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通算法人は40万円未満の少額減価償却資産特例を使える?令和4年度改正後の適用対象法人を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 3 日前
  • 読了時間: 15分

おはようございます!代表の安田です。


中小企業の決算でよく使われる制度の一つに、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例があります。


これは、青色申告法人である中小企業者等が、取得価額40万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合に、一定の要件のもとで、その取得価額を全額損金算入できる制度です。


通常、減価償却資産は耐用年数にわたって少しずつ費用化します。

しかし、この特例を使えば、パソコン、事務机、工具、ソフトウェアなどの少額資産について、取得した事業年度に一括して損金算入できるため、中小企業の実務では非常に利用頻度が高い制度です。


ただし、令和4年度税制改正により、グループ通算制度を適用する法人、いわゆる通算法人は、この特例の適用対象から除外されました。


つまり、資本金や従業員数だけを見ると中小企業者等に該当するように見える法人であっても、グループ通算制度の通算法人である場合には、中小企業者等の40万円未満特例は使えません。


本日は、中小企業者等の少額減価償却資産特例の概要、令和4年度改正で通算法人が除外された理由、適用対象法人の要件、資本金基準・従業員基準の判定時期、実務上の注意点について解説します。


中小企業者等の少額減価償却資産特例とは

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例とは、一定の中小企業者等が、取得価額40万円未満の減価償却資産を取得等して事業の用に供した場合に、その取得価額を損金経理することで、全額を損金算入できる制度です。

たとえば、次のような資産が対象になり得ます。

・パソコン
・プリンター
・事務机、椅子
・工具、器具備品
・測定機器
・業務用ソフトウェア
・中古の少額資産

この特例は、中小企業の事務負担を軽減するための制度です。

通常であれば、減価償却資産を取得した場合、固定資産台帳に登録し、耐用年数に応じて毎期減価償却費を計算する必要があります。

しかし、40万円未満の少額資産についてまで細かく減価償却計算を行うのは、中小企業にとって事務負担が大きくなります。

そこで、一定の中小企業者等については、年間300万円を限度として、取得価額30万円未満の減価償却資産を一括で損金算入できる仕組みが設けられています。


令和4年度改正で通算法人が除外された

令和4年度税制改正では、この少額減価償却資産特例について、適用対象法人の範囲が見直されました。大きな改正点は、通算法人が適用対象から除外されたことです。


グループ通算制度は、完全支配関係のある企業グループ内の法人について、損益通算などを行なう制度です。


この制度を適用する法人は、各法人が個別に申告を行なうものの、グループ全体で一定の税務調整を行うため、通常の単体中小法人とは異なる税務管理が必要になります。


令和4年度改正では、従来の連結納税制度で連結法人がこの特例の対象外とされていた取扱いを踏襲し、グループ通算制度の通算法人も適用対象外とされました。


そのため、通算法人である場合、たとえ資本金1億円以下で、常時使用する従業員数が400人以下であっても、中小企業者等の40万円未満特例は使えません。


なぜ通算法人は対象外になったのか

中小企業者等の少額減価償却資産特例は、もともと中小企業の事務負担を軽減する趣旨で設けられた制度です。


一方、グループ通算制度を適用している法人は、グループ全体で税務計算を管理し、通算に関する申告書作成や各種調整を行う体制があることが通常です。


そのため、外形的には中小企業者等に該当する法人であっても、制度趣旨である「中小企業の事務負担軽減」の観点から、特別に配慮する必要性は乏しいと整理されたものと考えられます。


つまり、通算法人が除外されたのは、単に規模の大小だけではなく、グループ通算制度を適用する法人の税務管理体制や制度趣旨との関係を踏まえた見直しです。


令和4年度改正では貸付資産の除外も行なわれた

令和4年度改正では、通算法人の除外だけでなく、対象資産の範囲についても見直しが行なわれました。具体的には、少額減価償却資産のうち、貸付けの用に供した資産 が原則として対象外とされました。


