大胆な投資促進税制の意思決定日|2025年12月26日前の投資計画も対象?例外規定を解説
こんばんは!代表の安田です。
令和8年度税制改正で創設された「特定生産性向上設備等投資促進税制」、いわゆる大胆な投資促進税制では、一定の投資計画に基づいて対象設備を取得等した場合、税額控除または即時償却の適用を受けることができます。
この制度を利用するうえで重要な要件の一つが、投資計画が取締役会等の適切な機関による意思決定に基づいていることです。
原則として対象となるのは、政府の税制改正大綱が閣議決定された2025年(令和7年)12月26日以後に意思決定された投資計画です。
もっとも、2025年12月25日以前にすでに設備投資を決定していた場合でも、一定の要件を満たして投資計画を変更し、改めて意思決定することで、例外的に制度の対象となる場合があります。
特に注意したいのが「5年」という期間です。
単に「2025年12月26日から遡って5年以内に決定した計画」であればよいわけではなく、変更前の投資計画を決定した日から、変更後の投資計画を改めて意思決定する日までについても5年以内であることが必要です。
本日は、大胆な投資促進税制における意思決定日の原則と例外、5年要件の考え方について、公認会計士が具体例を交えて解説します。
大胆な投資促進税制とは
大胆な投資促進税制の正式名称は、「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。
青色申告法人が、一定の要件を満たす投資計画に基づいて対象設備を取得等した場合に、税額控除または即時償却を適用できる制度です。
制度を利用するためには設備そのものの要件だけでなく、投資計画についても一定の条件を満たす必要があります。
その一つが、
投資計画が、取締役会等の適切な機関の意思決定に基づいていること
という要件です。
設備投資をいつ取締役会等で決定したのかが、税制適用の可否に影響することになります。
原則は2025年12月26日以後の意思決定
投資計画に関する意思決定については、2025年12月26日が重要な基準日となります。
政府大綱の閣議決定日である2025年12月26日以後の取締役会等の意思決定が、原則として制度の対象になるとされています。
<原則的な考え方>
意思決定日 | 原則的な取扱い |
2025年12月26日以後 | 対象となり得る |
2025年12月25日以前 | 原則対象外。ただし例外規定あり |
したがって、これから新たに大型設備投資を決定する企業であれば、通常はこの点が大きな問題になることはありません。
問題となりやすいのは、制度創設前からすでに設備投資を計画していた企業です。
2025年12月25日以前の投資計画にも例外がある
大胆な投資促進税制では、基準日である2025年12月26日より前に意思決定された投資計画についても、一定の場合には制度の対象とする例外的な取扱いが設けられています。
期間に関する要件は、次の2つです。
要件 | 内容 |
要件A | 2025年12月26日を起点として遡って5年以内に、変更前の投資計画を意思決定していること |
要件B | 変更前の投資計画の意思決定日から、基準日以後に変更後の投資計画を改めて意思決定する日までが5年以内であること |
このA・Bの両方を満たす必要があります。
ここが今回の例外規定で特に間違えやすいポイントです。
「基準日から5年以内」だけでは足りない
例えば、2025年12月26日からちょうど5年前の2020年12月26日に設備投資を決定していたとします。
この投資計画は、2025年12月26日から遡って5年以内という要件Aには該当します。
しかし、その計画を変更して改めて意思決定するのが2026年10月であれば、最初の意思決定から約5年10か月が経過しています。
その場合、要件Bを満たさないため、例外規定の対象にはなりません。添付資料でも、このケースは適用不可と整理されています。
<例外規定の判定イメージ>
変更前の意思決定
↓
【チェック1】
2025年12月26日から
遡って5年以内か
↓ YES
【チェック2】
変更前の意思決定から
変更後の意思決定まで
5年以内か
↓ YES
例外規定の対象となり得る
つまり、「5年」という条件を2つの異なる期間について確認する必要があります。
3つのケースを考えてみましょう。
<ケース① 2020年12月26日決定 → 2025年12月26日に再決定>
項目 | 日付 |
