に基づいて取得する一定の設備について、賃上げ率に応じて固定資産税の課税標準を軽減する制度が紹介されています。


対象資産には取得価額の要件があります。

資産の種類

取得価額要件

機械・装置

160万円以上

工具・器具備品

30万円以上

建物附属設備

60万円以上

今回の改正で特に関係するのが、工具・器具備品の30万円以上という基準です。


なぜ改正前は重複適用できなかったのか

改正前の少額減価償却資産特例は、30万円未満が対象でした。

一方、固定資産税特例の工具・器具備品は、30万円以上が対象です。


つまり、

制度

金額基準

少額減価償却資産特例

30万円未満

固定資産税特例

30万円以上

となり、金額の範囲が重なっていませんでした。

そのため、同じ工具・器具備品について両制度を同時に利用する余地がありませんでした。


改正後は30万円以上40万円未満が重なる

令和8年度税制改正によって、少額減価償却資産特例が40万円未満まで拡大されました。

その結果、30万円以上40万円未満の部分について、両制度の対象金額が重なることになります。


<改正後>

取得価額

少額減価償却資産特例

固定資産税特例

30万円未満

対象となり得る

金額要件を満たさない

30万円以上40万円未満

対象となり得る

対象となり得る

40万円以上

金額基準外

要件を満たせば対象となり得る

この30万円以上40万円未満の工具・器具備品について、両特例を重複して適用できるようになりました。


35万円の器具備品を購入した場合

例えば、中小企業が35万円の器具備品を購入したとします。

今回の改正後は、その他の要件を満たすことを前提として、


<法人税>

35万円は40万円未満なので、少額減価償却資産特例を利用して損金算入を検討できます。


<固定資産税>

35万円は工具・器具備品の「30万円以上」という取得価額要件を満たしており、先端設備等導入計画など固定資産税特例の要件を満たしていれば、固定資産税の課税標準の軽減も検討できます。


つまり、法人税で早期に損金算入しながら、固定資産税についても特例を利用することが可能となるケースが生じたということです。


40万円未満なら自動的に両方使えるわけではない

ここは重要です。

取得価額が30万円以上40万円未満というだけで、固定資産税特例を自動的に適用できるわけではありません。


固定資産税特例については、

  • 先端設備等導入計画

  • 賃上げ方針

  • 投資計画の確認

  • 申請等の手続

が関係します。 


したがって、35万円のパソコンを買ったので、法人税も固定資産税も自動的に特例適用とは限りません。それぞれの制度の要件を別々に確認する必要があります。


両制度は手続のタイミングも違う

少額減価償却資産特例と固定資産税特例では、適用のための実務手続も異なります。

少額減価償却資産特例は確定申告時の別表添付等によって適用する一方、固定資産税特例では、先端設備等導入計画や投資計画の確認・申請等が必要とされています。


<手続の違い>

制度

主な手続

少額減価償却資産特例

確定申告時の別表添付等

固定資産税特例

先端設備等導入計画・投資計画の確認や申請等

このため、設備を購入してから固定資産税特例を検討するのでは遅い場合も考えられます。

設備投資を予定している段階で、対象になり得るかを確認しておく方が安全です。


中小企業が設備購入前に確認したいポイント

今回の改正を踏まえると、30万円台の工具・器具備品を購入する際には、少なくとも次の事項を確認するとよいでしょう。

チェック項目

確認内容

取得価額

40万円未満か

資産区分

工具・器具備品に該当するか

法人税

少額減価償却資産特例の対象か

償却資産税

申告対象か

固定資産税特例

30万円以上の取得価額要件を満たすか

導入計画

先端設備等導入計画の対象か

賃上げ

計画に賃上げ方針を盛り込んでいるか

手続

必要な確認・申請を済ませたか


「30万円台の設備投資」が今回の改正の注目ゾーン

今回の改正で最も実務的な意味を持つのは、取得価額30万円以上40万円未満の工具・器具備品です。


従来は、

  • 30万円未満なら少額減価償却資産特例

  • 30万円以上なら固定資産税特例

と金額帯が分かれていました。


改正後は、この30万円台の設備について両制度の対象となる可能性があります。

そのため、設備投資を検討する際には、単に「法人税でいくら損金になるか」だけでなく、固定資産税まで含めて税負担を検討することが重要です。


よくある疑問

Q. 少額減価償却資産特例はいくら未満になりましたか?

A. 令和8年度税制改正により、30万円未満から40万円未満へ引き上げられたとされています。


Q. 35万円の器具備品は両特例を使えますか?

A. 取得価額の面では、少額減価償却資産特例の40万円未満と、固定資産税特例の工具・器具備品30万円以上の双方に該当します。30万円以上40万円未満の工具・器具備品について両特例を重複適用できるようになったとされています。

ただし、その他の適用要件を満たす必要があります。


Q. 少額減価償却資産特例を使えば償却資産税の申告は不要ですか?

A. 不要とは限りません。資料では、少額減価償却資産特例を適用した資産も固定資産税の申告対象とされています。


Q. 固定資産税特例も確定申告だけで使えますか?

A. 少額減価償却資産特例とは異なり、固定資産税特例では先端設備等導入計画や投資計画の確認、申請等が必要とされています。


まとめ

令和8年度税制改正により、中小企業者等の少額減価償却資産特例について、取得価額の基準が、30万円未満 → 40万円未満へ引き上げられました。


今回の改正で特に重要なのが、固定資産税特例との関係です。

工具・器具備品については、固定資産税特例の取得価額要件が30万円以上であるため、

30万円以上40万円未満の資産について、一定の要件を満たせば、

  • 法人税:少額減価償却資産特例

  • 固定資産税:先端設備等に係る課税標準の特例

を重複して適用できるようになりました。


一方、法人税で全額損金算入した資産でも、固定資産税上は償却資産の申告対象となり得ます。


また、固定資産税特例は確定申告だけで完結する制度ではなく、先端設備等導入計画や投資計画の確認・申請等が必要です。


30万円台の設備購入を予定している中小企業では、購入後に税務処理を考えるのではなく、設備投資の計画段階で法人税と固定資産税の両方の特例を確認しておくことをおすすめします。



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【この記事の執筆者】

安田 亮(公認会計士・税理士)

安田亮公認会計士・税理士事務所 代表

京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。

現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。

事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。


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