海外コンサル料に消費税はかかる?Web会議で受けるコンサルティングの内外判定を税理士が解説
- 安田 亮
- 1 時間前
- 読了時間: 13分
こんにちは!代表の安田です。
海外のコンサルタント、海外現地法人、海外のマーケティング会社、海外の専門家などに、年間契約でコンサルティング料を支払っている会社は少なくありません。
以前は、海外出張や現地訪問を前提としていたコンサルティング契約でも、近年はWeb会議システム、チャットツール、メール、クラウドストレージなどを通じて、オンラインでサービスを受けることが増えています。
このような場合に経理担当者が迷いやすいのが、消費税の取扱いです。
たとえば、次のような疑問が出てきます。
・海外コンサルタントへ支払う報酬は消費税の課税仕入れになるのか
・Web会議で相談を受けている場合、日本国内取引として扱うのか
・海外から提供されるサービスはすべて国外取引なのか
・オンラインで提供されるサービスはすべて「電気通信利用役務の提供」なのか
・年間契約に複数のサービスが含まれる場合、報酬を按分する必要があるのか
・仕入税額控除やリバースチャージ方式の対象になるのか結論からいうと、海外コンサル料の消費税処理は、単に「海外の会社に支払うから国外取引」「Web会議だから電気通信利用役務」と機械的に判断できるものではありません。
まず、契約内容の主目的が何かを確認する必要があります。
Web会議システムを利用していても、それが単にコンサルティング結果を伝える手段にすぎない場合には、電気通信利用役務の提供には該当しないことがあります。
一方、インターネット等を通じて提供されるサービスそのものが契約の主目的である場合には、電気通信利用役務の提供に該当し、内外判定やリバースチャージ方式の確認が必要になります。
本日は、海外コンサル料の消費税の内外判定、電気通信利用役務の提供に該当するかどうかの判断、年間契約で複数サービスが含まれる場合の考え方、仕入税額控除の注意点を税理士が解説します。
消費税の内外判定とは
消費税は、日本国内で行なわれる資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供などに対して課税されます。
そのため、海外事業者に支払う報酬であっても、まず確認すべきなのは、その取引が「国内取引」に該当するかどうかです。
この国内取引か国外取引かを判断することを、消費税の「内外判定」といいます。
役務の提供については、原則として、その役務の提供が行なわれた場所で内外判定を行います。
たとえば、海外の現地調査会社が海外現地で市場調査を行ない、その調査結果を日本企業へ報告するような場合、役務の提供が行なわれた場所は海外と考えられることがあります。
この場合、国外取引として、消費税の課税対象外になる可能性があります。
一方、日本国内で役務提供が行われた場合には、国内取引として消費税の課税対象になります。
海外事業者への支払いでも、サービスの内容や提供場所によっては、国内取引になることがあります。
電気通信利用役務の提供とは
海外コンサル料を検討するときに重要なのが、「電気通信利用役務の提供」に該当するかどうかです。電気通信利用役務の提供とは、インターネットその他の電気通信回線を介して行なわれる一定の役務提供をいいます。
国税庁は、電気通信回線を介して国内の事業者・消費者に対して行われる電子書籍の配信等の役務の提供について、国外から行なわれるものも国内取引として消費税が課税されると説明しています。
電気通信利用役務の提供に該当する場合、通常の役務提供とは内外判定の基準が異なります。
通常の役務提供では「提供が行なわれた場所」で判断しますが、電気通信利用役務の提供については、原則として「役務の提供を受ける者の住所等」で内外判定します。
つまり、日本法人が海外事業者から電気通信利用役務の提供を受ける場合には、日本法人の所在地が国内であるため、国内取引になる可能性があります。
Web会議を使えばすべて電気通信利用役務になるわけではない
ここで注意したいのは、Web会議やメールを使ったサービスが、すべて電気通信利用役務の提供になるわけではないという点です。
Web会議システム等を利用したコンサルティングについて、すべてが電気通信利用役務の提供に該当するわけではなく、提供される役務の内容によって異なり、他の役務提供の伝達手段にすぎない場合は該当しないとされています。
たとえば、海外コンサルタントが現地で情報収集、交渉、調査、分析などを行い、その結果をWeb会議で報告する場合を考えます。
この場合、Web会議は、現地で行なわれたコンサルティング業務の結果を伝える手段にすぎない可能性があります。
主たる役務は、現地での情報収集や調査分析であり、Web会議そのものではありません。
このような場合、単にオンラインで報告を受けたという理由だけで、電気通信利用役務の提供と判断するのは適切ではありません。
まず契約内容の主目的を確認する
海外コンサル料の消費税処理で最初に確認すべきなのは、契約内容の主目的です。
消費税法上、コンサル料が仕入税額控除の対象となるには、まず契約内容の主目的が電気通信利用役務の提供に該当するか否かを検討する必要があります。
たとえば、同じWeb会議を使ったコンサルティングでも、次のように性質が分かれます。
ケース1:オンライン相談そのものが主目的
日本企業がWeb会議上で相談し、海外コンサルタントがその場で助言・回答する
ケース2:現地情報収集や調査報告が主目的
