所得税の還付申告にマイナンバーを書き忘れるとどうなる?還付が遅れる理由と注意点を税理士が解説
- 安田 亮
- 2 日前
- 読了時間: 12分
こんにちは!代表の安田です。
所得税の確定申告で、医療費控除、住宅ローン控除、ふるさと納税、年の途中で退職した場合の源泉徴収税額などにより、税金が戻ってくることがあります。
このように、納め過ぎた所得税の還付を受けるために行う申告を、一般に還付申告といいます。
還付申告では、税額の計算や添付資料に意識が向きがちですが、意外と見落としやすいのがマイナンバーの記載です。
所得税の申告書には、原則としてマイナンバーを記載する必要があります。
では、還付申告書にマイナンバーを書き忘れた場合、どうなるのでしょうか。
結論からいうと、マイナンバーの記載がない申告書であっても、実務上は受理されます。
ただし、マイナンバーが記載されていないと、税務署での本人確認に時間がかかり、還付金の支払いが遅れることがあります。
特に、不正還付への対応が強化されている現在では、マイナンバーの記載漏れが還付の長期化につながる可能性があります。
本日は、所得税の還付申告とマイナンバーの関係、マイナンバーを書き忘れた場合に還付が遅れる理由、本人確認書類、不審な電話への注意点について解説します。
還付申告とは
還付申告とは、納め過ぎた所得税の還付を受けるために行なう申告です。
給与所得者で年末調整を受けている方でも、一定の場合には還付申告により所得税が戻ってくることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
医療費控除を受ける場合
寄附金控除、ふるさと納税の控除を受ける場合
住宅ローン控除を初めて受ける場合
年の途中で退職し、年末調整を受けていない場合
災害や盗難により雑損控除を受ける場合
特定支出控除を受ける場合
予定納税額が実際の税額より多かった場合
源泉徴収税額が年間の所得税額より多かった場合
還付申告は、通常の確定申告期間を待たずに、翌年1月1日から提出できます。
また、還付申告は原則として、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
そのため、過去の医療費控除や住宅ローン控除の申告漏れに気づいた場合でも、期限内であれば還付申告を検討できます。
所得税の申告書にはマイナンバーの記載が必要
マイナンバー制度の導入により、平成28年1月以降に税務署へ提出する所得税の申告書などには、原則としてマイナンバーの記載が必要になりました。
所得税の確定申告書にも、本人のマイナンバーを記載する欄があります。
また、控除対象配偶者や扶養親族、事業専従者などがいる場合には、その方々のマイナンバーの記載が必要になることもあります。
マイナンバーは、行政機関が同一人であることを確認するための重要な情報です。
税務署では、申告書に記載されたマイナンバーを使って、本人確認や各種情報との照合を行います。
還付申告の場合も、申告書にマイナンバーを正しく記載しておくことが大切です。
マイナンバーを書き忘れても申告書は受理される
所得税の申告書にはマイナンバーの記載が必要です。
それでは、マイナンバーを書き忘れた申告書は受理されないのでしょうか。
実務上は、マイナンバーの記載がない申告書であっても受理されます。
つまり、マイナンバーを書き忘れたからといって、申告書が門前払いになるわけではありません。
ただし、「受理される」ことと「問題なくスムーズに還付される」ことは別です。
マイナンバーの記載がない場合、税務署側で本人確認のための作業が増えます。
その結果、還付金の支払いまでに時間がかかることがあります。
マイナンバー無記載だと還付が遅れることがある
所得税の還付申告では、申告書の内容に基づいて還付金が支払われます。
税務署としては、還付金を誤って支払わないよう、申告者本人の確認を行う必要があります。
マイナンバーが記載されている還付申告書であれば、マイナンバーに基づいて納税者本人の確認を行なうことができます。
一方、マイナンバーが記載されていない場合には、申告書に書かれた住所や氏名などが虚偽でないか、架空名義やなりすましによる不正還付ではないかを確認する必要があります。
そのため、税務署職員が納税者へ電話で本人確認を行うことがあります。
さらに、必要に応じて市区町村や行政機関等へ情報確認を行うこともあります。
こうした確認に時間を要すると、たとえ不正な還付申告でなくても、還付金の支払いが大幅に遅れる可能性があります。
確認がすぐに取れない場合、還付まで半年以上かかるケースもあると言われています。
なぜ不正還付対策が必要なのか
還付申告では、税務署から納税者へ税金が戻されます。
そのため、悪意ある者が架空の人物や他人になりすまし、虚偽の申告書を提出して還付金を受け取ろうとする不正還付のリスクがあります。
