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印紙を貼った契約書はスキャナ保存後に廃棄できる?電子帳簿保存法と印紙税の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 7月9日
  • 読了時間: 14分

こんにちは!代表の安田です。


電子帳簿保存法の改正により、紙で受け取った契約書、領収書、請求書などをスキャンして電子保存する「スキャナ保存」は、以前よりも利用しやすくなりました。


特に、令和4年1月1日以後は、スキャナ保存を始めるための税務署長の事前承認制度が廃止され、要件を満たせば事前承認なしでスキャナ保存を行えるようになっています。

そのため、契約書や領収書を紙で保管せず、電子データで一元管理したいという会社も増えています。


ここで実務上よく出る疑問が、「収入印紙を貼った契約書も、スキャン後に廃棄してよいのか」という点です。


印紙を貼った契約書は、いかにも原本を残しておかなければならないように感じます。

しかし、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たしている場合、印紙を貼付した契約書等であっても、スキャン後に紙の原本を廃棄することは可能です。


印紙税法には、印紙を貼った文書そのものを保存し続けなければならないという保存義務の規定はありません。


ただし、注意点があります。

印紙を誤って貼った、または印紙税を納めすぎた場合に、印紙税の過誤納金の還付を受けるには、原則として印紙を貼った紙の契約書等そのものが必要です。


スキャナ保存後に紙の契約書を廃棄してしまうと、スキャンデータだけでは印紙税の還付を受けられない可能性があります。


本日は、スキャナ保存制度の基本、印紙を貼った契約書を廃棄できる理由、印紙税の過誤納還付を受ける際の注意点、電子契約との違い、実務上の保存ルールについて解説します。


スキャナ保存制度とは

スキャナ保存制度とは、取引先から紙で受け取った契約書、領収書、請求書、納品書などの国税関係書類について、一定の要件を満たすことで、紙の原本に代えてスキャンデータで保存できる制度です。たとえば、次のような書類が対象になります。

・契約書
・領収書
・請求書
・納品書
・見積書
・注文書
・検収書

スキャナ保存を利用すれば、紙の書類をファイルに綴じて保管する必要が少なくなり、書類検索や共有もしやすくなります。


経理担当者が在宅勤務をする場合や、複数拠点で書類を管理する場合にも便利です。

ただし、単にスマートフォンで撮影して保存すればよいわけではありません。


電子帳簿保存法で定められた要件を満たす必要があります。


令和4年から事前承認は不要に

以前のスキャナ保存制度では、税務署長の事前承認が必要でした。


そのため、導入までのハードルが高く、利用をためらう会社も多かったと思います。

しかし、令和4年1月1日以後、スキャナ保存制度は大きく見直され、税務署長の事前承認制度が廃止されました。


現在は、制度要件を満たして運用すれば、事前承認を受けなくてもスキャナ保存を開始できます。これにより、紙の契約書や領収書を電子化して管理する実務が、以前よりも導入しやすくなりました。


