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圧縮記帳をした固定資産の償却資産税はどう申告する?取得価額の考え方を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 1 時間前
  • 読了時間: 11分

こんにちは!代表の安田です。


国や地方公共団体から補助金を受けて、機械装置、器具備品、設備などを取得するケースがあります。


たとえば、ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金、省エネ補助金、自治体独自の設備投資補助金などを活用して、事業用資産を購入する場合です。


このような補助金を固定資産の取得に充てた場合、法人税では「圧縮記帳」を適用できることがあります。圧縮記帳を使うと、補助金収入に対する課税を将来に繰り延べることができ、法人税の負担を平準化する効果があります。


一方で、実務上よく間違いやすいのが、償却資産税の申告です。

  • 圧縮記帳をした後の帳簿価額で償却資産税を申告してよいのか

  • 圧縮後の金額が40万円未満なら、償却資産税の申告対象外になるのか

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額損金にした資産は、償却資産税も不要なのか


このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、償却資産税では、圧縮記帳後の金額ではなく、圧縮記帳前の取得価額を基準に申告する必要があります。


本日は、圧縮記帳を適用した固定資産について、法人税と償却資産税で取得価額の考え方がどう異なるのかを解説します。


圧縮記帳とは

圧縮記帳とは、国庫補助金などを使って固定資産を取得した場合に、その補助金に対応する部分について、固定資産の帳簿価額を圧縮する会計・税務処理です。


たとえば、100万円の機械装置を取得し、その取得にあたり40万円の補助金を受けたとします。通常であれば、補助金40万円は収益として計上されます。一方で、機械装置100万円は減価償却を通じて複数年にわたり費用化されます。


このままだと、補助金収入だけが先に課税対象となり、資産の減価償却費は後年度に分散されるため、一時的に税負担が重くなることがあります。


そこで、一定の要件を満たす場合には、補助金相当額について圧縮記帳を行い、固定資産の取得価額を圧縮することで、補助金収入に対する課税を将来に繰り延べることができます。

圧縮記帳は、補助金を受けた事業者にとって重要な税務処理ですが、法人税上の処理と地方税である償却資産税の申告では、考え方が異なる点に注意が必要です。


償却資産税とは

償却資産税とは、固定資産税の一種で、事業のために使用する一定の償却資産に対して課される地方税です。


土地や家屋は固定資産税の対象になりますが、事業で使用する機械装置、工具、器具備品、構築物、看板、厨房設備、事務機器、医療機器などは、償却資産として申告対象になることがあります。


償却資産税は、毎年1月1日現在に所有している償却資産について、資産の所在する市区町村へ申告します。


一般的には、毎年1月31日までに、償却資産申告書を提出する必要があります。

申告する内容には、資産の種類、名称、数量、取得年月、取得価額、耐用年数などが含まれます。

法人税の減価償却資産台帳をもとに申告することが多いですが、法人税の処理と償却資産税の取扱いが必ずしも一致するわけではありません。


圧縮記帳後の金額ではなく、圧縮前の取得価額で申告する

補助金を使って固定資産を取得し、法人税で圧縮記帳を適用した場合でも、償却資産税の申告では、圧縮記帳後の金額ではなく、圧縮記帳前の取得価額を基準にします。


ここが最も重要なポイントです。

たとえば、取得価額50万円の機械を購入し、補助金を受けたため圧縮記帳を行い、法人税上の帳簿価額が20万円になったとします。


この場合、法人税の減価償却では、圧縮後の20万円を基に処理することがあります。

しかし、償却資産税では、20万円ではなく、圧縮記帳前の取得価額である50万円を基準に申告します。


「法人税の帳簿価額が20万円だから、償却資産税も20万円でよい」と考えてしまうと、償却資産税の申告漏れや過少申告につながる可能性があります。


圧縮後40万円未満でも償却資産税の申告対象になることがある

中小企業者等が40万円未満の減価償却資産を取得した場合、一定要件のもとで、その取得価額を全額損金算入できる特例があります。


ここで注意したいのが、圧縮記帳後の金額が40万円未満になった場合です。

たとえば、取得価額50万円の固定資産について、補助金を受けて圧縮記帳を行ない、圧縮後の金額が23万円になったとします。


法人税上は、圧縮後の金額が40万円未満であれば、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を検討できる場合があります。


しかし、償却資産税では、圧縮後の23万円ではなく、圧縮前の取得価額50万円を基準に考えます。そのため、法人税で全額損金算入したとしても、償却資産税では申告対象になることがあります。


