令和8年分の年末調整は基礎控除引上げに注意|国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説
- 安田 亮
- 7 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
令和8年分の年末調整では、所得税の基礎控除や給与所得控除、扶養親族等の所得要件について、例年よりも注意が必要です。
国税庁は、令和8年度税制改正に関連して、「所得税の基礎控除の引上げ等」に関するQ&Aを公表しました。このQ&Aでは、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の見直しについて、令和8年12月以後の源泉徴収事務や年末調整でどのように対応すべきかが整理されています。
今回の改正は、令和8年分の所得税に関係しますが、実務上は少しややこしい点があります。それは、改正の施行時期が原則として令和8年12月1日であるため、令和8年11月までの給与計算と、令和8年12月以後の年末調整で取扱いが異なることです。
今回は、給与担当者や経理担当者が押さえておきたい令和8年分の年末調整実務のポイントを、税理士の視点から整理します。
令和8年度改正で何が変わるのか
令和8年度税制改正では、所得税について主に次の見直しが行なわれます。
基礎控除額の引上げ
給与所得控除の最低保障額の引上げ
扶養親族等の所得要件の見直し
これらの改正により、令和8年分の年末調整では、従業員本人の基礎控除額や、配偶者・扶養親族の所得判定に影響が出る可能性があります。
特に、配偶者や扶養親族に給与収入がある場合は、給与所得控除の最低保障額が変わることで、合計所得金額の計算結果が変わります。その結果、これまで控除対象外だった親族が、新たに扶養控除等の対象になるケースも考えられます。
改正は令和8年12月の年末調整で対応
今回の改正は、原則として令和8年12月1日に施行されます。
そのため、令和8年11月までの毎月の給与等に係る源泉徴収事務では、従来どおり改正前の源泉徴収税額表を使って税額を計算します。令和8年11月までの給与計算に、改正後の基礎控除額や扶養親族等の所得要件を先取りして反映するわけではありません。
一方、令和8年12月に行なう年末調整では、改正後の基礎控除額や給与所得控除後の給与等の金額表を用いて、1年間の税額を計算します。
そして、令和8年中に改正前の源泉徴収税額表により毎月徴収してきた源泉所得税額と、改正後の年末調整による年調年税額との差額を精算することになります。
令和8年11月までの給与計算では扶養人数に注意
今回の改正により、新たに扶養控除等の対象となる親族が出てくる可能性があります。
ただし、令和8年11月30日以前に支払う給与等については、源泉徴収税額表を使う際の扶養親族等の数に、改正によって新たに対象となる親族を含めないよう注意が必要です。
たとえば、改正後であれば扶養親族等に該当する見込みの親族がいる場合でも、令和8年11月以前の給与計算では、改正前のルールで源泉徴収税額を計算します。
この点を誤ると、月々の源泉徴収税額が過少になるおそれがあります。年末調整で精算されるとはいえ、給与計算実務では時期ごとのルールを分けて管理することが大切です。
新たに扶養控除等の対象となる場合の手続
令和8年度改正により、新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等がいる従業員は、その旨を記載した扶養控除等申告書を会社へ提出することで、年末調整で扶養控除等を適用できます。
この場合、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄には、たとえば「令和8年12月1日改正」などと記載することが想定されています。
提出期限としては、令和8年12月1日以後、最初に給与等の支払を受ける日の前日までに提出するのが原則です。ただし、年末調整を行なう時までに提出があれば、その申告内容に基づいて年末調整を行なうことができます。
給与担当者としては、従業員に対し、該当する親族がいる場合は早めに申告書を提出するよう案内しておくとよいでしょう。
令和8年分の扶養控除等申告書の記載事項は変わらない
令和8年分の年末調整では、給与所得控除額や扶養親族等の所得要件が変わります。
しかし、令和8年分の扶養控除等申告書については、記載事項そのものに変更はないとされています。
つまり、新しい欄が追加されるというより、改正により扶養控除等の対象となる親族が新たに生じた場合に、既存の扶養控除等申告書へ異動内容を記載して提出するイメージです。
このため、会社側では、申告書様式の変更だけでなく、従業員への案内文や記入例を更新することが重要になります。
基礎控除申告書では改正後の控除額を正しく記載
令和8年12月に行なう年末調整では、基礎控除申告書の記載にも注意が必要です。
令和8年12月1日から、合計所得金額に応じて基礎控除額が引き上げられるため、従業員は自分の合計所得金額に応じた改正後の基礎控除額を正しく記載する必要があります。
基礎控除は、ほとんどの従業員に関係する項目です。そのため、給与担当者は、改正後の基礎控除額を前提とした記入例やチェックリストを用意しておくと、年末調整時の確認がスムーズになります。
特に、複数の所得がある従業員や、副業収入がある従業員については、合計所得金額の見積りに誤りがないか注意が必要です。
配偶者控除等申告書は給与所得控除の最低保障額に注意
配偶者控除等申告書では、配偶者の合計所得金額に応じて、配偶者控除または配偶者特別控除の適用可否や控除額を判定します。
令和8年度改正では、給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられます。
そのため、配偶者に給与所得がある場合は、改正後の給与所得控除額を用いて合計所得金額を計算し、その金額に応じて配偶者控除または配偶者特別控除の額を記載する必要があります。
配偶者の給与収入が同じでも、給与所得控除額が変わることで合計所得金額が変わり、結果として控除額が変わる可能性があります。
特定親族特別控除申告書も同様に確認
特定親族特別控除申告書についても、配偶者控除等申告書と同じように注意が必要です。