もっとも、事前承認が不要になったからといって、要件そのものがなくなったわけではありません。


スキャナ保存を行なう場合は、真実性の確保、可視性の確保、検索機能、訂正削除履歴の管理など、制度上求められる保存要件を確認しておく必要があります。


印紙を貼った契約書もスキャナ保存後に廃棄できる

スキャナ保存制度を検討するときに迷いやすいのが、収入印紙を貼った契約書や領収書の扱いです。


結論として、電子帳簿保存法の要件を満たしてスキャナ保存を行なう場合、印紙を貼った契約書等であっても、紙の原本を廃棄することは可能です。


印紙を貼った書類だからといって、印紙税法上、紙の原本を保存し続ける義務があるわけではありません。


印紙税法で問題になるのは、課税文書を作成した場合に、必要な印紙を貼付し、消印等により印紙税を納付しているかどうかです。


印紙を貼付して印紙税を納付した後、その契約書等の保存義務は、印紙税法ではなく、法人税法や電子帳簿保存法などの別のルールにより判断します。


したがって、契約書が電子帳簿保存法上のスキャナ保存の対象書類であり、保存要件を満たしているのであれば、印紙の有無で紙原本の廃棄可否を分ける必要はありません。


印紙の有無でスキャン対応を変える必要はない

実務では、次のような運用を考える会社があります。

・印紙なしの契約書はスキャン後に廃棄する
・印紙ありの契約書は紙で保存し続ける

もちろん、社内管理上あえて紙を残すことは可能です。


しかし、電子帳簿保存法のスキャナ保存の観点からは、印紙の有無だけを理由に運用を分ける必要はありません。


印紙を貼っていない契約書と同じように、印紙を貼った契約書も、スキャンデータを保存することで紙原本を廃棄できます。


また、印紙税の納付方法は、収入印紙の貼付だけではありません。

税印による納付など、他の方法が用いられることもあります。

いずれの納付方法であっても、スキャナ保存の対象書類であり、電子帳簿保存法の要件を満たしている場合には、紙の書類を廃棄できるという考え方になります。


スキャン後すぐに廃棄してよいのか

電子帳簿保存法のスキャナ保存では、紙の書類をスキャンした後、その画像データと紙の原本を確認し、正しく読み取られていることを確認したうえで、原本を廃棄することができます。ただし、実務上は、いきなり廃棄するのではなく、次のような確認を行なうべきです。

・書類全体が欠けずに読み取られているか
・印紙部分も含めて明瞭に読み取られているか
・契約当事者、契約日、金額などが判読できるか
・検索項目が正しく入力されているか
・タイムスタンプや訂正削除履歴など必要な要件を満たしているか
・保存先システムで閲覧・検索できるか

特に契約書は、将来の紛争対応、取引条件の確認、税務調査、監査などで確認する機会があります。


スキャン画像が不鮮明だったり、一部ページが欠落していたりすると、紙原本を廃棄した後に困ることになります。廃棄前のチェック体制を整えておくことが重要です。


印紙税の過誤納還付には紙原本が必要

印紙を貼った契約書をスキャン後に廃棄できるとしても、注意すべき大きな問題があります。それが、印紙税の過誤納還付です。


印紙税では、誤って印紙を貼ってしまった場合や、本来必要な金額を超えて印紙を貼ってしまった場合、一定の手続きにより過誤納金の還付を受けられることがあります。

たとえば、次のようなケースです。

・本来は印紙税がかからない文書に印紙を貼ってしまった
・1万円の印紙で足りるのに2万円の印紙を貼ってしまった
・契約が成立していない文書に印紙を貼ってしまった
・電子契約と紙契約を混同して不要な印紙を貼ってしまった

このような場合、税務署に還付申請をすることになります。


しかし、印紙税の過誤納還付を受けるためには、過誤納となった事実を証するために必要な文書等を税務署に提示する必要があります。


この「必要な文書等」とは、通常、誤って印紙を貼った紙の契約書等そのものを指します。

スキャンデータは電磁的記録であり、紙の文書そのものではありません。


したがって、紙の契約書を廃棄してしまっている場合、スキャンデータだけでは印紙税の過誤納還付を受けられない可能性があります。


スキャナ保存後に廃棄すると還付を受けられないことがある

スキャナ保存制度上は、印紙を貼った契約書を廃棄できます。


しかし、廃棄してしまうと、後から印紙税の過誤納に気付いた場合でも、還付申請ができない、または還付を受けられない可能性があります。


これは実務上かなり重要です。

たとえば、契約書をスキャンして電子保存し、紙原本を廃棄した後に、次のようなことが判明したとします。

・契約内容から見て印紙税が不要だった
・貼付した印紙の金額が過大だった
・課税文書の号数判定を誤っていた

この場合でも、印紙を貼った紙の契約書そのものがなければ、税務署に過誤納の事実を確認してもらうことが難しくなります。


そのため、過誤納還付の可能性がある契約書については、すぐに廃棄せず、一定期間紙原本を残す運用も検討すべきです。


重要契約書は紙原本を残す選択肢もある

電子帳簿保存法上、スキャナ保存後に紙原本を廃棄できるとしても、すべての書類を必ず廃棄しなければならないわけではありません。

会社のリスク管理上、重要契約書については紙原本を残すという判断もあります。

たとえば、次のような書類です。

・高額な請負契約書
・不動産売買契約書
・不動産賃貸借契約書
・金銭消費貸借契約書
・M&A関連契約書
・長期継続取引契約書
・印紙税額が高額な契約書
・紛争リスクが高い契約書