海外コンサルタントが現地で情報収集・市場調査を行い、その結果をWeb会議で報告するケース1では、オンライン上での相談対応が主たるサービスと考えられる可能性があります。
一方、ケース2では、Web会議は現地調査や情報収集の結果を伝える手段にすぎない可能性があります。
この違いにより、電気通信利用役務の提供に該当するかどうか、さらには国内取引か国外取引かの判断が変わります。
年間契約で複数サービスが含まれる場合
実務では、海外コンサルタントとの年間契約に、複数のサービスが含まれていることがあります。たとえば、次のような内容です。
・Web会議で相談を受け、コンサルタントが即時回答する
・海外現地の市場情報を収集する
・競合他社や法規制の情報を調査する
・現地の業界動向をレポートする
・現地顧客や取引先との関係構築を支援する
・月次レポートをオンラインで提出するこのような場合、サービスごとに消費税の取扱いを分けるのか、それとも契約全体として判断するのかが問題になります。
電気通信利用役務の提供に該当するものと該当しないものを一体で年間契約する場合、契約内容の主目的が他の役務提供の伝達手段にすぎないのであれば、年間のコンサル料全体が電気通信利用役務の提供に該当しないとされています。
具体例として、Web会議上で相談した事案に即時回答するサービスと、コンサルタントが収集した現地情報等をWeb会議上で報告するサービスを一体で年間契約する場合が挙げられています。
この場合、主目的が現地情報等の収集・報告であれば、Web会議は他の役務提供の伝達手段にすぎないため、全体として電気通信利用役務の提供には該当しないと整理されています。
報酬をサービス別に按分する必要はあるか
年間契約の中に、電気通信利用役務の提供に該当しそうなサービスと、該当しないサービスが混在している場合、報酬をサービスごとに按分したくなるかもしれません。
たとえば、年間報酬600万円のうち、オンライン相談が30%、現地情報収集が70%だから、180万円分だけ電気通信利用役務として処理する、という考え方です。
しかし、主目的が現地情報等の収集であり、Web会議がその伝達手段にすぎない場合、年間費用をそれぞれのサービスが占める提供割合で按分することなどは不要とされています。
つまり、契約全体の主目的を見て、全体として電気通信利用役務に該当するかどうかを判断する考え方です。
ただし、契約書上、明確に別個のサービスとして料金が区分されている場合や、実態として独立した複数契約といえる場合には、個別判断が必要です。
実務では、契約書、請求書、業務内容、報告書、サービスの提供実態を確認し、主目的を整理しておくことが重要です。
事業者向け電気通信利用役務とリバースチャージ方式
国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供のうち、サービスの性質や取引条件等から、事業者向けであることが明らかなものは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当します。
この場合、リバースチャージ方式の対象になることがあります。
リバースチャージ方式とは、通常はサービス提供者が消費税を申告・納付するところ、国外事業者が行う一定のサービスについて、サービスを受けた国内事業者側に申告納税義務を課す仕組みです。
国税庁も、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、事業者向け電気通信利用役務の提供については、役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務が課されると説明しています。
ただし、そもそも対象の海外コンサル料が電気通信利用役務の提供に該当しない場合には、この論点には進みません。まずは、契約の主目的から電気通信利用役務の提供かどうかを判定することが先です。
仕入税額控除の注意点
海外コンサル料について仕入税額控除を行なうには、前提として、その支払いが消費税の課税仕入れに該当する必要があります。課税仕入れに該当するかどうかは、主に次の流れで確認します。
1. 役務提供の内容を確認する
2. 電気通信利用役務の提供に該当するかを確認する
3. 内外判定により国内取引か国外取引かを確認する
4. 国内取引であれば、課税取引か非課税取引かを確認する
5. 事業者向け電気通信利用役務の場合、リバースチャージ方式の対象か確認する
6. 帳簿・請求書等の保存要件を確認するインボイス制度開始後は、仕入税額控除のために適格請求書等の保存が原則として必要になります。
ただし、国外事業者との取引やリバースチャージ方式が関係する取引では、通常の国内取引とは必要書類や処理が異なる場合があります。
国税庁の案内でも、令和5年10月1日以後、登録国外事業者制度はインボイス制度へ移行し、移行登録国外事業者は適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされることなどが説明されています。
海外事業者からの請求書については、消費税が記載されているかどうかだけで判断せず、取引類型と保存書類を確認しましょう。
海外コンサル料の契約書で確認したい項目
海外コンサル料の消費税処理を誤らないためには、契約書の段階でサービス内容を明確にしておくことが重要です。
確認したい項目は次のとおりです。
・契約の目的
・提供されるサービスの具体的内容
・現地で行う調査、情報収集、交渉、同行支援の有無
・Web会議やメールがサービス本体か、単なる報告手段か
・成果物の内容
・レポートの提出方法
・相談対応の頻度
・年間報酬の内訳
