単身赴任手当は消費税の仕入税額控除の対象? 帰宅旅費との違いを税理士が解説
- 安田 亮
- 5 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
単身赴任をしている従業員に対して、会社が単身赴任手当や帰宅旅費を支給しているケースは少なくありません。家族と離れて生活する従業員の負担を軽減するため、毎月一定額を支給したり、月に数回まで自宅へ戻る交通費を会社が負担したりする制度を設けている会社もあります。
一方で、経理処理では次のような疑問が出やすいところです。
単身赴任手当は消費税の課税仕入れになるのか
実費精算の帰宅旅費なら仕入税額控除できるのか
出張旅費と同じように処理してよいのか
会議に合わせて帰宅する場合はどうなるのか」
単身赴任手当や帰宅旅費は、給与、福利厚生費、旅費交通費など、会計処理上の勘定科目だけで判断すると誤りやすい項目です。添付資料でも、単身赴任手当等の消費税処理ではミスが散見されると注意喚起されています。
今回は、単身赴任手当や帰宅旅費が消費税の仕入税額控除の対象になるのかについて、税理士の視点からわかりやすく解説します。
1.単身赴任手当には主に2つの支給パターンがある
単身赴任者への支給には、大きく分けて次の2つがあります。
1つ目は、毎月一定額の単身赴任手当を支給するケースです。たとえば、単身赴任による生活費増加に配慮して、毎月3万円や5万円などを支給するような場合です。
2つ目は、月の一定回数に限り、帰宅のための往復交通費を実費支給するケースです。
たとえば、月1回または月2回まで、赴任地から家族の住む自宅までの交通費を会社が負担するような場合です。
2.どちらの場合も原則として仕入税額控除の対象にならない
今回の重要ポイントは、毎月定額の単身赴任手当でも、帰宅交通費の実費支給でも、原則として消費税の仕入税額控除の対象にならないという点です。
単身赴任者に対して毎月一定額を支給するケースと、月の一定回数に限り往復交通費の実費を支給するケースのいずれについても、消費税の仕入税額控除の対象にならないとされています。
実費精算であれば旅費交通費として課税仕入れにできそうに見えますが、単身赴任者の帰宅旅費は通常の出張旅費とは性格が異なるため、注意が必要です。
3.単身赴任手当は給与等の補填と考えられる
なぜ、単身赴任手当は仕入税額控除の対象にならないのでしょうか。
単身赴任手当について、家族と離れて生活することに伴い生活費等の負担が大きくなることに配慮して、給与等の補填として支給されるものと考えられると説明されています。
つまり、単身赴任手当は、会社が事業遂行のために外部業者から役務提供を受けた対価ではなく、従業員に対する給与的な支給と整理されます。
所得税でも給与所得として源泉徴収の対象とされるため、消費税でも給与等を対価とする役務提供に対する支払いとして扱われ、仕入税額控除の対象にはならないという考え方です。
4.帰宅旅費も出張旅費とは異なる
では、単身赴任者が自宅へ帰るための交通費を会社が実費精算した場合はどうでしょうか。
交通機関を利用しているため、消費税が含まれる支出に見えます。しかし、単身赴任者に対するいわゆる帰宅旅費は、職務遂行に必要な旅行の費用とは認められないと考えられています。
つまり、単身赴任者が家族のもとへ帰るための旅費は、従業員本人の生活上・家庭上の必要に基づく移動であり、会社の業務遂行のための出張とは異なります。
そのため、月1回や月2回など回数を限定して実費支給していても、原則として仕入税額控除の対象にはなりません。
5.国内出張旅費はなぜ仕入税額控除の対象になるのか
ここで、通常の国内出張旅費との違いを整理しておきましょう。
国内における出張旅費、宿泊費、日当について、事業者が事業遂行のために必要な費用を、旅行した者を通じて支出しているものといえるため、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額は消費税の仕入税額控除の対象になるとされています。
つまり、出張旅費は、従業員個人への利益供与というより、会社の業務遂行に必要な移動費用です。そのため、通常必要な範囲内であれば課税仕入れとして扱うことができます。
6.単身赴任者の帰宅旅費は「業務のための旅行」ではない
一方、単身赴任者の帰宅旅費は、会社の業務のために取引先へ出張する費用ではありません。多くの場合、従業員が家族と会うため、生活拠点に戻るための費用です。
そのため、会社が実費で負担していても、税務上は通常の国内出張旅費と同じようには扱いません。
ここを混同すると、会計上は旅費交通費にしているから消費税も課税仕入れ、と処理してしまいがちです。しかし、消費税ではその支出が職務遂行上必要な旅行費用かどうかを確認する必要があります。
7.会議等に合わせた帰宅旅費は例外的に対象になる場合がある