これらの契約書は、税務だけでなく、法務・訴訟・金融機関対応・監査対応でも重要です。

スキャナ保存により税務上の保存要件を満たす場合でも、法務上の証拠管理や社内統制の観点から、紙原本を保管する価値があります。


特に、印紙税額が高額な契約書については、後日、印紙税の過誤納還付が問題になる可能性もあります。

「スキャナ保存できる」ことと「紙を廃棄すべき」ことは別問題として考えましょう。


電子契約には原則として印紙税がかからない

ここで、紙の契約書をスキャンする場合と、最初から電子契約を締結する場合の違いも押さえておきましょう。紙の契約書を作成した場合、その契約書が印紙税法上の課税文書に該当すれば、印紙税が課されます。


その紙契約書に印紙を貼ったうえで、後からスキャンして電子保存する場合、これはあくまで紙の課税文書を作成した後の保存方法の問題です。


一方、紙の文書を作成せず、電子データとして契約書を作成し、電子メールや電子契約サービスで相手方に送信する場合、印紙税の課税対象となる「文書」には該当しないため、原則として印紙税は課されません。つまり、次のように整理できます。

紙の契約書を作成する
→ 課税文書に該当すれば印紙税がかかる
→ スキャナ保存後に紙原本を廃棄できる場合がある

最初から電子契約で締結する
→ 原則として印紙税はかからない
→ 電子取引データとして保存する

電子化を進めるのであれば、紙契約書のスキャナ保存だけでなく、電子契約そのものの導入も検討対象になります。


ただし、電子契約を導入する場合には、電子取引データの保存要件、電子署名、契約相手の同意、社内承認フローなども整備する必要があります。


スキャナ保存と電子取引データ保存は別制度

契約書の電子化では、「スキャナ保存」と「電子取引データ保存」を混同しないことが重要です。スキャナ保存は、紙で受け取った書類や紙で作成した書類をスキャンして保存する制度です。


一方、電子取引データ保存は、電子メール、クラウドサービス、電子契約システムなどで授受した電子データを、そのまま電子保存する制度です。

整理すると、次のとおりです。

紙の契約書を受領・作成した
→ スキャンして保存するならスキャナ保存

電子契約サービスで契約した
→ 電子取引データ保存

PDFの請求書をメールで受け取った
→ 電子取引データ保存

紙の領収書をスマホで撮影した
→ スキャナ保存

紙の契約書をスキャンしたデータと、最初から電子でやり取りした契約書データでは、保存制度が異なります。


保存要件も異なるため、社内規程や運用マニュアルでは区別しておきましょう。


スキャナ保存で整備すべき社内ルール

スキャナ保存を適切に運用するには、社内ルールの整備が欠かせません。

特に、印紙を貼った契約書を廃棄する場合には、誰が、いつ、どのように確認し、廃棄を判断するのかを明確にしておく必要があります。

実務上は、次のようなルールを作るとよいでしょう。


1. 対象書類を決める

すべての紙書類をスキャナ保存するのか、一部書類だけを対象にするのかを決めます。

契約書、領収書、請求書など、書類の種類ごとに扱いを整理します。


2. 印紙税チェックを先に行なう

印紙を貼る必要があるか、金額は正しいかを確認してからスキャン・廃棄する運用にします。印紙税の判定に不安がある契約書は、紙原本をすぐに廃棄しない方が安全です。


3. スキャン品質を確認する

書類全体、印紙、消印、署名押印、金額、契約日などが明瞭に読み取れるか確認します。


4. 廃棄前の確認者を決める

スキャン担当者とは別の人が確認する、または一定金額以上の契約書は管理者が確認するなど、チェック体制を整えます。


5. 重要書類は紙保管する基準を設ける

高額契約、長期契約、印紙税額が大きい契約、紛争リスクの高い契約は紙原本を残すなど、例外ルールを設けます。


6. 廃棄記録を残す

いつ、誰が、どの書類をスキャンし、いつ紙原本を廃棄したかを記録しておくと、後日の確認がしやすくなります。


印紙税チェックの実務ポイント

スキャナ保存後に紙原本を廃棄すると、印紙税の過誤納還付が受けられない可能性があります。そのため、廃棄前の印紙税チェックが重要です。

次の点を確認しましょう。

・そもそも印紙税の課税文書に該当するか
・契約書の種類、号数判定は正しいか
・記載金額に応じた印紙税額は正しいか
・変更契約書や覚書に印紙税が必要か
・契約書の写しや副本に印紙税が必要か
・電子契約なのに誤って印紙を貼っていないか
・貼付した印紙に消印がされているか