補助金を使った設備投資では、この点を見落としやすいため注意が必要です。


具体例:50万円の資産を補助金で取得した場合

具体例で確認してみましょう。

前提は次のとおりです。

  • 固定資産の取得価額:50万円

  • 補助金を受けて圧縮記帳を適用

  • 圧縮記帳後の金額:20万円

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用

  • 法人税上は20万円を全額損金算入


この場合、法人税では、圧縮後の金額20万円について、少額減価償却資産の特例により全額損金算入できることがあります。


しかし、償却資産税では、圧縮記帳後の20万円ではなく、圧縮記帳前の取得価額50万円を基準に申告します。


つまり、法人税では全額損金算入して固定資産台帳上の残高がゼロに近い状態になっていたとしても、償却資産税の申告対象から自動的に外れるわけではありません。

償却資産税の申告書には、取得価額50万円の資産として記載する必要があります。


なぜ償却資産税では圧縮前の金額を使うのか

償却資産税では、事業の用に供することができる償却資産について、取得価額を基に評価額を計算します。


一方、圧縮記帳は、法人税において補助金収入に対する課税を繰り延べるための制度です。

つまり、圧縮記帳は法人税の所得計算上の制度であり、償却資産税の課税標準を減らすための制度ではありません。


補助金を使って取得した資産であっても、実際に取得した資産の価値や事業用資産としての存在が減るわけではありません。


そのため、償却資産税では、圧縮後の帳簿価額ではなく、実際の取得価額をベースに申告することになります。


このように、同じ固定資産であっても、法人税と償却資産税では制度趣旨が異なるため、申告上の金額も異なる場合があります。


中小企業者等の少額減価償却資産の特例だけを使った場合も注意

償却資産税で注意すべきなのは、圧縮記帳をした資産だけではありません。


圧縮記帳をしていない場合でも、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用して全額損金算入した資産は、償却資産税の申告対象になることがあります。


地方税法上、いわゆる少額の償却資産として償却資産税の対象から除かれるものは、主に法人税法上の「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度」や「一括償却資産の損金算入制度」の適用を受けた資産です。


一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例により全額損金算入した資産は、償却資産税の対象外となる少額資産には含まれません。


そのため、たとえば25万円のパソコンや機械装置について、中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額損金算入した場合でも、償却資産税では申告対象になることがあります。

「法人税で一括損金にしたから償却資産税も不要」と考えないよう注意しましょう。


償却資産税で申告不要となる少額資産

償却資産税では、すべての少額資産が申告対象になるわけではありません。

一定の少額資産については、償却資産税の申告対象から除かれます。

代表的なものは、次のような資産です。

  • 取得価額10万円未満で、法人税または所得税で一時に損金算入または必要経費算入した資産

  • 使用可能期間が1年未満の資産

  • 取得価額20万円未満で、一括償却資産として3年間で均等償却する資産

これらは、地方税法上の少額の償却資産として、償却資産税の対象から除かれる場合があります。


一方で、中小企業者等の少額減価償却資産の特例、いわゆる40万円未満の即時償却特例を使った資産は、償却資産税では申告対象になる点に注意が必要です。


法人税の処理方法によって、償却資産税の申告対象になるかどうかが変わるため、取得時にどの制度を適用するかを検討することが大切です。


10万円未満・20万円未満・40万円未満の違い

少額資産の処理では、10万円未満、20万円未満、40万円未満という基準が出てきます。

これらは似ていますが、法人税と償却資産税で取扱いが異なります。


まず、取得価額10万円未満の減価償却資産や使用可能期間1年未満の資産は、法人税上、一時に損金算入できる場合があります。この場合、償却資産税でも申告対象外となることがあります。


次に、取得価額20万円未満の資産について、一括償却資産として3年間で均等償却する方法を選択した場合、償却資産税では申告対象外となります。


一方、中小企業者等が取得価額40万円未満の資産について少額減価償却資産の特例を使って全額損金算入した場合、法人税上は即時償却できますが、償却資産税では申告対象になります。


つまり、法人税の節税だけを考えると40万円未満の特例が有利に見える場合でも、償却資産税を含めたトータルの税負担では、一括償却資産を選ぶ方が有利になるケースもあります。


補助金を使った資産は固定資産台帳で管理を分ける

補助金を使って取得した固定資産については、法人税、消費税、償却資産税でそれぞれ確認すべきポイントがあります。特に、圧縮記帳を適用した資産については、次の情報を固定資産台帳や補助資料で管理しておくとよいでしょう。

