グループ通算制度では親法人が一括納付できる?ダイレクト納付の仕組みと実務上の注意点を税理士が解説
- 安田 亮
- 5月31日
- 読了時間: 12分
こんにちは!代表の安田です。
令和4年4月1日以後開始事業年度から、従来の連結納税制度に代わり、グループ通算制度が始まっています。グループ通算制度は、100%グループ内の法人を対象に、損益通算など一定の調整を行なう制度です。
連結納税制度では、企業グループ全体を一つの納税単位として、親法人が法人税額等を申告・納付する仕組みでした。
一方、グループ通算制度では、原則として、通算グループ内の各法人がそれぞれ納税単位となり、各法人が個別に法人税額を計算し、申告・納付を行ないます。
ただし、実務上は、親法人がグループ内法人の申告・納付をまとめて管理したいケースが少なくありません。この点について、現在は、通算親法人が通算グループ内法人の法人税・地方法人税を、ダイレクト納付により一括納付できる仕組みが設けられています。
本日は、グループ通算制度における申告・納付の基本、親法人による一括申告・一括納付、ダイレクト納付の仕組み、実務上の注意点について解説します。
グループ通算制度とは
グループ通算制度とは、完全支配関係のある企業グループ内の各法人を納税単位としつつ、一定の損益通算や税額調整を行う法人税の制度です。
国税庁は、グループ通算制度について、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額を計算・申告し、その中で損益通算等の調整を行なう制度と説明しています。
従来の連結納税制度では、企業グループ全体を一つの納税単位として扱い、親法人がグループ全体の法人税申告を行なっていました。
これに対し、グループ通算制度では、各法人がそれぞれ納税義務者となる点が大きな違いです。
原則は各法人が個別に申告・納付する
グループ通算制度では、各通算法人が個別に法人税額を計算し、申告を行ないます。
つまり、通算親法人だけが申告するのではなく、通算子法人も、それぞれ自社の法人税申告書を提出することになります。
この点は、連結納税制度に慣れている会社ほど注意が必要です。
連結納税制度では、親法人がグループ全体を代表して申告・納付するイメージが強かったのに対し、グループ通算制度では、制度上の納税単位はあくまで各法人です。
ただし、実務上は、親法人がグループ内の税務計算を集約し、各子法人の申告内容を取りまとめることが多いでしょう。
通算法人は電子申告義務化の対象
グループ通算制度では、通算法人は電子申告義務化の対象とされています。
通算法人は、資本金の額等が1億円以下であるかどうかにかかわらず電子申告義務化の対象となっています。
通常、法人税の電子申告義務化は、資本金1億円超の大法人などが中心です。
しかし、グループ通算制度の適用を受ける通算法人については、資本金規模にかかわらず電子申告が必要になります。
そのため、通算子法人が中小法人であっても、グループ通算制度を適用する場合には、e-Taxによる申告体制を整えておく必要があります。
親法人が子法人の申告書を提出することも可能
グループ通算制度では、原則として各法人が個別に申告を行ないます。
しかし、実務上は、親法人が各子法人の申告書を取りまとめて提出できる仕組みがあり、子法人の法人税申告書について、親法人の電子署名によりe-Taxで提出できます。
つまり、グループ内の各法人がそれぞれ独自に電子申告作業を行なうのではなく、親法人側で申告実務を集約することが可能です。
これにより、グループ全体の税務管理を親法人で一元化しやすくなります。
ただし、申告書の提出主体や税額計算の単位は各法人であるため、各子法人の申告内容、別表、税額、納付額を正確に管理する必要があります。
ダイレクト納付とは
ダイレクト納付とは、e-Taxを利用した国税の電子納付方法の一つです。
事前に届出をした預貯金口座から、指定した納付日に国税を引き落として納付する仕組みです。
インターネットバンキングを利用しなくても、e-Tax上の操作により納付できるため、法人税・消費税・源泉所得税などの納付で利用している会社も多いでしょう。
グループ通算制度においても、このダイレクト納付が重要になります。
通算親法人がグループ内法人分を一括納付できる
現在、グループ通算制度では、通算親法人が通算グループ内法人の納付額を、ダイレクト納付により一括納付できる機能が設けられています。
国税庁は、ダイレクト納付(グループ通算用)について、通算親法人が通算グループ内法人の納付額をダイレクト納付で一括納付できる機能と説明しています。グループ内の各通算法人が一覧で表示され、各法人の法人税額・地方法人税額を入力することで、一括納付できる仕組みです。
親法人が子法人の所轄税務署へダイレクト納付できる仕組みが整備されており、この「ダイレクト納付(グループ通算用)」により、通算親法人がグループ内法人の法人税・地方法人税をまとめて納付できるようになっています。