これは、少額資産を大量に取得し、取得年度に一括損金算入したうえで、その資産を他者に貸し付ける節税スキームに対応するための改正です。


ただし、貸付けの用に供した資産であっても、その貸付けが「主要な事業として行われる貸付け」に該当する場合は、対象外とはされません。


したがって、令和4年度改正後に中小企業者等の40万円未満特例を検討する場合には、次の2つを確認する必要があります。

・法人が通算法人に該当しないか
・取得資産が貸付けの用に供した資産に該当しないか

資産の金額だけでなく、法人の属性と資産の使用目的の両方を確認することが重要です。


適用対象法人の基本要件

中小企業者等の少額減価償却資産特例を使うには、法人側で一定の要件を満たす必要があります。

主な要件は次のとおりです。

・青色申告法人であること
・中小企業者等に該当すること
・通算法人でないこと
・常時使用する従業員数が400人以下であること
・適用除外事業者に該当しないこと

ここでいう中小企業者等には、資本金基準や大規模法人による株式保有割合などの要件があります。


単に「資本金1億円以下だから使える」と判断するのではなく、大規模法人との資本関係、従業員数、通算法人該当性、過去の所得金額などを確認する必要があります。


資本金基準とは

この特例の適用対象となる中小企業者の代表的な類型は、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人です。

ただし、資本金が1億円以下であっても、次のような法人は中小企業者に該当しません。

・発行済株式の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
・発行済株式の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人
・大法人との間に完全支配関係がある一定の法人
・100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人

中小企業税制では、「資本金1億円以下」という要件だけを見ると判断を誤ることがあります。親会社や株主に大規模法人がいる場合には、株式保有関係を確認しましょう。

特にグループ会社では、直接保有だけでなく、間接保有や完全支配関係の有無も確認が必要です。


従業員基準は400人以下

中小企業者等の少額減価償却資産特例では、常時使用する従業員の数が400人以下であることも要件とされています。


ここでいう常時使用する従業員には、正社員だけでなく、パートやアルバイトも含まれます。そのため、従業員数を判定する際には、雇用形態だけで機械的に除外しないよう注意が必要です。


たとえば、小売業、飲食業、介護事業、サービス業など、パート・アルバイトを多く雇用している法人では、従業員基準の確認が重要です。


「正社員は少ないから大丈夫」と思っていても、常時使用するパート・アルバイトを含めると400人を超える可能性があります。


資本金基準と従業員基準の判定時期

少額減価償却資産特例では、資本金基準と従業員基準の判定時期にも注意が必要です。

原則として、これらの要件は、少額減価償却資産を取得した日および事業の用に供した日の現況で判定します。


つまり、資産を購入した日だけでなく、実際に事業で使い始めた日にも要件を満たしているかを確認します。


ただし、従業員基準については、事業年度終了日の現況によって判定することも可能です。

たとえば、資産の取得日や事業供用日には従業員数が400人を超えていたものの、事業年度末には400人以下になっている場合、事業年度末の現況で従業員基準を満たすことができる可能性があります。


この点は、決算期中に従業員数が大きく変動する法人にとって重要です。


取得日と事業供用日が異なる場合

少額減価償却資産特例では、「取得した日」と「事業の用に供した日」が異なることがあります。たとえば、次のようなケースです。

・3月にパソコンを購入したが、設定が終わらず4月から使用開始した
・機械を購入したが、据付けや試運転を経て翌月から稼働した
・ソフトウェアを購入したが、運用開始は翌期になった

このような場合、取得日だけでなく、事業供用日にも要件を満たしている必要があります。

特に、事業年度をまたいで事業供用する場合には注意が必要です。


少額資産の損金算入は、取得しただけではなく、事業の用に供した事業年度で行います。

決算直前に購入した資産については、期末までに実際に事業で使用開始しているかを確認しましょう。


通算法人に該当するかの確認が重要

令和4年度改正後は、通算法人であるかどうかの確認が重要になりました。

グループ通算制度を適用している場合、通算親法人だけでなく、通算子法人も通算法人に該当します。


そのため、子会社単体で見ると中小企業者等の要件を満たしていても、グループ通算制度の対象法人であれば、40万円未満特例は使えません。

実務上、次のようなケースでは注意が必要です。

・親会社がグループ通算制度を導入している
・子会社側では従来どおり少額資産特例を使うつもりでいた
・会計ソフトや固定資産台帳で自動的に少額資産処理している
・税務申告時に通算法人該当性を確認していない

