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取締役会で決算を確定したら株主総会前に法人税申告できる?申告期限延長特例との関係を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 13 時間前
  • 読了時間: 14分

こんにちは!代表の安田です。


法人税の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行なう必要があります。ただし、定款等の定めにより、決算についての定時株主総会が事業年度終了後2か月以内に開催されない会社などでは、法人税の申告期限を1か月延長する特例を受けていることがあります。


たとえば、3月決算法人であれば、通常の法人税申告期限は5月末ですが、申告期限延長特例を受けている場合には6月末まで延長されます。


このとき、実務で迷いやすいのが、定時株主総会の前に法人税申告書を提出してよいのかという点です。「申告期限延長特例は、株主総会が2か月以内に開催されないから認められている制度なので、株主総会後でなければ申告できないのではないか」と考える方もいます。


しかし、会社法上、一定の会社では定時株主総会の承認を経ずに、取締役会の承認により計算書類を確定させることができます。その場合、取締役会で決算が確定していれば、定時株主総会の開催前であっても法人税申告書を提出することは可能です。


本日は、取締役会で決算を確定する場合の法人税申告時期、申告期限延長特例との関係、法人税申告書別表一の「決算確定の日」の記載方法、実務上の注意点を解説します。


法人税の申告期限は原則2か月以内

法人税の確定申告書は、原則として、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出する必要があります。3月決算法人であれば、通常は5月31日が申告期限になります。


ただし、会社によっては、決算作業、監査、取締役会、株主総会、連結決算、親会社への報告などの関係で、2か月以内に申告書を提出することが難しい場合があります。


そこで法人税では、一定の要件を満たす法人について、申請により申告期限を延長する特例が設けられています。一般的には、3月決算法人であれば、法人税の申告期限を5月末から6月末へ1か月延長するケースが多く見られます。


申告期限延長特例とは

法人税の申告期限延長特例は、定款等の定めにより、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、その事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にある場合などに、税務署へ申請することで認められる制度です。


上場会社や会計監査人設置会社では、事業年度終了後に会計監査、監査役等の監査、取締役会での承認、定時株主総会の開催といった手続きが必要になります。


そのため、3月決算で6月下旬に定時株主総会を開催する会社では、5月末までに法人税申告を完了することが実務上難しいことがあります。このような会社では、申告期限延長特例を受けることで、法人税の申告期限を1か月延長できます。


ただし、申告期限が延長されるのは、あくまで「提出期限」です。

申告書の提出が必ず定時株主総会後でなければならない、という意味ではありません。


申告期限延長特例を受けていても、株主総会後の申告が強制されるわけではない

申告期限延長特例を受けている会社では、定時株主総会が事業年度終了後2か月以内に開催されないことを理由として、申告期限の延長が認められます。


そのため、「株主総会が終わるまで申告できない」と考えがちです。

しかし、定時株主総会前に決算が会社法上確定している場合には、株主総会前に法人税申告書を提出しても問題ないと考えられます。


たとえば、3月決算の上場会社が、5月開催の取締役会で計算書類を承認し、その時点で決算が確定した場合です。この会社が法人税申告期限の1か月延長特例を受けていて、定時株主総会が6月下旬に予定されているとしても、取締役会承認により決算が確定しているのであれば、6月下旬の定時株主総会前に法人税申告書を提出できます。

申告期限延長特例は、定時株主総会後に申告することを義務付ける制度ではありません。


会社法上、取締役会承認で決算が確定する会社がある

通常、株式会社の計算書類は、定時株主総会の承認を受けることで確定します。

しかし、会社法では、会計監査人設置会社について、一定の要件を満たす場合には、定時株主総会の承認を受ける必要がなく、取締役会の承認により計算書類を確定させることができます。


この場合、定時株主総会では、計算書類の承認ではなく、報告が行われます。

上場会社や大会社などでは、会計監査人を設置していることが多く、会社法上の要件を満たす場合には、株主総会で計算書類を「承認」するのではなく「報告」する形になります。


