少額資産を貸し付けると損金算入できない?令和4年度改正と「主要な事業として行われる貸付け」を税理士が解説
- 安田 亮
- 5 日前
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こんにちは!代表の安田です。
パソコン、工具、事務機器、備品など、少額の減価償却資産を取得した場合、法人税では一定の制度により、取得価額を早期に損金算入できることがあります。
代表的なものが、次の3つです。
・取得価額10万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度
・取得価額20万円未満の一括償却資産の損金算入制度
・中小企業者等の40万円未満の少額減価償却資産の損金算入特例特に中小企業者等の40万円未満の少額減価償却資産の特例は、青色申告法人である中小企業者等が一定の要件を満たす場合、年間300万円を限度として、取得価額を全額損金算入できるため、実務でよく使われる制度です。
しかし、令和4年度税制改正により、これらの少額資産関係の制度について、貸付けの用に供した資産が原則として対象資産から除外されました。
この改正は、少額資産を大量に取得し、全額損金算入したうえで、その資産を貸し付ける節税スキームに対応するためのものです。
ただし、資産を貸し付けたら必ず制度が使えない、というわけではありません。
「主要な事業として行われる貸付け」に該当する場合は、改正後も引き続き少額資産関係の制度を適用できます。
本日は、令和4年度改正で少額資産特例がどう変わったのか、「主要な事業として行われる貸付け」とは何か、グループ会社への貸付け、取引先への工具貸与、不動産賃貸に付随する家具貸付けなどの具体例を交えて解説します。
少額資産に関する3つの制度
法人税では、少額の減価償却資産について、通常の減価償却よりも簡便な損金算入制度が設けられています。
主な制度は次の3つです。
1. 取得価額10万円未満の少額減価償却資産
取得価額が10万円未満の減価償却資産などについては、一定の場合に、その取得価額を事業の用に供した事業年度の損金に算入できます。
2. 取得価額20万円未満の一括償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産については、一括償却資産として、3年間で均等に損金算入することができます。
3. 中小企業者等の40万円未満の少額減価償却資産の特例
中小企業者等が40万円未満の減価償却資産を取得等して事業の用に供した場合、一定の要件のもとで、年間300万円を限度として、その取得価額相当額を損金算入できます。
ただし、令和4年4月1日以後に取得等する場合は、少額減価償却資産から「貸付け」の用に供したものが除かれました。もっとも、その貸付けが「主要な事業として行われるもの」である場合は除外対象から外されます。
令和4年度改正で「貸付けの用に供した資産」が除外された
令和4年度税制改正では、少額資産関係の制度について、対象資産の範囲が見直されました。
改正の対象となったのは、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度、一括償却資産の損金算入制度、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例の3制度です。
令和4年4月1日以後に取得・製作・建設する「貸付けの用に供した資産」については、これらの制度の適用対象外とされました。
改正の背景にあるのは、少額資産を利用した節税スキームです。
たとえば、法人が自らの事業では使用しないドローンや建設用足場などの少額資産を大量に取得し、少額資産特例により取得価額を一時に損金算入したうえで、その資産を他者に貸し付けるようなケースです。
この場合、取得年度に多額の損金を計上し、貸付収入はその後の期間に分散して計上されるため、課税所得を繰り延べる効果が生じます。
貸付けに使った資産はすべて対象外になるわけではない
令和4年度改正により、「貸付けの用に供した資産」は少額資産関係の制度から除外されました。
しかし、例外があります。それが、主要な事業として行われる貸付け です。
「主要な事業として行われる貸付け」には、基本的に、改正の契機となった節税・租税回避等を目的に行なう貸付け以外の貸付けが該当すると説明されています。
つまり、通常の事業活動の中で行われる貸付けであれば、改正後も少額資産関係の制度を適用できる可能性があります。
ここを誤解して、「貸付けに使う資産は全部ダメ」と判断してしまうと、適用できる制度を見逃してしまうことがあります。
一方で、「貸付けも事業として行っているから何でもOK」と考えるのも危険です。
貸付けの実態が、節税目的の資産取得・貸付スキームに近い場合には、制度の適用対象外となる可能性があります。
