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源泉徴収票のみなし提出特例でも合計表は必要?令和9年1月以後の法定調書実務を解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 3 時間前
  • 読了時間: 8分

おはようございます!代表の安田です。


年末調整や法定調書の提出時期になると、給与担当者や経理担当者にとって大きな負担となるのが、給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書の提出実務です。


これまでは、給与支払者が従業員等に係る源泉徴収票を税務署へ提出し、あわせて給与支払報告書を市区町村へ提出する必要がありました。しかし、令和9年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票から、「源泉徴収票のみなし提出特例」の適用が始まります。


この特例により、一定事項が記載された給与支払報告書を市区町村長へ提出した場合、所轄税務署長へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。つまり、一定の場合には、税務署への源泉徴収票の提出が不要になります。


ただし、ここで注意したいのが法定調書合計表の取扱いです。源泉徴収票が税務署へ提出不要になる場合でも、合計表まで常に不要になるとは限りません。


今回は、令和9年1月以後に始まる源泉徴収票のみなし提出特例と、法定調書合計表の提出要否について、実務上の注意点を整理します。


源泉徴収票のみなし提出特例とは?

源泉徴収票のみなし提出特例とは、給与所得の源泉徴収票に記載すべき一定の事項が記載された給与支払報告書を市区町村長へ提出した場合に、税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなす制度です。


この特例は、令和9年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票から適用されます。実務上は、令和8年分の給与に係る書類を令和9年1月に提出する場面から関係してきます。


これにより、給与支払報告書を市区町村へ提出していれば、同じような内容の源泉徴収票を税務署へ重ねて提出する必要がなくなります。給与支払者にとっては、提出事務の簡素化につながる改正といえるでしょう。


給与所得の源泉徴収票だけなら合計表も不要に

給与所得の源泉徴収票がみなし提出特例の対象となる場合、原則として、源泉徴収票そのものの税務署提出は不要になります。そして、給与所得の源泉徴収票だけを前提に考えるのであれば、源泉徴収票に係る合計表も税務署へ提出不要となります。


つまり、給与所得の源泉徴収票しか提出対象がない事業者であれば、給与支払報告書を市区町村へ提出することで、税務署へ提出する源泉徴収票と合計表の実務が大きく軽減される可能性があります。


ただし、ここで終わらないのが法定調書実務のややこしいところです。


他の法定調書を提出する場合は合計表が必要

実務上、特に注意すべきなのは、給与所得の源泉徴収票以外の法定調書を税務署へ提出する場合です。


「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は、給与所得の源泉徴収票だけのための書類ではありません。この合計表は、給与所得の源泉徴収票を含む複数の法定調書に対応した兼用様式です。


そのため、給与所得の源泉徴収票がみなし提出特例により税務署提出不要となる場合でも、他の法定調書を税務署へ提出する場合には、引き続き法定調書合計表を提出する必要があります。たとえば、次のような法定調書を提出する場合です。

  • 退職所得の源泉徴収票

  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

  • 不動産の使用料等の支払調書

  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書

  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書


給与所得の源泉徴収票だけが不要になったとしても、これらの法定調書を提出する場合には、合計表の提出を忘れないよう注意が必要です。


「源泉徴収票が不要=合計表も不要」とは限らない

今回の特例で最も誤解しやすいのは、「源泉徴収票を税務署へ出さなくてよいなら、法定調書合計表もすべて不要になる」と思ってしまうことです。


確かに、給与所得の源泉徴収票だけを提出していた事業者であれば、結果として合計表の提出も不要になる場面があります。


しかし、報酬の支払調書や不動産の支払調書など、他の法定調書を提出する事業者では話が変わります。この場合は、給与所得の源泉徴収票に関する記載が不要であっても、他の法定調書の提出に対応するため、兼用様式である法定調書合計表を税務署へ提出しなければなりません。


年末調整担当者と支払調書担当者が別部署になっている会社では、この点が特に見落とされやすいでしょう。


法定調書合計表には何を記載するのか

給与所得の源泉徴収票がみなし提出特例の対象となり、税務署へ提出しない場合、合計表には給与所得の源泉徴収票に関する記載は不要と考えられます。


一方で、税務署へ実際に提出する他の法定調書がある場合には、その法定調書に関する事項を合計表に記載して提出します。つまり、今後の実務では、次のように整理すると分かりやすいでしょう。

  • 給与所得の源泉徴収票のみが対象→ 給与支払報告書の提出により、税務署への源泉徴収票・合計表提出は不要となる可能性

  • 給与所得の源泉徴収票以外の法定調書も提出する→ 他の法定調書に対応するため、法定調書合計表の提出が必要


この区分を社内で明確にしておくことが大切です。


KSK2稼働に伴う様式変更にも注意

令和8年9月24日から、国税庁の次世代基幹システムであるKSK2が稼働します。これに伴い、各種申告書や法定調書の様式変更が予定されています。


法定調書合計表についても、令和8年8月頃に様式変更が予定されています。そのため、源泉徴収票のみなし提出特例が始まる令和9年1月時点では、すでに新様式へ切り替わっていることになります。


