3号買換えの買換資産が見直し|建物・構築物は特定施設関連に限定へ
- 安田 亮
- 7月25日
- 読了時間: 10分
更新日:7月28日
おはようございます!代表の安田です。
事業用不動産を売却して、別の事業用資産に買い換える場合、税務上重要になる制度の一つが特定資産の買換え特例です。
この制度を利用できれば、一定の要件のもと、譲渡益の全部または一部について課税を繰り延べることができます。不動産の入替え、事業拠点の移転、老朽化した施設の更新、資産ポートフォリオの見直しなどを行う法人にとって、実務上よく検討される制度です。
その中でも、所有期間が10年を超える長期所有の土地・建物等を譲渡し、国内にある土地・建物等へ買い換える類型は、一般に3号買換えと呼ばれます。
令和8年度税制改正では、この3号買換えについて、買換資産の対象範囲が見直されました。具体的には、買換資産となる建物や構築物について、特定施設との関係がより明確に求められることになりました。
本日は、令和8年度改正後の3号買換えについて、買換資産の見直し、特定施設の範囲、適用時期、実務上の注意点を整理します。
3号買換えとは?
3号買換えとは、特定資産の買換え特例の一類型で、所有期間が10年を超える長期所有の土地、建物等を譲渡し、国内にある一定の土地、建物、構築物などに買い換える場合に適用される制度です。
事業用資産を売却して新たな事業用資産へ入れ替える際、譲渡益に対する課税が一時的に大きな負担となることがあります。買換え特例は、そのような場合に一定の課税繰延べを認めることで、事業用資産の再投資をしやすくする制度です。
ただし、買換え特例は、単に「古い不動産を売って新しい不動産を買えば使える」というものではありません。譲渡資産、買換資産、所有期間、取得時期、事業供用、面積要件など、細かな要件を満たす必要があります。
令和8年度改正で適用期限は3年延長
令和8年度税制改正により、3号買換えの適用期限は令和11年3月31日まで3年延長されました。これにより、長期所有の事業用不動産を売却し、国内で新たな事業用資産を取得する法人にとって、引き続き特例の活用を検討できることになります。
ただし、単純に期限が延長されただけではありません。買換資産の対象範囲についても見直しが行なわれているため、改正後の要件を確認する必要があります。
改正前の買換資産の範囲
改正前の3号買換えでは、買換資産として、主に次の資産が対象とされていました。
国内にある土地等
建物
構築物
このうち土地等については、特定施設の敷地または駐車場の用に供されるもので、面積が300平方メートル以上であることが求められていました。
一方、建物や構築物については、土地等ほど明確に「特定施設」に係る限定が付されていない形でした。
改正後は建物・構築物も特定施設関連に限定
令和8年度改正後は、買換資産のうち建物と構築物について、対象範囲が見直されました。
具体的には、買換資産となる建物は、特定施設の用に供されるものに限定されます。また、買換資産となる構築物は、特定施設に係る事業の遂行上必要なものに限定されます。
つまり、改正後の買換資産は、次のように整理できます。
国内にある土地等特定施設の敷地または駐車場の用に供されるもので、面積300平方メートル以上
建物特定施設の用に供されるものに限る
構築物特定施設に係る事業の遂行上必要なものに限る
今回の改正により、土地等だけでなく、建物や構築物についても、買換え後の利用目的が特定施設と結び付いていることが重要になりました。
特定施設とは?
ここで重要になるのが、特定施設の意味です。特定施設とは、事務所、事業所その他の一定の施設をいいます。具体的には、次のような施設が特定施設に該当します。
事務所
工場
作業場
研究所
営業所
店舗
倉庫
住宅
その他これらに類する施設
今回の令和8年度改正では、買換資産となる建物・構築物について特定施設関連に限定する見直しが行われましたが、特定施設の範囲そのものは変更されていません。
そのため、従来から特定施設に該当していた事務所、工場、店舗、倉庫などは、引き続き特定施設に該当します。
福利厚生施設は引き続き除外
特定施設の範囲で注意したいのが、福利厚生施設は除かれるという点です。
福利厚生施設には、たとえば次のようなものが含まれます。
社宅
寮
宿泊所
集会所
診療所
保養所
体育館
その他のスポーツ施設
食堂
その他これらに類する施設
これらは、従業員の福利厚生のために重要な施設ではありますが、3号買換えにおける特定施設からは除外されます。
したがって、長期所有土地等を譲渡し、買換資産として社宅や保養所、社員食堂などを取得する場合には、3号買換えの対象になるか慎重な確認が必要です。
改正後も特定施設の範囲は変わらない
今回の改正で誤解しやすいのは、「建物・構築物が特定施設関連に限定されたということは、特定施設の範囲も狭くなったのではないか」という点です。
しかし、特定施設の範囲自体に変更はありません。
変わったのは、買換資産として認められる建物・構築物について、特定施設との関係が明確に求められるようになったという点です。
つまり、改正のポイントは次のように整理できます。
特定施設の範囲は従来どおり
事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫などは引き続き対象
福利厚生施設は従来どおり除外
改正後は、建物・構築物も特定施設関連であることが必要
適用時期に注意