グループ通算制度の導入後は、各子法人の経理担当者にも、少額資産特例が使えないことを周知しておく必要があります。


通算法人が使えないのは40万円未満特例

ここで注意したいのは、通算法人が対象外となるのは、中小企業者等の40万円未満の少額減価償却資産特例であるという点です。

少額資産に関する制度には、ほかにも次の制度があります。

・取得価額10万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度
・取得価額20万円未満の一括償却資産の損金算入制度

これらは中小企業者等に限らない制度であり、40万円未満特例とは別制度です。

そのため、通算法人であっても、資産の取得価額や使用状況に応じて、10万円未満資産の損金算入や20万円未満の一括償却資産の制度を検討できる場合があります。


たとえば、取得価額が8万円の備品であれば、40万円未満特例ではなく、10万円未満資産として損金算入できる可能性があります。


また、取得価額が18万円の資産であれば、40万円未満特例は使えなくても、一括償却資産として3年間で損金算入する方法を検討できます。


40万円未満特例が使えない場合の処理

通算法人であるため40万円未満特例が使えない場合、取得資産の金額に応じて、次のような処理を検討します。

取得価額10万円未満
→ 少額減価償却資産として損金算入を検討

取得価額10万円以上20万円未満
→ 一括償却資産として3年均等償却を検討

取得価額20万円以上40万円未満
→ 原則として通常の減価償却

20万円以上40万円未満の資産については、通算法人でなければ中小企業者等の40万円未満特例により全額損金算入できる可能性があります。


しかし、通算法人の場合、この特例が使えないため、原則として通常の減価償却を行うことになります。この違いは、決算上の利益や法人税額に影響します。


グループ通算制度を導入した年度以後は、少額資産の処理方法を見直しましょう。


適用除外事業者にも注意

中小企業者等の40万円未満特例では、通算法人以外にも、適用除外事業者に該当する法人は対象外となります。適用除外事業者とは、簡単にいえば、過去3年間の所得金額の平均額が一定額を超える法人などをいいます。


つまり、資本金や従業員数だけでは中小企業者等に見えても、所得規模が大きい法人は特例を使えない場合があります。

少額資産特例の適用可否を判断する際には、次の順番で確認するとよいでしょう。

1. 青色申告法人か
2. 資本金基準を満たすか
3. 大規模法人による保有関係に該当しないか
4. 通算法人でないか
5. 常時使用する従業員数が400人以下か
6. 適用除外事業者に該当しないか
7. 対象資産が貸付けの用に供した資産でないか
8. 年間300万円限度に収まるか
9. 損金経理と申告書添付を行っているか

このチェックを行なわずに、会計処理だけで一括損金算入してしまうと、税務申告で別表調整が必要になることがあります。


年間300万円限度にも注意

中小企業者等の40万円未満特例には、年間300万円の限度があります。

その事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合には、300万円に達するまでの部分だけが特例の対象です。

事業年度が1年に満たない場合には、300万円を月数按分した金額が限度となります。

たとえば、事業年度が6か月の場合、限度額は次のようになります。

300万円 × 6か月 / 12か月 = 150万円

この限度額の管理は、固定資産台帳や少額資産明細で行なう必要があります。

なお、通算法人はそもそも30万円未満特例の対象外です。


そのため、年間300万円限度の計算以前に、まず通算法人に該当しないかを確認しましょう。


申告書への明細添付が必要

中小企業者等の40万円未満特例を適用するためには、損金経理だけでなく、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。


実務では、別表十六関係の明細書や適用額明細書の作成が必要になります。

少額資産を会計上で消耗品費や工具器具備品費として処理しているだけでは、税務上の要件を満たさない可能性があります。


特例を使う場合は、次の情報を整理しておきましょう。

・資産の名称
・取得年月日
・事業供用日
・取得価額
・設置場所、使用部署
・用途
・貸付けの用に供していないか
・年間300万円限度の残額
・通算法人に該当しないこと