変更前投資計画の意思決定 | 2020年12月26日 |
基準日 | 2025年12月26日 |
変更後投資計画の意思決定 | 2025年12月26日 |
判定 | 適用可能 |
2020年12月26日は、基準日からちょうど5年前です。
したがって要件Aを満たします。
さらに、変更前の意思決定から変更後の意思決定までもちょうど5年であるため、要件Bも満たします。
結果として、例外規定の対象となります。
<ケース② 2023年3月15日決定 → 2026年10月20日に再決定>
項目 | 日付 |
変更前投資計画の意思決定 | 2023年3月15日 |
基準日 | 2025年12月26日 |
変更後投資計画の意思決定 | 2026年10月20日 |
変更前決定から5年となる日 | 2028年3月15日 |
判定 | 適用可能 |
変更前の意思決定である2023年3月15日は、2025年12月26日から遡って5年以内です。
さらに、変更後の意思決定日である2026年10月20日は、変更前の意思決定日から5年以内です。
したがって、要件A・Bの両方を満たし、例外規定の対象となります。
このケースから分かる重要な点は、変更後の投資計画の意思決定を、必ず2025年12月26日に行う必要はないということです。
基準日より後であって、かつ変更前の意思決定から5年以内であれば、期間要件を満たすことができます。
<ケース③ 2020年12月26日決定 → 2026年10月20日に再決定>
項目 | 日付 |
変更前投資計画の意思決定 | 2020年12月26日 |
基準日 | 2025年12月26日 |
変更後投資計画の意思決定 | 2026年10月20日 |
判定 | 適用不可 |
2020年12月26日は、基準日から遡って5年以内であるため、要件Aは満たします。
しかし、
2020年12月26日
変更前計画の意思決定
↓
↓ 5年超
↓
2026年10月20日
変更後計画の意思決定
となるため、変更前投資計画の意思決定から変更後の意思決定までが5年を超えています。
その結果、要件Bを満たさず、例外規定の適用対象にはなりません。
3つのケースを比較
今回の例外規定は、表で整理すると理解しやすくなります。
ケース① | ケース② | ケース③ | |
変更前の意思決定 | 2020/12/26 | 2023/3/15 | 2020/12/26 |
基準日 | 2025/12/26 | 2025/12/26 | 2025/12/26 |
変更後の意思決定 | 2025/12/26 | 2026/10/20 | 2026/10/20 |
基準日から遡って5年以内 | ○ | ○ | ○ |
変更前→変更後が5年以内 | ○ | ○ | × |
例外規定 | 適用可 | 適用可 | 適用不可 |
企業が過去の設備投資計画について税制適用を検討する場合には、まずこの2つの日付を確認することが重要です。
期間要件以外にも条件がある
注意すべきなのは、ここまで説明した「5年以内」という条件だけを満たせば、大胆な投資促進税制を適用できるわけではないことです。
例外規定を利用するためには、変更後の投資計画について、さらに一定の要件を満たす必要があるとされています。
特に明示されているのが次の要件です。
要件 | 内容 |
投資額 | 変更後の設備取得価額の合計額が、変更前の投資計画の1.5倍以上 |
投資利益率 | 変更後の年平均投資利益率が、変更前の数値を上回ること |
その他 | 上記以外にも所定の要件を満たす必要あり |
つまり、以前に決めた設備投資の内容を単に日付だけ改めて取締役会で決議し直せばよいわけではありません。投資計画そのものを一定以上拡充・改善することが求められます。
「取締役会で再決議すればよい」と考えるのは危険
実務上、特に注意したいポイントです。
例えば、
「2024年に設備投資を取締役会で決議したが、2026年にもう一度同じ内容を決議すれば対象になるのではないか」
と考える可能性があります。
しかし、単純な再決議だけで例外規定を利用できるとはいえません。
変更後の計画について、取得価額の合計額や投資利益率など、別途定められた要件を満たす必要があります。
そのため、税制適用を前提として計画を変更する場合には、
「いつ再決議するか」と「投資計画をどのように変更するか」をセットで検討する
ことが重要です。
企業が最初に確認すべき2つの日付
2025年12月25日以前に設備投資を意思決定している企業では、まず次の2つの日付を確認するのが実務上分かりやすいでしょう。