「主要な事業として行われる貸付け」の具体例
法人税基本通達では、「主要な事業として行われる貸付け」の例示が示されています。
国税庁の通達では、たとえば、企業グループ内の事業管理を行なっている法人が、グループ内法人で使用する減価償却資産を一括調達し、他のグループ法人に貸し付ける行為、下請業者に対して専ら自社のための加工等に使う資産を貸し付ける行為、小売店の遊休スペースを活用して自転車等を貸し付ける行為、不動産貸付業者が賃借人に家具や電気機器等を貸し付ける行為などが例示されており、「主要な事業として行われる貸付け」として、次の4つの類型に整理することができます。
1. 特定関係のある法人の事業管理・運営を行う場合の、その法人に対する資産貸付け
2. 自社に対して資産の譲渡または役務提供を行う者が、その事業に専ら使う資産の貸付け
3. 自社の経営資源を活用して継続的に行う、または行うことが見込まれる事業としての資産貸付け
4. 自社の主要な事業に付随して行う資産貸付け以下、それぞれの内容を見ていきます。
グループ会社への資産貸付け
1つ目は、グループ経営の一環として行なう資産の貸付けです。
たとえば、親会社がグループ会社全体の管理・運営を行っており、子会社に資金がないため、親会社が事務機器や備品を購入して子会社へ貸し付けるケースです。
子会社に資金がないことなどを理由に、親会社が資産を購入し、その資産を子会社に貸し付けるケースは、「主要な事業として行われる貸付け」に該当し、各制度の適用対象になります。このような貸付けは、単に節税目的で資産を取得して貸し付けているのではなく、グループ全体の事業運営のために行われるものです。
したがって、通常の事業活動としての貸付けと考えられます。
実務上は、次のような資料を整備しておくとよいでしょう。
・グループ会社間の資産貸付契約書
・貸付資産の一覧
・貸付料の算定根拠
・親会社が資産を一括購入する理由
・子会社での使用状況
・グループ管理業務の実態を示す資料グループ会社間の取引では、貸付料が無償または低額である場合、別途、寄附金や移転価格、役員・関係者への利益供与の問題が生じることもあります。
少額資産特例だけでなく、取引条件の妥当性も確認しておきましょう。
下請企業・取引先への工具等の貸付け
2つ目は、自社に対して資産の譲渡や役務提供を行なう取引先に対し、その取引先が自社のための事業に専ら使う資産を貸し付けるケースです。
たとえば、製造業の会社が、下請企業に対して専用工具や治具、検査機器などを貸し付け、その下請企業が自社向け製品の加工や検査に使用する場合です。
このような貸付けは、自社の製造・販売活動を円滑に進めるために行なわれるものです。
下請先がその工具を使うことで、自社向け製品の品質確保や納期管理がしやすくなる場合があります。節税目的で資産を取得して貸し付けるスキームとは性質が異なります。
実務上は、次のような点を確認しましょう。
・貸付先が自社の取引先であること
・貸付資産が自社向けの役務提供や製品加工に使われていること
・貸付資産の使用目的が契約書や発注仕様書に明記されていること
・貸付料の有無とその理由
・返却条件や管理責任が明確であること特に、貸付資産が取引先の他社向け業務にも使われている場合には、「専ら供する」といえるか慎重な判断が必要です。
経営資源を活用して行う通常の事業活動としての貸付け
3つ目は、法人の経営資源を活用して継続的に行う、または行うことが見込まれる事業としての資産貸付けです。
ここでいう経営資源には、事業の用に供される設備や、事業に関する従業者の技能・知識などが含まれます。ただし、従業者の技能・知識のうち「租税に関するもの」は除かれています。これは、令和4年度改正の契機となった、節税・租税回避スキームを念頭に置いたものです。
つまり、税金を減らすための知識やスキームを使って少額資産を取得・貸付けするような場合は、この通常の事業活動としての貸付けには含まれないということです。
一方で、通常の事業活動の中で、自社の設備・人材・ノウハウを使って資産を貸し付ける場合は、主要な事業として行われる貸付けに該当する可能性があります。
国税庁の通達では、小売業を営む法人が小売店の駐車場の遊休スペースを活用して、自転車その他の減価償却資産を貸し付ける行為が例示されています。
たとえば、店舗運営の一環としてレンタサイクルを行うケースや、施設利用者向けに備品を貸し出すケースなどが考えられます。
主要な事業に付随して行う資産貸付け
4つ目は、法人が行う主要な事業に付随して行う資産の貸付けです。
国税庁の通達では、不動産貸付業を営む法人が、貸し付ける建物の賃借人に対して、家具、電気機器その他の減価償却資産を貸し付ける行為が例示されています。
たとえば、家具付き賃貸物件、家電付き賃貸物件、レンタルオフィスに付随する机・椅子・複合機の貸付けなどです。
