所得税の確定申告で誤りやすいポイント8選|税理士が実務上の注意点を解説
- 安田 亮
- 6月12日
- 読了時間: 6分
おはようございます!代表の安田です。
所得税の確定申告は、毎年行なっていても思わぬ見落としが起きやすい手続きです。とくに、配当所得の申告方法、FX等の損失繰越、青色申告の適用時期、社会保険料控除の考え方などは、制度を知っているつもりでも誤りが生じやすい分野です。
実際、税理士による代理申告であっても近年誤りが多い事項があるとして、確定申告期前に確認すべきポイントがいくつかあります。
今回はその内容を踏まえ、所得税の確定申告で誤りやすいポイント8選として、実務で特に注意したい論点をわかりやすくまとめます。
1.申告不要の配当を申告すると、後からなかったことにできない場合がある
上場株式等の配当には、一定の場合に申告不要制度が適用されるものがあります。ところが、配当控除を受けた方が有利だと考えて申告した後、他の所得との関係でかえって不利になることがあります。
本来は申告不要とできる少額の配当等をあえて申告した場合、その後に「やはり申告しないことにしたい」として更正の請求をすることはできないと整理されています。つまり、一度選択して申告した後は、税額計算のやり直しができないケースがあるということです。
配当所得は、単に配当控除だけで判断するのではなく、合計所得金額や各種控除への影響まで含めて事前に検討することが重要です。
2.上場株式等の配当は、申告分離課税から総合課税へ後から変更できないことがある
配当所得については、総合課税と申告分離課税の有利不利を比較して選択する場面があります。しかし、いったん申告分離課税を選択して確定申告した場合、更正の請求や修正申告によって総合課税へ変更することはできないとされています。
一方で、法定申告期限内であれば、再度の確定申告により変更できるとも示されています。このため、課税方式の選択は「とりあえず出して後で直す」では済まないことがあります。
特に、株式関係の申告は住民税や各種判定にも影響することがあるため、申告前のシミュレーションが欠かせません。
3.FX等の損失繰越は“毎年連続して申告”が必要
FX取引など先物取引等に係る損失の繰越控除は、誤解の多い論点です。
損失が発生した年に申告するだけでは足りず、その後も繰越損失額を毎年継続して確定申告する必要があると説明されています。
たとえば、ある年に損失が出て確定申告をしていても、翌年の申告でその繰越損失額を記載しなければ、その後の年で控除を受けられなくなることがあります。「利益が出ていない年は申告しなくてもよい」と考えてしまうと、せっかくの損失繰越が使えなくなるおそれがあります。
FXや先物取引を行なっている方は、損失がある年だけでなく、その翌年以降の申告書にも継続して注意することが大切です。
4.青色申告の“開業から2か月以内”ルールは、誰にでも使えるわけではない
青色申告承認申請書については、「その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、開始日から2か月以内に申請すればその年から青色申告ができる」というルールがあります。
しかし、もともと不動産貸付業を営んでいた人が、年の途中から別の事業所得を生む事業を始めたとしても、“新たに事業を開始した場合”には当たらず、その年から青色申告にはならないとされています。
つまり、すでに何らかの事業を行なっている人が事業を追加しただけでは、単純に「2か月以内ルール」が使えない場合があります。青色申告は節税効果が大きい分、申請期限の判断を誤ると一年分の差が出るため注意が必要です。
5.配偶者の年金から天引きされた社会保険料は、夫の控除にできない
社会保険料控除も、実務上よく誤りが起きる項目です。
社会保険料控除の対象となる配偶者であっても、その妻の年金から天引きされた介護保険料や後期高齢者医療保険料は、夫の所得から控除することはできないとされています。
一方で、年金天引きではなく、実際に夫が妻の社会保険料を支払っている場合には、夫の社会保険料控除の対象にできるとされています。
つまり、誰のための保険料かではなく、実際に誰が支払ったかがポイントです。家族分の社会保険料をまとめて考えてしまうと、控除の帰属を誤るおそれがあります。
6.年金の一括支給は、受け取った年に全額計上するとは限らない
年金の支給漏れや計算誤りの是正で、過年度分をまとめて一括支給されることがあります。この場合、受け取った年の所得として全額を一度に計上すると思われがちですが、各期間に対応する年金に区分して収入計上すると整理されています。
つまり、実際の受領時ではなく、どの年分の年金に対応するかに応じて年ごとに整理する考え方です。年金の一括支給は税額計算への影響も大きいため、通知書類を確認しながら年分ごとに丁寧に整理する必要があります。
7.住宅取得等資金贈与の特例と住宅ローン控除は、併用時の計算に注意
住宅取得等資金の贈与を受けたうえで、住宅ローン控除の適用も受けるケースでは、計算関係を誤りやすいです。
住宅取得等資金贈与の特例の適用を受けた受贈額は、住宅ローン控除額の計算基礎となる家屋の取得価額等から差し引く必要があるとされています。
また、一定期間内に居住用財産の譲渡所得の特例を受けている場合には、その家屋に住宅ローン控除を適用できないことがある点も示されています。
住宅関係の税制は、ひとつの特例だけでなく複数制度の関係まで見ないと誤りやすいため、個別の要件確認が重要です。
8.配偶者控除・配偶者特別控除は、本人の所得制限に要注意
配偶者控除と配偶者特別控除については、配偶者の所得だけに目が向きがちですが、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除も配偶者特別控除も適用できないと整理されています。
さらに、本人の合計所得金額が900万円以下、900万円超950万円以下、950万円超1,000万円以下の区分ごとに、控除額が段階的に減少することが示されています。
このあたりは、年末調整で処理している場合でも、確定申告時に見直しが必要になることがあります。
まとめ
所得税の確定申告では、単なる記載漏れだけでなく、制度選択や適用要件の勘違いによる誤りが少なくありません。今回の資料でも、次のような論点が誤りやすいポイントとして挙げられています。
申告不要の配当等を申告した後の取扱い
配当所得の課税方式の変更可否
FX等の損失繰越の継続申告
青色申告承認申請の期限
社会保険料控除の帰属
年金一括支給の収入計上時期
住宅取得等資金贈与と住宅ローン控除の関係
配偶者控除・配偶者特別控除の所得制限
確定申告は、提出できればよいというものではなく、有利不利の判定や訂正可否まで含めて事前に確認することが大切です。特に、配当、株式、FX、住宅税制、配偶者控除などが絡む場合は、申告後に簡単に修正できないケースもあるため、慎重な検討をおすすめします。




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