このような会社では、決算確定のタイミングは、定時株主総会の日ではなく、取締役会で計算書類を承認した日になります。したがって、法人税申告の前提となる決算が取締役会で確定していれば、株主総会の開催を待たずに申告できることになります。


取締役会承認日を「決算確定の日」として記載する

法人税申告書別表一には、「決算確定の日」を記載する欄があります。

一般的には、定時株主総会で計算書類の承認を受ける会社が多いため、この欄には定時株主総会の開催日を記載することがよくあります。


しかし、取締役会の承認により決算が確定する会社が、定時株主総会前に法人税申告書を提出する場合には、定時株主総会の日ではなく、取締役会での決算承認日を記載します。

たとえば、次のようなケースです。

事業年度:令和7年4月1日から令和8年3月31日
取締役会での計算書類承認日:令和8年5月20日
定時株主総会開催日:令和8年6月25日
法人税申告書提出日:令和8年6月10日

この場合、法人税申告書別表一の「決算確定の日」には、令和7年5月20日を記載することになります。申告書提出日より後の日付である定時株主総会開催日を記載することはできません。決算確定の日は、あくまで会社法上、決算が確定した日を記載する必要があります。


株主総会では計算書類の内容を報告する必要がある

取締役会で決算を確定できる会社であっても、定時株主総会で何もしなくてよいわけではありません。会社法上、一定の要件を満たして定時株主総会の承認を要しない場合でも、取締役は、その計算書類の内容を定時株主総会に報告する必要があります。


つまり、取締役会で計算書類を承認した後、法人税申告書を株主総会前に提出したとしても、その後の定時株主総会では、計算書類の内容を株主へ報告する手続きが必要です。

実務上は、次のような流れになります。

1. 決算作業
2. 会計監査人による監査
3. 監査役等による監査
4. 取締役会で計算書類を承認
5. 法人税申告書の作成・提出
6. 定時株主総会で計算書類の内容を報告

株主総会での「承認」が不要であっても、「報告」は必要である点を忘れないようにしましょう。


3月決算の上場会社のスケジュール例

3月決算の上場会社を例に、取締役会承認による決算確定と法人税申告のスケジュールを見てみましょう。

3月31日
事業年度終了

4月
決算作業、監査対応、税額計算

5月中旬
取締役会で計算書類を承認
決算確定

5月下旬から6月中旬
法人税申告書を作成・提出

6月下旬
定時株主総会で計算書類の内容を報告

このように、取締役会で決算が確定していれば、6月下旬の株主総会を待たずに、6月中旬に法人税申告書を提出することが可能です。申告期限延長特例を受けている会社であっても、延長後の期限である6月末まで待つ必要はありません。


もちろん、申告内容が確定していない場合や、税額計算・別表作成・監査対応が完了していない場合には、無理に早く提出する必要はありません。重要なのは、申告書提出前に決算が確定していることです。


株主総会前に申告しても延長特例が取り消されるわけではない

申告期限延長特例を受けている会社が、たまたまある事業年度について定時株主総会前に申告書を提出した場合、「延長特例の適用が取り消されるのではないか」と心配する方もいます。

しかし、取締役会承認により決算が確定している会社が、株主総会前に法人税申告書を提出したからといって、それだけで申告期限延長特例の適用が取り消されるわけではありません。申告期限延長特例は、定款等の定めにより、事業年度終了後2か月以内に定時総会が招集されない常況にあることなどを前提に認められるものです。


実際の申告書提出日が定時株主総会前であったとしても、その会社の株主総会開催時期や定款等の状況に変化がないのであれば、延長特例の前提が直ちに崩れるわけではありません。


ただし、定款や株主総会の開催状況が大きく変わり、事業年度終了後2か月以内に定時株主総会を招集するのが常態化した場合には、延長特例の適用要件を改めて確認する必要があります。


