デジタル化・AI導入補助金2026とは?旧IT導入補助金からの変更点・対象経費・申請方法を解説
- 安田 亮
- 3 時間前
- 読了時間: 12分
こんばんは!代表の安田です。
中小企業にとって、デジタル化やAI活用は避けて通れないテーマになっています。
経理業務を効率化したい、インボイス制度に対応した会計ソフトを導入したい、勤怠管理や労務管理をクラウド化したい、AIを活用して業務効率を高めたい、サイバーセキュリティ対策を強化したい。
このような場合に活用を検討したい補助金が「デジタル化・AI導入補助金2026」です。
デジタル化・AI導入補助金2026は、旧IT導入補助金の後継制度として、中小企業・小規模事業者等が業務効率化やDX、生産性向上を目的としてITツールを導入する際に、その費用の一部を補助する制度です。
本日は、デジタル化・AI導入補助金2026について、制度概要、申請枠、補助対象経費、補助額、申請時の注意点、会計・税務上のポイントを、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。
デジタル化・AI導入補助金2026とは
デジタル化・AI導入補助金2026とは、中小企業・小規模事業者等が、労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツールを導入する際に活用できる補助金です。
以前は「IT導入補助金」として知られていましたが、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金」という名称に変更されています。
名称に「AI」が入ったことで、AI機能を有するITツールの導入もより意識された制度になっています。たとえば、次のようなITツールの導入が想定されます。
会計ソフト
受発注ソフト
決済ソフト
勤怠管理システム
労務管理システム
販売管理システム
在庫管理システム
顧客管理システム
予約管理システム
AIを活用した業務効率化ツール
クラウドサービス
サイバーセキュリティ対策サービス
ただし、どのようなソフトウェアでも自由に対象になるわけではありません。
原則として、事務局の審査を受け、補助金ホームページに登録・公開されているITツールが対象です。
また、申請者が単独で申請するのではなく、登録されたIT導入支援事業者のサポートを受けながら申請する点も大きな特徴です。
旧IT導入補助金からの主な変更点
デジタル化・AI導入補助金2026は、旧IT導入補助金の流れを引き継ぐ制度ですが、いくつか重要な変更点があります。
まず、名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わりました。
これにより、従来のITツール導入だけでなく、AIを含むITツールの導入による生産性向上がより明確に打ち出されています。
次に、補助金ホームページ上のITツール検索において、AI機能を有するツールを絞り込めるようになっています。
AIを使った業務効率化ツール、チャットボット、需要予測、文書作成支援、顧客対応支援などを検討している事業者にとっては、対象ツールを探しやすくなっています。
また、過去にIT導入補助金2022からIT導入補助金2025までの間に交付決定を受けた事業者については、2回目以降の申請要件として、1人あたり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上向上させることや、賃金引上げ計画を従業員に表明することが求められる場合があります。
過去にIT導入補助金を使ったことがある事業者は、今回も同じ感覚で申請できるとは限りません。再度申請する場合は、賃上げ要件を必ず確認しましょう。
4つの申請枠
デジタル化・AI導入補助金2026には、主に次の4つの申請枠があります。
通常枠
複数者連携デジタル化・AI導入枠
インボイス枠
セキュリティ対策推進枠
インボイス枠は、さらに「インボイス対応類型」と「電子取引類型」に分かれます。
それぞれ対象となるITツールや補助対象経費、補助額、補助率が異なるため、自社の目的に合った枠を選ぶことが重要です。
通常枠
通常枠は、事業のデジタル化を目的として、ソフトウェアやシステムを導入する場合に活用できる基本的な枠です。たとえば、次のようなケースが考えられます。
勤怠管理システムを導入し、出退勤管理や残業集計を効率化する
販売管理システムを導入し、見積・受注・請求業務を一元化する
在庫管理システムを導入し、在庫ロスや発注ミスを減らす
顧客管理システムを導入し、営業活動や顧客対応を効率化する
AIツールを導入し、社内文書作成や問い合わせ対応を効率化する
通常枠の補助対象経費には、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費などが含まれます。
クラウド利用料については、最大2年分が補助対象となる点も特徴です。
補助額は、導入するITツールが対応する業務プロセス数によって異なります。1から3プロセスの場合は5万円から150万円、4プロセス以上の場合は150万円から450万円が目安です。
補助率は、中小企業の場合は原則2分の1です。ただし、一定の最低賃金近傍の事業者については、補助率が3分の2となる場合があります。
インボイス枠、インボイス対応類型
インボイス対応類型は、インボイス制度への対応に特化した申請枠です。