この改正は、令和8年4月1日以後に譲渡資産を譲渡し、買換資産を取得した場合に適用されます。一方で、譲渡資産の譲渡と買換資産の取得のいずれかが令和8年4月1日前に行われている場合には、従前の例によることとされています。
つまり、改正前後をまたぐ取引では、どの時点で譲渡し、どの時点で買換資産を取得したかが重要になります。
特に、不動産取引では、契約日、引渡日、取得日、事業供用日など、複数の日付が関係します。適用関係を判断する際は、税務上どの日を基準にするのかを丁寧に確認する必要があります。
実務で確認すべきポイント
3号買換えの適用を検討する場合、改正後は次の点を確認する必要があります。
まず、譲渡資産が所有期間10年超の長期所有資産に該当するかを確認します。次に、買換資産が国内にある土地等、建物、構築物に該当するかを確認します。
そのうえで、買換資産が特定施設に関連するものかどうかを確認します。
土地等であれば、特定施設の敷地または駐車場の用に供されるものか、面積300平方メートル以上かを確認します。建物であれば、特定施設の用に供されるものかを確認します。構築物であれば、特定施設に係る事業の遂行上必要なものかを確認します。
この判断を誤ると、特例の適用可否に直接影響します。
事務所・工場・店舗などへの買換えは引き続き検討可能
改正後も、事務所、工場、研究所、営業所、店舗、倉庫などは特定施設に該当します。
そのため、たとえば次のような買換えは、他の要件を満たせば、引き続き3号買換えの対象となる可能性があります。
長期所有の土地を売却し、新しい工場用地と工場建物を取得する
古い事業所を売却し、新たな営業所を取得する
遊休化した土地を売却し、倉庫用地と倉庫を取得する
事業再編に伴い店舗を移転する
研究開発拠点として研究所を取得する
ただし、建物が特定施設の用に供されるか、構築物が事業遂行上必要かについて、取得時点から説明できるようにしておくことが重要です。
社宅・保養所・社員食堂などへの買換えは注意
一方で、社宅、寮、保養所、体育館、食堂などの福利厚生施設については、特定施設から除外されます。そのため、たとえば次のような買換えでは、3号買換えの適用に注意が必要です。
事業用土地を売却して社員寮を取得する
長期所有不動産を売却して保養所を取得する
工場跡地を売却して従業員用食堂を新設する
遊休地を売却して福利厚生目的のスポーツ施設を取得する
福利厚生施設は会社にとって必要な施設であっても、3号買換えの特定施設には含まれません。「会社の事業に関連しているから大丈夫」と安易に判断しないよう注意が必要です。
構築物の判断も慎重に
改正後は、構築物についても特定施設に係る事業の遂行上必要なものに限られます。
構築物には、たとえば舗装、門、塀、看板、排水設備、貯蔵設備、構内道路など、さまざまなものが含まれます。
これらが買換資産となる場合には、その構築物が特定施設に係る事業遂行上必要なものかどうかを確認する必要があります。
たとえば、工場の操業に必要な構内舗装や排水設備、倉庫の運営に必要な荷さばきスペースの舗装などは、事業遂行上必要な構築物として検討できる可能性があります。
一方で、福利厚生施設に付随する構築物や、事業遂行との関係が薄い構築物については、慎重な判断が必要です。
契約前に税務確認をすることが重要
特定資産の買換え特例は、不動産取引が実行された後に要件を確認しても、手遅れになることがあります。
特に今回の改正後は、建物・構築物が特定施設関連に該当するかが重要になります。そのため、売買契約や取得計画の段階で、税務上の要件を確認しておくことが大切です。
具体的には、次のような資料を事前に整理しておくとよいでしょう。
譲渡資産の取得時期が分かる資料
譲渡資産の所有期間を確認できる資料
買換資産の売買契約書
買換資産の利用計画
建物の用途が分かる資料
構築物の内容と利用目的が分かる資料
土地面積を確認できる資料
事業供用開始時期が分かる資料
不動産の取得金額が大きいほど、特例の適用可否による税負担の差も大きくなります。事前確認はかなり大事です。
まとめ
令和8年度税制改正により、特定資産の買換え特例のうち、所有期間10年超の長期所有土地等から国内資産への買換え、いわゆる3号買換えについて、買換資産の対象範囲が見直されました。
改正後は、買換資産となる建物は特定施設の用に供されるものに限定され、構築物は特定施設に係る事業の遂行上必要なものに限定されます。土地等については、従来どおり、特定施設の敷地または駐車場の用に供されるもので、面積300平方メートル以上であることが求められます。
一方で、特定施設の範囲自体に変更はありません。事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設は、従来どおり特定施設に該当します。ただし、社宅、寮、保養所、体育館、食堂などの福利厚生施設は、引き続き特定施設から除外されます。
また、3号買換えの適用期限は令和11年3月31日まで3年延長されています。改正後の取扱いは、令和8年4月1日以後に譲渡資産を譲渡し、買換資産を取得した場合に適用されますが、譲渡または取得のいずれかが同日前に行われている場合には、従前の例によることとされています。
3号買換えは、不動産の売却・取得を伴うため金額が大きくなりやすい制度です。適用を検討する場合は、買換資産が特定施設関連に該当するか、福利厚生施設に当たらないか、契約前の段階から確認しておきましょう。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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