すべての会社が取締役会で決算確定できるわけではない

ここで注意したいのは、すべての会社が取締役会の承認だけで決算を確定できるわけではないという点です。

会社法上、取締役会承認によって定時株主総会の承認を不要にできるのは、会計監査人設置会社で、一定の要件を満たす場合です。多くの中小企業では、会計監査人を設置しておらず、計算書類は定時株主総会の承認によって確定します。


このような会社では、決算確定日は原則として定時株主総会で計算書類の承認を受けた日になります。したがって、株主総会前に法人税申告書を提出することは、決算が確定していない段階で申告することになり、通常は適切ではありません。


自社が取締役会承認により決算を確定できる会社かどうかを、会社法上の機関設計や監査状況に照らして確認する必要があります。


中小企業で多い「みなし総会」や書面決議の場合

中小企業では、実際に会場を設けた定時株主総会を開かず、株主全員の同意による書面決議、いわゆるみなし総会の方法で計算書類を承認するケースがあります。


この場合も、会社法上有効に計算書類が承認されていれば、その日が決算確定の日になります。たとえば、株主全員から同意書を取得し、計算書類を承認した日が6月20日であれば、その日が決算確定の日になります。


この場合には、法人税申告書別表一の「決算確定の日」には、その承認日を記載します。

取締役会承認で決算確定できる会社とは仕組みが異なりますが、法人税申告書には、実際に会社法上決算が確定した日を記載するという点は同じです。


申告書提出前に確認すべきこと

取締役会承認後、定時株主総会前に法人税申告書を提出する場合には、次の点を確認しておきましょう。


1. 取締役会で計算書類が承認されているか

法人税申告書を提出する前に、取締役会で計算書類が正式に承認されている必要があります。取締役会議事録を作成し、承認日を明確にしておきましょう。


2. 会社法上、株主総会承認が不要な会社か

会計監査人設置会社で、会社法上の要件を満たしているか確認します。

株主総会で計算書類の承認が必要な会社であれば、株主総会前の申告は慎重に判断すべきです。


3. 監査手続きが完了しているか

会計監査人、監査役、監査等委員会、監査委員会などの監査手続きが完了しているか確認します。監査報告の内容によっては、取締役会承認だけで株主総会承認を不要にできない可能性があります。


4. 税額計算が確定しているか

会計上の決算が確定していても、税務調整、別表、税額控除、地方税、外形標準課税などの計算が確定していなければ、申告書を提出できません。


5. 別表一の「決算確定の日」を正しく記載しているか

株主総会前に申告する場合は、定時株主総会日ではなく、取締役会での決算承認日を記載します。


6. 株主総会での報告手続きを予定しているか

取締役会で決算を確定した場合でも、計算書類の内容を定時株主総会で報告する必要があります。


早期申告のメリット

取締役会承認後、定時株主総会前に法人税申告書を提出できる会社では、早期申告に一定のメリットがあります。たとえば、次のような点です。

・申告期限直前の事務負担を軽減できる
・納税額を早めに確定できる
・税務申告と株主総会準備を分けて進められる
・グループ会社や親会社への報告スケジュールに合わせやすい
・税務調査や翌期処理に向けた資料整理を早く始められる

特に、上場会社や大規模法人では、株主総会、決算短信、有価証券報告書、親会社報告、税務申告が短期間に集中します。取締役会承認後に申告できる体制を整えておけば、決算後のスケジュール管理がしやすくなります。


早期申告の注意点

一方で、早期申告には注意点もあります。

取締役会で決算が承認されていても、その後に誤りが見つかれば、訂正申告が必要になる可能性があります。

また、株主総会資料、有価証券報告書、税務申告書の数字に不整合があると、社内外への説明が必要になります。早期申告を行なう場合には、次の点に注意しましょう。

・取締役会承認後に会計数値を変更しない体制を整える
・税務調整のレビューを十分に行なう
・法人税、地方税、事業税、消費税の整合性を確認する
・申告書提出日と決算確定日の前後関係を確認する
・株主総会資料や有価証券報告書との整合性を確認する
・取締役会議事録、監査報告書、申告書控えを保存する

