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実質的に同族会社が支払う社債利子も総合課税へ|令和8年度改正のポイントを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、社債利子に対する課税関係について見直しが行われました。一見すると専門的で限られた場面の改正に見えますが、同族会社オーナーやその関係者が絡む資金調達スキームでは、思わぬ影響が出る可能性があります。


もともと社債利子は、原則として利子所得として源泉分離課税の対象です。しかし、実態としては役員報酬や配当と近い性格を持ちながら、形式上は社債利子として受け取ることで、より低い税率で課税されるケースが問題視されてきました。


今回の改正では、さらに一歩踏み込み、同族会社以外の法人から受ける社債利子であっても、実質的に同族会社が支払っていると認められる場合には、総合課税の対象になることが明確化されました。この記事では、その改正内容と実務上の注意点をわかりやすく整理します。


そもそも社債利子はなぜ問題になるのか

社債利子は通常、利子所得として扱われ、一定の税率による源泉分離課税が基本です。一方で、役員報酬や配当は、一般に総合課税や他の課税ルールのもとで扱われるため、税負担の水準が異なることがあります。


過去には、本来であれば総合課税の対象となるべき役員報酬等を、社債利子の形で受け取ることにより、利子所得として分離課税を受けることで税負担を軽減する事例が見られたとされています。


こうした背景から、税制上は「形式だけ社債利子にしていないか」という観点で、課税の見直しが進んできました。


これまでの改正の流れ

今回の改正は突然始まった話ではありません。平成25年度改正では、同族会社の役員等である株主が、その同族会社から支払を受ける社債利子について、総合課税の対象とされました。


さらに令和3年度改正では、個人が支配する法人を介して間接的に支配する同族会社から支払を受ける社債利子についても、総合課税の対象に広げられました。


つまり、形式的な支払先だけではなく、実質的な支配関係や受取構造を見て、課税関係を判断する方向へ、少しずつ制度が強化されてきたわけです。


令和8年度改正で何が変わったのか

今回の改正で新たに総合課税の対象とされたのは、同族会社以外の法人(特定法人)から支払を受ける社債利子のうち、実質的に同族会社から支払を受けるものと認められる場合として政令で定めるものです。


ここが今回の大きなポイントです。従来は「どの会社から支払われるか」という外形面が中心でしたが、改正後は、見た目の支払者が別法人でも、実質的に同族会社の信用力や担保で守られているなら、総合課税にするという考え方がより明確になっています。


どんなスキームが想定されているのか

今回の改正が想定している典型例として、次のようなケースが示されています。

  • 第三者法人介在型

    同族会社との間に第三者法人(特定法人)を介在させ、その第三者法人から社債利子の支払いを受ける形にするもの


  • たすき掛け型

    同族会社の株主が、それぞれ別の同族会社(特定法人)から社債利子の支払いを受ける形にするもの


いずれも、表面的には「自分の同族会社から直接利子を受けているわけではない」ように見せつつ、実質的には同族会社との強い結び付きの中で支払いを受けている点が問題になります。


総合課税の対象となる具体的な契約類型

今回の改正では、政令上、特定法人公社債の債務不履行時に、対象者等が実質的に損失を受けないと認められる場合として、具体的な契約類型が示されています。資料によると、次の3つの契約が対象です。


<1. 同族会社公社債を担保に供する契約>

特定法人公社債の債務を担保するために、同族会社公社債を担保に供することとされている契約です。


<2. 同族会社による債務保証契約>

特定法人公社債に係る債務について、対象者等の同族会社が保証を行うこととされている契約です。


<3. 保証人の求償権を担保する契約>

特定法人公社債に係る債務について保証人が保証を行なう場合に、その求償権を担保するために同族会社公社債を担保に供することとされている契約です。


要するに、形式上は別法人の社債でも、同族会社の担保や保証が入っていることで、投資家側が実質的に損失リスクを負っていないと認められる場合には、もはや通常の第三者的な社債投資とはいえない、という整理です。


なぜ総合課税になるのか

今回の改正の根底にあるのは、実質課税の考え方です。外形上は同族会社以外の法人から利子を受け取っていても、同族会社が担保提供や保証をしていることで、経済的にはその同族会社が利子支払いを支えているのと同じような状態になります。


そのため、税制上も「形式的な発行体」だけを見るのではなく、実質的に誰の信用や資産を背景に利子を受け取っているのかを見て、総合課税に振り直す仕組みが強化されたと考えると理解しやすいでしょう。


適用開始時期はいつか

資料によると、この改正は令和8年4月1日以後に支払を受けるべき社債利子等から適用されます。


ここで注意したいのは、契約締結日ではなく、支払を受ける日ベースで判定される点です。たとえ契約締結が令和8年3月31日以前であっても、契約内容が今回の対象類型に該当し、令和8年4月1日以後に支払を受ける社債利子であれば、総合課税の対象になるとされています。つまり、「改正前に契約したから安心」とは言えません。


実務で注意したいポイント

この改正で注意したいのは、明らかに節税目的と見える極端なスキームだけではありません。同族会社や関係法人が絡む資金調達では、金融機関対応や信用補完のために、結果として保証や担保設定が入ることがあります。


そのため、実務では少なくとも次の点を確認しておきたいところです。

  • 社債発行体が同族会社以外の法人になっていないか

  • その社債について、同族会社が保証や担保提供をしていないか

  • 保証人の求償権担保など、間接的な担保構造が入っていないか

  • 利子の受取人が、同族会社の役員等である株主など、従来から規制対象となりやすい立場にないか

  • 利子支払日が令和8年4月1日以後になっていないか


形式的な契約書だけでなく、担保契約、保証契約、資金の流れまで確認しないと、思わぬところで総合課税の対象になる可能性があります。


こんなケースは専門家への確認が重要

特に、次のようなケースでは慎重な確認が必要です。

  • オーナー企業グループ内で資金調達を組んでいる

  • 別法人を介した社債発行スキームを採用している

  • 同族会社が別法人の債務保証をしている

  • 同族会社公社債を担保に使う設計がある

  • 既存契約が令和8年4月以後も継続して利子支払を伴う


こうしたケースでは、支払者名義だけで判断せず、実質的に誰がリスクを負い、誰の信用で成り立つ取引なのかを確認する必要があります。


まとめ

令和8年度税制改正により、総合課税の対象となる社債利子の範囲が見直されました。今回の改正では、同族会社以外の法人(特定法人)から支払を受ける社債利子であっても、実質的に同族会社から支払を受けるものと認められる場合には、総合課税の対象となります。


具体的には、特定法人公社債の債務不履行時に実質的な損失を受けないよう、同族会社公社債を担保に供する契約、同族会社による保証契約、保証人の求償権を担保する契約などがある場合が対象です。適用開始は令和8年4月1日以後に支払を受ける社債利子等であり、契約締結日がそれ以前でも適用される点に注意が必要です。


今回の改正は、社債利子の課税関係について、形式より実質を重視する方向をさらに進めたものといえます。オーナー企業や同族会社が関係する資金調達では、利子の支払先や発行体だけでなく、保証・担保の構造まで含めて税務上の影響を確認することが大切です。


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