・サービスごとの料金区分の有無
・提供者の所在地
・提供を受ける者の所在地
・事業者向けサービスであることが明らかか契約書に「コンサルティング業務一式」とだけ記載されていると、後から内外判定を行う際に判断が難しくなります。
実務では、契約書の別紙や業務仕様書に、具体的な業務内容を記載しておくとよいでしょう。
税務調査で確認されやすい資料
海外コンサル料は、法人税だけでなく消費税でも確認されやすい項目です。
特に、高額な年間契約や、役務提供の実態が見えにくいコンサル料は、税務調査で内容を確認されることがあります。
保存しておきたい資料は次のとおりです。
・コンサルティング契約書
・業務仕様書
・請求書
・支払記録、海外送金記録
・Web会議の議事録
・コンサルタントからの報告書
・現地調査レポート
・メール、チャットの履歴
・業務成果物
・サービス内容ごとの説明資料
・社内稟議書
・消費税処理の判断メモ重要なのは、Web会議を使ったかどうかだけでなく、コンサルタントが実際に何を提供したのかを説明できることです。
現地情報の収集が主目的であるなら、どのような情報を収集し、どのように報告されたのかを資料で示せるようにしておきましょう。
経理処理で間違えやすいポイント
海外コンサル料では、次のような誤りが起こりやすいです。
1. 海外事業者への支払いだからすべて国外取引と判断する
海外事業者への支払いであっても、電気通信利用役務の提供に該当し、提供を受ける者の所在地が国内であれば、国内取引になる可能性があります。
2. Web会議を使っているからすべて電気通信利用役務と判断する
Web会議が他の役務提供の伝達手段にすぎない場合は、電気通信利用役務の提供には該当しないことがあります。
3. 契約全体の主目的を確認しない
年間契約に複数サービスが含まれる場合は、契約内容の主目的を確認する必要があります。
主目的が現地情報収集であり、Web会議が報告手段にすぎない場合には、全体として電気通信利用役務に該当しない可能性があります。
4. サービスごとに安易に按分する
一体契約で、主目的が電気通信利用役務以外の役務提供にある場合、年間費用を提供割合で按分する必要はないとされています。ただし、明確に別個の契約や料金区分がある場合は個別判断が必要です。
5. リバースチャージ方式の確認を漏らす
事業者向け電気通信利用役務の提供に該当する場合には、リバースチャージ方式の対象になる可能性があります。国内事業者側で申告納税義務が生じるか確認しましょう。
海外コンサル料の消費税チェックリスト
海外コンサル料を支払う場合は、次の順番で確認しましょう。
・海外コンサルタントが提供するサービス内容は何か
・Web会議やメールはサービス本体か、単なる伝達手段か
・契約の主目的はオンライン相談か、現地調査・情報収集か
・電気通信利用役務の提供に該当するか
・通常の役務提供として提供場所を判定すべきか
・提供を受ける者の所在地は国内か国外か
・国内取引に該当するか
・事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するか
・リバースチャージ方式の対象か
・仕入税額控除の要件を満たすか
・契約書や報告書など、判断根拠資料を保存しているかこのチェックリストを使うと、海外コンサル料の消費税処理を検討しやすくなります。
特に、年間契約で複数のサービスが含まれる場合は、契約書を見直し、主目的が分かるように整理しておくことをおすすめします。
まとめ
海外コンサルタントに年間契約でコンサルティング料を支払う場合、消費税の処理では、まず内外判定を行う必要があります。
役務提供の内外判定は、原則として、その役務の提供が行なわれた場所で判断します。
ただし、インターネット等を介して行われる電気通信利用役務の提供に該当する場合には、例外的に、役務の提供を受ける者の所在地で内外判定を行ないます。
そのため、日本企業が海外事業者から電気通信利用役務の提供を受ける場合には、国内取引として消費税の課税関係が生じる可能性があります。
もっとも、Web会議システムやメールを使っているからといって、すべてが電気通信利用役務の提供になるわけではありません。
海外コンサルタントが現地で情報収集や調査分析を行ない、その結果をWeb会議で報告しているような場合、Web会議は他の役務提供の伝達手段にすぎず、電気通信利用役務の提供には該当しないことがあります。
年間契約の中に、Web会議上で相談した事案に即時回答するサービスと、現地情報を収集してWeb会議上で報告するサービスが含まれている場合でも、契約全体の主目的が現地情報等の収集であれば、年間コンサル料全体が電気通信利用役務の提供には該当しないとされています。この場合、年間費用をサービスごとの提供割合で按分する必要はありません。
一方、契約の主目的がオンライン上での相談対応、データ提供、クラウド上の情報提供などである場合には、電気通信利用役務の提供に該当する可能性があります。
その場合、提供を受ける者の所在地により内外判定を行い、国内事業者が国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けるときは、リバースチャージ方式の対象になるかも確認する必要があります。
海外コンサル料の消費税処理では、契約書の名称やWeb会議の有無だけで判断せず、契約内容の主目的、実際の役務提供の内容、報告方法、料金区分、保存資料を確認しましょう。




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