もっとも、単身赴任者の帰宅に関する旅費が、常にすべて仕入税額控除の対象外になるわけではありません。
単身赴任者が会議等に合わせて帰宅する旅費について、一定の場合には所得税上非課税として取り扱って差し支えないとされています。具体的には、その旅行の目的や行路等からみて、主として職務遂行上必要な旅行と認められ、かつ旅費の額が非課税とされる旅費の範囲を著しく逸脱しない場合です。
そして、このような旅費については、消費税の仕入税額控除の対象になると整理されています。
8.判断のポイントは「主目的が業務かどうか」
会議等に合わせた帰宅旅費で仕入税額控除が認められるかどうかは、旅行の主目的によります。
たとえば、単身赴任先から本社へ出張し、本社会議に出席した後、週末に家族の住む自宅へ戻るようなケースでは、移動の目的、経路、日程を確認する必要があります。
会社の会議出席が主目的であり、その行程が通常必要な範囲内であれば、業務上の旅費として処理できる余地があります。一方、実質的には帰省が主目的で、たまたま会議日程に合わせているだけのような場合には、通常の帰宅旅費と同様に扱われる可能性があります。
9.勘定科目だけで消費税区分を決めない
単身赴任手当や帰宅旅費の処理で起こりやすいミスは、勘定科目だけで消費税区分を決めてしまうことです。
たとえば、会計ソフトで「旅費交通費」として入力すると、自動的に課税仕入れになる設定になっている会社もあります。しかし、同じ旅費交通費勘定でも、
業務出張の交通費
単身赴任者の帰宅旅費
会議出席を主目的とした帰宅時の旅費
では、消費税の取扱いが異なる可能性があります。
そのため、単身赴任者に関する支出は、勘定科目だけでなく、支給目的と旅行目的を確認して処理することが大切です。
10.実務で整備しておきたい社内ルール
単身赴任者への支給がある会社では、社内規程や経費精算ルールを整備しておくと、税務処理が安定します。
たとえば、次のようなルールを明確にしておくとよいでしょう。
毎月定額の単身赴任手当は給与扱いとする
通常の帰宅旅費は仕入税額控除の対象外として処理する
会議や研修に合わせた移動は、出張命令や会議資料で業務目的を明確にする
帰宅と業務出張が重なる場合は、目的・経路・日程を精算書に記載する
会計ソフトの消費税区分を自動設定のままにしない
特に、実費精算の帰宅旅費は旅費交通費として処理されやすいため、消費税区分に注意が必要です。
11.実務でよくある誤解
このテーマでは、次のような誤解が起こりやすいです。
① 実費精算の交通費なら仕入税額控除できる
これは誤りです。単身赴任者への帰宅旅費について、月の一定回数に限り往復交通費の実費を支給するケースでも、消費税の仕入税額控除の対象にならないとされています。
② 旅費交通費勘定なら消費税は課税仕入れ
これも危険です。単身赴任者の帰宅旅費は、職務遂行に必要な旅行の費用とは認められないため、通常の国内出張旅費とは区別する必要があります。
③ 会議に合わせて帰宅した場合も必ず対象外
これも一概にはいえません。旅行の目的や行路等からみて、主として職務遂行上必要な旅行と認められる場合には、消費税の仕入税額控除の対象になると整理されています。
12.会社が確認しておきたい実務ポイント
単身赴任手当や帰宅旅費を支給している会社は、次の点を確認しておきましょう。
毎月定額の単身赴任手当を支給しているか
帰宅旅費を実費精算しているか
その帰宅旅費は職務遂行上必要な旅行か
会議や研修に合わせた帰宅の場合、業務目的を説明できるか
旅費の額が通常必要な範囲を超えていないか
会計ソフトの消費税区分が自動的に課税仕入れになっていないか
給与課税・源泉徴収の処理と消費税区分が整合しているか
まとめ
単身赴任者に支給する単身赴任手当等は、消費税の処理を誤りやすい項目です。毎月一定額を支給する単身赴任手当も、月の一定回数に限り往復交通費の実費を支給する帰宅旅費も、原則として消費税の仕入税額控除の対象にならないとされています。
その理由は、単身赴任手当が、家族と離れて生活することに伴う生活費等の負担増に配慮した給与等の補填として支給されるものと考えられ、帰宅旅費も通常は職務遂行に必要な旅行費用とは認められないためです。
一方で、単身赴任者が会議等に合わせて帰宅する場合には、その旅行の目的や行路等からみて、主として職務遂行上必要な旅行と認められ、旅費の額も通常必要な範囲を著しく逸脱しない限り、消費税の仕入税額控除の対象になる場合があります。
単身赴任に関する支給は、給与・旅費・福利厚生の要素が混在しやすい分野です。だからこそ、勘定科目だけで判断せず、支給目的と旅行目的を確認したうえで、消費税区分を慎重に判定することが大切です。




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