会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトなど、インボイス対応に必要なITツールの導入を支援します。
この類型では、ソフトウェアだけでなく、PC、タブレット、レジ、券売機などのハードウェア導入費用も補助対象となる場合があります。
たとえば、次のようなケースです。
インボイス対応の会計ソフトを導入する
請求書発行システムを導入する
受発注システムを導入し、取引先との請求業務を効率化する
レジや券売機を導入し、会計処理を効率化する
タブレットを使って受注・決済・請求を一体化する
インボイス対応類型は、補助下限額がなく、安価なITツールの導入にも活用しやすい点が特徴です。
特に、小規模事業者や個人事業主が、インボイス制度対応のために会計ソフトやレジを導入する場合には検討しやすい枠です。
インボイス枠、電子取引類型
電子取引類型は、発注者が費用を負担してインボイス対応済みの受発注ソフトを導入し、受注者である中小企業・小規模事業者等が無償で利用できるようにするケースを支援する類型です。
この類型では、大企業も補助対象事業者に含まれる点が特徴です。
たとえば、大企業や中堅企業が取引先である中小企業に対して、共通の受発注システムを無償で利用できるようにし、取引全体のインボイス対応や電子取引対応を進める場合などが想定されます。
自社単独の業務効率化というより、取引先を含めた商流全体のデジタル化を進めるための枠と考えるとわかりやすいでしょう。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃や情報漏えいリスクに備えるためのサービス導入を支援する枠です。
対象となるのは、独立行政法人情報処理推進機構、いわゆるIPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているセキュリティサービスです。
たとえば、次のようなサービスが考えられます。
ネットワーク監視
ウイルス対策
不正アクセス対策
セキュリティ診断
インシデント発生時の相談対応
サイバー保険を含むサービス
補助額は5万円から150万円、補助率は中小企業が2分の1、小規模事業者は3分の2です。
近年は、中小企業であってもランサムウェア被害や情報漏えいリスクが高まっています。
会計データ、顧客情報、従業員情報、取引先情報を扱う事業者にとって、セキュリティ対策は後回しにしにくい経営課題です。
複数者連携デジタル化・AI導入枠
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、複数の中小企業・小規模事業者等が連携して、地域DXや生産性向上を進める取組を支援する枠です。
たとえば、商店街、商工団体、地域の事業者グループなどが連携して、キャッシュレス決済、データ分析、共通アプリ、地域内の受発注システムなどを導入するケースが考えられます。
この枠では、10者以上の中小企業・小規模事業者等が連携する取組などが想定されています。
補助対象経費には、ITツール導入費だけでなく、消費動向等分析経費、事務費、専門家経費などが含まれる場合があります。
補助額は、インボイス枠対象経費、消費動向等分析経費、事務費・専門家経費などの区分によって異なり、合計で大きな補助額となる可能性があります。
個社単独の申請ではなく、地域や複数事業者で一体的にデジタル化を進める場合に検討する枠です。
申請前に必要な準備
デジタル化・AI導入補助金2026を申請するには、事前準備が重要です。
主な準備は次のとおりです。
1. GビズIDプライムの取得
申請には、GビズIDプライムアカウントが必要です。
GビズIDプライムの取得には時間がかかる場合があります。補助金を少しでも検討している場合は、早めに取得しておくことをおすすめします。
2. SECURITY ACTIONの宣言
デジタル化・AI導入補助金では、IPAが実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要です。SECURITY ACTIONとは、中小企業・小規模事業者等が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
「一つ星」または「二つ星」の宣言が要件となり、交付申請時には宣言済アカウントIDの入力が求められます。
宣言済アカウントIDの発行には数日かかることがあります。申請直前に慌てないよう、早めに手続きしておきましょう。
3. IT導入支援事業者とITツールの選定
複数者連携デジタル化・AI導入枠を除き、申請者は、登録されたIT導入支援事業者と一緒に申請を進める必要があります。
IT導入支援事業者とは、補助金事務局に登録されたITベンダーやサービス事業者のことです。
申請者は、IT導入支援事業者から申請マイページの招待を受け、基本情報を入力します。その後、申請者が必要書類の添付や入力を行い、IT導入支援事業者が導入するITツール情報や事業計画値を入力します。最後に申請者が内容を確認し、宣誓して事務局へ提出する流れです。
つまり、この補助金では、申請者とIT導入支援事業者が共同で補助事業を進めるイメージになります。
申請時に注意すべきポイント
デジタル化・AI導入補助金2026を活用する際は、次の点に注意しましょう。
登録済みITツールか確認する
補助対象となるITツールは、原則として補助金ホームページに登録・公開されているものです。
気に入ったソフトウェアやAIツールがあっても、補助金の登録ITツールでなければ対象にならない可能性があります。
