国税庁が源泉徴収票のみなし提出特例Q&Aを公表|電子的提出義務と合計表の取扱いを解説
- 安田 亮
- 1 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
年末調整や法定調書の実務に関わる事業者にとって、源泉徴収票の提出方法の見直しは見逃せないテーマです。とくに、令和9年1月以後は、一定の場合に税務署へ給与所得の源泉徴収票を別途提出しなくてよくなるため、給与実務の流れそのものが変わる可能性があります。
今回、国税庁は「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」を公表しました。このQ&Aでは全16問にわたり、中途退職者に係る適用関係、法定調書の電子的提出義務の判定方法、法定調書合計表の取扱いなど、実務上気になりやすい論点が整理されています。
今回は、このQ&Aの内容を踏まえ、事業者が押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
みなし提出特例とは何か
まず前提として、源泉徴収票のみなし提出の特例とは、一定の要件を満たした給与支払報告書または公的年金等支払報告書を市区町村長に提出した場合に、税務署へ源泉徴収票を提出したものとみなす制度です。この特例は令和5年度改正で創設され、令和9年1月1日以後に提出すべき令和8年分以後の給与所得の源泉徴収票・公的年金等の源泉徴収票から適用されます。
つまり、給与支払報告書を市区町村へ出していれば、税務署へ同内容の源泉徴収票を重ねて出す必要がなくなる、というのが制度の基本的な考え方です。
令和9年1月以後提出分から適用
資料では、この特例の適用対象が明確に示されています。対象となるのは、令和9年1月1日以後に提出すべきものです。したがって、令和8年分の給与に係る書類を令和9年1月に提出するタイミングから、実務が変わることになります。
ここで大切なのは、単に「令和9年から変わる」と覚えるのではなく、令和8年分の年末調整・法定調書対応から影響すると理解しておくことです。給与担当者や会計事務所としては、令和8年後半のうちに準備を進めておく必要があります。
中途退職者も特例対象になるのか
実務で特に関心が高いのが、この点です。
中途退職者に係る給与所得の源泉徴収票は、法令上、退職日以後1か月以内に所轄税務署長へ提出することとされています。そのため、一見すると、みなし提出特例の対象外にも見えます。
しかし、運用上は翌年1月1日以後に取りまとめて提出する取扱いが認められており、令和8年の中途退職者分でも、令和9年1月1日以後にまとめて提出する場合には、みなし提出特例の対象になるとされています。
この点は、前回の解説でも重要視されていた論点ですが、今回のQ&Aであらためて明確化されたといえます。
改正後の提出範囲はどうなるのか
令和5年度改正では、源泉徴収票のみなし提出特例の導入にあわせて、給与所得の源泉徴収票の提出範囲を給与支払報告書と同範囲にする見直しも行なわれています。
改正前は、受給者の区分や支払金額によって税務署提出の要否が細かく分かれていました。たとえば、年末調整済みであれば役員は150万円超、士業等は250万円超、それ以外は500万円超など、かなり複雑な基準でした。
改正後は、年の中途で退職した者に対するその年中の給与等の支払金額が30万円以下の場合を除き、すべての給与等が提出範囲になるとされています。この点は、提出実務のシンプル化につながる一方、従来より提出対象が広がるケースもあり得るため注意が必要です。
電子的提出義務の判定はどうなるのか
今回のQ&Aで実務上かなり重要なのが、電子的提出義務の判定方法です。
令和9年1月1日以後に提出すべき法定調書については、基準年に提出すべきであった法定調書の枚数が30枚以上の場合、e-Tax等による電子的提出が必要になります。
ここで問題になるのが、みなし提出特例により税務署へ実際には源泉徴収票を提出しない場合、その枚数をどう数えるかという点です。
基準年に提出すべきであった源泉徴収票の枚数は、令和9年1月1日以後も改正前の提出範囲で所轄税務署長に提出すべきであった枚数で判定し、みなし提出特例の対象となった枚数も含めるとされています。
つまり、実際に税務署へ提出していないから0枚扱いになるわけではないという点が重要です。
Q&Aの判定例から見る注意点
令和11年に給与支払報告書を提出する場合の、電子的提出義務の有無が具体例で示されています。
例1)
令和9年(基準年)に、支払金額600万円の年末調整済みの給与支払報告書50枚を市区町村へ提出し、源泉徴収票を税務署に提出したものとみなされている場合です。
このケースでは、改正前の提出範囲内に該当するため、基準年に提出すべき給与所得の源泉徴収票は50枚と判定され、30枚以上の基準に該当するため、令和11年は電子的提出義務ありとなります。
例2)
一方、支払金額600万円の年末調整済み20枚と、支払金額40万円の乙欄適用15枚を提出しているケースでは、後者は改正前の提出範囲に入らないため、基準年に提出すべき源泉徴収票は20枚と判定され、30枚未満のため電子的提出義務は生じないとされています。
この2つの例からもわかるように、枚数判定は単純な提出総数ではなく、改正前の提出範囲を前提に行う点がポイントです。
法定調書合計表は不要になるのか
これも実務上かなり重要な論点です。
みなし提出特例の対象となった源泉徴収票に係る合計表についても、原則として税務署への提出は不要となります。
ただし、ここで終わりではありません。
「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」は、給与所得の源泉徴収票を含む6種類の法定調書の兼用様式であるため、退職所得の源泉徴収票など、給与所得の源泉徴収票以外の5つの法定調書のいずれかを税務署へ提出する場合には、引き続き法定調書合計表の提出が必要になります。
その場合、合計表には実際に税務署へ提出する法定調書分だけを記載し、税務署へ提出しない給与所得の源泉徴収票に関する記載は不要とされています。
実務で気をつけたいポイント
今回のQ&Aを踏まえると、実務上は次の点を特に意識したいところです。
まず、中途退職者分をいつ提出する運用にしているかを確認することです。令和9年1月にまとめて提出する形にしていれば特例対象になりますが、都度提出のフローだと整理が異なる可能性があります。
次に、電子的提出義務の枚数判定を誤らないことです。
みなし提出特例で税務署へ実際に提出しないからといって、基準年の枚数判定がゼロになるわけではありません。
さらに、法定調書合計表の要否を他の法定調書提出の有無とセットで確認することも重要です。給与所得の源泉徴収票だけを見ていると、「合計表もいらない」と思い込みやすいため、退職所得や報酬の法定調書を含めた全体確認が必要です。
まとめ
国税庁が公表した「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」では、令和9年1月1日以後提出分から適用されるみなし提出特例について、実務上重要な論点が整理されています。
この特例により、給与支払報告書を市区町村長に提出すれば、税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされるため、税務署提出は不要になります。
また、令和8年中の中途退職者分についても、令和9年1月1日以後にまとめて提出する場合は特例対象です。一方で、電子的提出義務の枚数判定では、改正前の提出範囲で税務署に提出すべきであった枚数を基準にし、みなし提出分も含めて判定します。さらに、法定調書合計表は、給与所得の源泉徴収票以外の法定調書を提出する場合には引き続き必要になります。
みなし提出特例は、提出実務を簡素化する一方で、枚数判定や合計表の扱いはかえって誤解しやすい制度でもあります。令和8年分の実務対応に向けて、給与担当者や会計事務所では、今のうちに提出フローを確認しておくことが大切です。




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