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国税庁がインボイスQ&Aを改訂|3割特例の適用関係と実務上の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 時間前
  • 読了時間: 7分

おはようございます!代表の安田です。


インボイス制度が始まって以降、事業者にとって消費税実務はますます複雑になっています。登録のタイミング、免税事業者からの仕入れの経過措置、簡易課税との選択関係など、判断を誤りやすいテーマが少なくありません。


こうした中、国税庁は2026年4月1日付で「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」を改訂しました。


今回の改訂では、令和8年度税制改正で創設された「3割特例」に関する問答が新たに追加されたほか、既存の「インボイスの取扱いに関するご質問」の内容の取込みや、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(7割・5割・3割控除)の反映も行なわれています。加えて、消費税法基本通達も一部改正されています。


今回は、このQ&A改訂のうち、特に実務への影響が大きい3割特例を中心に、押さえておきたいポイントを整理します。


今回の改訂で何が追加されたのか

資料によると、今回のインボイスQ&A改訂では合計6問が追加されています。内訳は、既に公表されていた「インボイスの取扱いに関するご質問」からの取込みが3問、そして3割特例に関する新設問が3問です。追加された主な問番号として、問114-2、問115-2、問117-3が挙げられています。


つまり、今回の改訂は単なる文言修正ではなく、令和8年度改正を踏まえて実務判断に必要な論点を補ったものといえます。


3割特例とは何か

今回の改訂で最も注目されるのが、小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置、いわゆる「3割特例」です。3割特例は、令和9年分及び令和10年分の課税期間において、個人事業者である免税事業者がインボイス発行事業者となる場合に、売上税額の3割を納付税額とできる経過措置であると整理されています。ここには、課税選択届出書の提出によって課税事業者となった場合も含まれます。


これまでの2割特例に代わる位置づけとして理解されやすいですが、対象や適用時期には違いがあるため、単純に同じ感覚で考えるのは危険です。


3割特例は事前届出不要で使える

実務上、かなり重要なのがこの点です。資料によると、3割特例は簡易課税制度のような事前の届出や継続適用の制限がないとされています。つまり、あらかじめ届出書を提出しておく必要はなく、申告書にその適用を受ける旨を付記することで適用可能です。

このため、小規模個人事業者にとっては使いやすい制度に見えますが、その分、申告時に「本当に適用できる期間かどうか」を見誤らないことが重要になります。


すでに課税事業者になっている個人事業者でも使えるのか

資料では、個人事業者である課税事業者がインボイス発行事業者になった場合についても触れられています。この場合でも、そのインボイス発行事業者となった課税期間の翌課税期間以後で、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として3割特例を適用できると整理されています。

この点は、免税事業者から課税事業者へ移行した人だけでなく、すでに一定の課税事業者となっている個人事業者にとっても重要です。「一度課税事業者になったら使えない」と早合点せず、基準期間の売上高や適用時期を個別に確認する必要があるということです。


3割特例を使えない課税期間に注意

今回のQ&A改訂で実務的に特に重要なのが、問115-2で整理された「3割特例を適用できない課税期間」です。資料では、次のような課税期間は3割特例の対象外とされています。


  • 課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者である課税期間

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間

  • 特定期間の課税売上高による納税義務免除の特例により、免税点制度の適用が制限される課税期間

  • 相続があった場合の納税義務免除の特例により、免税点制度の適用が制限される課税期間

  • 課税選択届出書提出後2年以内に一般課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合など、免税点制度の適用が制限される課税期間

  • 一般課税で高額特定資産の仕入れ等を行った場合

  • 一般課税で金又は白金の地金等を200万円以上仕入れた場合

  • 課税期間の特例の適用を受ける課税期間 


つまり、3割特例は一見シンプルでも、免税点制度の適用制限がかかる課税期間では使えないケースが少なくありません。設備投資や資産取得の状況によっては、本人が思っている以上に適用対象外になりやすい点に注意が必要です。


3割特例より簡易課税のほうが有利なケースもある

問117-3として、3割特例より簡易課税制度のほうが納付税額が少なくなる場合についても解説されています。たとえば、事業が小売業に該当する場合には、簡易課税制度を選択すると80%のみなし仕入率が使えるため、3割特例よりも納税額が少なくなる可能性があるとされています。


一方で、多額の設備投資があり、課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合には、一般課税であれば還付が生じ得るのに対し、簡易課税制度や3割特例では通常還付は生じないことも指摘されています。


このため、3割特例は便利な制度ではあるものの、常に有利とは限りません。業種・設備投資の有無・課税仕入れの状況を踏まえて、簡易課税や一般課税と比較検討することが重要です。


免税事業者等からの仕入れの経過措置も改正反映

今回の改訂では、3割特例だけでなく、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の改正も既存のQ&Aへ反映されたとされています。資料では、7割・5割・3割控除の改正内容が既存問に織り込まれていると整理されています。


インボイス制度では、仕入税額控除の可否だけでなく、この経過措置の適用年次も非常に重要です。実務では、売手が免税事業者か、登録時期がいつか、取引時期が改正前後のどこに位置するかまで含めて確認する必要があります。


消費税法基本通達の改正にも注目

資料によれば、令和8年度税制改正に伴い、消費税法基本通達も一部改正されています。特に、特定少額資産販売事業者の登録制度の創設や、デジタルプラットフォームを介して行う資産の譲渡に係る課税関係の見直しに関連して、新たな通達項目が設けられています。たとえば、「通信販売の方法」、「一の資産の判定単位」、「資産の譲渡に係るプラットフォーム事業者による国外事業者の判定等」などが新設されています。


さらに、特定少額資産販売事業者について、登録日の属する課税期間以後は小規模事業者に係る納税義務免除の規定の適用がないことも示されています。


この部分は、インボイス制度対応だけでなく、越境ECやプラットフォーム課税に関心のある事業者にも影響がある論点です。


実務で押さえておきたいポイント

今回の改訂を踏まえると、実務上は次の3点を特に意識しておきたいところです。

まず、3割特例は申告書への付記で使えるが、適用できない課税期間が多いこと。次に、簡易課税や一般課税のほうが有利になるケースがあるため、3割特例を自動的に選ばないこと。そして、Q&A改訂だけでなく通達改正も含めて制度全体を確認する必要があることです。


税理士や経理担当者としては、「新制度ができた」という情報だけで終わらせず、どの納税者に、どの課税期間で、どの方式が最適かまで整理しておく必要があります。


まとめ

国税庁は2026年4月1日、インボイスQ&Aを改訂し、令和8年度税制改正で創設された3割特例に関する問答を新たに追加しました。


3割特例は、令和9年分及び令和10年分の課税期間において、個人事業者である免税事業者等がインボイス発行事業者となる場合に、売上税額の3割を納付税額とできる経過措置です。事前届出は不要で、申告書に適用を受ける旨を付記することで適用できる一方、基準期間売上高が1,000万円を超える課税期間や、免税点制度の適用が制限される各種課税期間などでは使えません。


また、事業が小売業に該当する場合など、簡易課税のほうが有利になるケースも示されています。さらに、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の改正反映や、消費税法基本通達の一部改正も行なわれています。


インボイス制度対応は、単に登録の有無だけでなく、どの申告方式を選ぶかまで含めた判断が必要な時代になっています。3割特例を検討する場合も、簡易課税・一般課税との比較を行い、自社にとって最も有利で適正な方法を選ぶことが大切です。


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