  • 資産の名称

  • 取得年月日

  • 事業の用に供した日

  • 実際の取得価額

  • 補助金の名称

  • 補助金の交付額

  • 圧縮記帳の適用額

  • 圧縮記帳後の帳簿価額

  • 法人税上の償却方法

  • 償却資産税申告上の取得価額

  • 資産の所在場所

  • 耐用年数


会計ソフトや固定資産台帳では、圧縮記帳後の金額だけが表示されることがあります。

しかし、償却資産税では圧縮前の取得価額が必要になるため、圧縮前の金額を別途確認できるようにしておくことが重要です。


補助金収入と消費税の処理も確認する

補助金で固定資産を取得した場合には、償却資産税だけでなく、消費税の取扱いにも注意が必要です。


一般に、国や地方公共団体から交付される補助金は、消費税の課税売上には該当しない不課税取引として扱われることが多いです。


一方で、補助金を使って取得した固定資産に係る消費税について、仕入税額控除の対象になるかどうかは、課税売上割合や個別対応方式・一括比例配分方式などの消費税計算に影響することがあります。


また、補助金収入が特定収入に該当する法人では、仕入税額控除の調整が必要になる場合もあります。補助金を受けて設備投資を行なう場合は、法人税の圧縮記帳、消費税の仕入税額控除、償却資産税の申告をセットで確認することが大切です。


償却資産申告でよくあるミス

圧縮記帳や少額資産に関する償却資産税の申告では、次のようなミスが起こりやすいです。

  • 圧縮記帳後の帳簿価額で申告してしまう

  • 圧縮後40万円未満になったため申告対象外と誤解する

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額損金にしたため申告しない

  • 10万円未満、20万円未満、40万円未満の違いを混同する

  • 補助金取得資産の圧縮前取得価額を台帳に残していない

  • 固定資産台帳から償却資産申告書へ転記する際に、税務上の取得価額を誤る

  • 資産の所在する市区町村への申告を忘れる


特に、会計ソフトの固定資産台帳をそのまま償却資産申告書に転記している場合、圧縮記帳後の金額で申告してしまう可能性があります。


償却資産税の申告では、法人税の帳簿価額と異なる金額を使う場面があることを意識しておきましょう。


実務上のチェックポイント

圧縮記帳を適用した資産や少額資産については、次の点を確認しましょう。

  • 補助金を使って取得した固定資産があるか

  • 圧縮記帳を適用しているか

  • 圧縮前の取得価額を把握しているか

  • 圧縮後の金額だけで償却資産申告をしていないか

  • 中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用しているか

  • 10万円未満の少額資産か、20万円未満の一括償却資産か、40万円未満の特例資産かを区分しているか

  • 償却資産税の申告対象外となる資産かどうかを確認しているか

  • 資産の所在する市区町村を確認しているか

  • 固定資産台帳に償却資産税申告用の取得価額を残しているか

  • 1月1日時点で所有している資産を確認しているか


償却資産税は、法人税申告とは別に、毎年1月に申告作業が必要です。

決算のタイミングだけでなく、年明けの償却資産申告に備えて、固定資産台帳を整理しておきましょう。


まとめ

国や地方公共団体から補助金を受けて固定資産を取得した場合、法人税では圧縮記帳を適用できることがあります。圧縮記帳を行なうと、法人税上の帳簿価額は圧縮後の金額になります。


しかし、償却資産税では、圧縮記帳後の金額ではなく、圧縮記帳前の取得価額をベースに申告する必要があります。


たとえば、取得価額50万円の資産について圧縮記帳後の金額が20万円となり、中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額損金算入した場合でも、償却資産税では圧縮前の50万円を基準に申告します。


また、中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額損金算入した資産は、償却資産税では申告対象になることがあります。償却資産税で申告対象外となる少額資産は、主に10万円未満の少額減価償却資産や20万円未満の一括償却資産であり、40万円未満の中小企業者等の特例とは取扱いが異なります。


補助金を活用した設備投資では、法人税の圧縮記帳だけでなく、償却資産税の申告金額にも注意が必要です。


圧縮前の取得価額、補助金額、圧縮記帳額、圧縮後帳簿価額、償却資産税申告用の取得価額を固定資産台帳で管理し、申告漏れや過少申告を防ぎましょう。


圧縮記帳や償却資産税の申告で迷う場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。

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