マンションを時間貸しした所得は不動産所得?レンタルオフィス・貸し会議室の所得区分を税理士が解説
- 安田 亮
- 7 時間前
- 読了時間: 11分
こんにちは!代表の安田です。
テレワークやオンライン会議の普及により、レンタルオフィス、貸し会議室、個室ワークスペース、撮影スペースなど、マンションや事務所の一室を短時間で貸し出すサービスが増えています。
不動産を貸して収入を得るのであれば、「不動産所得」と考える方も多いでしょう。
しかし、マンションの一室をレンタルオフィスや貸しスペースとして時間貸しする場合、税務上は必ずしも不動産所得になるとは限りません。
机、椅子、Wi-Fi、モニターなどの設備を用意し、利用後に清掃を行い、その対価を利用者から受け取るような場合には、単なる不動産の貸付けではなく、役務提供を伴うサービスとして、原則として雑所得または事業所得に区分される可能性があります。
本日は、物件を時間貸しした場合の所得区分、不動産所得・雑所得・事業所得の違い、レンタルオフィスや貸し会議室を運営する場合の実務上の注意点について解説します。
不動産の貸付けによる所得は原則として不動産所得
所得税では、土地や建物などの不動産を貸し付けて得た所得は、原則として不動産所得に区分されますたとえば、次のような収入です。
・アパートやマンションの家賃収入
・貸家の家賃収入
・月極駐車場の賃料収入
・土地の地代収入
・事務所や店舗の賃貸収入国税庁の所得税基本通達でも、アパートや貸間などのように食事を提供しない場合の所得は不動産所得とされる一方、下宿などのように食事を提供する場合の所得は事業所得または雑所得に該当するとされています。
つまり、建物や部屋を貸している場合でも、単に場所を貸しているのか、それとも役務提供を伴うサービスを行なっているのかによって、所得区分が変わることがあります。
時間貸しだから不動産所得にならない、というわけではない
ここで誤解しやすいのが、「短時間で貸すから不動産所得ではない」という考え方です。
所得区分を判断するうえで重要なのは、貸付時間の長短だけではありません。
添付資料でも、不動産の貸付時間の長短は、所得区分の別に影響しないとされています。
たとえば、1時間単位で部屋を貸している場合でも、単に部屋そのものを貸しているだけで、特別な設備やサービスの提供がないのであれば、不動産所得として整理できる可能性があります。
一方、月単位で貸している場合でも、食事、清掃、備品提供、受付、管理サービスなどが一体となっていれば、事業所得や雑所得に該当することもあります。
つまり、ポイントは「時間の長さ」ではなく、「何を提供しているのか」です。
レンタルオフィスや貸し会議室は雑所得になりやすい
マンションの一室をレンタルオフィスや貸し会議室として時間貸しする場合、通常は、単なる空室の貸付けではありません。多くの場合、次のような設備やサービスを提供します。
・机、椅子、Wi-Fi、電源、液晶モニター
・ホワイトボード、照明、空調、防音設備
・利用後の清掃、予約管理、入退室管理、鍵の受け渡し時間貸しのレンタルオフィスでは、貸主が机や椅子、Wi-Fiルーター、液晶モニター等を設置し、利用者の退出後に清掃等を行い、これらの設備使用料や清掃代を利用者から対価に含めて受け取ることが通常であるため、民泊と同様に考えられてます。
このような場合、利用者が支払っている対価は、部屋の使用料だけではありません。
設備利用、清掃、予約管理、利用環境の提供といったサービスの対価も含まれています。
そのため、個人がマンションの一室をレンタルオフィス等として時間貸しして得た所得は、原則として雑所得に区分されると考えられます。
民泊所得と考え方が似ている
レンタルオフィスや貸しスペースの所得区分を考えるうえでは、民泊の取扱いが参考になります。
民泊では、部屋そのものの使用だけでなく、清掃、寝具、水道光熱費、備品利用などが一体となって提供されます。
国税庁は、住宅宿泊事業法に基づく民泊により生じる所得について、原則として雑所得に区分されると説明しています。民泊は宿泊者の安全管理や一定の役務提供が必要であり、一般的な不動産の貸付けとは異なるためです。
レンタルオフィスや貸し会議室も、部屋の使用に加えて設備やサービスを提供している点で、民泊と似た面があります。そのため、単なる建物賃貸ではなく、役務提供を伴う収入として所得区分を検討する必要があります。
事業として行なっていれば事業所得になることもある
時間貸しによる収入は、原則として雑所得に区分されるケースが多いと考えられます。