特定親族に給与所得がある場合は、改正後の給与所得控除額を適用して合計所得金額を計算し、その金額に応じて特定親族特別控除額を正しく記載します。
また、扶養控除等申告書に源泉控除対象親族として記載していた特定親族が、改正により控除対象扶養親族、つまり特定扶養親族に該当することとなった場合には、扶養控除の対象になります。この場合も、異動があった旨を記載した扶養控除等申告書を提出する必要があります。
令和8年11月以前に年末調整を受けた人は確定申告が必要な場合も
今回の改正では、年末調整のタイミングによって注意が必要なケースがあります。
たとえば、次のような方が令和8年11月30日以前に居住者として令和8年分の最後の給与等の支払いを受け、年末調整を受けている場合です。
令和8年中に海外支店等へ転勤し、非居住者となった人
令和8年中に死亡により退職した人
休業や休職をしており、令和8年末までに復職していない人
これらの方について、令和8年11月30日以前に年末調整が行われた場合、その年末調整では改正後の控除等が反映されません。
したがって、改正後の控除等を適用するには、原則として確定申告が必要になります。
また、令和8年の中途で退職し、年末調整を受けていない人についても、改正後の控除等を適用するには確定申告が必要です。
準確定申告を済ませた場合は更正の請求の可能性
令和8年11月30日以前に準確定申告を行なった場合も注意が必要です。
この場合、令和8年12月1日から一定期間内に更正の請求を行なうことで、改正後の控除等を適用できるとされています。
相続人や関係者が準確定申告を済ませている場合には、改正後の控除を反映できるかどうか確認が必要です。
実務上は、通常の年末調整対象者だけでなく、中途退職者、海外転勤者、死亡退職者、休職者などについても、改正の影響を確認する必要があります。
令和9年分以後の源泉徴収事務
令和9年1月1日以後に支払う給与等については、令和9年分の源泉徴収税額表を使用して源泉徴収税額を計算します。
この税額表は、令和8年8月末頃に公表予定とされています。
つまり、令和8年中は、11月まで改正前の月次源泉徴収、12月年末調整で改正後対応、令和9年1月以後は新しい源泉徴収税額表で毎月の源泉徴収を行う、という流れになります。
給与計算ソフトを利用している会社では、令和8年12月の年末調整対応と、令和9年1月以後の源泉徴収税額表対応の両方について、ソフトの更新時期を確認しておきましょう。
源泉徴収票の様式変更にも注意
今回のQ&Aでは、「給与所得の源泉徴収票」そのものの改正はないとされています。
ただし、国税システムの更改に伴い、令和8年8月以降、源泉徴収票を含むすべての法定調書の様式が変更される予定です。
また、令和9年1月以後に提出する令和8年分の源泉徴収票については、市区町村に給与支払報告書を提出した場合、みなし提出特例により、税務署への提出が不要となる場合があります。そのため、令和8年分の年末調整・法定調書提出では、次の3つをあわせて確認する必要があります。
所得税の基礎控除引上げ等への対応
法定調書様式の変更
源泉徴収票のみなし提出特例
制度改正が重なるため、例年どおりの処理では漏れが出る可能性があります。
年末調整における税額計算の留意点
令和8年分の年末調整では、税額計算において次の点に注意が必要です。
まず、給与所得控除の最低保障額の引上げに伴い、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表が改正されます。年末調整では、改正後の表に基づいて給与所得控除後の給与等の金額を計算します。
次に、従業員から提出された基礎控除申告書をもとに、改正後の基礎控除額を正しく控除します。
最後に、令和8年中に毎月徴収してきた源泉徴収税額の合計額と、改正後の年末調整による年調年税額を比較します。毎月の徴収税額の合計額が年調年税額より多い場合、その差額は過納額として従業員に還付します。
給与担当者が準備しておきたいこと
令和8年分の年末調整に向けて、会社の給与担当者は次の準備を進めておくと安心です。
国税庁Q&Aの内容を確認する
改正後の基礎控除額を確認する
改正後の給与所得控除後の給与等の金額表を確認する
配偶者や扶養親族の所得要件変更を従業員へ案内する
新たに扶養控除等の対象となる親族がいないか確認してもらう
扶養控除等申告書の異動欄の記載方法を案内する
配偶者控除等申告書、特定親族特別控除申告書の記入例を更新する
給与計算ソフトの年末調整対応状況を確認する
令和9年分の源泉徴収税額表への切替時期を確認する
令和8年分は、年末調整の直前で従業員から質問が増える可能性があります。早めに社内案内を出しておくことで、年末の混乱を防ぎやすくなります。
まとめ
国税庁は、令和8年度税制改正に係る所得税の基礎控除引上げ等に関するQ&Aを公表しました。このQ&Aでは、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の見直しについて、令和8年12月以後の年末調整や源泉徴収事務でどのように対応するかが整理されています。
今回の改正は、原則として令和8年12月1日に施行されるため、令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務には基本的に影響しません。令和8年12月の年末調整では、改正後の基礎控除額や改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」に基づき、1年間の税額を計算し、改正前の源泉徴収税額表により徴収してきた税額との差額を精算します。
また、改正により新たに扶養控除等の対象となる親族がいる場合には、従業員がその旨を記載した扶養控除等申告書を会社へ提出することで、年末調整で控除を適用できます。配偶者控除等申告書や特定親族特別控除申告書では、給与所得控除の最低保障額引上げ後の所得金額に基づき、控除額を正しく記載する必要があります。
令和8年分の年末調整は、例年より確認事項が増える見込みです。給与担当者は、従業員への案内、申告書の記入例、給与ソフトの更新、令和9年分の源泉徴収税額表への切替えまで、早めに準備しておきましょう。




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