①変更前投資計画の意思決定日
まず、当初の設備投資について取締役会等で正式に意思決定した日を確認します。
議事録や決裁書などから、客観的に確認できる状態にしておくことが重要です。
②変更後投資計画を意思決定する予定日
次に、拡充した投資計画について、いつ改めて取締役会等で意思決定する予定なのかを確認します。
この2つの日付の間が5年を超えると、今回の例外規定の期間要件を満たさなくなります。
<例外規定を検討する際の確認表>
確認事項 | ポイント |
当初の投資計画はいつ決定したか | 取締役会議事録等で確認 |
2025年12月26日から遡って5年以内か | 要件Aを確認 |
変更後計画をいつ決定するか | 予定日を早期に設定 |
当初決定から変更決定まで5年以内か | 要件Bを確認 |
変更後の投資額 | 変更前の1.5倍以上となるか |
投資利益率 | 変更前を上回る見込みか |
その他の要件 | 別途制度要件を確認 |
特に古い投資計画については、再度の意思決定を先延ばしにすることで5年要件を外れてしまう可能性があります。
例外規定を利用できる可能性がある企業は、早めにスケジュールを確認した方がよいでしょう。
具体例:過去に工場建設を決定していた場合
例えば、2023年4月に取締役会で新工場建設を決定していた会社があるとします。
その後、大胆な投資促進税制が創設されたため、設備投資の規模を拡大して制度の適用を検討することになりました。
この場合、以下のようになります。
確認項目 | 例 |
当初の意思決定 | 2023年4月 |
基準日 | 2025年12月26日 |
変更後計画の意思決定 | 2026年中を予定 |
基準日から遡って5年 | クリアする可能性 |
当初決定→変更決定 | 5年以内となる可能性 |
投資額 | 当初計画の1.5倍以上へ拡充する必要 |
投資利益率 | 当初計画を上回る必要 |
期間要件だけを見ると、例外規定を利用できる可能性があります。
ただし、最終的な適用には投資額・投資利益率その他の要件を満たす必要があるため、日付だけで適用可否を判断することはできません。
例外規定を利用するなら早めの検討が重要
大胆な投資促進税制では、過去の意思決定について救済的な例外が設けられている一方、いつまでも変更できるわけではありません。
重要な実務ポイントは、過去の設備投資計画の意思決定日によって、変更後計画を決議できる期限が事実上異なるということです。
例えば、
2021年に意思決定
↓
変更後計画の意思決定期限は
当初決定から5年以内
2023年に意思決定
↓
2021年の計画より
再決議までの時間的余裕が大きい
となります。
したがって、複数の設備投資計画がある企業では、投資計画ごとに当初の意思決定日を一覧化し、5年要件を確認しておくことが有効です。
まとめ
大胆な投資促進税制では、原則として、2025年12月26日以後の取締役会等による意思決定に基づく投資計画が対象となります。
ただし、それより前に意思決定した投資計画についても、一定の場合には例外的に制度の対象となります。
今回の重要なポイントは、次のとおりです。
原則は2025年12月26日以後の意思決定
それ以前の意思決定にも例外規定がある
変更前計画の意思決定が基準日から遡って5年以内であることが必要
さらに、変更前の意思決定から変更後の意思決定までが5年以内であることも必要
この2つの「5年要件」を両方満たさなければならない
変更後の投資額は変更前の1.5倍以上とする必要がある
変更後の年平均投資利益率は変更前を上回る必要がある
単に同じ投資計画を再度取締役会で決議するだけでは足りない
特に注意すべきなのは、「2025年12月26日から遡って5年以内なら大丈夫」とだけ考えないことです。
変更前の意思決定日から変更後の意思決定日までについても5年以内という条件があるため、当初の意思決定が古い投資計画ほど、早期の対応が必要になります。
すでに大型設備投資を決定している企業で大胆な投資促進税制の利用を検討する場合には、まず取締役会議事録等から当初の意思決定日を確認し、変更後投資計画の意思決定スケジュールと、投資額・投資利益率等の要件をあわせて検討することが重要です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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