オフィス移転時の「廃止の日」に注意|地方法人二税・事業所税で日付がズレるケースを解説
- 安田 亮
- 3 日前
- 読了時間: 7分
おはようございます!代表の安田です。
働き方の多様化や人材確保、賃料見直しなどを背景に、オフィスを移転する企業が増えています。テレワークの定着により、広いオフィスからコンパクトな拠点へ移る会社もあれば、採用強化のためにアクセスのよい場所へ本社を移す会社もあります。
オフィス移転というと、登記、賃貸借契約、社会保険、税務署への異動届などに目が向きがちです。しかし、地方税実務ではもう一つ重要な論点があります。それが、事務所又は事業所、いわゆる「事務所等」の廃止の日です。
事業年度の途中でオフィスを移転する場合、地方税法上は事務所等を期中廃止したものとして、法人事業税・法人住民税、いわゆる地方法人二税や、事業所税の計算に影響します。
特に、東京都23区など一部の自治体では、地方法人二税と事業所税で「廃止の日」が同じ日にならず、ズレが生じるケースがあるとされています。
本日は、オフィス移転時に見落としやすい「廃止の日」の考え方と、実務上の注意点を整理します。
地方法人二税・事業所税とは?
まず、今回の話に関係する税目を簡単に整理します。
地方法人二税とは、一般に法人事業税と法人住民税を指します。法人事業税は都道府県、法人住民税は都道府県および市町村が課税主体となります。
一方、事業所税は、政令指定都市や人口30万人以上の一定の都市などで課される地方税です。事業所税には、事業所床面積を基礎とする資産割と、従業者給与総額を基礎とする従業者割があります。
「事務所等」とは何か
地方税でいう「事務所等」とは、単に会社が借りている場所をすべて指すわけではありません。資料では、事務所等に該当するかどうかは、いわゆる3要件で判定するとされています。
具体的には、次の3つです。
人的設備要件:人が配置されている場所であること
物的設備要件:事業に必要な設備がある場所であること
事業継続要件:継続して事業が行なわれる場所であること
期中移転でなぜ「廃止の日」が重要なのか
オフィスを期中で移転した場合、地方税の計算では、旧オフィスをいつまで事務所等として扱うかが問題になります。この日付が、「廃止の日」です。
事務所等を期中廃止すると、地方法人二税の分割基準や、事業所税の資産割に係る事業所床面積などの計算に影響します。これらは、原則として事務所等の「廃止の日」を基準に按分計算するためです。
つまり、廃止の日が8月なのか12月なのかによって、地方税の税額計算が変わる可能性があります。オフィス移転の税務では、この日付管理が意外と重要です。
「廃止の日」の基本的な考え方
「廃止の日」について、一般的には事務所等の3要件のうち、1つでも要件を満たさなくなった日を指します。
たとえば、従業員が退去し、事業活動が行なわれなくなった日には、人的設備要件や事業継続要件を満たさなくなると考えられます。この考え方に立てば、地方法人二税と事業所税で事務所等の範囲は同じとされているため、基本的には両税目の「廃止の日」も同じになるように見えます。
しかし、実務では必ずしもそうならないケースがあります。
なぜ地方法人二税と事業所税で日付がズレるのか
ポイントは、具体的な「廃止の日」の判断が、各自治体に委ねられていることです。
地方税法や地方税の取扱通知では、具体的にどの時点を「廃止の日」とするかまでは明示されていません。そのため、実務上の判断は各自治体に委ねられているとされています。
このため、同じオフィス移転でも、
地方法人二税では退去日を基準に考える
事業所税では賃貸借契約終了日を基準に考える
といったように、税目ごとに扱いがズレるケースがあります。
東京都23区では事業所税の「廃止の日」に注意
東京都23区では、事業所税における「廃止の日」について、賃借等の場合、実際の営業終了日ではなく、原則として賃貸借契約期間の終了日とする取扱いがあるとされています。
