出向社員の扶養控除等申告書はどこに提出する?出向元・出向先で給与支払者が変わる場合の注意点
- 安田 亮
- 1 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
従業員の雇用維持、人材交流、グループ会社間の人材活用などを目的として、出向を行なう会社は少なくありません。
特に在籍出向では、従業員が出向元法人との雇用関係を残したまま、出向先法人で勤務することになります。
このとき、実務上意外と迷いやすいのが、年末調整や源泉徴収に関係する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出先です。
たとえば、従業員が年末調整の際に翌年分の扶養控除等申告書を出向元法人へ提出していたとします。
その後、翌年4月から別会社へ在籍出向することになり、出向後の給与を出向先法人が支払う場合、扶養控除等申告書は出向元法人に出したままでよいのでしょうか。
それとも、出向先法人へ改めて提出する必要があるのでしょうか。
結論からいうと、ポイントは「出向後の給与支払者が誰か」です。
出向後の給与支払者が出向先法人であれば、出向社員は出向先法人へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。一方、出向後も給与支払者が出向元法人のままであれば、既に出向元法人へ提出している扶養控除等申告書を使うことになるため、改めて提出する必要はありません。
本日は、出向社員の扶養控除等申告書について、在籍出向と転籍出向の違い、給与支払者が出向元・出向先のどちらかによる取扱い、年末調整や源泉徴収の実務上の注意点を解説します。
扶養控除等申告書とは
扶養控除等申告書とは、給与所得者が、扶養控除、配偶者控除、障害者控除などの各種控除を受けるために、給与支払者へ提出する書類です。
正式名称は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
会社員の年末調整で毎年提出する、いわゆる「マル扶」と呼ばれる書類です。
この申告書は、年末調整だけでなく、毎月の源泉徴収税額の計算にも関係します。
扶養控除等申告書を提出している従業員については、原則として源泉徴収税額表の甲欄を使います。一方、扶養控除等申告書を提出していない従業員については、原則として乙欄で源泉徴収することになります。
乙欄は甲欄よりも源泉徴収税額が高くなることが多いため、従業員にとっても会社にとっても、提出状況の管理は重要です。
扶養控除等申告書の提出期限
扶養控除等申告書は、その年の最初に給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者へ提出する必要があります。
中途入社の場合には、就職後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに提出します。
また、当初提出した内容に異動があった場合には、その異動後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに、異動後の内容を記載した申告書を提出します。
たとえば、扶養親族が増えた、配偶者の所得見込みが変わった、障害者控除の対象になった、住所が変わったといった場合には、申告書の内容を見直す必要があります。
出向の場合も、給与の支払者が変わるのであれば、新しい給与支払者へ提出する必要があります。
給与支払者が保存する必要がある
扶養控除等申告書は、従業員が税務署へ直接提出する書類ではありません。
従業員は給与支払者へ提出し、給与支払者が保存します。
税務署長から提出を求められた場合には、給与支払者が提出することになります。
保存期間は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間です。
たとえば、令和8年分の扶養控除等申告書であれば、その提出期限の属する年の翌年である2027年1月10日の翌日から7年間保存することになります。
紙で提出されたものだけでなく、電子データで提出された扶養控除等申告書についても、給与支払者が保存する必要があります。出向社員についても、給与を支払う法人が申告書を保存することになります。
在籍出向とは
在籍出向とは、従業員が出向元法人との雇用契約を維持したまま、出向先法人でも勤務する形態をいいます。
つまり、従業員は出向元法人に籍を残しつつ、出向先法人で業務を行ないます。
在籍出向では、出向元法人と出向先法人の双方との関係が残るため、給与の支払方法はいくつかのパターンがあります。
たとえば、次のようなケースです。
・出向元法人が給与を支払う
・出向先法人が給与を支払う
・出向元法人が給与を支払い、出向先法人が出向負担金を出向元法人へ支払う
・出向先法人が給与を支払い、出向元法人との間で負担金精算を行なう
