指定寄附金とは?法人が寄附金を全額損金算入できるケースと申告時の注意点を税理士が解説
おはようございます!代表の安田です。
法人が寄附金を支出した場合、税務上はその全額を自由に損金算入できるわけではありません。
取引先、地域団体、学校、公益法人、イベント実行委員会、災害支援団体などに寄附をした場合、会計上は寄附金として費用処理していても、法人税の計算では一定の限度額を超える部分が損金不算入となることがあります。
一方で、寄附金の中には、法人税法上、その全額を損金算入できるものがあります。
代表的なものが、国や地方公共団体に対する寄附金、そして今回取り上げる「指定寄附金」です。
指定寄附金に該当すれば、一般の寄附金の損金算入限度額とは別に、原則として支出額の全額を損金算入できます。
ただし、実務では「寄附先が公益法人だから全額損金になる」「学校への寄附だから指定寄附金になる」といった単純な判断は危険です。
指定寄附金に該当するかどうかは、財務大臣の指定を受けているか、告示の対象となる寄附金か、募集期間や使途などの要件を満たしているかを確認する必要があります。
本日は、法人が支出する指定寄附金について、全額損金算入できる理由、包括指定と個別指定の違い、申告書の記載方法、実務上の注意点を解説します。
法人が支出する寄附金の基本
法人税では、法人が支出した寄附金について、原則として損金算入限度額が設けられています。
寄附金とは、寄附金、拠出金、見舞金などの名目にかかわらず、法人が行う金銭その他の資産または経済的利益の贈与や無償の供与をいいます。
たとえば、次のような支出は寄附金に該当する可能性があります。
公益団体への寄附
地域イベントへの協賛金
学校や研究機関への寄附
政治団体や社会事業団体への拠出金
神社祭礼への寄進
災害義援金
取引関係のない団体への金銭支出
ただし、すべての無償支出が寄附金になるわけではありません。
広告宣伝費、交際費、福利厚生費など、事業遂行と直接関係のある支出として処理すべきものもあります。
そのため、まずはその支出が税務上の寄附金に該当するのか、広告宣伝費や交際費等に該当するのかを確認する必要があります。
一般の寄附金は損金算入限度額がある
法人が一般の寄附金を支出した場合、その全額が損金になるわけではありません。
普通法人などでは、資本金等の額や所得金額を基に計算した損金算入限度額の範囲内でのみ、損金算入が認められます。
限度額を超える部分は、法人税の計算上、損金不算入となります。
つまり、会計上は費用として処理していても、税務上は別表四で加算調整が必要になることがあります。
たとえば、決算書では寄附金100万円を費用処理していても、税務上の損金算入限度額が30万円であれば、70万円は損金不算入となります。
このように、法人の寄附金は、支出先や寄附金の性質によって税務上の取扱いが大きく変わります。
全額損金算入できる寄附金
法人が支出する寄附金の中には、損金算入限度額の制限を受けず、全額損金算入できるものがあります。
代表的なものは、次の2つです。
国または地方公共団体に対する寄附金
指定寄附金
国や地方公共団体に対する寄附金は、原則として支出した全額が損金算入されます。
また、指定寄附金についても、原則として全額損金算入が認められます。
ただし、指定寄附金は、寄附先が公益性のある団体であれば自動的に該当するわけではありません。財務大臣による指定がある寄附金であることが必要です。
指定寄附金とは
指定寄附金とは、公益法人等に対する寄附金のうち、一定の要件を備えるものとして財務大臣が指定したものをいいます。
具体的には、広く一般に募集される寄附金であり、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など、公益性の高い目的に使われるものが対象になります。
また、その支出が緊急を要するものに充てられることが確実であることも重要です。
指定寄附金に該当する場合、法人が支出した金額は原則として全額損金算入されます。
一般の寄附金のように、資本金等の額や所得金額に基づく損金算入限度額の計算に含める必要はありません。
そのため、法人にとっては税務上非常に有利な取扱いです。
指定寄附金には包括指定と個別指定がある
指定寄附金は、大きく分けて「包括指定」と「個別指定」があります。
包括指定とは、財務大臣の職権により、一般包括的に指定される寄附金です。
代表的なものとして、学校教育関係の寄附金や、各都道府県共同募金会への寄附金などがあります。
