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有報の「総会前開示」未実施企業の本音

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 日前
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


今回は、監査役協会の最新調査結果をもとに、有価証券報告書の総会前開示に関する最新動向をご紹介します。


1.「総会前開示」とは?

上場企業では、有価証券報告書(有報)の開示を株主総会の開催前に行う「総会前開示」が推奨されています。金融庁や東京証券取引所は、投資家保護やガバナンス向上の観点から、総会の3週間前までに有報を開示するよう求めています。

しかし、この取り組みは企業側にとって、監査の早期完了や社内の情報精査など、実務的な負担を伴うものです。


2.監査役協会の最新調査結果

日本監査役協会は2025年9月30日、3月・4月決算企業を対象に実施したアンケート結果を公表しました。回答企業は1,095社に上り、そのうち総会前開示を実施しなかった企業は441社(全体の約4割)でした。

未実施の理由(複数回答)は次の通りです。

理由

回答割合

社内体制が未整備のため

73%

監査人との調整がつかなかったため

24%

意義を見出せなかったため

20%

株主総会の想定問答の作成が間に合わなかったため

6%

注目すべきは、「意義を見出せなかったため」という回答が5社に1社に上った点です。単に時間的・体制的な制約だけでなく、開示を行う目的そのものへの理解・納得がまだ十分に浸透していない現状が浮き彫りとなりました。


3.監査人との関係と社内対応の実態

一方、総会前開示を実施した654社のうち、65%が会計監査人と意見交換を実施したと回答しています。また、監査役としての対応状況では、

  • 「有報の草稿を従来より早く入手」:45%

  • 「株主総会想定問答を見直した」:28%

  • 「確認事項を見直した」:27%

といった結果が得られています。ただし、「特に対応を変えていない」企業も37%あり、形式的な開示対応にとどまっているケースも少なくありません。


4.2026年以降の動向と課題

来年(2026年)の総会前開示については、「実施予定」と回答した企業が67%と前年より7ポイント増加しています。徐々に制度が浸透しつつある一方で、

  • 社内の決算・開示プロセスの早期化

  • 監査法人とのスケジュール調整

  • 「開示の意義」への理解促進といった課題が依然として残っています。

今後は、単なる「早期提出」ではなく、投資家との対話促進や説明責任の充実という観点から、開示の質を高める取り組みが求められます。


5.まとめと実務への示唆

有報の総会前開示は、企業のガバナンス力を示す重要なシグナルです。監査役・監査委員としては、

  • 開示プロセスにおける監査人との早期連携

  • 開示の意義に関する社内啓発

  • 開示体制整備への具体的な助言が今後の重要な役割となります。


当事務所では、

  • 有報作成・開示体制の整備支援

  • 監査役会・取締役会対応の助言

  • 監査法人との調整サポート

    など、上場企業の開示業務を総合的にサポートしております。



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