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補助金を受け取ったら圧縮記帳できる?国庫補助金等の用途と固定資産取得の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5 時間前
  • 読了時間: 15分

おはようございます!代表の安田です。


国や地方公共団体の補助金を活用して、設備投資やITツールの導入を行なう会社は少なくありません。近年では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者向けに、さまざまな補助金や給付金が創設・拡充されました。


補助金を受け取った場合、原則として法人税の課税対象になります。


しかし、補助金を受け取った年度に全額が課税されると、設備投資のために受け取った補助金であっても、税負担が先に発生してしまうことがあります。

そこで法人税では、一定の国庫補助金等を使って固定資産を取得・改良した場合に、圧縮記帳という制度が認められています。


圧縮記帳を使うと、補助金収入に対応する課税を将来に繰り延べることができます。

ただし、補助金を受け取れば何でも圧縮記帳できるわけではありません。


重要なのは、補助金の交付目的と実際の使い道です。

国庫補助金等の圧縮記帳を受けるには、原則として、補助金の交付目的が固定資産の取得または改良であり、かつ、実際にもその補助金を固定資産の取得または改良に充てている必要があります。


本日は、国庫補助金等の圧縮記帳の基本、対象となる補助金、対象外となるケース、IT導入補助金・ものづくり補助金・事業再構築補助金で注意すべき点、間接交付された補助金の取扱いを解説します。


圧縮記帳とは

圧縮記帳とは、補助金や保険金などを使って固定資産を取得した場合に、その固定資産の取得価額を一定額だけ減額して記帳する制度です。


たとえば、1,000万円の機械装置を購入し、その取得に対して400万円の補助金を受け取ったとします。通常であれば、補助金400万円は収益として課税対象になります。


一方、機械装置1,000万円は減価償却により、耐用年数に応じて少しずつ費用化されます。

このままだと、補助金収入は先に課税されるのに、対応する設備投資の費用化は数年に分かれるため、補助金を受け取った年度の税負担が重くなることがあります。


そこで、一定要件を満たす場合には、補助金相当額を固定資産の帳簿価額から減額し、補助金収入に対する課税を将来に繰り延べます。

これが圧縮記帳です。


圧縮記帳は、税金が完全に免除される制度ではありません。

固定資産の帳簿価額が下がるため、その後の減価償却費も少なくなります。

つまり、補助金を受け取った年度の課税を抑える代わりに、将来の減価償却費が減り、将来の課税所得が増える仕組みです。


国庫補助金等の圧縮記帳の基本

法人税法では、国庫補助金等で固定資産を取得または改良した場合、一定の要件を満たせば圧縮記帳が認められます。


ここでいう国庫補助金等とは、国または地方公共団体などから交付される補助金・給付金等で、固定資産の取得または改良に充てるためのものをいいます。

ポイントは、次の2つです。

・補助金の交付目的が固定資産の取得または改良であること
・実際にその補助金を固定資産の取得または改良に充てていること

どちらか一方だけでは足りません。

補助金の交付目的が固定資産の取得であっても、実際には人件費や外注費、広告費、コンサルティング費用などに使った場合には、圧縮記帳の対象になりません。


反対に、売上減少の補てんや事業継続支援を目的とする給付金を、結果的に設備投資に使ったとしても、交付目的が固定資産取得ではないため、原則として国庫補助金等の圧縮記帳はできません。


交付目的と実際の用途の両方が重要

補助金の圧縮記帳で最も間違いやすいのが、「補助金を設備投資に使ったから圧縮記帳できる」という考え方です。


しかし、実務では、補助金の交付要綱や公募要領、交付決定通知書、実績報告書などにより、補助金の目的と対象経費を確認する必要があります。

圧縮記帳が認められるのは、補助金の交付目的と実際の用途の両方が固定資産の取得・改良に対応している場合です。たとえば、次のようなケースでは圧縮記帳を検討できます。

・機械装置の取得を目的とする補助金で、その機械装置を購入した
・ITツール導入を目的とする補助金で、ソフトウェアを取得した
・設備更新を目的とする補助金で、対象設備を取得した
・建物附属設備の改良を目的とする補助金で、対象工事を行った

一方、次のようなケースでは注意が必要です。

・売上減少補てんの給付金を機械購入に使った
・事業継続支援金をパソコン購入に使った
・設備投資補助金をコンサルティング費用だけに使った
・固定資産取得目的の補助金を広告費や研修費に充てた

