同一事業年度内の買換えは届出が必須|特定資産の買換え特例で失念しやすい期限に注意
- 安田 亮
- 7月19日
- 読了時間: 6分
更新日:7月28日
おはようございます!代表の安田です。
土地や建物などを売却して、別の資産へ買い換える場面では、特定資産の買換え特例の適用を検討することがあります。この特例を使うことで、一定の要件を満たせば、譲渡益の一部について圧縮記帳が認められ、課税の繰延べが可能になります。
もっとも、買換え特例は単に「売って買った」だけで自動的に使える制度ではありません。特に見落としやすいのが、同一事業年度内に譲渡資産の譲渡と買換資産の取得を行なう場合の届出書提出です。
このケースでは、一定期間内に所轄税務署長へ届出書を提出すること自体が適用要件とされています。しかも、確定申告時に添付すればよいのではなく、事前の意思表示として期限内に提出しなければならない点が重要です。
本日は、特定資産の買換え特例のうち、特に失念が多い同一事業年度内の買換えと届出について、実務上の注意点を整理して解説します。

特定資産の買換え特例とは?
特定資産の買換え特例は、所有期間10年超の土地や建物等を譲渡し、一定の買換資産を取得した場合に、税務上の特例が認められる制度です。所有期間10年超の土地や建物等を買い換えた場合には、措置法65条の7第1項による圧縮記帳が認められます。
法人にとっては、不動産の入替えや事業用資産の見直しに伴って利用を検討することが多く、譲渡益への課税を平準化できる重要な制度の一つです。
同一事業年度内の買換えで届出が必要になる理由
この制度では、買換えのタイミングによって手続が変わります。
同一事業年度内に譲渡資産の譲渡と買換資産の取得をする場合には、一定期間内に税務署長へ「特定の資産の買換えの場合の課税の特例の適用に関する届出書」を提出することが要件になります。
これは、単に申告書作成時に結果だけ示せばよいという制度ではなく、「この特例を使う意思がある」ことを、事前に税務署へ示す必要があるという仕組みだからです。
いつまでに届出が必要なのか
届出期限は少し独特なので、実務で間違えやすいところです。
同一事業年度内に譲渡と取得を行なう場合の届出期限は、「譲渡資産の譲渡日と買換資産の取得日のいずれか早い日を含む3か月期間の末日の翌日から2か月以内」です。
文章だけだと分かりにくいのですが、要するに、まず「早いほうの日」が属する3か月区分を見て、その3か月区分の末日の翌日から2か月以内という流れで期限を計算します。
このため、決算日を基準にするのではなく、譲渡日や取得日を基準に逆算して管理する必要があります。
3月決算法人の具体例
3月決算法人の具体例を考えてみましょう。
それによると、3月決算法人が令和8年4月に譲渡資産を譲渡した場合には、令和8年8月末までに所轄税務署長へ届出書を提出することになります。
この例からも分かるように、届出期限は意外と早く到来します。
「決算時にまとめて整理しよう」と考えていると、その時点ではすでに提出期限を過ぎているおそれがあります。
届出書に記載する内容
届出書には次のような事項を記載します。
譲渡資産の譲渡年月日
譲渡価額
取得見込資産の取得予定年月日
取得価額
つまり、制度適用の有無だけを届ける簡単な通知ではなく、譲渡資産と買換資産の計画内容を具体的に示す書類という位置付けです。
確定申告時の添付では足りない点に注意
ここが最も重要な実務ポイントです。
届出書は確定申告時に添付するのではなく、同特例の適用を受けるための意思表示として事前の提出が求められると明記されています。
この点を誤解していると、「決算時に申告書へ添付すれば大丈夫」と思ってしまいがちですが、それでは間に合いません。実際、届出書の提出失念により同特例の適用が受けられない事例が多いと言われています。
失念しやすい理由
この届出が漏れやすい理由はいくつかあります。
まず、買換え特例というと、どうしても法人税申告書作成時の論点として捉えられやすいことです。ところが、実際には申告よりかなり前の段階で手続が必要になります。
また、不動産売買や設備投資の現場では、
契約担当は総務・管理部門
仕訳処理は経理部門
税務判断は顧問税理士
というように情報が分散しやすく、届出の必要性が共有されないまま期限が過ぎてしまうことがあります。
先行取得の場合も届出が必要
通常の買換え特例だけでなく、先行取得の場合の特例(措法65の7第3項)の場合も、買換資産の取得日を含む事業年度終了日の翌日から2か月以内に届出書の提出が必要とされています。つまり、
同一事業年度内の譲渡・取得
先行取得型の買換え
のいずれでも、届出実務は重要です。
実務で確認したいポイント
この特例を使う可能性がある場合は、少なくとも次の点を早めに確認しておくと安心です。
まず、譲渡資産が買換え特例の対象になり得るか。次に、譲渡日と取得日が同一事業年度内に入るか。そして、入る場合には、届出期限を具体的な日付で管理表に落とし込むことが大切です。
特に不動産譲渡や高額資産の入替えは、決算・申告まで待たず、契約段階で税理士へ共有しておくべきテーマです。
こんなケースは要注意
次のようなケースでは、届出失念のリスクが高くなります。
不動産売却と新規取得を同じ期に予定している
事業再編で拠点移転を進めている
決算月から離れた時期に譲渡がある
社内で税務手続の管理者が明確でない
顧問税理士への相談が申告直前になりやすい
こうした会社ほど、制度要件だけでなく届出期限の管理が重要になります。
まとめ
特定資産の買換え特例では、所有期間10年超の土地や建物等を譲渡して買換資産を取得する場合に、一定の要件のもとで圧縮記帳が認められます。
ただし、同一事業年度内に譲渡資産の譲渡と買換資産の取得をする場合には、「譲渡資産の譲渡日と買換資産の取得日のいずれか早い日を含む3か月期間の末日の翌日から2か月以内」に、所轄税務署長へ届出書を提出することが適用要件になります。
さらに、この届出は確定申告時の添付では足りず、事前の意思表示として提出が必要であり、提出失念により適用を受けられない事例も多いと言われています。
買換え特例は有利な制度ですが、期限管理を誤ると使えなくなる制度でもあります。土地や建物の売却・買換えを予定している場合は、契約や取得の段階で早めに税理士へ相談し、届出漏れを防ぐことが大切です。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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