しかし、営利性、有償性、反復継続性、規模、管理体制などを総合的に見て、所得税法上の「事業」と認められる場合には、雑所得ではなく事業所得に該当する可能性があります。
たとえば、次のような場合は、事業所得として検討する余地があります。
・複数物件をレンタルスペースとして運営している
・継続的に広告宣伝を行なっている
・予約サイトや自社サイトで本格的に集客している
・清掃、受付、問い合わせ対応の体制がある
・相当な売上規模がある
・継続的に利益を得る目的で運営している
・帳簿書類を整備して事業として管理している一方で、所有マンションの空き時間を副業的に貸している程度であれば、事業所得ではなく雑所得と判断される可能性が高いでしょう。
事業所得と雑所得の違い
事業所得と雑所得は、どちらも不動産所得ではないという点では共通しますが、税務上の取扱いには大きな違いがあります。主な違いは次のとおりです。
項目 | 事業所得 | 雑所得 |
青色申告特別控除 | 要件を満たせば対象 | 原則対象外 |
青色事業専従者給与 | 要件を満たせば可能 | 原則不可 |
損益通算 | 原則可能 | 原則不可 |
純損失の繰越控除 | 青色申告なら可能 | 原則不可 |
帳簿作成 | 事業として厳格に必要 | 収入・経費の記録は必要 |
事業所得に該当すれば、青色申告特別控除や損益通算などのメリットが出る場合があります。
一方で、実態が事業といえる程度でなければ、事業所得として申告しても税務調査で雑所得と判断される可能性があります。
「節税になるから事業所得にする」のではなく、実態に基づいて判断することが重要です。
不動産賃貸業を営む人が一時的に転用した場合
では、もともと不動産賃貸業を営んでいる個人が、所有物件の一室を一時的にレンタルオフィスとして使った場合はどうでしょうか。
貸主がもともと不動産賃貸業を営んでおり、その1室を一時的にレンタルオフィスに転用して得た所得は、不動産所得に含めて良いとされています。
たとえば、賃貸マンションを複数所有している不動産オーナーが、空室対策として一部の部屋を一時的にレンタルスペースとして運用するようなケースです。
この場合、主たる事業が不動産賃貸業であり、時間貸しが不動産賃貸業の一環または一時的な転用と評価できるのであれば、不動産所得に含めて処理できる可能性があります。
ただし、レンタルスペース事業として独立したサービス提供体制を整え、継続的・本格的に運営している場合には、不動産所得に含めてよいか慎重に判断する必要があります。
所得区分を誤ると何が問題になるか
所得区分を誤ると、税額計算や申告書の作成に影響します。
たとえば、雑所得に該当する収入を不動産所得として申告した場合、次のような問題が生じる可能性があります。
・青色申告特別控除の適用可否
・損益通算の可否
・専従者給与の取扱い
・減価償却費や必要経費の整理
・赤字が出た場合の扱い
・消費税の課税売上区分
・住民税や国民健康保険料への影響特に、赤字が出ている場合は注意が必要です。
不動産所得の赤字や事業所得の赤字は、一定の場合に給与所得など他の所得と損益通算できます。
一方、雑所得の赤字は、原則として他の所得と損益通算できません。
そのため、所得区分の判断は、単なる申告書の欄の違いではなく、税額に大きく影響することがあります。
必要経費にできるもの
レンタルオフィスや貸しスペースを運営する場合、その収入を得るために直接必要な費用は、所得計算上の必要経費になります。たとえば、次のようなものです。
・物件の賃借料または減価償却費
・管理費、修繕費・水道光熱費
・インターネット回線費用、Wi-Fiルーター費用
・机、椅子、モニター等の備品費
・清掃費
・予約サイトの手数料
・広告宣伝費
・消耗品費
・火災保険料
・決済手数料ただし、自宅や自己利用部分と兼用している場合には、事業利用割合に応じた按分が必要です。
たとえば、自宅マンションの一室を一部の時間だけ貸している場合には、面積、利用時間、利用日数などに基づいて合理的に経費を按分する必要があります。
消費税にも注意
レンタルオフィスや貸し会議室の時間貸しは、消費税の課税取引に該当する可能性があります。
住宅の貸付けは原則として消費税が非課税ですが、レンタルオフィスや貸し会議室は、居住用の住宅貸付けではなく、事務所利用や施設利用サービスとして提供されるためです。
また、机、椅子、Wi-Fi、清掃などの役務提供を含めた対価を受け取っている場合には、消費税の課税売上として整理する必要があります。
個人事業主の場合、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、原則として課税事業者になります。