このような場合、実際に資金が支出されていても、圧縮記帳の要件を満たさない可能性があります。


IT導入補助金や新事業進出補助金は対象になり得る

固定資産の取得等に充てる目的の補助金として、代表的なものにIT導入補助金や新事業進出補助金があります。


IT導入補助金は、ITツールの導入支援を目的とする補助金です。

対象となるITツールがソフトウェアなどの固定資産に該当する場合には、圧縮記帳の対象になる可能性があります。


新事業進出補助金は、設備投資支援を目的とする補助金として利用されることが多く、機械装置、工具器具備品、ソフトウェアなどの取得に充てる場合には、圧縮記帳を検討できることがあります。


ただし、補助金名だけで判断してはいけません。

同じ補助金でも、補助対象経費の内容によって、固定資産取得に該当する部分と、経費補てんに該当する部分が混在することがあります。


そのため、交付決定通知書、補助事業計画書、実績報告書、対象経費明細を確認し、固定資産の取得・改良に対応する補助金部分を区分する必要があります。


収益減少補てん目的の給付金は対象外

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者向けには、売上減少を補てんするための給付金や協力金が多く支給されました。このような給付金は、事業者の資金繰りや事業継続を支援する目的で交付されるものです。


たとえ、その給付金を結果的に設備投資に使ったとしても、交付目的が固定資産の取得・改良ではないため、国庫補助金等の圧縮記帳はできません。


たとえば、売上減少を理由に受け取った給付金を使ってパソコンを購入した場合を考えます。この場合、パソコンは固定資産かもしれません。

しかし、その給付金自体はパソコン取得のために交付されたものではありません。

したがって、補助金の交付目的が要件を満たさないため、圧縮記帳の対象外と考えられます。


「固定資産を買ったか」だけではなく、「その補助金が何のために交付されたか」を確認することが重要です。


固定資産取得目的でも、経費に使うと対象外

反対に、補助金の交付目的が固定資産の取得等であっても、実際に固定資産の取得・改良に充てなければ圧縮記帳はできません。


たとえば、設備投資支援を目的とする補助金を受けたものの、実際には税理士・中小企業診断士・コンサルタントへの報酬や広告費などに充てた場合です。


この場合、補助金の目的が固定資産取得を含んでいたとしても、実際の用途が固定資産取得ではないため、その部分については圧縮記帳の対象になりません。

特に、中小企業事業進出補助金のように、補助対象経費にさまざまな費目が含まれる補助金では注意が必要です。


補助対象経費の中に機械装置等の購入費が含まれていても、実際にはコンサルティング費用のみに使った場合、その支出は固定資産の取得・改良ではありません。

したがって、圧縮記帳の適用はできないと考えられます。


中小企業事業進出補助金は使い道の区分が重要

中小企業事業進出補助金(旧事業再構築補助金)は、新分野展開や業態転換、事業再編などを支援する補助金として、多くの事業者が活用してきました。


この補助金では、補助対象経費として、機械装置・システム構築費、建物費、広告宣伝費、研修費、専門家経費などが含まれることがあります。


そのため、圧縮記帳を検討する場合は、補助金全体を一括して判断するのではなく、補助金がどの支出に対応しているのかを区分する必要があります。

たとえば、次のような場合です。

補助金総額:1,000万円

内訳
・機械装置の購入:700万円
・専門家へのコンサルティング費用:300万円

この場合、機械装置の取得に対応する700万円部分については、要件を満たせば圧縮記帳の対象になる可能性があります。一方、コンサルティング費用に対応する300万円部分は、固定資産の取得・改良ではないため、圧縮記帳の対象にはなりません。


実務では、補助金の入金額だけで処理するのではなく、補助対象経費の内訳を確認し、固定資産対応部分と経費対応部分を区分して会計処理・税務処理を行うことが重要です。


間接交付された補助金でも対象になる場合がある

補助金の中には、国や地方公共団体から直接交付されるのではなく、事務局、協会、基金、補助金交付団体などを通じて交付されるものがあります。


形式的には、国や地方公共団体から直接交付されたものではありません。

では、このような間接交付の補助金は、国庫補助金等の圧縮記帳の対象外になるのでしょうか。必ずしもそうではありません。


国税庁の質疑応答事例では、間接交付される補助金であっても、補助金交付団体が国に代わって交付事務を行っているにすぎず、実質的に国から直接交付を受けたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当するとされています。たとえば、次のような事情がある場合です。