源泉徴収や年末調整の実務では、形式的な所属先だけでなく、誰が給与を支払っているかが重要になります。
在籍出向では給与支払者がどちらかを確認する
在籍出向の場合、出向社員の給与は、出向元法人が支払うことも、出向先法人が支払うこともあります。どちらが給与を支払っても、在籍出向そのものとしては問題ありません。
ただし、扶養控除等申告書の提出先は、給与支払者によって変わります。
扶養控除等申告書は、給与の支払者に提出する書類だからです。
そのため、在籍出向が決まった場合には、人事労務担当者と経理担当者が、次の点を確認する必要があります。
出向後の給与支払者は出向元法人か出向先法人か
出向前に扶養控除等申告書をどこへ提出しているか
出向後に新たに提出が必要か
源泉徴収税額表は甲欄か乙欄か
年末調整をどちらの法人で行なうか
給与支払報告書や源泉徴収票をどちらが作成するか
出向契約書や出向協定書でも、給与支払者を明確にしておくことが重要です。
出向後の給与支払者が出向先法人の場合
出向後の給与支払者が出向先法人になる場合、出向社員は出向先法人に対して扶養控除等申告書を提出する必要があります。
これは、出向前に出向元法人へその年分の扶養控除等申告書を提出していた場合でも同じです。出向先法人が給与を支払うのであれば、出向先法人が源泉徴収義務者として毎月の源泉徴収を行ないます。
そのため、出向先法人が甲欄で源泉徴収するには、出向社員から扶養控除等申告書の提出を受けている必要があります。
出向先法人に提出がない場合、原則として乙欄で源泉徴収することになります。
従業員側から見ると、出向元に既に提出しているつもりでも、給与支払者が変わった以上、出向先法人へ再提出が必要になる点に注意しましょう。
具体例:4月から出向先法人が給与を支払う場合
具体例で確認してみましょう。
従業員Aは、令和7年12月の年末調整時に、令和8年分の扶養控除等申告書を出向元X社へ提出していました。
その後、令和8年4月から出向先Y社へ在籍出向することになりました。
出向後の給与は、出向先Y社が支払うことになっています。
この場合、Aは、令和8年4月の出向後最初の給与を受ける前に、令和8年分の扶養控除等申告書をY社へ提出する必要があります。
X社へ既に提出しているからといって、Y社への提出が不要になるわけではありません。
Y社は、Aから扶養控除等申告書の提出を受けたうえで、源泉徴収税額表の甲欄により源泉徴収を行うことになります。
出向後の給与支払者が出向元法人の場合
一方、出向後も給与支払者が出向元法人のままである場合、出向社員は、改めて扶養控除等申告書を提出する必要はありません。
出向前に既に出向元法人へその年分の扶養控除等申告書を提出しているためです。
たとえば、従業員Aが令和7年12月に令和8年分の扶養控除等申告書を出向元X社へ提出しており、令和8年4月からY社へ在籍出向したとします。
出向後も給与を支払うのがX社であれば、AはY社へ扶養控除等申告書を提出する必要はありません。X社が引き続き給与支払者として源泉徴収を行い、年末調整も行なうことになります。
ただし、出向先Y社で勤務していても、扶養控除等申告書の提出先は、勤務場所ではなく給与支払者で判断する点に注意しましょう。
転籍出向の場合
転籍出向とは、従業員が出向元法人との雇用契約を解消し、出向先法人と新たに雇用契約を結ぶ形態をいいます。
在籍出向と異なり、出向元法人との雇用関係は終了します。
この場合、通常は出向先法人が給与支払者になります。
そのため、従業員は転籍後最初の給与の支払を受ける前に、出向先法人へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。
実務上は、中途入社者と同じように扱うと分かりやすいでしょう。
出向元法人に提出していた扶養控除等申告書は、出向元法人での給与支払に関するものです。転籍後に出向先法人が給与を支払う場合には、出向先法人で改めて提出を受ける必要があります。
二重提出に注意する
扶養控除等申告書は、原則として主たる給与の支払者1か所に提出する書類です。
2か所以上から給与を受ける場合でも、扶養控除等申告書を提出できるのは、原則としていずれか一の給与支払者に限られます。
出向により出向元法人と出向先法人の双方から給与を受けるようなケースでは、二重提出に注意が必要です。
たとえば、出向元法人が一部給与を支払い、出向先法人も別途給与を支払う場合、どちらに扶養控除等申告書を提出するのかを整理しなければなりません。
扶養控除等申告書を提出していない側の給与については、原則として乙欄で源泉徴収することになります。
出向中に給与支払が複数法人に分かれる場合には、出向契約書、給与明細、源泉徴収の処理を確認しましょう。
甲欄・乙欄の源泉徴収に影響する
扶養控除等申告書の提出状況は、毎月の源泉徴収税額に直結します。
