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受取配当等の益金不算入でよくある間違いを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 11 分前
  • 読了時間: 13分

こんにちは!代表の安田です。


法人が他の法人から配当金を受け取った場合、その配当金は会計上、受取配当金などとして収益に計上されます。


しかし、法人税では、一定の受取配当等について、二重課税を調整するために「受取配当等の益金不算入制度」が設けられています。


この制度を使うと、法人が受け取った配当等の全部または一部を、法人税の所得計算上、益金に算入しないことができます。


ただし、実務ではこの制度について、株式等の区分を誤るケースが少なくありません。

特に多いのが、持株割合5%以下の非支配目的株式等に該当するにもかかわらず、「完全子法人株式等にも関連法人株式等にも該当しないから、その他の株式等だろう」と判断してしまう誤りです。


この誤りをすると、益金不算入額を過大に計上してしまい、法人税の申告誤りにつながります。本日は、受取配当等の益金不算入制度の基本、4つの株式区分、非支配目的株式等とその他の株式等の違い、令和4年4月1日以後開始事業年度からの改正内容、決算実務でのチェックポイントを解説します。


受取配当等の益金不算入制度とは

受取配当等の益金不算入制度とは、法人が内国法人から受ける配当等について、一定額を法人税の所得計算上、益金に算入しない制度です。

法人税では、会社が利益を稼いだ段階で法人税が課税されます。


その税引後利益を原資として株主である法人へ配当が行なわれ、その法人側でも配当収入に法人税が課されると、法人段階で二重に課税されることになります。


この二重課税を一定程度調整するために、受取配当等の益金不算入制度があります。

ただし、受け取った配当の全額が必ず益金不算入になるわけではありません。

配当の基因となる株式等をどの程度保有しているかによって、益金不算入割合が変わります。


受取配当等は4つの株式区分で判定する

受取配当等の益金不算入制度では、配当の基因となる株式等を、主に次の4区分に分けて判定します。

1. 完全子法人株式等
2. 関連法人株式等
3. その他の株式等
4. 非支配目的株式等

それぞれの区分によって、益金不算入割合が異なります。

大まかに整理すると、次のようになります。

完全子法人株式等
→ 100%保有関係にある株式等
→ 配当等の額の全額が益金不算入

関連法人株式等
→ 原則として3分の1超100%未満を保有する株式等
→ 負債利子控除後の金額が益金不算入

その他の株式等
→ 5%超3分の1以下を保有する株式等
→ 配当等の額の50%が益金不算入

非支配目的株式等
→ 5%以下を保有する株式等
→ 配当等の額の20%が益金不算入

実務上は、この4区分を正しく判定することが最も重要です。

配当金の金額だけを見て益金不算入額を計算するのではなく、その配当の基因となる株式がどの区分に該当するかを確認しなければなりません。


よくある誤りは「非支配目的株式等」の見落とし

受取配当等の益金不算入で特に多い誤りが、非支配目的株式等の見落としです。

非支配目的株式等とは、簡単にいうと、持株割合が5%以下の株式等です。


この区分に該当する場合、益金不算入割合は20%です。

ところが実務では、次のように誤って判断してしまうことがあります。

完全子法人株式等ではない
関連法人株式等でもない
 → だから、その他の株式等に該当する

この考え方は危険です。

「完全子法人株式等でも関連法人株式等でもない株式」が、すべて「その他の株式等」になるわけではありません。


持株割合が5%以下であれば、その他の株式等ではなく、非支配目的株式等に該当します。

この点を見落として、5%以下の株式をその他の株式等として処理すると、益金不算入割合を20%ではなく50%で計算してしまうことになります。

結果として、益金不算入額が過大になり、課税所得を少なく申告してしまいます。


具体例:5%以下なのに50%益金不算入で計算してしまうケース

たとえば、法人A社が、上場会社B社の株式を2%保有しており、B社から配当金100万円を受け取ったとします。


この場合、A社のB社株式の保有割合は5%以下です。

したがって、原則として非支配目的株式等に該当し、益金不算入割合は20%です。

受取配当金:100万円
益金不算入割合:20%
益金不算入額:20万円

ところが、これを誤って「その他の株式等」として処理すると、益金不算入割合は50%になります。

受取配当金:100万円
誤った益金不算入割合:50%
誤った益金不算入額:50万円

この場合、本来の益金不算入額20万円に対して、30万円多く益金不算入として処理していることになります。


1件あたりの差額は小さく見えても、複数銘柄の配当がある法人や、保有株式が多い法人では、申告誤りの金額が大きくなることがあります。


令和4年4月1日以後開始事業年度からの改正点

受取配当等の益金不算入制度については、令和4年4月1日以後開始事業年度から、主に次の見直しが行なわれています。

・株式等の区分判定における保有割合の見直し
・関連法人株式等に係る負債利子控除額の計算の簡素化

特に、完全支配関係がある法人グループで株式を保有している場合には、区分判定に注意が必要です。


従来は、関連法人株式等や非支配目的株式等の判定について、原則として個社ごとに持株割合を判定していました。

改正後は、その法人と完全支配関係がある法人が保有する株式等も含めて、保有割合を判定することとされています。これにより、自社単体では5%以下であっても、完全支配関係にあるグループ会社の保有分を合算すると5%超になるケースや、3分の1超になるケースが出てきます。