不正還付が発生すると、国の税金が不正に流出するだけでなく、本来の納税者にも迷惑がかかります。
そのため、税務署では還付申告の内容や本人確認を慎重に行ないます。
マイナンバーの記載がある場合には、本人確認の手掛かりが増えます。
一方、マイナンバーが無記載の場合には、申告書に記載された住所や氏名などを基に、別の方法で本人確認を進める必要があります。
この作業が、還付までの期間に影響することがあります。
電話で本人確認が行なわれることがある
マイナンバーが記載されていない還付申告書を提出した場合、税務署職員から電話で本人確認が行なわれることがあります。
確認される可能性がある内容としては、申告書に記載された住所、氏名、生年月日、申告内容、還付金の振込口座などが考えられます。
ただし、ここで非常に重要な注意点があります。
税務署職員が、マイナンバー無記載の納税者に対して電話確認を行なう場合でも、口頭で直接マイナンバーを尋ねることはありません。
そのため、「税務署です。還付のためにマイナンバーを口頭で教えてください」といった電話があった場合には、不審な電話である可能性があります。
マイナンバーは重要な個人情報です。電話で安易に伝えないようにしましょう。
不審な電話に注意する
所得税の還付申告時期には、税務署や国税庁を装った不審な電話、メール、SMSが発生することがあります。
特に、
還付金があります
手続をしないと還付が受けられません
マイナンバーを教えてください
口座番号や暗証番号を教えてください
といった連絡には注意が必要です。
税務署職員が電話でマイナンバーを直接尋ねることはありません。
また、ATMの操作を求めることもありません。
不審な電話を受けた場合には、その場で個人情報を伝えず、いったん電話を切りましょう。
そのうえで、申告書を提出した税務署の代表電話番号を自分で調べて、確認することをおすすめします。
相手が伝えてきた電話番号にそのまま折り返すのは避けた方が安全です。
マイナンバーを記載するだけでなく本人確認書類も必要
紙で所得税の申告書を提出する場合、マイナンバーを記載するだけでなく、本人確認書類の提示または写しの添付が必要になります。
本人確認では、番号確認と身元確認を行ないます。
番号確認とは、記載されたマイナンバーが正しい番号であることの確認です。
身元確認とは、申告書を提出する人が、その番号の正しい持ち主であることの確認です。
マイナンバーカードを持っている場合には、マイナンバーカード1枚で番号確認と身元確認ができます。
マイナンバーカードを持っていない場合には、通知カードや住民票の写しなど番号確認書類と、運転免許証や健康保険証などの身元確認書類を組み合わせて確認することになります。
郵送で提出する場合には、本人確認書類の写しを添付書類台紙などに貼付して提出します。
e-Taxなら本人確認書類の添付を省略できる
所得税の還付申告は、e-Taxで提出することもできます。
マイナンバーカード方式などによりe-Taxで申告する場合、本人確認が電子的に行なわれるため、紙の申告書のように本人確認書類の写しを添付する必要はありません。
e-Taxには、次のようなメリットがあります。
自宅から申告できる
本人確認書類の写しの添付を省略できる
還付処理が比較的早いことが多い
申告データの控えを保存しやすい
医療費控除やふるさと納税のデータ連携を使える場合がある
もちろん、e-Taxでもマイナンバーの入力は必要です。
還付申告をスムーズに行いたい場合には、e-Taxの利用も検討するとよいでしょう。
還付が遅れる原因はマイナンバーだけではない
還付申告の還付金が遅れる原因は、マイナンバーの記載漏れだけではありません。
次のような場合にも、還付まで時間がかかることがあります。
申告書の内容に誤りがある
還付金の振込口座に誤りがある
本人名義以外の口座を指定している
添付書類や証明書類に不備がある
医療費控除の明細書に不備がある
住宅ローン控除の必要書類が不足している
源泉徴収票の内容と申告内容が合わない
扶養控除や配偶者控除の重複がある
税務署からの確認連絡に対応できていない
不正還付の疑いがあるとして確認対象になっている
還付申告は「税金が戻る申告」だからこそ、税務署側で確認が行われることがあります。
マイナンバーの記載漏れを防ぐことに加え、申告内容や添付資料も丁寧に確認しましょう。
還付申告前に確認したい項目
所得税の還付申告を提出する前には、次の点を確認しましょう。
申告者本人のマイナンバーを記載しているか
配偶者や扶養親族のマイナンバー記載が必要な場合、漏れていないか
マイナンバーの桁数や数字に誤りがないか
紙提出の場合、本人確認書類の写しを添付しているか
還付金の振込口座が本人名義か
金融機関名、支店名、口座番号に誤りがないか
住所、氏名、生年月日に誤りがないか
源泉徴収票の内容を正しく反映しているか
控除証明書や明細書に不備がないか