提出がある給与支払者では、原則として甲欄により源泉徴収します
提出がない給与支払者では、原則として乙欄により源泉徴収します
出向先法人が給与支払者になったにもかかわらず、扶養控除等申告書の提出を受けていないのに甲欄で源泉徴収していると、源泉徴収不足が生じる可能性があります。
反対に、本来は提出を受けられるのに手続を忘れ、乙欄で源泉徴収してしまうと、従業員の手取り額が一時的に少なくなります。
最終的には確定申告や年末調整で調整される場合もありますが、従業員への説明や事務負担が増えるため、出向開始時に提出状況を確認しておくことが大切です。
年末調整をどちらが行なうか
出向社員の年末調整をどちらの法人が行なうかも、給与支払者によって変わります。
出向後も出向元法人が給与を支払っている場合は、通常、出向元法人が年末調整を行ないます。一方、出向後の給与を出向先法人が支払う場合は、出向先法人が年末調整を行なうことになります。
ただし、年の途中で給与支払者が変わる場合には、前職分給与の取扱いが問題になります。
たとえば、出向元法人が1月から3月まで給与を支払い、出向先法人が4月から12月まで給与を支払う場合、出向先法人が年末調整を行う際には、出向元法人が発行した源泉徴収票を確認する必要があります。
この点は、転職や中途入社に近い取扱いです。
出向開始時に、出向元法人と出向先法人の間で、源泉徴収票の発行時期や年末調整の担当を決めておきましょう。
出向元が給与を立替払いしている場合
在籍出向では、出向元法人が給与を支払い、その後、出向先法人が出向負担金を出向元法人へ支払うケースがあります。
この場合、従業員に対して給与を支払っているのは出向元法人です。
したがって、扶養控除等申告書の提出先は出向元法人になります。
出向先法人が実質的に給与相当額を負担しているとしても、従業員に直接給与を支払っていないのであれば、扶養控除等申告書の提出先は出向先法人ではありません。
ただし、出向負担金の会計処理や消費税の取扱い、法人税上の給与負担金の処理は別途検討が必要です。扶養控除等申告書の提出先は、従業員への給与支払者で判断するのが基本です。
出向先が給与を支払い出向元へ精算する場合
反対に、出向先法人が従業員へ給与を支払い、その後、出向元法人との間で何らかの精算を行なうケースもあります。
この場合、給与支払者は出向先法人です。
したがって、出向社員は出向先法人へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。
出向元法人に籍が残っている在籍出向であっても、給与を支払うのが出向先法人であれば、源泉徴収義務者は出向先法人になります。
出向元法人に提出していた扶養控除等申告書を、そのまま出向先法人で使うことはできません。出向先法人側で改めて提出を受け、保存する必要があります。
扶養控除等申告書の引継ぎはできるのか
出向元法人に提出済みの扶養控除等申告書を、出向先法人へコピーやデータで引き継げばよいのではないか、と考えることがあります。
しかし、扶養控除等申告書は、給与所得者が給与支払者に提出する書類です。
給与支払者が変わる場合には、新しい給与支払者に対して提出する必要があります。
実務上は、出向元法人に提出していた内容を参考にして、出向先法人用の申告書を作成してもらうことは考えられます。
ただし、出向先法人としては、自社に対して提出された扶養控除等申告書を保存しておく必要があります。個人情報やマイナンバーの取扱いにも注意が必要です。
出向元法人から出向先法人へ書類を共有する場合には、本人の同意や社内ルール、個人情報管理の観点も確認しましょう。
電子提出の場合の注意点
近年は、年末調整システムや人事労務システムを使って、扶養控除等申告書を電子的に提出する会社も増えています。
電子提出の場合でも、給与支払者が変わる場合には、新しい給与支払者のシステム上で提出を受ける必要があります。
出向社員が出向先法人の給与システムへ登録される場合には、出向開始前にアカウント発行や申告書提出依頼を行なっておくとスムーズです。
また、電子データで提出を受けた扶養控除等申告書も、紙と同様に給与支払者が保存する必要があります。
出向期間が短い場合でも、保存義務はあります。
システム上、出向社員のデータを削除してしまい、後から申告書データを確認できなくなることがないように注意しましょう。
出向契約書で確認したい項目
出向社員の源泉徴収や扶養控除等申告書の提出先を整理するには、出向契約書や出向協定書が重要です。確認したい項目は次のとおりです。
在籍出向か転籍出向か
出向元との雇用契約が残るか
出向先との雇用契約があるか
給与を誰が支払うか
賞与を誰が支払うか
社会保険料を誰が負担するか
出向負担金の精算方法
年末調整をどちらが行なうか
源泉徴収票をどちらが発行するか
扶養控除等申告書の提出先
個人情報の共有方法
