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防衛特別所得税が令和9年から開始|源泉徴収税額・年末調整・納付書の実務ポイントを解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 9分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、令和9年1月1日以後の源泉徴収事務に防衛特別所得税が加わります。


給与、報酬、料金、利子、配当などを支払う事業者にとって、源泉徴収税額の計算や納付書、源泉徴収票の記載に影響するため、早めに内容を確認しておきたい改正です。


もっとも、今回の改正については、

  • 源泉徴収税額が増えるのか

  • 納付書は新しい様式になるのか

  • 年末調整の計算方法は変わるのか

といった疑問を持つ方も多いでしょう。


結論からいうと、令和9年1月以後は防衛特別所得税1%が追加されますが、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられるため、所得税に対する上乗せ部分の合計は従来どおり2.1%です。そのため、源泉徴収税額の計算方法自体は、改正前後で基本的に変わりません。


今回は、国税庁が公表したQ&Aの内容をもとに、防衛特別所得税と復興特別所得税に関する源泉徴収実務のポイントを整理します。


防衛特別所得税とは?

防衛特別所得税とは、令和8年度税制改正で創設された新しい税目です。


令和9年1月1日以後、所得税の源泉徴収義務者は、所得税を源泉徴収する際に、あわせて防衛特別所得税も徴収し、所得税と一緒に納付する必要があります。


防衛特別所得税の税額は、源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額です。

つまり、給与や報酬などについて所得税を源泉徴収する場面では、所得税だけでなく、防衛特別所得税と復興特別所得税を含めた合計額を徴収することになります。


復興特別所得税は1.1%に引下げ

防衛特別所得税の創設にあわせて、復興特別所得税にも見直しが行なわれます。

改正前の復興特別所得税の税率は、所得税額に対して2.1%でした。令和9年1月1日以後は、復興特別所得税の税率が1.1%に引き下げられます。

一方で、防衛特別所得税が1%加わります。

そのため、改正後の上乗せ税率は次のようになります。

  • 防衛特別所得税:1%

  • 復興特別所得税:1.1%

  • 合計:2.1%


結果として、所得税に対する上乗せ部分の合計税率は、改正前と同じ2.1%です。


源泉徴収税額の計算方法は変わらない

今回の改正で特に重要なのは、源泉徴収税額の計算方法が変わらないという点です。

改正前は、所得税と復興特別所得税を合わせて、所得税率に102.1%を乗じて計算していました。改正後は、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税を合わせて、同じく所得税率に102.1%を乗じて計算します。


計算式は次のとおりです。

支払金額等 × 合計税率 = 源泉徴収すべき所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税の合計額


そして、合計税率は次のように計算します。

合計税率 = 所得税率 × 102.1%


たとえば、報酬に対する所得税率が10%の場合、合計税率は10.21%です。この10.21%という税率は、改正前の所得税・復興特別所得税の源泉徴収と同じです。


端数処理は合計額で1円未満切捨て

源泉徴収税額を計算する際の端数処理にも注意が必要です。

所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税をそれぞれ別々に計算して端数処理するのではありません。支払金額等に合計税率を乗じて計算した合計額について、1円未満の端数を切り捨てます。


たとえば、講演料222,222円を支払う場合で、所得税率が10%のときは、次のように計算します。


222,222円 × 10.21% = 22,688.8662円


この場合、1円未満を切り捨てるため、源泉徴収税額は22,688円です。

税額を所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税に細かく分けて端数処理しない点を押さえておきましょう。


グロスアップ計算の取扱い

講演料や原稿料などでは、「手取りで10万円になるように支払いたい」という形で、いわゆるグロスアップ計算を行なうことがあります。

防衛特別所得税が創設された後も、グロスアップ計算では合計税率を使います。


たとえば、所得税率10%の報酬について、税引後の手取り額を100,000円にしたい場合、合計税率は10.21%です。


この場合、支払金額は次のように計算します。


100,000円 ÷(100%-10.21%)=111,370.976…円


1円未満を切り捨て、支払金額は111,370円となります。


次に、源泉徴収税額を計算します。

111,370円 × 10.21% = 11,370.877円


1円未満を切り捨て、納付すべき源泉徴収税額は11,370円です。

この結果、支払金額111,370円から源泉徴収税額11,370円を差し引くと、手取り額は100,000円になります。


給与の源泉徴収は令和9年分以後の税額表を使用

毎月の給与等から源泉徴収する所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額は、令和9年分以後の源泉徴収税額表に基づいて計算します。


この税額表には、防衛特別所得税と復興特別所得税が反映される予定です。

令和9年1月以後に支払う給与等については、令和9年分の源泉徴収税額表を使用して源泉徴収税額を計算することになります。


給与計算ソフトを利用している会社では、令和9年1月支給分から新しい税額表に対応しているか、事前に確認しておきましょう。


年末調整も3税の合計額で行なう

年末調整についても、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額で行ないます。

年末調整では、まず通常どおり、給与所得控除後の給与等の金額や所得控除額をもとに、所得税額を計算します。その後、住宅借入金等特別控除額がある場合には、算出所得税額から控除します。