このような貸付けは、主要な事業である不動産賃貸や施設提供に付随して行われるものです。
したがって、節税目的で独立して少額資産を貸し付ける場合とは異なります。
ただし、主要事業との関連性が弱く、単に少額資産を大量購入して第三者へ貸し付けているような場合には、付随事業とはいえない可能性があります。
一時的な貸付けはどうなるか
少額資産関係の制度では、「貸付けの用に供した資産」に該当するかどうかが問題になります。しかし、法人が取得した資産を一時的に貸し付けたからといって、直ちに制度の対象外になるとは限りません。
国税庁の通達では、法人が減価償却資産を貸付けの用に供したかどうかは、その資産の使用目的や使用状況等を総合勘案して判定するとされています。そのため、一時的に貸付けの用に供したような場合には、その事実だけで「貸付けの用に供したもの」に該当するとはいえないとされています。
たとえば、通常は自社で使用している備品を、取引先のイベントのために短期間だけ貸し出したようなケースです。このような場合、資産の本来の使用目的や通常の使用状況を見て、自社使用資産なのか、貸付用資産なのかを判断します。
「貸した事実が1回でもあれば適用不可」という単純な取扱いではありません。
買取り・あっせん付き貸付けは対象外になることがある
「主要な事業として行われる貸付け」に該当するように見える場合でも、一定の買取り・あっせんが予定されている場合には注意が必要です。
資産の貸付け後に譲渡人等がその資産を買い取る、または第三者に買い取らせることをあっせんする契約が締結されている場合で、その賃借料と買取価額の合計額が取得価額のおおむね90%超となる貸付けは、「主要な事業として行われる貸付け」に該当しないとされています。
これは、貸付けと売却を組み合わせた節税スキームを防ぐためのものと考えられます。
形式上は貸付けであっても、実質的に取得価額の大部分を回収できる仕組みになっている場合には、通常の事業活動としての貸付けとは見られない可能性があります。
少額資産を取得して貸し付け、一定期間後に買戻しや売却あっせんが予定されている場合は、この90%基準に注意しましょう。
中小企業者等の40万円未満特例での注意点
中小企業者等の40万円未満の少額減価償却資産の特例は、中小企業にとって使いやすい制度です。
国税庁によると、この特例の対象となる資産は、取得価額40万円未満の減価償却資産です。ただし、その事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合には、300万円に達するまでの金額が限度となります。
また、適用を受けるには、事業の用に供した事業年度において取得価額相当額を損金経理し、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して申告する必要があります。
令和4年4月1日以後取得分については、ここに「貸付けの用に供したものは除く。ただし、主要な事業として行われる貸付けは除かない」という要件が加わっています。
したがって、40万円未満だから当然に全額損金算入できる、という判断は危険です。
次の順番で確認しましょう。
1. 取得価額が40万円未満か
2. 中小企業者等の要件を満たすか
3. 青色申告法人か
4. 年間300万円限度に収まるか
5. 貸付けの用に供しているか
6. 貸付けの用に供している場合、主要な事業として行われる貸付けに該当するか
7. 損金経理と申告書添付を行っているか貸付けの有無を確認するステップを忘れないことが大切です。
節税目的の資産貸付けと見られやすいケース
次のようなケースでは、少額資産関係の制度の適用に注意が必要です。
・自社事業で使わない少額資産を大量に購入している
・購入直後から第三者へ貸し付けている
・貸付収入よりも初年度の損金算入効果を重視している
・貸付資産の管理実態が乏しい
・一定期間後の買戻しや売却あっせんが予定されている
・資産選定の理由が事業上の必要性ではなく税負担軽減に偏っている
・貸付先との事業上の関係が薄いこれらの事情がある場合、改正の趣旨から見て、制度の適用が否認される可能性があります。特に、ドローン、足場、コンテナ、コインランドリー設備、工具、備品など、少額資産を大量に購入して貸し付けるスキームには注意が必要です。
実務上のチェックポイント
少額資産を取得し、貸付けに使う可能性がある場合には、次の点を確認しましょう。
1. 取得日が令和4年4月1日以後か
令和4年度改正は、令和4年4月1日以後に取得・製作・建設する資産から適用されています。
2. どの少額資産制度を使うのか
10万円未満、20万円未満、40万円未満のいずれの制度を使うのかを確認します。
3. 貸付けの用に供しているか