早く提出すること自体が目的ではありません。

決算確定と申告内容の正確性を確保したうえで、適切なタイミングで申告することが重要です。


実務上のチェックリスト

取締役会で決算を確定し、株主総会前に法人税申告を行なう場合は、次の項目を確認しましょう。

・申告期限延長特例の適用を受けているか
・定款等で定時株主総会の開催時期がどう定められているか
・会計監査人設置会社か
・会社法上、計算書類の株主総会承認が不要な要件を満たすか
・取締役会で計算書類を承認した日がいつか
・取締役会議事録を作成しているか
・監査報告書の内容に問題がないか
・法人税申告書提出日が決算確定日後になっているか
・別表一の「決算確定の日」に取締役会承認日を記載しているか
・定時株主総会で計算書類の内容を報告する予定か
・株主総会資料と申告書の数値に不整合がないか

このチェックリストを決算スケジュールに組み込んでおくと、申告時期の判断ミスを防ぎやすくなります。


よくある誤解

  • 申告期限延長特例を受けている会社は、必ず株主総会後に申告しなければならない

誤りです。取締役会承認により決算が確定している会社であれば、定時株主総会前に法人税申告書を提出することも可能です。


  • 株主総会で報告する会社は、決算がまだ確定していない

必ずしもそうではありません。会社法上、一定の会計監査人設置会社では、取締役会承認により計算書類が確定し、株主総会ではその内容を報告する形になります。


  • 別表一の「決算確定の日」には必ず株主総会日を書く

一般的には株主総会日を記載するケースが多いですが、取締役会承認により決算を確定し、株主総会前に申告する場合は、取締役会での決算承認日を記載します。


  • 株主総会前に申告すると、申告期限延長特例が取り消される

取締役会で決算が確定している場合、株主総会前に申告したことだけで、直ちに延長特例が取り消されるわけではありません。


  • すべての会社が取締役会承認で決算を確定できる

誤りです。取締役会承認により株主総会承認を不要にできるのは、会計監査人設置会社で一定要件を満たす場合です。多くの中小企業では、株主総会承認により決算が確定します。


まとめ

法人税の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行ないます。

ただし、定款等の定めにより、事業年度終了後2か月以内に定時株主総会が招集されない常況にある法人などでは、申請により申告期限を1か月延長する特例を受けることができます。


この申告期限延長特例を受けている会社であっても、必ず定時株主総会後に法人税申告書を提出しなければならないわけではありません。会社法上、一定の会計監査人設置会社では、定時株主総会の承認を経ずに、取締役会の承認により計算書類を確定させることができます。


この場合、取締役会で決算が確定していれば、定時株主総会の開催前であっても法人税申告書を提出できます。たとえば、3月決算の上場会社が5月の取締役会で計算書類を承認し、6月下旬に定時株主総会を開催する場合、取締役会承認後であれば、株主総会前に法人税申告書を提出することが可能です。


その場合、法人税申告書別表一の「決算確定の日」には、定時株主総会の日ではなく、取締役会での決算承認日を記載します。ただし、取締役会承認で決算を確定できる会社であっても、定時株主総会では計算書類の内容を報告する必要があります。


また、すべての会社が取締役会承認だけで決算を確定できるわけではありません。

会計監査人を設置していない中小企業などでは、通常、定時株主総会の承認により計算書類が確定します。


法人税申告書を提出する際には、自社の会社法上の機関設計、決算確定手続き、取締役会承認日、株主総会開催日、申告期限延長特例の適用状況を整理し、別表一の「決算確定の日」を正しく記載しましょう。


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