その控除後の税額に102.1%を乗じた金額が、防衛特別所得税および復興特別所得税を含む年調年税額になります。


なお、年調年税額は、100円未満を切り捨てます。

つまり、年末調整では次のように考えると整理しやすいでしょう。

  1. 算出所得税額を計算する

  2. 住宅借入金等特別控除額を控除する

  3. 控除後の税額に102.1%を乗じる

  4. 100円未満を切り捨てる

  5. 所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税を含む年調年税額とする


令和8年分の年末調整超過額を令和9年1月以後に控除する場合

実務で少しややこしいのが、令和8年分の年末調整で発生した超過額を、令和9年1月以後に支払う給与等から控除するケースです。


令和8年分の年末調整には、防衛特別所得税は含まれていません。一方、令和9年1月以後に支払う給与等からは、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税を源泉徴収します。


この場合でも、令和8年分の年末調整により生じた超過額を、令和9年1月以後の源泉徴収税額から控除することができます。納付書では、給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の「年末調整による超過税額」欄に、その控除する額を記載します。


防衛特別所得税が含まれていない超過額だからといって、別欄に記載するわけではありません。


納付書は1枚で合計額を納付

源泉徴収した所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税は、それぞれ別々の納付書で納付するのではありません。3つの税額の合計額を、1枚の所得税徴収高計算書、いわゆる納付書で納付します。


つまり、令和9年1月以後も、給与や報酬に係る源泉所得税の納付実務は、基本的には従来の流れと大きく変わりません。


また、令和9年1月以後に納付する場合でも、現行の所得税及び復興特別所得税に係る所得税徴収高計算書を使用してよいとされています。この場合、「納期等の区分」などを補正せず、そのままの様式で使用できます。


初年度は、納付書の名称に防衛特別所得税が含まれていないことに違和感を持つかもしれませんが、現行様式をそのまま使える点は実務上重要です。


還付請求も合計額で行なう

還付請求についても、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額で行ないます。


源泉徴収税額や年末調整の精算は、税目ごとに分けて考えるのではなく、基本的には3つを合わせた金額で処理します。


給与計算や源泉徴収簿の管理でも、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税を一体として扱う場面が多くなります。


源泉徴収票・支払調書の記載

給与所得の源泉徴収票や、利子等の支払調書などの法定調書についても、記載方法に注意が必要です。

これらの法定調書の「源泉徴収税額」欄には、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額を記載します。つまり、防衛特別所得税だけを別欄に記載するわけではありません。従来どおり、源泉徴収税額欄には合計額を記載するイメージです。


会社や会計事務所で独自の支払調書作成シートを使っている場合には、令和9年以後の記載内容が合計額になっているか確認しておくとよいでしょう。


実務上の影響は「計算式」よりも「名称変更・確認」に注意

今回の改正では、防衛特別所得税が新たに登場するため、大きな変更のように見えます。

しかし、源泉徴収税額の計算方法そのものは、合計税率102.1%で変わりません。そのため、実務上は、税率計算そのものよりも、次の点に注意が必要です。

  • 令和9年分以後の源泉徴収税額表を使用すること

  • 年末調整で3税の合計額を計算すること

  • 納付書は合計額で1枚にまとめて納付すること

  • 源泉徴収票や支払調書の源泉徴収税額欄には合計額を記載すること

  • グロスアップ計算では合計税率を使うこと

  • 令和8年分の年末調整超過額を令和9年以後に控除する場合の納付書記載を確認すること


名称が増えることで混乱しやすくなるため、経理担当者や給与担当者への周知が重要です。


経理担当者が確認したいチェックリスト

令和9年1月以後の源泉徴収実務に向けて、経理担当者は次の点を確認しておきましょう。

  • 令和9年分の源泉徴収税額表に対応しているか

  • 給与計算ソフトの更新時期を確認しているか

  • 報酬・料金の源泉徴収計算に合計税率を使っているか

  • グロスアップ計算の社内資料を更新しているか

  • 納付書は3税の合計額で作成する運用になっているか

  • 源泉徴収票や支払調書の源泉徴収税額欄に合計額を記載する運用になっているか

  • 令和8年分の年末調整超過額を令和9年以後に控除する処理を確認しているか

  • 社内マニュアルや顧問先向け案内文を更新しているか


税率自体は従来と同じ感覚で計算できる部分が多いものの、名称や納付時期、帳票類の記載で混乱が生じないよう準備しておくことが大切です。


まとめ

令和9年1月1日以後、所得税の源泉徴収義務者は、所得税を徴収する際に、防衛特別所得税を併せて徴収し、所得税と一緒に納付する必要があります。防衛特別所得税は、源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額です。


一方で、復興特別所得税の税率は、改正前の2.1%から1.1%に引き下げられます。そのため、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%を合わせた上乗せ部分は2.1%となり、改正前の復興特別所得税2.1%と同じです。したがって、源泉徴収税額の計算方法は、改正前後で基本的に変わりません。


報酬等に係る源泉徴収では、支払金額等に所得税率、防衛特別所得税率、復興特別所得税率を合わせた合計税率を乗じ、1円未満を切り捨てます。給与については、令和9年分以後の源泉徴収税額表を使用し、年末調整も所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額で行ないます。


また、源泉徴収した3税は、1枚の所得税徴収高計算書により合計額で納付します。源泉徴収票や支払調書の「源泉徴収税額」欄にも、所得税、防衛特別所得税、復興特別所得税の合計額を記載します。


防衛特別所得税の導入により名称は増えますが、合計税率は従来どおり102.1%です。給与担当者・経理担当者は、令和9年1月以後の源泉徴収税額表、納付書、年末調整、法定調書の記載方法を早めに確認しておきましょう。


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