一括納付できる税目に注意
ダイレクト納付(グループ通算用)は便利ですが、すべての税目について利用できるわけではありません。
国税庁は、ダイレクト納付(グループ通算用)について、通算親法人が法人税および地方法人税を納付する場合に限り利用できると案内しています。
つまり、対象は法人税・地方法人税です。
消費税、源泉所得税、印紙税、地方税などまで、グループ通算用の一括納付機能でまとめて納付できるわけではありません。
また、地方税については、地方税ポータルシステムであるeLTAXによる別管理が必要になります。グループ通算制度の申告・納付体制を整える際は、国税と地方税を分けて考える必要があります。
親法人の口座から引き落とされる
ダイレクト納付(グループ通算用)では、各通算法人の納付について、通算親法人の預貯金口座から引き落としが行なわれます。
つまり、子法人ごとにそれぞれの預金口座から引き落とすのではなく、親法人の届出済み口座からまとめて引き落とされる仕組みです。
このため、グループ全体の納税資金を親法人に集約する運用が必要になることがあります。
実務上は、次のような点を事前に決めておくとよいでしょう。
・子法人の法人税、地方法人税を親法人が立て替えるのか
・納付日前に子法人から親法人へ資金移動するのか
・グループ内精算はいつ行なうのか
・会計上は立替金、未収入金、未払金などで処理するのか
・納付額の最終確認者を誰にするのか一括納付は便利ですが、資金繰りとグループ内精算のルールが曖昧だと、決算時に残高不一致や精算漏れが起きやすくなります。
各子法人の所轄税務署ごとに納付される
グループ通算制度では、各法人が個別の納税単位です。
そのため、親法人がまとめて納付する場合でも、税金は各子法人の所轄税務署に対して納付されます。
親法人は各子法人の所轄税務署にそれぞれ納付を行なう必要があり、親法人が各法人の納税額を入力すると、各子法人の所轄税務署へ自動で納付される仕組みが予定されていると説明されています。
この点は、グループ全体で一つの税務署にまとめて納付するわけではない、という意味で重要です。一括納付機能を利用しても、納税義務者は各通算法人であり、納付先も各法人の所轄税務署となります。
受信通知からの納付にも注意
e-Taxで申告書を送信すると、メッセージボックスに受信通知、いわゆる納付区分番号通知が格納されます。
国税庁は、e-Taxで申告書を送信した場合、この受信通知からダイレクト納付、インターネットバンキング納付、クレジットカード納付、コンビニ納付などができると案内しています。
ただし、通算親法人の電子署名を用いて通算子法人の申告書記載事項の提供をした場合、その受信通知から利用できる納付方法はダイレクト納付のみとされています。
このため、親法人側で子法人分をまとめて申告・納付する運用をする場合には、ダイレクト納付の利用準備をしておくことが実務上重要です。
グループ通算用ダイレクト納付の実務フロー
実務では、次のような流れで準備するとスムーズです。
1. グループ内法人を確認する
まず、通算親法人・通算子法人の一覧を作成します。
法人名、所在地、所轄税務署、法人番号、決算期、申告担当者、納付担当者を整理します。
2. 各法人の税額計算を行なう
各通算法人ごとに法人税額・地方法人税額を計算します。
グループ通算制度では損益通算等の調整があるため、親法人側で最終税額を取りまとめる体制が必要です。
3. e-Tax申告データを作成・送信する
通算法人は電子申告義務化の対象です。
親法人が子法人分を提出する場合には、親法人の電子署名による提出体制を確認します。
4. ダイレクト納付の届出口座を確認する
通算親法人の預貯金口座から引き落とされるため、残高不足がないよう納税資金を準備します。
5. 各法人の納付額を登録する
グループ通算用の一括納付機能で、各通算法人の法人税額・地方法人税額を入力します。
6. 引落日と資金移動を管理する
親法人口座から引き落とされるため、子法人との資金精算や会計処理を忘れないようにします。
会計処理上の注意点
親法人が子法人分の法人税を一括で納付する場合、会計処理にも注意が必要です。
たとえば、子法人の法人税を親法人が一時的に立て替える場合、親法人側では立替金や未収入金、子法人側では未払金や未払法人税等との関係を整理する必要があります。
一例としては、次のような処理が考えられます。
<親法人側>
子法人分の納付時: 立替金 / 普通預金
子法人から精算を受けた時: 普通預金 / 立替金<子法人側>
親法人が納付した時: 未払法人税等 / 未払金
親法人へ精算した時: 未払金 / 普通預金実際の勘定科目や処理方法は、グループ内の会計方針や税務処理により異なります。
重要なのは、親法人が納付した税額と、子法人側の未払法人税等の残高が整合していることです。