これは、事業所税が事業活動に対して一定の外形標準により課される性質を持つためです。事業所税は収益を上げているかどうかにかかわらず課されることから、賃貸借契約期間中も3要件を満たすと判断するようだと説明されています。
この取扱いは、実務上かなり重要です。従業員がすでに退去し、営業を終了していても、賃貸借契約が残っている場合には、事業所税ではまだ廃止していないと判断される可能性があります。
具体例:8月退去でも事業所税は12月廃止になるケース
3月決算法人が東京都23区内の本社を移転するケースを考えてみましょう。前提は次のとおりです。
旧本社は東京都23区内の賃貸オフィス
賃貸借契約終了日は12月31日
従業員等は8月10日に旧本社から退去
8月11日から12月5日まで旧本社の原状回復工事を実施
この場合、地方法人二税における「廃止の日」は、退去日の翌日である8月11日となることが一般的です。一方、事業所税における「廃止の日」は、原則として旧本社の賃貸借契約終了日である12月31日となるとされています。
東京都以外でも同様の取扱いがある
このような取扱いは、東京都23区だけの話ではありません。
東京都以外でも、さいたま市や熊本市などにおいて、事業所税における「廃止の日」を賃貸借契約期間の終了日などとするケースがあるとされています。
つまり、事業所税の課税団体に所在するオフィスを移転する場合には、自治体ごとの取扱いを確認する必要があります。「前の自治体では退去日で処理できたから、今回も同じ」と考えるのは危険です。
実務で誤りやすいポイント
このテーマで特に誤りやすいのは、すべての地方税で同じ廃止日を使ってしまうことです。地方法人二税では退去日を基準にしていても、事業所税では賃貸借契約終了日を基準にすべき自治体があります。
また、原状回復工事期間の扱いも注意が必要です。従業員がいなくなり、事業活動が停止していても、賃貸借契約が継続している限り、事業所税上はまだ事務所等として扱われる可能性があります。
さらに、オフィス移転の担当部署が総務部門で、税務申告担当者に契約終了日や退去日の情報が正確に共有されていないケースもあります。この場合、地方税申告で誤った日付を使ってしまうリスクがあります。
オフィス移転時に確認すべき資料
期中移転がある場合には、少なくとも次の資料を確認しておくと安心です。
旧オフィスの賃貸借契約書
解約通知書や契約終了日の確認資料
実際の退去日が分かる資料
原状回復工事の期間が分かる資料
新オフィスの使用開始日が分かる資料
自治体への異動届・廃止届関係の控え
地方法人二税と事業所税で廃止日が異なる可能性があるため、退去日・営業終了日・契約終了日を分けて管理しておくことが重要です。
自治体への事前確認が重要
いずれの自治体であっても、具体的な「廃止の日」は個別事情に即して判断するため、事前に自治体の担当窓口等へ問い合わせるとよいとされています。
これは実務上とても大切です。地方税は自治体ごとの運用差が出やすく、特に事業所税は課税団体も限られているため、自治体ごとの手引や窓口確認が欠かせません。
オフィス移転が決まった段階で、早めに確認しておくことで、申告時の手戻りや税額計算の誤りを防ぎやすくなります。
まとめ
期中にオフィスを移転する場合、地方法人二税や事業所税では、旧オフィスの「廃止の日」が税額計算に影響します。
事務所等に該当するかどうかは、人的設備要件、物的設備要件、事業継続要件の3要件で判断され、一般的にはこのうち1つでも満たさなくなった日が「廃止の日」と考えられます。
しかし、具体的な判断は自治体に委ねられており、東京都23区などでは、事業所税の「廃止の日」を、実際の営業終了日ではなく、原則として賃貸借契約期間の終了日とする取扱いがあります。
オフィス移転時の地方税対応では、退去日だけで判断しないことが重要です。特に事業所税の対象となる自治体では、賃貸借契約終了日や原状回復期間も含めて確認し、必要に応じて自治体へ事前照会しておきましょう。




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