少額資産は件数が多くなりやすいため、期末にまとめて確認すると漏れが出やすくなります。取得時点から管理しておくことが大切です。


グループ通算制度導入時に見直すべき経理処理

グループ通算制度を導入した法人では、少額資産の処理ルールを見直す必要があります。

特に、通算子法人がこれまで単体の中小企業者等として40万円未満特例を使っていた場合、通算制度の開始後も同じ処理を続けてしまうリスクがあります。

たとえば、次のような社内ルールになっていないでしょうか。

・40万円未満の備品はすべて消耗品費で処理する
・20万円以上40万円未満の資産も固定資産台帳に登録していない
・会計ソフトで30万円未満特例を自動適用している
・子会社側で通算法人該当性を確認していない

通算法人になった後は、このようなルールを改める必要があります。

少なくとも、20万円以上40万円未満の資産については、通常の減価償却資産として固定資産台帳に登録する運用が必要になるケースが増えます。


税務調査で確認されやすいポイント

少額減価償却資産の特例は、税務調査でも確認されやすい項目です。

特に、次の点が見られやすくなります。

・法人が通算法人に該当していないか
・少額資産の取得価額が40万円未満か
・事業供用日が確認できるか
・貸付けの用に供した資産ではないか
・年間300万円限度を超えていないか
・常時使用する従業員数の判定が正しいか
・パート、アルバイトを含めているか
・大規模法人による株式保有関係を確認しているか
・申告書に必要な明細を添付しているか

通算法人であるにもかかわらず、40万円未満特例を使っている場合には、税務調査で否認される可能性があります。


また、子法人側では中小企業だと思っていても、グループ全体の制度適用状況を確認すると通算法人に該当しているケースもあります。

親会社の税務担当者と子会社の経理担当者との情報共有が重要です。


よくある誤解

  • 通算法人でも資本金1億円以下なら40万円未満特例を使える

誤りです。令和4年度改正により、通算法人は中小企業者等の少額減価償却資産特例の適用対象から除外されています。資本金や従業員数の要件を満たしていても、通算法人であればこの特例は使えません。


  • 通算親法人だけが対象外で、通算子法人は使える

通算親法人だけでなく、通算子法人も通算法人に該当します。子法人単体で中小企業者等に見えても、グループ通算制度の通算法人であれば40万円未満特例は使えません。


  • 40万円未満特例が使えないと、少額資産はすべて通常償却になる

必ずしもそうではありません。取得価額10万円未満の資産や20万円未満の一括償却資産については、別制度を検討できる場合があります。


  • 従業員数は正社員だけで判定すればよい

常時使用する従業員には、正社員だけでなくパートやアルバイトも含まれます。従業員基準を判定する際は、雇用形態だけで除外しないよう注意が必要です。


  • 従業員基準は取得日だけで判定する

原則として取得日および事業供用日の現況で判定しますが、従業員基準については事業年度終了日の現況による判定も可能です。


  • 会計上、消耗品費で処理していれば税務上も損金になる

会計処理だけでは不十分です。税務上の適用要件、通算法人該当性、資産の取得価額、事業供用日、申告書添付などを確認する必要があります。


まとめ

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例は、取得価額40万円未満の減価償却資産について、一定要件のもとで取得価額を全額損金算入できる制度です。

中小企業の事務負担を軽減する制度として、パソコン、備品、工具、ソフトウェアなどの取得時によく使われます。


しかし、令和4年度税制改正により、グループ通算制度を適用する通算法人は、この特例の適用対象から除外されました。


これは、従来の連結納税制度における連結法人の取扱いを踏襲したものであり、グループ通算制度を適用する法人については、たとえ外形的に中小企業者等に該当するとしても、中小企業の事務負担軽減という制度趣旨から特例を認める必要性が乏しいと整理されたためです。


したがって、資本金1億円以下、常時使用する従業員数400人以下の法人であっても、通算法人であれば40万円未満特例は使えません。


一方、通算法人であっても、取得価額10万円未満の少額減価償却資産の損金算入制度や、取得価額20万円未満の一括償却資産制度など、別制度を検討できる場合があります。


グループ通算制度を導入している法人では、少額資産の処理について、従来の「40万円未満なら全額損金」という運用を見直す必要があります。


決算時には、資産の取得価額、事業供用日、通算法人該当性、従業員数、貸付資産該当性、申告書添付の有無を確認し、誤って40万円未満特例を適用しないよう注意しましょう。


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