インボイス経過措置は2026年10月1日から70%控除へ|短期前払費用を使う場合の注意点
- 安田 亮
- 12 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
インボイス制度では、原則として、免税事業者などインボイス発行事業者以外の者から行なった課税仕入れについて、仕入税額控除を受けることはできません。
もっとも、制度開始直後の急激な負担増を避けるため、一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。
令和8年度税制改正により、この経過措置の控除割合が見直され、2026年10月1日からは、現在の80%控除から70%控除へ引き下げられます。
本記事では、公認会計士の視点から、インボイス経過措置の控除割合の変更、2026年10月1日をまたぐ取引の取扱い、短期前払費用を適用する場合の実務上の注意点を解説します。
1. インボイス経過措置とは
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書発行事業者が発行するインボイスの保存が必要です。
そのため、免税事業者や適格請求書発行事業者ではない事業者からの課税仕入れについては、本来、仕入税額控除を行なうことができません。
ただし、制度開始後の一定期間については、免税事業者等からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。
この経過措置は、免税事業者との取引が多い事業者にとって重要な制度です。外注費、業務委託費、地代家賃、保守料、修繕費、士業報酬など、取引先がインボイス発行事業者でない場合には、消費税の納税額に直接影響します。
2. 控除割合は2026年10月1日から70%へ
令和8年度税制改正により、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の控除割合は、段階的に引き下げられることになりました。
控除割合は次のとおりです。
期間 | 控除できる割合 |
2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
2026年10月1日〜2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
2028年10月1日〜2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
2030年10月1日〜2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
つまり、2026年10月1日以後は、同じ免税事業者から同じ金額の課税仕入れを行なったとしても、控除できる消費税額が少なくなります。
たとえば、免税事業者から税抜100万円相当の課税仕入れを行った場合、消費税相当額が10万円であれば、2026年9月30日までは8万円相当を控除できますが、2026年10月1日以後は7万円相当の控除となります。
3. 2026年10月1日をまたぐ取引はどう判断するか
実務で悩みやすいのが、2026年10月1日をまたぐ取引です。
たとえば、免税事業者である保守業者に対して、1年分の保守料金を前払いしているケースを考えます。契約期間が2026年6月から2027年5月までの場合、契約期間の途中で控除割合が80%から70%に変わります。
この場合、すべて80%控除でよいのか、それとも2026年10月以後の部分は70%控除になるのかが問題になります。
結論としては、短期前払費用として処理しているかどうかによって取扱いが変わります。
4. 短期前払費用として処理する場合
法人税では、前払費用のうち、支払日から1年以内に役務提供を受けるものについて、一定の要件を満たす場合には、継続適用を前提に、支払日の属する事業年度の損金に算入することが認められています。これが、いわゆる短期前払費用の取扱いです。
消費税でも、短期前払費用の取扱いを適用する前払費用に係る課税仕入れについては、支出日の属する課税期間に行なったものとして取り扱われます。
そのため、たとえば3月決算法人が2026年6月1日に、2026年6月から2027年5月までの1年間分の保守料金を免税事業者に支払い、法人税・消費税ともに短期前払費用として処理している場合には、支出日である2026年6月1日時点の控除割合を適用できます。
この場合、支出日は2026年10月1日前であるため、1年分の保守料金全額について、仕入税額相当額の80%控除を適用できることになります。
5. 短期前払費用として処理していない場合
一方、短期前払費用として処理していない場合には、課税仕入れの時期に基づいて判断します。