・国からの補助金を財源としている
・補助金交付団体の裁量で交付決定しているわけではない
・国の監督のもとで交付されている
・国から交付された補助金が遅滞なく対象法人へ交付される
・基金方式の場合、補助金部分と事務費部分が区分されている
・基金の資金の出入りを国が管理している

このように、形式ではなく実質を見て、国または地方公共団体から直接交付されたものと同視できるかを判断します。


圧縮記帳できる金額の考え方

国庫補助金等の圧縮記帳では、補助金を受け取った金額の全額を自由に圧縮できるわけではありません。圧縮できるのは、補助金等のうち、固定資産の取得または改良に充てた部分です。また、固定資産の取得価額を超えて圧縮することはできません。


簡単な例で見てみましょう。

機械装置の取得価額:1,000万円
機械装置取得に対応する補助金:400万円

この場合、要件を満たせば、400万円を限度に圧縮記帳を行なうことが考えられます。

圧縮記帳後の機械装置の帳簿価額は、次のようになります。

1,000万円 - 400万円 = 600万円

この600万円を基礎として、以後の減価償却費を計算します。

一方、補助金の一部が固定資産以外の経費に対応している場合は、その経費対応部分は圧縮記帳の対象外です。


圧縮記帳の会計処理

圧縮記帳には、主に直接減額方式と積立金方式があります。


直接減額方式は、補助金に対応する圧縮額を固定資産の帳簿価額から直接減額する方法です。たとえば、1,000万円の機械装置を取得し、400万円の補助金について圧縮記帳する場合、会計上は機械装置の帳簿価額を600万円に圧縮するイメージです。


積立金方式は、会計上は固定資産の取得価額をそのまま残し、税務上、圧縮積立金を積み立てる方法です。


どちらの方式を採用するかによって、会計処理や税務申告書の表示が変わります。

中小企業では直接減額方式が使われることが多いですが、会計方針や金融機関への説明、補助金の管理、税務申告書の作成方法も踏まえて判断する必要があります。


補助金の収益計上時期にも注意

補助金を受け取った場合、いつ収益計上するかも重要です。

一般的には、補助金の交付額が確定し、返還不要であることが確定した時点で収益計上することになります。補助金は、交付決定を受けた時点では、まだ実績報告や検査、確定通知を経ていないことがあります。


この場合、交付決定だけで直ちに収益計上すべきか、額の確定通知を受けた時点で計上すべきかを検討する必要があります。


また、固定資産を先に取得し、後日補助金の交付を受けるケースもあります。

国税庁の法人税基本通達では、法人が国庫補助金等の交付を受けた日の属する事業年度前に、その交付目的に適合する固定資産の取得等をしている場合でも、その交付を受けた事業年度において圧縮記帳の規定を適用できる取扱いが示されています。


つまり、固定資産を取得した年度と補助金を受け取った年度がズレる場合にも、圧縮記帳を検討できることがあります。


圧縮記帳を使わない選択もある

国庫補助金等の圧縮記帳は、要件を満たせば適用できる制度ですが、必ず適用しなければならないわけではありません。

圧縮記帳を使わず、補助金を収益として計上し、取得した固定資産を通常どおり減価償却することも可能です。


圧縮記帳を使うと、補助金を受け取った年度の課税を抑える効果があります。

一方で、固定資産の帳簿価額が下がるため、将来の減価償却費が少なくなります。

そのため、長期的に見ると、税負担を完全になくすものではなく、課税時期を繰り延べる制度です。次のような場合には、圧縮記帳を使うかどうかを検討しましょう。

・当期に赤字が出ている
・繰越欠損金が十分にある
・将来の利益計画を踏まえて償却費を多く残したい
・金融機関向けの決算書で固定資産額を減らしたくない
・税務処理を簡便にしたい

