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有価証券の譲渡における「内外判定」

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 23 時間前
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


最近は、国内の証券会社を通じて海外株式を売買する個人や法人が増えています。

では、このような外国株式の売買(譲渡)に消費税はかかるのでしょうか?


結論からいえば、有価証券の譲渡そのものは非課税取引に該当します(消費税法別表第一)。ただし、実務上は課税売上割合を算定するために、「国内取引(非課税取引)」に該当するのか「国外取引(不課税取引)」なのかを判断する必要があり、この判定を「内外判定」と呼びます。


1.有価証券の譲渡における「内外判定」とは?

消費税法第4条および施行令第6条により、取引が「国内」で行なわれたか「国外」で行われたかを判定する際には、資産の所在場所や取引に関係する機関の所在地を基準とします。

有価証券の譲渡の場合、この「内外判定」は株券が発行されているかどうかで変わります。


(1)株券が発行されている場合

譲渡の時点での株券の所在場所で判断します。

  • 株券が国内にある場合 → 国内取引(非課税)

  • 株券が国外にある場合 → 国外取引(不課税)


(2)株券が発行されていない場合

株券が発行されず、振替制度で管理されている場合は、振替機関の所在地で判断します。

  • 振替機関が国内 → 国内取引(非課税)

  • 振替機関が国外 → 国外取引(不課税)


したがって、単に「国内の証券会社を通して取引している」だけでは、国内取引とは限りません。実際には、株券や振替口座の管理場所がどこにあるかがポイントになります。


3.事例:国内証券会社経由での米国株取引

たとえば、国内のA証券会社を通じて米国企業の株式を取得した場合を考えましょう。このケースでは、株券が米国で管理されている(または米国の振替機関を通じて取引している)ことが多いため、国外取引=不課税取引に該当する可能性が高いです。


しかし、証券会社の所在地や口座の登録場所ではなく、株券・振替機関の所在地で判定される点に注意が必要です。誤って「国内取引」として処理すると、仕入税額控除の判定などで誤りが生じるおそれがあります。


4.実務上の確認ポイント

有価証券の譲渡に関する内外判定を行なう際には、以下の点を確認しましょう。

チェック項目

内容

株券発行の有無

株券が発行されているか(電子化されているか)

株券の所在

物理的に株券がどこに保管されているか

振替機関の所在地

振替制度を利用している場合、その機関の所在地

証券会社の契約形態

単なる仲介なのか、名義預かりなのか

特に、法人が多国籍で投資を行なう場合や、海外市場に直接アクセスする証券口座を利用している場合には、振替機関やカストディ(保管銀行)の所在地を確認しておくことが重要です。


5.まとめ

  • 有価証券の譲渡は原則として非課税取引

  • ただし、「国内取引」か「国外取引」かで取扱いが異なる

  • 判定基準は「株券の所在」または「振替機関の所在地」

  • 国内証券会社経由でも、株券が国外にあれば国外取引=不課税

  • 実務では、証券会社所在地ではなく株券管理場所で判定する点に注意


税理士からのコメント

海外株式の取引は、為替差益・配当課税・源泉税との関係など、消費税以外にも論点が多く存在します。また、消費税の「内外判定」は、仕入税額控除の可否や課税売上割合の計算にも影響するため、法人投資や資産運用を行なう企業では特に慎重な判断が必要です。


証券取引に関する税務処理について不明点がある場合は、早めに専門家へご相談ください。



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