top of page

インボイス登録日と設備投資の注意点|免税事業者が消費税還付を受けられないケースとは

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 21 時間前
  • 読了時間: 11分

おはようございます!代表の安田です。


免税事業者が大きな設備投資を予定している場合、消費税の還付を受けられるかどうかは、資金繰りに大きく影響します。


たとえば、店舗改装、機械装置の購入、車両の取得、厨房設備の導入、事務所設備の更新など、多額の消費税を含む支出が発生するケースでは、消費税の還付を見込んで資金計画を立てることもあります。

しかし、ここで注意したいのが、消費税の還付を受けられるのは課税事業者に限られるという点です。


免税事業者のままでは、設備投資に係る消費税を支払っていても、原則として消費税の還付申告はできません。そして、インボイス登録によって課税事業者になる場合でも、登録申請書を出した日と実際に課税事業者になる日は必ずしも同じではありません。


今回は、インボイス登録日と設備投資のタイミングについて、免税事業者が消費税還付を受ける際に注意すべきポイントを整理します。


消費税の還付を受けられるのは課税事業者

まず、消費税の基本から確認しましょう。


消費税の申告では、売上に係る消費税額から、仕入れや経費、設備投資などに係る消費税額を差し引いて納付税額を計算します。仕入れや設備投資に係る消費税額の方が大きい場合には、差額について還付を受けられることがあります。


ただし、この還付を受けられるのは、原則として課税事業者です。

免税事業者は、消費税の納税義務が免除されている一方で、仕入れや設備投資に係る消費税の還付を受けることもできません。


つまり、免税事業者が多額の設備投資を行う場合には、還付を受けたいのであれば、事前に課税事業者になる手続を検討する必要があります。


原則は課税事業者選択届出書の事前提出

免税事業者が課税事業者になって消費税の還付を受けたい場合、原則として、課税期間が始まる前に課税事業者選択届出書を提出する必要があります。


たとえば、個人事業主が令和9年中に設備投資を行ない、消費税還付を受けたいのであれば、原則として令和8年12月31日までに課税事業者選択届出書を提出しておく必要があります。


法人の場合も、課税期間の開始前までに提出するのが原則です。

この事前提出を忘れると、設備投資をした課税期間に課税事業者になれず、結果として還付を受けられないことがあります。


インボイス登録の経過措置とは?

インボイス制度の開始に伴い、一定期間については、免税事業者がインボイス登録を受ける場合の経過措置が設けられています。


令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に、免税事業者がインボイスの登録申請書を提出して登録を受ける場合、登録希望日から課税事業者になることができます。


この場合、課税事業者選択届出書の提出は不要とされています。

つまり、通常であれば課税期間開始前に課税事業者選択届出書を提出しなければ課税事業者になれないところ、インボイス登録の経過措置を使えば、課税期間の途中から課税事業者になることができます。


登録希望日は提出日から15日以後の日

インボイス登録の経過措置を利用する場合、登録希望日にも注意が必要です。


登録希望日は、登録申請書の提出日から15日以後の日とされています。

たとえば、9月10日にインボイス登録申請書を提出する場合、登録希望日として指定できるのは、提出日から15日以後の日です。


また、実際に登録が完了した日が登録希望日より後になった場合でも、一定の取扱いにより、登録希望日に登録を受けたものとみなされます。


この点だけを見ると、登録申請を早めに出せば、希望日から課税事業者になれるため、設備投資にも対応できそうに思えます。


しかし、重要なのは、設備取得日が登録希望日以後かどうかです。


登録申請日後でも登録希望日前の設備取得は還付対象外

ここが最も注意すべきポイントです。


免税事業者がインボイス登録の経過措置を利用して課税事業者になり、設備投資に係る消費税の還付を受けようとする場合、設備取得に係る消費税額が還付申告の対象になるのは、課税事業者となった後の取引です。


したがって、インボイス登録申請書を提出した後であっても、登録希望日前に取得した設備については、その時点ではまだ免税事業者であるため、原則として還付申告の対象になりません。