資金繰りの注意点
グループ通算用のダイレクト納付では、通算親法人の口座から各通算法人分の税額が引き落とされます。そのため、親法人の資金繰りに注意が必要です。
各子法人で税額が発生していても、納付資金を親法人に集約していなければ、親法人口座で残高不足が発生する可能性があります。
残高不足により納付ができないと、延滞税などの問題が生じる可能性があります。
納付期限前には、次の点を確認しましょう。
・各通算法人の納付額が確定しているか
・親法人口座に必要な納税資金があるか
・子法人から親法人への資金移動が完了しているか
・納付日が休日等にかかっていないか
・ダイレクト納付の操作権限者が不在でないか一括納付は便利な反面、親法人側に納税資金管理が集中します。
税務調査・内部統制上の注意点
グループ通算制度では、各法人の申告内容がグループ全体の税額調整に関係します。
そのため、親法人が申告・納付を集約する場合には、内部統制も重要です。
特に、次のような点を管理しておきましょう。
・各子法人から提出された税務データの確認手続
・グループ通算に係る調整額の承認手続
・各法人の申告書控えの保存
・納付額一覧表の保存
・ダイレクト納付の操作履歴
・親子会社間の資金精算記録
・納付後の残高確認親法人が一括で申告・納付を行なっていても、各法人の申告内容や納税額の責任がなくなるわけではありません。子法人側でも、自社の申告内容と納付状況を確認し、申告書控えや納付記録を保存しておくことが大切です。
グループ通算制度導入時のチェックポイント
グループ通算制度を適用している、またはこれから適用を検討している会社は、次の点を確認しましょう。
1. 通算グループ内法人の一覧を整備しているか
親法人、子法人、孫法人など、対象法人を正確に把握します。
2. 各法人の電子申告体制を整えているか
通算法人は資本金規模にかかわらず電子申告義務化の対象です。
3. 親法人が子法人申告を提出する体制があるか
親法人の電子署名で子法人の申告書を提出する場合、権限・責任・確認手続を明確にします。
4. ダイレクト納付の利用届出を確認しているか
グループ通算用の一括納付を利用する場合、親法人側のダイレクト納付環境を整えます。
5. 各法人の納付額を正確に入力しているか
一括納付では、各法人の法人税額・地方法人税額を入力します。入力ミスがないよう、複数人で確認しましょう。
6. 親法人口座の残高を確認しているか
各法人分をまとめて引き落とすため、納付日前の資金確認が重要です。
7. 子法人との資金精算ルールを決めているか
親法人が立て替えるのか、事前に子法人から資金移動するのかを明確にします。
よくある誤解
グループ通算制度では親法人だけが申告すればよい
誤りです。グループ通算制度では、原則として各通算法人が個別に法人税額を計算し、申告します。親法人が一括して提出する運用は可能ですが、各法人が納税単位である点は変わりません。
通算子法人が中小法人なら電子申告義務はない
グループ通算制度の通算法人は、資本金の額等にかかわらず電子申告義務化の対象とされています。
親法人が一括納付すれば、親法人の所轄税務署にまとめて納付される
そうではありません。親法人がダイレクト納付で一括納付する場合でも、各通算法人の納付は各法人の所轄税務署に対して行われます。
グループ通算用ダイレクト納付ですべての税目を一括納付できる
グループ通算用のダイレクト納付は、通算親法人が法人税および地方法人税を納付する場合に限り利用できます。
子法人分の税額を親法人が納付すれば、子法人側で会計処理は不要
子法人側でも、自社の法人税等として未払法人税等の処理や親法人との精算処理が必要になります。
まとめ
グループ通算制度では、従来の連結納税制度と異なり、原則として通算グループ内の各法人が個別に法人税額を計算し、申告・納付を行ないます。
ただし、実務上は、親法人が子法人の法人税申告書をe-Taxで提出することが可能であり、申告事務を親法人側で集約できます。
また、納付についても、通算親法人がダイレクト納付(グループ通算用)を利用することで、通算グループ内法人の法人税・地方法人税を一括納付できます。
この場合、グループ内の各通算法人が一覧で表示され、通算親法人が各法人の法人税額・地方法人税額を入力することで、各法人の所轄税務署へ納付されます。引き落としは通算親法人の預貯金口座から行なわれます。
一括納付は便利ですが、各法人の納税義務がなくなるわけではありません。
親法人は、各子法人の納付額、納付先、資金移動、会計処理、精算処理を正確に管理する必要があります。
グループ通算制度を適用する会社は、申告データの取りまとめだけでなく、ダイレクト納付の設定、納税資金の集約、子法人との精算ルール、納付後の確認体制まで整備しておきましょう。




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