副業的に始めたレンタルスペースでも、売上規模が大きくなる場合には、所得税だけでなく消費税の申告義務も確認しましょう。
住宅ローン控除や居住用特例への影響
自宅マンションの一部をレンタルスペースとして貸し出す場合、住宅ローン控除や居住用財産に関する特例にも注意が必要です。
住宅ローン控除は、原則として自己の居住の用に供する家屋が対象です。
自宅の一部を事業用や貸付用に使う場合、居住用割合によって控除額に影響する可能性があります。
また、将来その物件を売却する場合、居住用財産の3,000万円特別控除などの適用にも影響することがあります。
レンタルスペースとして使う面積や利用時間が限定的であっても、住宅関係の税制に影響が出る可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
実務上のチェックポイント
マンションや事務所の一室を時間貸しする場合には、次の点を確認しましょう。
1. 何を提供しているか
単に部屋を貸しているのか、机・椅子・Wi-Fi・清掃・予約管理などのサービスも提供しているのかを確認します。
サービス提供がある場合は、雑所得または事業所得に該当する可能性が高くなります。
2. 継続性・規模はどの程度か
一時的・副業的な運営なのか、本格的な事業として反復継続しているのかを確認します。
事業といえる程度であれば、事業所得に該当する可能性があります。
3. もともと不動産賃貸業を営んでいるか
既に不動産賃貸業を営んでおり、その一室を一時的にレンタルオフィスに転用した場合には、不動産所得に含めてよいケースがあります。
4. 経費の按分は合理的か
自宅や他用途と兼用している場合、面積、時間、利用日数などに基づき、合理的に必要経費を按分します。
5. 消費税の課税売上を把握しているか
レンタルオフィスや貸し会議室の時間貸しは、消費税の課税売上になる可能性があります。
課税売上高やインボイス登録の要否を確認しましょう。
6. 管理規約・賃貸借契約に違反していないか
マンションの場合、管理規約で事業利用や時間貸しが禁止されていることがあります。
賃貸物件を又貸しする場合には、貸主の承諾が必要です。
7. 住宅ローン控除等への影響を確認しているか
自宅の一部を貸し出す場合、住宅ローン控除や将来の居住用財産の特例に影響する可能性があります。
よくある誤解
不動産を貸しているので必ず不動産所得になる
不動産の貸付けによる所得は原則として不動産所得ですが、清掃、備品、Wi-Fiなどの役務提供が含まれる場合は、雑所得または事業所得に区分されることがあります。
1時間単位で貸すと必ず雑所得になる
貸付時間の長短だけで所得区分が決まるわけではありません。添付資料でも、不動産の貸付時間の長短は所得区分に影響しないとされています。
副業でも事業所得として申告できる
副業でも実態として事業と認められる場合は事業所得になり得ますが、営利性、有償性、反復継続性、規模などを総合的に判断します。小規模・一時的な運営であれば雑所得となる可能性があります。
不動産賃貸業をしている場合でも必ず雑所得になる
もともと不動産賃貸業を営んでおり、その一室を一時的にレンタルオフィスへ転用した場合には、不動産所得に含めてよいとされています。
雑所得でも赤字を給与と通算できる
雑所得の赤字は、原則として給与所得など他の所得と損益通算できません。赤字が見込まれる場合ほど、所得区分の判断が重要です。
まとめ
マンションの一室をレンタルオフィス、貸し会議室、個室ワークスペースなどとして時間貸しする場合、その所得は必ずしも不動産所得になるとは限りません。
単なる不動産の貸付けであれば不動産所得に該当しますが、机、椅子、Wi-Fi、モニターなどの設備提供や、利用後の清掃、予約管理などの役務提供が対価に含まれる場合には、一般的な不動産貸付けとは異なり、原則として雑所得に区分されると考えられます。
ただし、営利性、有償性、反復継続性、規模、管理体制などを総合的に見て、所得税法上の事業と認められる場合には、事業所得に該当する可能性があります。
また、もともと不動産賃貸業を営んでいる方が、その一室を一時的にレンタルオフィスへ転用して得た所得については、不動産所得に含めてよいケースがあります。
物件の時間貸しは、所得区分によって、青色申告、損益通算、必要経費、消費税、住宅ローン控除などに影響します。単に「部屋を貸しているから不動産所得」と決めつけず、提供しているサービスの内容や運営実態に応じて、適切な所得区分で申告しましょう。




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