一方、個別指定とは、募金団体である公益法人等の申請を参考に、寄附金の使途、募集目標額、募集期間、公益性などを個別に審査したうえで、財務大臣が指定するものです。
たとえば、大規模な公益イベント、国際博覧会、文化・教育・科学振興に関する特定事業などに係る寄附金が個別指定されることがあります。
実務では、寄附先から「この寄附金は指定寄附金です」と案内されることがありますが、それだけで判断せず、告示番号や指定期間、対象事業を確認することが重要です。
包括指定の具体例
包括指定の指定寄附金は、一定の類型について包括的に指定されているものです。
代表的なものには、学校教育や共同募金に関する寄附金などがあります。
たとえば、学校法人に対する一定の寄附金、大学や研究機関の教育・研究活動を支援する寄附金、共同募金会を通じた寄附金などが該当することがあります。
ただし、学校法人や公益法人に対する寄附であれば、すべてが指定寄附金になるわけではありません。
同じ学校法人への寄附であっても、指定寄附金に該当するもの、特定公益増進法人に対する寄附金として別枠限度額の対象になるもの、一般寄附金になるものがあります。
寄附金の税務処理では、寄附先の法人格だけでなく、どの制度に基づく寄附金なのかを確認することが欠かせません。
個別指定の具体例
個別指定は、特定の募金事業について財務大臣が個別に指定するものです。
たとえば、公益性の高いイベントや施設整備、文化振興、教育・研究支援、国際的な事業などについて、寄附金の募集団体が申請し、財務大臣が指定する形です。
現在募集中の個別指定の例として、2027年国際園芸博覧会の開催費用に対する寄附金が挙げられます。
個別指定の寄附金では、告示により対象となる寄附金、募集期間、寄附金の使途などが定められます。
法人が寄附を行う場合には、自社が支出した日が指定期間内か、寄附先が対象団体か、寄附金の使途が告示の対象に含まれるかを確認する必要があります。
学校法人設立準備法人への寄附金
令和5年度税制改正では、社会で求められる人材の育成を後押しする観点から、大学等の設置に向けた寄附を促進する新たな枠組みが設けられました。
具体的には、大学、高等専門学校、一定の専門学校を設置する学校法人または準学校法人の設立を目的とする法人、いわゆる学校法人設立準備法人に対する一定の寄附金について、指定寄附金として全額損金算入できる取扱いが設けられています。
この取扱いを受けるには、一定の要件を満たす必要があります。
たとえば、学校法人等の設立に関する認可があることが確実であると認められる場合に行われる寄附金であり、その設立のための費用に充てられるものであることなどが求められます。
また、学校法人設立準備法人から財務大臣への届出が必要です。
寄附をする法人側では、寄附先からの案内だけでなく、届出の有無、対象期間、寄附金の使途を確認しておきましょう。
指定寄附金と特定公益増進法人への寄附金の違い
指定寄附金と混同しやすいものに、特定公益増進法人に対する寄附金があります。
特定公益増進法人に対する寄附金は、一般の寄附金とは別枠で、一定の損金算入限度額まで損金算入できる制度です。
一方、指定寄附金は、原則として支出額の全額が損金算入されます。
つまり、指定寄附金の方が、損金算入の面では有利です。
ただし、どちらに該当するかは、寄附先や寄附金の内容によって異なります。
たとえば、公益法人に対する寄附だからといって、必ず指定寄附金になるわけではありません。
指定寄附金ではなく、特定公益増進法人に対する寄附金として処理するケースもあります。
また、どちらにも該当しない場合には、一般の寄附金として損金算入限度額の範囲内で処理することになります。
指定寄附金の確認方法
指定寄附金に該当するかどうかを確認するには、次の資料を確認しましょう。
寄附先が発行する募集要項
寄附金の領収書
指定寄附金である旨の証明書や案内文
財務省告示の番号
指定期間
寄附金の使途
寄附先の法人名
寄附金募集の対象事業
特に重要なのは、告示番号と指定期間です。
指定寄附金は、財務省告示として官報で随時公表されます。
新たに指定された場合や、指定期間が延長された場合も告示されます。
法人が申告する際には、別表十四(二)に寄附先や告示番号等を記載する必要があるため、領収書や寄附先からの案内を保管しておきましょう。
寄附金を支出した時期にも注意
法人税法上、寄附金は、現実に金銭等により支払いが行なわれたときに支出があったものとして扱われます。
そのため、未払寄附金は、原則として寄附金の額に含まれません。