税務署から確認連絡があった場合に対応できる電話番号を記載しているか
特に紙で申告する場合は、マイナンバー欄と本人確認書類の添付を最後にもう一度確認しましょう。
還付申告書にマイナンバーを書き忘れた場合
既に還付申告書を提出した後で、マイナンバーを書き忘れたことに気づく場合もあります。
この場合、まずは提出先の税務署に確認しましょう。
申告書自体は受理されている可能性がありますが、本人確認のために税務署から連絡が来ることがあります。
税務署から連絡があった場合には、内容を確認したうえで対応しましょう。
ただし、前述のとおり、税務署職員が電話でマイナンバーを口頭で直接尋ねることはありません。
マイナンバーの提出や本人確認書類に関して指示がある場合には、提出方法を確認し、不審な点があれば税務署の代表番号へ問い合わせると安心です。
還付が遅れている場合も、税務署で確認作業中である可能性があります。
不安な場合は、申告書の控えや受付番号を手元に用意して、税務署へ確認しましょう。
税理士に依頼する場合のマイナンバー管理
所得税の還付申告を税理士に依頼する場合、税理士へマイナンバーを提供することがあります。
税理士は、税務代理業務のためにマイナンバーを取り扱うことができますが、厳格な安全管理が求められます。
依頼者側も、マイナンバーをメール本文にそのまま書いて送る、画像を不用意に送る、チャットで送信する、といった方法は避けた方が安全です。
税理士事務所が指定する安全な方法で提出しましょう。
たとえば、専用のアップロードシステム、暗号化されたファイル送信、対面での提示、書留郵送などが考えられます。
マイナンバーは税務申告に必要な情報ですが、取り扱いには十分注意が必要です。
還付申告でよくある誤解
所得税の還付申告とマイナンバーについて、実務上よくある誤解を整理します。
マイナンバーを書かないと申告書は受理されない
実務上、マイナンバーの記載がない申告書でも受理されます。
ただし、本人確認に時間がかかり、還付が遅れる可能性があります。
受理されるなら書かなくても問題ない
申告書にはマイナンバーの記載義務があります。
また、還付申告では本人確認が重要になるため、記載漏れは避けるべきです。
税務署から電話があればマイナンバーを答えればよい
税務署職員が電話でマイナンバーを口頭で尋ねることはありません。
マイナンバーを聞き出そうとする電話には注意が必要です。
マイナンバーを記載すれば本人確認書類は不要
紙で提出する場合には、マイナンバーの記載に加えて、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。
e-Taxの場合は、電子的な本人確認により本人確認書類の添付を省略できます。
実務上のチェックポイント
所得税の還付申告を行なう際には、次の点を確認しましょう。
申告書にマイナンバーを正しく記載しているか
紙提出の場合、本人確認書類の写しを添付しているか
マイナンバーカードがある場合、表面・裏面の写しを用意しているか
マイナンバーカードがない場合、番号確認書類と身元確認書類を用意しているか
還付口座は本人名義か
税務署からの確認連絡に対応できる電話番号を記載しているか
税務署を名乗る電話でマイナンバーを聞かれても答えないことを理解しているか
不審な電話は税務署の代表番号へ確認するか
税理士へ依頼する場合、安全な方法でマイナンバーを共有しているか
マイナンバーの記載は、還付申告の最後に確認すべき重要項目です。
還付をスムーズに受けるためにも、提出前に忘れず確認しましょう。
まとめ
所得税の還付申告書には、原則としてマイナンバーの記載が必要です。
マイナンバーの記載がない申告書であっても、実務上は受理されます。
しかし、還付申告では本人確認が重要です。
マイナンバーが記載されていれば、マイナンバーに基づいて納税者本人の確認が行われます。
一方、マイナンバーが無記載の場合には、申告書に記載された住所や氏名などが虚偽でないか、架空名義やなりすましによる不正還付ではないかを確認するため、税務署職員が電話で本人確認を行なうことがあります。
また、市区町村や行政機関等へ情報確認が行なわれることもあります。
こうした確認作業に時間がかかると、不正な還付申告でなくても、還付までの期間が長期化する可能性があります。
還付申告をスムーズに進めるためには、申告書提出前にマイナンバーが正しく記載されているか、本人確認書類の添付があるか、還付口座が本人名義かを確認しておきましょう。
また、税務署職員が電話でマイナンバーを口頭で尋ねることはありません。
税務署や国税庁を名乗る不審な電話、メール、SMSには注意し、個人情報を安易に伝えないようにしましょう。
所得税の還付申告やマイナンバーの取扱いで不安がある場合は、税理士へ相談することをおすすめします。




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