役務提供を受ける取引では、原則として、課税仕入れの時期は役務提供が完了した日です。月ごとに保守サービスが完了する契約であれば、各月の役務提供完了時点で課税仕入れを認識することになります。
先ほどと同じく、3月決算法人が2026年6月1日に、2026年6月から2027年5月までの1年間分の保守料金を支払ったケースでも、短期前払費用として処理していない場合には、次のように控除割合を分けて考えます。
2026年6月〜2026年9月分:80%控除
2026年10月〜2027年5月分:70%控除
つまり、支払日が2026年10月1日前であっても、短期前払費用として処理していなければ、2026年10月以後に役務提供が完了する部分については、70%控除となる可能性があります。
6. 実務上の注意点
(1)支払日だけで判断しない
インボイス経過措置の控除割合は、単に「いつ支払ったか」だけで判断するわけではありません。
短期前払費用として処理している場合には支出日の控除割合を適用できますが、そうでない場合には、役務提供の完了時期に応じて控除割合を判定する必要があります。
(2)短期前払費用の要件を確認する
短期前払費用として処理するには、法人税上の要件を満たしている必要があります。代表的には、支払日から1年以内に役務提供を受けること、継続して同じ処理をしていることなどがポイントになります。
単に「前払いしているから80%控除にできる」というわけではないため、契約内容、支払条件、役務提供期間、過年度からの会計処理を確認する必要があります。
(3)免税事業者との継続契約を洗い出す
2026年10月1日をまたぐ契約では、控除割合の変更により消費税負担が変わります。
特に、次のような継続契約は確認が必要です。
保守点検契約
システム利用料
業務委託契約
顧問契約
清掃・警備契約
賃貸借契約
メンテナンス契約
取引先がインボイス発行事業者かどうか、契約期間が2026年10月1日をまたぐか、短期前払費用として処理しているかを整理しておきましょう。
(4)会計処理と消費税処理を一致させる
短期前払費用の取扱いは、法人税と消費税の処理に関係します。会計上は前払費用として資産計上しているのに、消費税だけ支出時に全額控除するなど、処理が不整合になると、税務調査で確認されやすくなります。
実務では、経理処理、消費税区分、インボイス経過措置の控除割合を、システム上も含めて整合させることが重要です。
7. 企業が今から準備すべきこと
2026年10月1日以後、免税事業者等からの課税仕入れに係る控除割合は70%に下がります。控除割合の変更は、消費税の納税額だけでなく、取引先との価格交渉や契約更新にも影響する可能性があります。企業は、次の点を早めに確認しておくとよいでしょう。
免税事業者等との取引を一覧化する
2026年10月1日をまたぐ契約を抽出する
短期前払費用として処理している契約を確認する
控除割合80%・70%の区分を会計システムに反映する
契約更新時にインボイス登録状況を確認する
消費税負担増を予算・資金繰りに反映する
税務調査に備え、契約書・請求書・支払日・役務提供期間を保存する
8. 実務チェックリスト
インボイス経過措置の控除割合変更に備えて、以下を確認しておきましょう。
免税事業者等からの課税仕入れを把握しているか
取引先のインボイス登録状況を確認しているか
2026年10月1日をまたぐ取引を抽出しているか
短期前払費用として処理している契約を一覧化しているか
短期前払費用の要件を満たしているか
支出日基準で80%控除できる取引と、役務提供完了日基準で70%控除となる取引を区分しているか
会計システム・消費税コードを更新する準備ができているか
税務調査時に説明できる資料を保存しているか
まとめ
インボイス制度における免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は、2026年10月1日から控除割合が80%から70%へ引き下げられます。その後も、2028年10月1日から50%、2030年10月1日から30%へと段階的に縮小していきます。
2026年10月1日をまたぐ取引では、短期前払費用として処理しているかどうかが重要です。短期前払費用の取扱いを適用している場合には、支出日の控除割合を適用できるため、2026年10月1日前に支払った1年分の保守料金等について、全額80%控除を適用できるケースがあります。
一方、短期前払費用として処理していない場合には、役務提供の完了時期に応じて、2026年9月までの部分は80%、2026年10月以後の部分は70%と区分する必要があります。
企業は、免税事業者等との継続契約を早めに洗い出し、短期前払費用の適用有無、契約期間、支払日、役務提供完了日を確認しておくことが重要です。控除割合の変更は消費税の納税額に直結するため、決算・申告前に慌てないよう、会計システムや社内チェック体制も含めて準備を進めましょう。