たとえば、決算日までに寄附を申し込んでいても、実際の支払いが翌期であれば、当期の寄附金として損金算入することはできません。
また、指定寄附金には、告示で募集期間や指定期間が定められていることがあります。
指定期間外に支出した寄附金は、指定寄附金として扱えない可能性があります。
寄附金の損金算入を検討する際には、寄附を申し込んだ日ではなく、実際に支払った日、領収書の日付、指定期間との関係を確認しましょう。
別表十四(二)への記載が必要
法人が寄附金を支出した場合、法人税申告書では別表十四(二)を作成します。
指定寄附金については、別表十四(二)の「指定寄附金等に関する明細」に、寄附先、所在地、支出年月日、支出金額、告示番号などを記載します。
この記載により、法人が支出した寄附金が指定寄附金に該当し、全額損金算入できるものであることを申告書上で明らかにします。
実務上、次のようなミスが起こりやすいです。
指定寄附金なのに一般寄附金欄に記載している
告示番号の記載を漏らしている
寄附先の名称や所在地が領収書と一致していない
支出年月日を誤っている
領収書が保存されていない
指定期間外の寄附を指定寄附金として処理している
別表十四(二)は、寄附金の損金算入額に直接影響する重要な別表です。
寄附金がある場合には、領収書と別表の記載内容を必ず照合しましょう。
告示番号の確認は意外と手間がかかる
指定寄附金の申告で実務上手間がかかるのが、告示番号の確認です。
指定寄附金は、財務省告示として官報で公表されます。
新設、期間延長、内容変更がある場合も、告示として随時公表されます。
そのため、申告時には、寄附先から受け取った資料だけでなく、告示番号や指定内容が正しいかを確認する必要があります。
特に、個別指定の寄附金では、対象となる寄附金の募集期間や使途が限定されていることがあります。「寄附先が有名な公益団体だから大丈夫」と考えず、必ず指定寄附金としての根拠を確認しましょう。
寄附先に問い合わせれば、告示番号や指定寄附金に該当する旨の資料を提供してもらえることが多いです。
領収書・証明書の保存
指定寄附金として全額損金算入するには、寄附金の支出を証明できる資料の保存が重要です。
保存しておきたい資料は次のとおりです。
寄附金の領収書
指定寄附金である旨の証明書
募集要項
寄附申込書
振込控え
財務省告示番号が分かる資料
寄附先からの案内文
取締役会議事録や稟議書
寄附の目的や経緯が分かる資料
税務調査では、寄附金の支出先、支出日、支出金額、寄附金の性質が確認されることがあります。
特に全額損金算入している場合には、指定寄附金に該当する根拠を説明できるようにしておく必要があります。
寄附金と広告宣伝費・交際費の区分
法人が外部団体に支出する金銭は、必ずしも寄附金とは限りません。
たとえば、イベント協賛金を支出し、その対価として会社名がパンフレットやWebサイトに掲載される場合、広告宣伝費に該当することがあります。
また、取引先との関係維持を目的とする支出であれば、交際費等に該当する可能性もあります。
一方、見返りがなく、事業との直接的な関係も乏しい支出であれば、寄附金として処理することになります。
税務上は、名目ではなく実態で判断します。
「協賛金」「賛助金」「会費」「支援金」「負担金」といった名称であっても、実質的に無償の供与であれば寄附金に該当することがあります。
指定寄附金として処理する前に、まずその支出が寄附金なのか、広告宣伝費や交際費なのかを確認しましょう。
役員個人が負担すべき寄附金に注意
法人が寄附金として支出したものであっても、実質的には役員個人が負担すべき性格の支出である場合には、税務上、役員給与として扱われる可能性があります。
たとえば、役員個人の関係先や私的な活動に関連する寄附を、法人名義で支出しているような場合です。
この場合、法人の寄附金として処理するのではなく、役員に対する給与として扱われることがあります。
役員給与に該当すると、損金算入の可否や源泉所得税の問題が生じます。
指定寄附金であっても、法人として支出する合理的な理由があるか、社内決裁が適切かを確認しておくことが大切です。
現物寄附の場合の取扱い
寄附金は、金銭で支出する場合だけではありません。
法人が物品や資産を無償で提供する場合も、寄附金に該当することがあります。
現物寄附の場合、寄附金の額は、その資産を贈与した時の時価で計算します。
たとえば、法人が保有する物品、機械、備品、土地、建物、有価証券などを無償で提供した場合には、時価評価が必要になることがあります。