つまり、重要なのは「登録申請書を提出した日」ではなく、課税事業者になる日、すなわち登録希望日です。


具体例:11月25日に取得した設備は還付対象にならない

具体例で考えてみましょう。


ある免税事業者が、インボイス登録申請書を11月10日に提出したとします。登録希望日は10月1日です。そして、その事業者が9月25日に設備を取得したとします。


この場合、インボイス登録申請書の提出日は11月10日であり、設備取得日である11月25日より前です。そのため、「申請後に設備を取得しているから還付対象になるのではないか」と考えてしまいそうです。


しかし、課税事業者になるのは登録希望日である10月1日です。設備を取得した9月25日時点では、まだ免税事業者です。


そのため、この設備に係る消費税額については、還付申告の対象になりません。

このように、登録申請日と登録希望日を混同すると、消費税還付の見込みを誤る可能性があります。


設備取得日は慎重に確認する

消費税の還付を検討する場合、設備の取得日が非常に重要です。


設備取得日が登録希望日より前であれば、その時点では免税事業者であるため、設備に係る消費税額を仕入税額控除の対象にできない可能性があります。


一方、登録希望日以後に設備を取得した場合には、課税事業者として行う課税仕入れとなるため、他の要件を満たせば仕入税額控除の対象になります。


実務上は、次のような日付を確認しておく必要があります。

  • インボイス登録申請書の提出日

  • 登録希望日

  • 実際の登録通知日

  • 売買契約日

  • 納品日

  • 引渡日

  • 検収日

  • 請求書の日付

  • 支払日

  • 事業供用開始日


消費税の仕入税額控除では、単に支払日だけで判断するわけではありません。設備の引渡しや取得時期を含めて、税務上どの課税期間の課税仕入れになるのかを確認する必要があります。


設備投資予定があるなら登録希望日を先に決める

免税事業者が設備投資を予定しており、消費税還付を受けたい場合は、設備取得日から逆算してインボイス登録の手続を進める必要があります。特に、次のようなケースでは注意が必要です。

  • 高額な機械装置を購入する

  • 店舗改装や内装工事を行なう

  • 業務用車両を取得する

  • 太陽光設備など大型設備を導入する

  • 新店舗開業に伴い厨房設備や什器を購入する

  • 事務所移転に伴い設備を一括購入する


これらの支出に係る消費税還付を見込む場合、設備取得日が課税事業者となった後の日になるよう、登録希望日や契約・納品スケジュールを調整することが重要です。


課税事業者選択届出書との比較も必要

インボイス登録の経過措置は便利ですが、すべてのケースで最適とは限りません。


設備投資の時期や課税期間の開始時期によっては、課税事業者選択届出書を提出して、課税期間の初日から課税事業者になっておく方が安全な場合もあります。


たとえば、設備投資が課税期間の早い時期に行なわれる場合、インボイス登録の登録希望日を待っていると、設備取得日が登録希望日前になってしまう可能性があります。


このような場合には、課税期間開始前に課税事業者選択届出書を提出しておくことで、課税期間の初日から課税事業者となり、設備投資に係る消費税額を仕入税額控除の対象にできる可能性があります。


ただし、課税事業者選択届出書を提出すると、一定期間は免税事業者に戻れないなどの制約もあります。そのため、単年度の還付額だけでなく、その後の消費税負担も含めて検討する必要があります。


インボイス登録すれば必ず還付になるわけではない

インボイス登録をして課税事業者になれば、必ず消費税の還付を受けられるというわけではありません。


消費税の還付が生じるかどうかは、課税売上に係る消費税額と、仕入れ・経費・設備投資に係る消費税額のバランスによって決まります。


また、簡易課税制度や2割特例を適用している場合、設備投資に係る実際の消費税額を控除できないことがあります。


設備投資による還付を考える場合には、原則課税で申告することを前提に、売上見込み、仕入れ・経費、設備投資額、インボイス登録日、課税期間を総合的に確認する必要があります。


棚卸資産には調整計算がある

設備投資とは別に、棚卸資産の仕入れについては、免税事業者から課税事業者になる際に調整計算が設けられています。


そのため、免税事業者であった期間中に仕入れた棚卸資産であっても、課税事業者になった時点で一定の要件を満たすものについては、仕入税額控除の対象になる場合があります。