導入を決める前に、IT導入支援事業者やITツール検索で対象可否を確認しましょう。
交付決定前に契約・支払いをしない
補助金では、交付決定前に契約、発注、支払いを行った経費が対象外となることがあります。
ITツールを急いで導入したい場合でも、補助金を使うなら交付決定のタイミングを確認してから進める必要があります。
IT導入支援事業者任せにしすぎない
申請にはIT導入支援事業者のサポートが必要ですが、すべてを任せきりにするのは危険です。
導入するITツールが自社の課題に合っているか、費用対効果があるか、運用できる体制があるかは、最終的には自社で判断する必要があります。
補助金が出るからという理由だけで、使いこなせないシステムを導入すると、かえって業務負担が増えることもあります。
賃上げ要件を確認する
過去にIT導入補助金の交付決定を受けた事業者など、一定の場合には賃上げ要件が追加されます。
1人あたり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上向上させることや、賃金引上げ計画を従業員に表明することが求められる場合があります。
再申請を検討する場合は、過去の交付決定状況と賃上げ要件を確認しておきましょう。
実績報告まで見据えて準備する
補助金は採択や交付決定を受ければ終わりではありません。
ITツールを導入し、支払いを行い、証憑を整え、実績報告を行い、補助金額が確定してから入金されます。
契約書、請求書、支払証憑、導入完了を示す資料、画面キャプチャ、利用開始日がわかる資料などを整理しておくことが重要です。
会計・税務上の注意点
デジタル化・AI導入補助金を受け取った場合、法人であれば原則として収益に計上され、法人税の課税対象となります。
個人事業主の場合も、原則として事業所得の収入金額に含まれます。
補助金は「税金がかからない収入」と誤解されることがありますが、通常は課税対象です。
また、補助金を使ってソフトウェアやハードウェアを取得した場合、その支出が消耗品費、通信費、支払手数料、ソフトウェア、工具器具備品など、どの勘定科目に該当するかを確認する必要があります。
取得価額が一定額以上のソフトウェアやPC、レジ、券売機などは、固定資産として資産計上し、減価償却の対象となる場合があります。
一方、クラウドサービス利用料のように、利用期間に応じて費用処理するものもあります。
補助金を使って固定資産を取得した場合には、一定の要件を満たせば圧縮記帳を検討できるケースもあります。ただし、すべての補助金やすべての支出で圧縮記帳が使えるわけではありません。
消費税については、補助金収入そのものは通常、課税売上には該当しません。一方で、補助対象経費に係る消費税の仕入税額控除や、税込・税抜の申請額には注意が必要です。
特に、免税事業者や簡易課税事業者、インボイス登録を行ったばかりの事業者では、補助金申請額と税務処理の関係を事前に確認しておくことをおすすめします。
デジタル化・AI導入補助金が向いている事業者
デジタル化・AI導入補助金2026は、次のような事業者に向いています。
会計、請求、受発注、決済業務を効率化したい
インボイス制度に対応した会計ソフトや請求書発行システムを導入したい
勤怠管理や労務管理をクラウド化したい
販売管理、在庫管理、顧客管理をシステム化したい
AIツールを使って事務作業や顧客対応を効率化したい
レジ、券売機、タブレットなどを導入したい
サイバーセキュリティ対策を強化したい
地域や商店街で連携してデジタル化を進めたい
特に、バックオフィス業務の効率化やインボイス対応を進めたい中小企業・個人事業主にとっては、活用しやすい補助金です。
一方で、単に「補助金があるからITツールを入れる」という考え方はおすすめできません。
ITツールは、導入後に現場で使われて初めて効果が出ます。
導入前に、どの業務を効率化したいのか、誰が使うのか、既存業務をどう変えるのか、導入後の運用体制をどうするのかを整理しておきましょう。
まとめ
デジタル化・AI導入補助金2026は、旧IT導入補助金から名称変更された、ITツールやAIツールの導入を支援する補助金です。
申請枠には、通常枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠があります。
通常枠では、ソフトウェアやクラウドサービスの導入により業務効率化を支援します。インボイス枠では、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、PC、タブレット、レジ、券売機などが対象になる場合があります。セキュリティ対策推進枠では、サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用料が対象になります。
申請には、GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの宣言、IT導入支援事業者との連携が必要です。
また、補助金は原則として後払いであり、交付決定前の契約・支払いは補助対象外となる可能性があります。
デジタル化・AI導入補助金を活用する場合は、自社の経営課題、導入するITツール、補助対象経費、申請スケジュール、税務処理まで含めて、早めに準備を進めることをおすすめします。




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