指定寄附金として全額損金算入できるかどうかは、金銭寄附と同様に、指定寄附金の対象となる支出に該当するかを確認する必要があります。
また、資産の譲渡に伴う消費税や法人税上の譲渡損益が問題になる場合もあります。
現物寄附を行う場合には、事前に税務上の取扱いを確認しておきましょう。
災害義援金との違い
災害発生時には、法人が義援金や支援金を支出することがあります。
国や地方公共団体に対する寄附金であれば、原則として全額損金算入されます。
また、日本赤十字社や共同募金会などを通じた義援金についても、最終的に国や地方公共団体へ拠出されるものなどは、全額損金算入できる場合があります。
一方、任意団体や民間団体に対する支援金については、支出先や使途によって取扱いが異なります。
指定寄附金に該当するもの、特定公益増進法人に対する寄附金に該当するもの、一般寄附金になるものがあり得ます。
災害支援を目的とする寄附であっても、税務上の区分は自動的に決まりません。
領収書や募集要項で、税務上どの寄附金に該当するかを確認しましょう。
指定寄附金の実務チェックポイント
法人が指定寄附金として処理する場合には、次の点を確認しましょう。
寄附先から指定寄附金である旨の案内を受けているか
財務大臣の指定を受けた寄附金か
包括指定か個別指定か
財務省告示番号を確認しているか
定期間内に支出しているか
寄附金の使途が告示の対象に含まれているか
領収書や証明書を保存しているか
支出日は実際の支払日で処理しているか
別表十四(二)の指定寄附金等に関する明細に記載しているか
一般寄附金や特定公益増進法人への寄附金と区分しているか
役員個人が負担すべき寄附金ではないか
広告宣伝費や交際費に該当する支出ではないか
指定寄附金は全額損金算入できるため、税務上の効果が大きい支出です。
その分、根拠資料と申告書の記載を丁寧に整えておくことが重要です。
よくある誤解
指定寄附金について、実務上よくある誤解を整理します。
公益法人への寄附ならすべて指定寄附金になる
公益法人への寄附であっても、指定寄附金に該当しない場合があります。
その場合、特定公益増進法人への寄附金や一般寄附金として処理することになります。
学校への寄附なら必ず全額損金になる
学校法人への寄附であっても、指定寄附金に該当するもの、特定公益増進法人への寄附金に該当するもの、一般寄附金になるものがあります。
寄附先と寄附目的を確認する必要があります。
寄附を決議した期に損金算入できる
法人税法上、寄附金は現実に支払いが行われたときに支出があったものとして扱います。
未払寄附金は、原則として当期の寄附金には含まれません。
領収書があれば十分
指定寄附金として処理するには、領収書だけでなく、指定寄附金に該当する根拠、告示番号、指定期間なども確認しておく必要があります。
まとめ
法人が支出した寄附金は、原則として損金算入限度額の範囲内でしか損金算入できません。
しかし、国または地方公共団体に対する寄附金や、財務大臣が指定した指定寄附金については、原則として支出額の全額を損金算入できます。
指定寄附金とは、公益法人等に対する寄附金のうち、教育または科学の振興、文化の向上などに寄与するための支出で、緊急を要するものに充てられることが確実であるとして、財務大臣が指定したものです。
指定寄附金には、学校教育関係や共同募金会への寄附金などの包括指定と、個別の募金事業ごとに財務大臣が指定する個別指定があります。
令和5年度税制改正では、大学等の設置を目的とする学校法人設立準備法人への一定の寄附金について、全額損金算入できる新たな枠組みも設けられています。
指定寄附金として申告する場合には、別表十四(二)の「指定寄附金等に関する明細」に、寄附先、支出年月日、支出金額、告示番号等を記載する必要があります。
また、領収書、募集要項、指定寄附金である旨の証明資料、告示番号が分かる資料を保存しておくことが大切です。
寄附金は、支出先や制度区分によって、全額損金算入、別枠限度額の範囲内で損金算入、一般寄附金として限度額計算、全額損金不算入など、取扱いが大きく異なります。
法人が寄附を行う場合は、支出前または申告前に、指定寄附金に該当するかどうかを確認し、税務処理と申告書記載を正しく行いましょう。
指定寄附金や法人の寄附金処理で迷う場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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