その結果、株式区分が変わり、益金不算入割合が変わる可能性があります。


完全支配関係法人の保有分を合算する場合がある

たとえば、親会社A社がC社株式を4%保有し、A社の100%子会社B社がC社株式を3%保有しているケースを考えます。


A社単体で見ると、C社株式の保有割合は4%です。

改正前の感覚で判定すると、5%以下なので非支配目的株式等に該当すると考えやすいでしょう。しかし、令和4年4月1日以後開始事業年度からは、完全支配関係にある法人の保有分を含めて判定する場面があります。


A社とB社が完全支配関係にある場合、A社の4%とB社の3%を合算すると、グループ全体では7%になります。この場合、5%超となるため、非支配目的株式等ではなく、その他の株式等に該当する可能性があります。

A社保有分:4%
B社保有分:3%
合算保有割合:7%

5%超3分の1以下
→ その他の株式等に該当する可能性

このように、改正後は自社単体の持株割合だけでなく、完全支配関係法人の保有状況も確認する必要があります。グループ会社が複数ある場合は、決算時に各社の株式保有状況を共有しておくことが重要です。


関連法人株式等の負債利子控除額は簡素化された

関連法人株式等については、配当等の額から負債利子控除額を差し引いた金額が益金不算入となります。

以前の負債利子控除額の計算は複雑で、支払利子や総資産、関連法人株式等の帳簿価額などを用いて計算する必要がありました。


令和4年4月1日以後開始事業年度からは、事務負担を軽減する観点から、関連法人株式等に係る負債利子控除額の計算が簡素化されています。原則として、関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額が負債利子控除額となります。

関連法人株式等に係る配当等の額 × 4%
= 負債利子控除額

たとえば、関連法人株式等に係る配当等の額が1,000万円の場合、原則として40万円が負債利子控除額となります。この場合、益金不算入額は次のように計算します。

配当等の額:1,000万円
負債利子控除額:40万円
益金不算入額:960万円

ただし、原則とは異なる経過措置や特例的な取扱いが関係する場合もあるため、実際の申告では別表の記載要領や最新の法令・通達を確認する必要があります。


配当を受けたらまず確認すべきこと

法人が配当金を受け取った場合、決算時には次の順番で確認すると整理しやすくなります。


1. 配当の支払法人を確認する

どの法人から受け取った配当なのかを確認します。

内国法人からの配当なのか、外国法人からの配当なのかによって、適用される制度が異なります。この記事では、主に内国法人からの受取配当等を前提にしています。


2. 配当の基準日を確認する

株式区分の判定では、配当の基準日や効力発生日が重要になります。

期中に株式を売買している場合は、どの時点の保有割合で判定するのかを確認します。


3. 持株割合を確認する

配当の基因となる株式について、持株割合を確認します。

完全子法人株式等、関連法人株式等、その他の株式等、非支配目的株式等のどれに該当するかを判定します。


4. 完全支配関係法人の保有分を確認する

令和4年4月1日以後開始事業年度からは、関連法人株式等や非支配目的株式等の判定で、完全支配関係法人の保有分を含める必要があります。

自社だけでなく、親会社・子会社・兄弟会社などの保有状況も確認しましょう。


5. 益金不算入割合を確認する

株式区分に応じて、益金不算入割合を確認します。

非支配目的株式等は20%、その他の株式等は50%です。

この2つを取り違えると、申告誤りが生じやすくなります。


6. 関連法人株式等は負債利子控除を確認する

関連法人株式等に該当する場合は、負債利子控除額を差し引く必要があります。

改正後は原則として配当等の額の4%相当額を控除します。


会計処理と法人税申告は別に考える

受取配当金は、会計上は収益として処理します。

たとえば、配当金を受け取った場合には、次のような仕訳になります。

現金預金 / 受取配当金

この会計処理自体は、受取配当等の益金不算入制度を適用するかどうかにかかわらず行います。そのうえで、法人税申告書の別表で、益金不算入額を所得金額から減算します。

つまり、会計上の収益を消すのではなく、税務申告上で益金不算入額を調整するイメージです。


実務では、会計ソフトに受取配当金が計上されているだけでは、益金不算入額は自動的に正しく計算されないことがあります。銘柄ごとの持株割合、株式区分、配当金額、源泉所得税額などを整理した明細を作成し、法人税申告書に反映する必要があります。


上場株式の少額配当でも判定は必要

受取配当等の益金不算入制度は、子会社や関連会社からの配当だけでなく、上場株式の配当にも関係します。

会社が余裕資金の運用として上場株式を保有している場合、その持株割合は通常5%以下であることが多いでしょう。

この場合、多くは非支配目的株式等に該当します。

ところが、少額の上場株式配当について、「子会社でも関連会社でもないからその他の株式等」として処理してしまうと、益金不算入割合を50%で計算してしまう誤りが起こります。上場株式の配当は1件ごとの金額が小さいこともありますが、制度上は区分判定が必要です。