自社使用なのか、貸付けなのか、使用目的・使用状況を確認します。
4. 一時的な貸付けか継続的な貸付けか
一時的に貸し出しただけであれば、直ちに貸付用資産とはいえない場合があります。
5. 主要な事業として行われる貸付けに該当するか
グループ会社への貸付け、下請先への工具貸与、通常事業の中での貸付け、主要事業に付随する貸付けに該当するかを確認します。
6. 節税目的と見られる要素がないか
自社事業との関連性、貸付先との関係、取得理由、貸付契約、管理実態を整理します。
7. 買取り・あっせん付きの契約ではないか
賃借料と買取価額の合計が取得価額のおおむね90%超となるような契約がないか確認します。
8. 証拠資料を残しているか
契約書、稟議書、発注書、使用状況、貸付先での利用目的などを保存しておきましょう。
税務調査で確認されやすい資料
少額資産を貸し付けている場合、税務調査では次のような資料が確認されることがあります。
・固定資産台帳
・少額資産の明細書
・貸付契約書
・貸付料の請求書・入金明細
・貸付先との取引関係を示す資料
・資産の使用場所・使用状況
・グループ会社間契約書
・下請先への貸与契約書
・稟議書や購入理由書
・買取り・売却あっせんに関する契約の有無少額資産は金額が小さいため、証拠資料の整備が後回しになりがちです。
しかし、同じような資産を大量に取得している場合、金額全体としては大きくなります。
貸付けに使っている資産については、主要な事業として行われる貸付けに該当する理由を説明できるようにしておきましょう。
よくある誤解
貸付けに使う資産はすべて少額資産特例を使えない
誤りです。令和4年度改正で貸付けの用に供した資産は原則として対象外になりましたが、主要な事業として行われる貸付けに該当する場合は、引き続き制度を適用できる可能性があります。
子会社に貸す備品は必ず対象外になる
グループ経営の一環として、親会社が子会社に資産を貸し付けるようなケースは、主要な事業として行われる貸付けに該当するものとして、制度の適用対象になる可能性があります。
下請先へ工具を貸すと少額資産特例は使えない
自社への役務提供や製品加工のために専ら使う工具等を下請先へ貸し付ける場合は、主要な事業として行われる貸付けに該当する可能性があります。
不動産賃貸で家具を貸す場合は対象外になる
不動産賃貸業者が賃貸物件に付随して家具や電気機器を貸し付ける場合は、主要な事業に付随する資産貸付けとして、制度の適用対象になる可能性があります。
一度でも貸したら貸付用資産になる
資産が貸付けの用に供されたかどうかは、使用目的や使用状況などを総合的に判断します。一時的に貸し付けた事実だけで、直ちに対象外になるとは限りません。
40万円未満なら無条件で全額損金算入できる
中小企業者等の40万円未満特例には、年間300万円限度、損金経理、申告書添付などの要件があります。令和4年4月1日以後取得分については、貸付けの用に供した資産かどうかも確認が必要です。
まとめ
令和4年度税制改正により、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度、一括償却資産の損金算入制度、中小企業者等の40万円未満の少額減価償却資産の損金算入特例について、貸付けの用に供した資産が原則として対象外になりました。
この改正は、自社の事業で使用しない少額資産を大量に取得し、初年度に全額損金算入したうえで貸し付ける節税スキームに対応するためのものです。
ただし、貸付けに使う資産がすべて対象外になるわけではありません。
「主要な事業として行われる貸付け」に該当する場合は、改正後も少額資産関係の制度を適用できる可能性があります。
具体的には、グループ経営の一環として親会社が子会社へ事務機器等を貸し付けるケース、下請企業に自社向け製品加工のための工具を貸し付けるケース、通常の事業活動の中で自社の経営資源を活用して資産を貸し付けるケース、不動産賃貸業者が賃貸物件に付随して家具等を貸し付けるケースなどが該当し得ます。
一方、節税・租税回避を目的とした少額資産の大量取得・貸付けや、賃借料と買取価額の合計が取得価額のおおむね90%超となるような買取り・売却あっせん付きの貸付けは、制度の適用対象外となる可能性があります。
少額資産を貸し付ける場合は、「貸付けだからダメ」と一律に判断するのではなく、その貸付けが通常の事業活動の一環か、主要な事業に付随するものか、節税目的と見られる要素がないかを確認しましょう。
特に中小企業者等の40万円未満特例は実務で利用頻度が高いため、令和4年4月1日以後取得分については、貸付けの用に供した資産かどうか、主要な事業として行われる貸付けに該当するかを、決算時に必ず確認することが大切です。




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