ただし、この調整計算を受けるためには、棚卸資産の明細を記録した書類の保存が必要です。ここで注意したいのは、設備投資と棚卸資産では取扱いが異なるという点です。


棚卸資産については一定の調整計算がありますが、設備については、登録希望日前に取得したものを後から課税事業者になったことを理由に還付対象にすることはできません。


よくある誤解

インボイス登録と設備投資をめぐっては、次のような誤解が起こりやすいです。


  • 登録申請書を出した日から課税事業者になる

インボイス登録の経過措置では、課税事業者になるのは登録申請書の提出日ではなく、登録希望日です。


  • 申請後に買った設備なら還付対象になる

申請後であっても、登録希望日前に取得した設備については、取得時点では免税事業者であるため、還付申告の対象になりません。


  • 登録通知が遅れたら還付対象にならない

登録が完了した日が登録希望日より後になった場合でも、一定の取扱いにより、登録希望日に登録を受けたものとみなされます。重要なのは、登録希望日と設備取得日の関係です。


  • 棚卸資産と設備は同じ扱いになる

棚卸資産には免税事業者から課税事業者になる際の調整計算がありますが、設備投資について同じように扱えるわけではありません。


実務で確認したいチェックポイント

免税事業者が設備投資とインボイス登録を検討する場合、次の点を確認しておきましょう。

  • 設備投資の予定時期

  • 設備の取得日・引渡日

  • インボイス登録申請書の提出日

  • 登録希望日

  • 課税事業者選択届出書の提出要否

  • 原則課税・簡易課税・2割特例の選択

  • 消費税還付の見込額

  • 課税事業者になった後の消費税負担

  • 棚卸資産の有無

  • 棚卸資産の明細書類の保存状況

特に、設備取得日と登録希望日の前後関係は必ず確認すべきです。


税理士として相談を受ける際のポイント

税理士として、免税事業者から設備投資やインボイス登録の相談を受ける場合、まず確認すべきなのはスケジュールです。


「いつ登録申請を出すか」ではなく、「いつ課税事業者になるか」「いつ設備を取得するか」を確認する必要があります。


顧問先には、次のように説明すると分かりやすいでしょう。

  • 消費税還付を受けられるのは課税事業者

  • インボイス登録の経過措置では登録希望日から課税事業者になる

  • 登録申請書を出した日から課税事業者になるわけではない

  • 登録希望日前に取得した設備は還付対象にならない

  • 設備投資が先にある場合は、課税事業者選択届出書も検討する

  • 棚卸資産については別途調整計算がある


設備投資は金額が大きく、消費税還付の有無で資金繰りが変わります。そのため、契約後ではなく、設備投資の計画段階で相談してもらうことが重要です。


まとめ

免税事業者が設備投資を行ない、消費税の還付を受けたい場合には、課税事業者となるタイミングが非常に重要です。


原則として、免税事業者が消費税還付を受けるには、課税期間の開始前に課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者になっておく必要があります。


一方、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に、免税事業者がインボイス登録申請書を提出して登録を受ける場合には、登録希望日から課税事業者となり、課税事業者選択届出書の提出が不要となる経過措置があります。


ただし、この経過措置を利用する場合でも、設備投資に係る消費税の還付を受けるには、設備取得日が登録希望日以後であることが重要です。インボイス登録申請書を提出した後であっても、登録希望日前に取得した設備については、取得時点ではまだ免税事業者であるため、その設備に係る消費税額は還付申告の対象になりません。


たとえば、9月10日にインボイス登録申請書を提出し、登録希望日を10月1日とした場合、9月25日に取得した設備に係る消費税額は還付対象になりません。課税事業者になるのは10月1日であり、設備取得日である9月25日時点では免税事業者だからです。


なお、棚卸資産については、免税事業者から課税事業者になる際の調整計算が設けられており、一定の場合には仕入税額控除の対象になります。ただし、棚卸資産の明細を記録した書類の保存が必要です。


インボイス登録と設備投資のタイミングを誤ると、想定していた消費税還付を受けられないことがあります。免税事業者が高額な設備投資を予定している場合は、登録申請日ではなく、登録希望日と設備取得日を確認し、必要に応じて課税事業者選択届出書の提出も含めて早めに検討しましょう。


神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page