つまり、令和8年分の法定調書提出実務では、みなし提出特例への対応とKSK2に伴う新様式への切替えの両方を意識する必要があります。


旧様式を使わないように注意

法定調書合計表や支払調書の様式が変更される場合、実務でありがちなのが、前年のExcelやPDF、社内テンプレートをそのまま使ってしまうことです。


特に、毎年同じ様式をコピーして使っている会社や、社内独自の入力フォーマットを利用している会社では、旧様式のまま処理を進めてしまうリスクがあります。令和8年分以後の法定調書提出では、次の点を確認しておきましょう。

  • 法定調書合計表が新様式に切り替わっているか

  • 退職所得の源泉徴収票の様式が変更されていないか

  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の様式が変更されていないか

  • 会計ソフト・給与ソフト・法定調書作成ソフトが新様式に対応しているか

  • 社内の記入例やチェックリストが古いままになっていないか


様式変更は地味ですが、提出直前に気づくと対応がかなり慌ただしくなります。


国税庁ホームページで様式変更予定を確認

資料では、変更予定の様式一覧について、国税庁ホームページの「国税システムの更改について」で公表されているExcelファイルから確認できるとされています。


法定調書合計表だけでなく、退職所得の源泉徴収票や報酬・料金等の支払調書など、他の法定調書も令和8年8月頃に様式変更が予定されています。


そのため、法定調書の提出がある会社や会計事務所では、年末になってから確認するのではなく、事前に対象様式を確認し、使用する様式やシステムを更新しておくことが重要です。


実務で誤りやすいポイント

今回の改正と様式変更では、次のような誤りが起こりやすいと考えられます。


1. 合計表を完全に不要と誤解する

給与所得の源泉徴収票がみなし提出特例の対象になる場合でも、他の法定調書を提出する場合は合計表が必要です。


2. 他の法定調書の提出有無を確認しない

年末調整担当者が給与所得の源泉徴収票だけを見て判断し、報酬や不動産関係の支払調書の存在を見落とす可能性があります。


3. 旧様式を使用してしまう

KSK2稼働に伴い、法定調書合計表や各種法定調書の様式変更が予定されています。前年様式の使い回しには注意が必要です。


4. 給与支払報告書の提出を前提にしない

みなし提出特例は、給与支払報告書を市区町村へ提出することが前提です。給与支払報告書の提出漏れがあれば、当然ながら特例の前提が崩れます。


経理担当者が確認したいチェックリスト

令和8年分の法定調書提出に向けて、次の点を確認しておくとよいでしょう。

  • 給与支払報告書を市区町村へ提出する体制になっているか

  • 給与所得の源泉徴収票がみなし提出特例の対象になるか

  • 給与所得の源泉徴収票以外に提出する法定調書があるか

  • 他の法定調書を提出する場合、合計表を提出する準備ができているか

  • 合計表や各種法定調書が新様式に切り替わっているか

  • 給与ソフト・会計ソフト・法定調書作成ソフトの更新時期を確認しているか

  • 社内マニュアルや顧問先向け案内文を更新しているか

特に、報酬の支払調書を毎年提出している会社では、合計表の提出漏れに注意が必要です。


顧問先に伝えたいこと

次の点を説明しておきたいところです。

  • 給与支払報告書を市区町村へ提出することが前提である

  • 給与所得の源泉徴収票のみであれば、税務署提出が不要になる可能性がある

  • ただし、報酬の支払調書など他の法定調書を提出する場合は、合計表の提出が必要

  • 令和8年8月頃に法定調書関係の様式変更が予定されている

  • 令和8年分の提出では新様式を使う必要がある


まとめ

令和9年1月1日以後に提出すべき給与所得の源泉徴収票から、源泉徴収票のみなし提出特例が始まります。この特例により、給与所得の源泉徴収票に記載すべき一定事項が記載された給与支払報告書を市区町村長へ提出した場合、所轄税務署長へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。


そのため、給与所得の源泉徴収票がみなし提出特例の対象となる場合には、源泉徴収票に加えて、これに係る合計表も税務署への提出が不要となります。ただし、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は、給与所得の源泉徴収票を含む複数の法定調書の兼用様式です。退職所得の源泉徴収票や報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書など、給与所得の源泉徴収票以外の法定調書を税務署へ提出する場合には、引き続き法定調書合計表の提出が必要です。


また、KSK2の稼働に伴い、法定調書合計表や各種法定調書は令和8年8月頃に様式変更が予定されています。令和8年分の法定調書提出では、みなし提出特例の適用有無と新様式への切替えの両方を確認し、提出漏れや旧様式の使用を防ぐことが大切です。

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