税務上有利に見える制度でも、会社の決算状況や将来計画によっては、適用しない方がよいケースもあります。


実務上のチェックポイント

補助金を受け取った場合、圧縮記帳の適用可否を判断するため、次の点を確認しましょう。


1. 補助金の交付者を確認する

国、地方公共団体、または実質的に国等から交付されたものと認められる間接交付かを確認します。


2. 交付目的を確認する

補助金の交付要綱、公募要領、交付決定通知書などにより、固定資産の取得・改良を目的とする補助金か確認します。


3. 実際の使い道を確認する

補助金を実際に固定資産の取得または改良に充てているかを確認します。


4. 補助対象経費を区分する

機械装置、ソフトウェア、建物附属設備などの固定資産部分と、広告費、研修費、専門家報酬などの経費部分を分けます。


5. 固定資産の取得時期と補助金の確定時期を確認する

資産取得年度と補助金の交付年度が異なる場合、どの年度で圧縮記帳を行なうか確認します。


6. 圧縮記帳の方法を選択する

直接減額方式にするか、積立金方式にするかを検討します。


7. 申告書添付・別表調整を確認する

圧縮記帳を適用する場合、法人税申告書で必要な別表や明細の作成が必要です。


8. 将来の減価償却費への影響を試算する

圧縮記帳後は帳簿価額が下がり、将来の減価償却費が少なくなります。


税務調査で確認されやすい資料

補助金と圧縮記帳は、税務調査でも確認されやすい項目です。

次の資料は整理して保存しておきましょう。

・補助金の公募要領
・交付申請書
・事業計画書
・交付決定通知書
・実績報告書
・補助金額確定通知書
・入金明細
・対象経費明細
・固定資産の請求書、契約書、納品書
・固定資産台帳
・支出の内訳表
・圧縮記帳の計算資料
・法人税申告書の別表

特に、補助金の一部が固定資産、一部が経費に対応している場合には、どの補助金がどの支出に対応しているのかを説明できる資料が必要です。


よくある誤解

  • 補助金を受け取ったら必ず圧縮記帳できる

誤りです。圧縮記帳できるのは、固定資産の取得または改良に充てる目的の国庫補助金等を、実際に固定資産の取得または改良に充てた場合です。


  • 売上減少を補てんする給付金で設備を買えば圧縮記帳できる

原則としてできません。実際に設備を買っていても、補助金の交付目的が固定資産取得ではなく収益減少の補てんであれば、圧縮記帳の対象外です。


  • 固定資産取得目的の補助金なら、何に使っても圧縮記帳できる

できません。交付目的が固定資産取得であっても、実際にコンサルティング費用や広告費などに充てた部分は、固定資産の取得・改良ではないため圧縮記帳の対象外です。


  • 中小企業新事業進出補助金は全額圧縮記帳できる

補助対象経費に固定資産と経費が混在する場合があります。固定資産の取得・改良に対応する部分だけを区分して検討する必要があります。


  • 事務局から交付された補助金は国庫補助金等に該当しない

必ずしもそうではありません。間接交付であっても、実質的に国または地方公共団体から直接交付を受けたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当することがあります。


  • 圧縮記帳をすると税金が完全に免除される

圧縮記帳は課税の繰延制度です。固定資産の帳簿価額が下がるため、将来の減価償却費が少なくなります。


まとめ

国や地方公共団体から補助金を受け取った場合、その補助金は原則として法人税の課税対象になります。


ただし、固定資産の取得または改良に充てる目的で交付された国庫補助金等を、実際に固定資産の取得または改良に充てた場合には、法人税法上の圧縮記帳を適用できる可能性があります。


圧縮記帳を使えば、補助金収入に対する課税を固定資産の耐用年数に応じて将来へ繰り延べることができます。


しかし、補助金を受け取れば何でも圧縮記帳できるわけではありません。

圧縮記帳を適用するには、補助金の交付目的と実際の用途の両方が、固定資産の取得または改良であることが重要です。売上減少の補てんや事業継続支援を目的とする給付金を、結果的に設備投資に使ったとしても、交付目的が異なるため圧縮記帳はできません。

また、固定資産取得目的の補助金であっても、実際にコンサルティング費用、広告費、研修費などの経費に充てた部分は、圧縮記帳の対象外です。


IT導入補助金、中小企業新事業進出補助金などは、補助対象経費の内容によって取扱いが変わります。


補助金を受け取った場合には、補助金名だけで判断せず、公募要領、交付決定通知書、実績報告書、対象経費明細を確認し、固定資産取得に対応する部分を正確に区分しましょう。


間接交付された補助金についても、実質的に国または地方公共団体から直接交付されたものと認められる場合には、国庫補助金等に該当する可能性があります。


補助金の会計・税務処理は、受け取った年度の課税だけでなく、その後の減価償却費や決算書にも影響します。設備投資を伴う補助金を受け取ったときは、圧縮記帳の適用可否、処理方法、必要書類を早めに確認しておきましょう。

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