出向契約書で給与支払者が明確になっていないと、源泉徴収や年末調整の実務で混乱します。人事異動として出向を決めるだけでなく、税務・労務の実務処理まで確認しておくことが大切です。
出向開始時の実務フロー
出向社員が発生した場合、次のような流れで確認するとよいでしょう。
出向形態を確認します。
在籍出向なのか、転籍出向なのかを整理します。
給与支払者を確認します。
出向元法人が給与を支払うのか、出向先法人が給与を支払うのか、双方から給与が支払われるのかを確認します。
扶養控除等申告書の提出先を決めます。
出向先法人が給与支払者になる場合には、出向後最初の給与支払日前までに、出向先法人へ扶養控除等申告書を提出してもらいます。
出向元法人が引き続き給与支払者であれば、既に提出済みの扶養控除等申告書を確認し、内容に異動がないかを確認します。
年末調整と源泉徴収票の発行担当を決めます。
年の途中で給与支払者が変わる場合には、前職分の源泉徴収票の発行も忘れないようにしましょう。
人事・経理で共有したいチェックリスト
出向社員がいる会社では、人事部門と経理部門で次の点を共有しておくと安心です。
出向開始日
出向終了予定日
在籍出向か転籍出向か
給与支払者
賞与支払者
扶養控除等申告書の提出先
提出期限
源泉徴収税額表の適用区分
年末調整の担当法人
源泉徴収票の発行担当
出向負担金の精算方法
社会保険、雇用保険の取扱い
個人情報の共有範囲
出向は人事異動の一種ですが、給与・税務・社会保険の実務にも影響します。
特にグループ会社間出向が多い会社では、出向者ごとの管理表を作成しておくとよいでしょう。
よくある誤解
出向社員の扶養控除等申告書について、実務上よくある誤解を整理します。
在籍出向なら出向元に出しておけばよい
在籍出向であっても、出向後の給与支払者が出向先法人であれば、出向先法人へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。
勤務している場所で提出先が決まる
提出先は勤務場所ではなく、給与支払者で判断します。
出向先で勤務していても、給与を出向元法人が支払っているのであれば、提出先は出向元法人です。
出向元に提出した申告書をコピーすれば足りる
給与支払者が変わる場合には、新しい給与支払者に対して提出を受け、保存する必要があります。
提出がなくても甲欄で源泉徴収してよい
扶養控除等申告書の提出がない場合、原則として乙欄で源泉徴収します。
甲欄適用のためには、提出状況を必ず確認しましょう。
実務上のチェックポイント
出向社員の扶養控除等申告書については、次の点を確認しましょう。
在籍出向か転籍出向か
出向後の給与支払者は出向元法人か出向先法人か
出向社員は既にその年分の扶養控除等申告書を提出しているか
給与支払者が変わる場合、出向先法人へ再提出しているか
出向後最初の給与支払日前までに提出されているか
提出がない場合、乙欄で源泉徴収しているか
双方から給与を受ける場合、二重提出になっていないか
年末調整をどちらの法人で行うか決めているか
出向元が源泉徴収票を発行する必要があるか
提出を受けた法人が7年間保存しているか
出向は個別事情が多く、給与支払方法も会社ごとに異なります。
出向契約書と給与支払実態を確認しながら、扶養控除等申告書の提出先を判断しましょう。
まとめ
出向社員の扶養控除等申告書は、出向形態だけでなく、出向後の給与支払者が誰かによって提出先が変わります。
在籍出向の場合、出向元法人との雇用関係を残したまま、出向先法人で勤務します。
この場合、出向後の給与を出向先法人が支払うのであれば、出向社員は出向先法人へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。
たとえ出向前に出向元法人へその年分の扶養控除等申告書を提出していたとしても、出向先法人が給与支払者になる場合には、出向後最初の給与支払日前までに出向先法人へ再提出が必要です。
一方、出向後も給与支払者が出向元法人のままであれば、既に出向元法人へ扶養控除等申告書を提出しているため、出向後に改めて提出する必要はありません。
また、出向元法人との雇用契約を解消する転籍出向の場合には、通常、出向先法人が給与支払者となるため、転籍後最初の給与支払日前までに出向先法人へ扶養控除等申告書を提出する必要があります。
扶養控除等申告書の提出有無は、毎月の源泉徴収税額表の甲欄・乙欄の適用や年末調整に影響します。出向社員がいる会社では、出向契約書や給与支払方法を確認し、出向元・出向先のどちらが給与支払者か、どちらが年末調整を行うか、源泉徴収票をどう発行するかを事前に整理しておきましょう。
出向社員の源泉徴収や年末調整、扶養控除等申告書の提出先で迷う場合は、税理士や社会保険労務士へ相談することをおすすめします。




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