特に、請負契約書、不動産譲渡契約書、金銭消費貸借契約書、継続的取引の基本契約書などは、印紙税額が大きくなることがあります。


判断に迷う場合は、廃棄前に税理士や税務署へ確認することをおすすめします。


税務調査で確認されやすいポイント

スキャナ保存を導入している会社では、税務調査で次の点が確認される可能性があります。

・電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たしているか
・紙原本を廃棄する前に適切な確認を行っているか
・検索機能が確保されているか
・訂正削除履歴が確認できるか
・スキャンデータが明瞭か
・契約書や領収書の内容が確認できるか
・印紙税の貼付・消印が適切か
・電子契約と紙契約の区分ができているか

印紙を貼った契約書については、スキャンデータ上で印紙や消印が確認できるかも重要です。スキャン時に印紙部分が切れていたり、消印が不鮮明だったりすると、後日説明に困る可能性があります。


よくある誤解

  • 印紙を貼った契約書は、必ず紙で保存しなければならない

誤りです。印紙税法には、印紙を貼った契約書等を保存し続けなければならないという保存義務の規定はありません。電子帳簿保存法の要件を満たしてスキャナ保存を行えば、印紙貼付の契約書等も廃棄できます。


  • 印紙を貼った契約書はスキャナ保存の対象外である

これも誤りです。スキャナ保存の対象となる契約書等であれば、印紙の貼付の有無によってスキャナ保存の可否を分ける必要はありません。


  • スキャンデータがあれば印紙税の還付も受けられる

注意が必要です。印紙税の過誤納還付を受けるには、原則として印紙を貼った紙の契約書等そのものが必要です。スキャンデータだけでは還付を受けられない可能性があります。


  • 電子契約を印刷して保存すると印紙税がかかる

印紙税は、課税文書を作成した場合に問題になります。最初から電子データとして作成・送信された契約書は、原則として印紙税の課税対象となる文書には該当しません。ただし、電子契約データを保存する場合は、電子取引データ保存の要件を確認する必要があります。


  • 事前承認が不要になったので、どんなスキャン保存でも認められる

事前承認制度は廃止されましたが、スキャナ保存の要件は残っています。保存要件を満たさない場合、税務上の保存書類として認められない可能性があります。


まとめ

電子帳簿保存法のスキャナ保存制度では、紙で受け取った契約書や領収書などを、一定の要件を満たして電子データで保存できます。


令和4年1月1日以後は、税務署長の事前承認を受けずにスキャナ保存を始められるようになり、紙書類の電子化は以前よりも進めやすくなりました。


印紙を貼った契約書等についても、電子帳簿保存法の要件を満たしてスキャナ保存を行なえば、紙の原本を廃棄することは可能です。印紙税法には、印紙を貼った契約書等を保存し続けなければならないという保存義務はありません。


ただし、印紙税の過誤納還付を受ける場合には注意が必要です。

誤って印紙を貼った場合や、印紙税を納めすぎた場合に還付を受けるには、原則として印紙を貼った紙の契約書等そのものが必要です。

スキャナ保存後に紙原本を廃棄してしまうと、スキャンデータだけでは印紙税の過誤納還付を受けられない可能性があります。


したがって、印紙貼付の契約書等をスキャナ保存する場合には、廃棄前に印紙税額や課税文書該当性を確認し、過誤納還付の可能性があるものや重要契約書については、紙原本を一定期間保存する運用も検討すべきです。


スキャナ保存は、紙の保管コスト削減や検索性向上に役立つ便利な制度です。

しかし、「廃棄できる」と「廃棄してよい」は必ずしも同じではありません。

電子帳簿保存法、印紙税、法務・証拠管理の観点を踏まえ、自社に合った保存・廃棄ルールを整備して運用しましょう。


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