特に、法人が複数の上場株式を保有している場合や、投資有価証券が多い会社では、非支配目的株式等の処理を定型化しておくとよいでしょう。


過年度の区分誤りが見つかった場合

受取配当等の益金不算入の区分誤りが過年度に見つかった場合には、修正申告が必要になることがあります。


たとえば、本来は非支配目的株式等として20%益金不算入にすべきところ、その他の株式等として50%益金不算入で申告していた場合、過大に益金不算入額を計上していたことになります。

この場合、過年度の課税所得が過少になっているため、修正申告や追加納税が必要になる可能性があります。


反対に、改正後の完全支配関係法人の合算判定により、従来よりも有利な区分になるケースも考えられます。


ただし、過年度分については、その事業年度に適用されていた法令に基づいて判断する必要があります。誤りが見つかった場合は、対象年度、配当金額、株式区分、益金不算入額を一覧化し、税理士に相談しながら対応しましょう。


実務上のチェックリスト

受取配当等の益金不算入制度を適用する際は、次の点を確認しましょう。

・配当の支払法人は内国法人か
・配当の基因となる株式等を保有しているか
・配当の基準日、効力発生日を確認したか
・保有割合を確認したか
・完全子法人株式等に該当するか
・関連法人株式等に該当するか
・その他の株式等に該当するか
・非支配目的株式等に該当するか
・5%以下の株式をその他の株式等として処理していないか
・完全支配関係法人の保有分を合算して判定したか
・関連法人株式等の負債利子控除額を計算したか
・法人税申告書の別表に正しく反映したか
・過年度も同じ誤りがないか

決算時には、受取配当金の総額だけでなく、銘柄ごとの明細を作成することが大切です。


税務調査で確認されやすい資料

受取配当等の益金不算入制度については、税務調査で次のような資料が確認されることがあります。

・配当金計算書
・支払通知書
・投資有価証券の明細
・株主名簿
・保有株式数の推移表
・配当基準日時点の保有割合資料
・グループ会社の保有株式一覧
・完全支配関係を示す資本関係図
・法人税申告書別表
・益金不算入額の計算資料
・負債利子控除額の計算資料

特に、令和4年度改正後は、完全支配関係法人の保有分を含めて区分判定しているかが重要になります。グループ会社がある法人では、自社の保有分だけでなく、グループ内の保有状況を確認できる資料を保存しておきましょう。


よくある誤解

  • 完全子法人株式等・関連法人株式等でなければ、すべてその他の株式等になる

誤りです。持株割合が5%以下であれば、非支配目的株式等に該当します。その他の株式等は、原則として5%超3分の1以下の株式等です。


  • 上場株式の配当はすべてその他の株式等で処理すればよい

上場株式であっても、持株割合が5%以下であれば非支配目的株式等に該当します。多くの上場株式投資では、この区分になることが多いため注意が必要です。


  • 非支配目的株式等とその他の株式等は税額への影響が小さい

非支配目的株式等の益金不算入割合は20%、その他の株式等は50%です。区分を誤ると益金不算入額が大きく変わります。


  • 自社単体の持株割合だけ確認すればよい

令和4年4月1日以後開始事業年度からは、関連法人株式等や非支配目的株式等の判定で、完全支配関係法人が保有する株式等も含めて判定します。


  • 関連法人株式等は配当全額が益金不算入になる

関連法人株式等については、負債利子控除額を差し引いた金額が益金不算入となります。改正後は原則として配当等の額の4%相当額を控除します。


まとめ

受取配当等の益金不算入制度は、法人が受け取る配当について、法人税の二重課税を調整する重要な制度です。しかし、制度を正しく適用するには、配当の基因となる株式等を正しく区分する必要があります。


株式等の区分は、完全子法人株式等、関連法人株式等、その他の株式等、非支配目的株式等の4つです。


実務で特に多い誤りは、持株割合5%以下の非支配目的株式等を見落とし、「完全子法人株式等でも関連法人株式等でもないからその他の株式等」として処理してしまうケースです。

非支配目的株式等の益金不算入割合は20%であるのに対し、その他の株式等は50%です。

そのため、5%以下の株式をその他の株式等として処理すると、益金不算入額を過大に計上してしまいます。


また、令和4年4月1日以後開始事業年度からは、関連法人株式等や非支配目的株式等の判定において、完全支配関係法人が保有する株式等も含めて保有割合を判定する見直しが行なわれています。


さらに、関連法人株式等の負債利子控除額については、原則として配当等の額の4%相当額とする簡素化が行なわれています。


法人が配当金を受け取った場合には、単に会計上の受取配当金として処理するだけでなく、銘柄ごとに保有割合、株式区分、益金不算入割合を確認し、法人税申告書に正しく反映しましょう。


特に、上場株式や少数保有株式がある法人、グループ会社で同一銘柄を保有している法人は、非支配目的株式等の判定と完全支配関係法人の合算判定に注意が必要です。


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