top of page

配偶者控除を年末調整で誤ったら不納付加算税はかかる? 税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 11 時間前
  • 読了時間: 8分

こんにちは!代表の安田です。


年末調整では、従業員から提出された申告書をもとに、配偶者控除や扶養控除などを反映して所得税額を精算します。


その中でも実務上よく問題になるのが、配偶者控除の適用誤りです。


たとえば、次のようなケースです。

  • 配偶者控除を適用して年末調整したが、後から配偶者に所得があることが分かった

  • 妻がFXや副業で収入を得ていて、実は控除対象ではなかった

  • 会社は従業員の申告書どおりに処理しただけなのに、ペナルティはかかるのか

  • 不足した源泉所得税はどうやって精算すればよいのか


年末調整の誤りは、会社の源泉徴収義務にも関係するため、経理担当者や給与担当者にとって不安の大きい論点です。


今回は、年末調整で配偶者控除を誤って適用した場合の不納付加算税、延滞税、精算方法について、税理士の視点からわかりやすく解説します。


1.配偶者控除の適用ミスは実務で起こりやすい

配偶者控除は、配偶者の所得金額など一定の要件を満たす場合に適用できる所得控除です。

しかし、従業員本人が配偶者の所得を正確に把握していないことがあります。


たとえば、配偶者がパート収入のほかに副業収入を得ていた、FX取引や暗号資産取引で所得が生じていた、年末近くに収入が増えたなどのケースです。


サラリーマンの夫が、妻の合計所得金額が一定以下であるとして配偶者控除を適用して年末調整を行なったものの、後日、妻がFX取引などの副業で高収入を得ていて対象外だったことが判明するケースなどが考えられます。


2.年末調整で誤っても不納付加算税は課されない

まず結論として、年末調整で配偶者控除を誤って適用してしまったとしても、給与の支払者にも従業員にも不納付加算税は課されないとされています。


これは、会社が従業員から提出された配偶者控除等申告書をもとに、適正に年末調整を行なっていた場合には、会社に責めに帰すべき事由がないと考えられるためです。


つまり、会社が従業員の提出書類を前提に通常どおり処理していたにもかかわらず、後から従業員側の申告内容に誤りが判明したような場合、会社に不納付加算税がかかるわけではありません。


3.不納付加算税は本来、給与支払者に課されるもの

源泉所得税の不納付加算税は、法定納期限までに源泉所得税を納付しなかった場合に問題になります。源泉所得税における不納付加算税は、従業員ではなく給与の支払者に課されるものと整理されています。


そのため、年末調整で控除を誤った場合も、まず会社側の源泉徴収義務が問題になります。

ただし、会社が従業員の申告書に基づいて適正に計算していたにもかかわらず、結果として控除が過大であった場合には、会社側に帰責事由がないものとして、不納付加算税は課されないという取扱いになります。


4.従業員にも不納付加算税は課されない

不納付加算税は、源泉徴収義務者である給与支払者に課されるものです。

したがって、従業員自身に不納付加算税が課されるわけではありません。

ただし、これは「従業員は何もしなくてよい」という意味ではありません。配偶者控除の適用誤りにより所得税が不足している場合には、その不足税額を正しく精算する必要があります。


5.延滞税も免除される場合がある

配偶者控除の適用誤りにより源泉所得税の徴収不足が生じた場合、延滞税が問題になることもあります。


徴収不足があった場合、延滞税も給与支払者に課されるものの、従業員による配偶者控除の適用ミスを人為による納税の障害とみて、支払者に帰責事由がなければ延滞税は免除されると整理されています。


つまり、会社が従業員の申告内容を信頼して通常どおり処理していた場合には、不納付加算税だけでなく、延滞税についても会社に負担が生じない可能性があります。


6.ただし、不足税額の精算は必要

ここで注意したいのは、ペナルティがかからないことと、不足税額を納めなくてよいことは別という点です。


給与支払者は、不納付加算税や延滞税が課されないからといって、不足税額を精算しなければ、原則として税務署から強制徴収されると説明されています。


つまり、年末調整で配偶者控除を誤って適用したことにより源泉所得税が不足している場合、その不足分は必ず何らかの方法で精算する必要があります。


7.精算方法は「再年末調整」または「確定申告」

年末調整後に配偶者控除の誤りが判明した場合、不足税額の精算方法は主に2つです。

1つ目は、会社が行なう再年末調整です。

2つ目は、従業員本人が行なう確定申告です。


年末調整後は、再年末調整または従業員の確定申告のいずれかで徴収不足額を精算できると整理されています。どちらで対応するかは、誤りが判明した時期によって変わります。


8.再年末調整は翌年1月の源泉徴収票作成まで

再年末調整とは、年末調整後に控除内容や所得金額の誤りが判明した場合に、会社が年末調整をやり直す手続です。


ただし、いつまでも再年末調整ができるわけではありません。

再年末調整は、翌年1月の給与所得の源泉徴収票を作成するまでに行なわなければならないとされています。したがって、年明けすぐに誤りが判明した場合で、まだ源泉徴収票を作成していないのであれば、会社で再年末調整を行なうことが考えられます。


9.2月以降に判明した場合は確定申告を促す

一方で、2月以降に配偶者控除の適用誤りが判明した場合、会社で再年末調整を行なうことは難しくなります。2月以降の対応については、従業員に確定申告をするよう指示しておくべきとされています。


つまり、源泉徴収票の作成後に誤りが分かった場合には、従業員本人が確定申告を行い、配偶者控除を外して正しい税額を申告・納付する流れになります。


10.会社が確認すべき実務対応

会社としては、配偶者控除の適用誤りが判明した場合、まず次の点を確認しましょう。

  • 誤りが判明した時期

  • 源泉徴収票をすでに作成したか

  • 再年末調整が可能か

  • 従業員本人に確定申告を案内すべきか

  • 不足税額がいくらになるか

  • 従業員へどのように説明するか


会社に不納付加算税が課されない場合でも、税務署から不足税額の納付を求められる可能性があります。そのため、放置せず、早めに精算方法を決めることが大切です。


11.従業員側も配偶者の所得確認が重要

この問題を防ぐには、従業員本人が配偶者の所得を正確に把握することが重要です。

特に近年は、パート収入だけでなく、副業、投資、FX、暗号資産、フリマアプリ、業務委託収入など、所得の種類が多様化しています。


年末調整時には、配偶者の給与収入だけでなく、他の所得がないかも確認する必要があります。会社としても、年末調整書類の配布時に、次のような注意喚起を行なうとよいでしょう。

  • 配偶者の副業収入を確認すること

  • FXや暗号資産などの所得も含めて判断すること

  • 収入金額ではなく所得金額で判定する項目があること

  • 見込み額と実績額が大きく変わった場合は会社へ連絡すること


12.実務でよくある誤解

このテーマでは、次のような誤解が起こりやすいです。

① 配偶者控除を誤ると会社に必ず不納付加算税がかかる

これは誤りです。会社が従業員の提出した配偶者控除等申告書をもとに適正に計算したものの、結果として控除が過大であった場合、会社に責めに帰すべき事由がないとして不納付加算税は課されないと整理されています。


② 従業員本人に不納付加算税がかかる

これも誤りです。源泉所得税の不納付加算税は、従業員ではなく給与支払者に課されるものです。


③ ペナルティがなければ不足税額も納めなくてよい

これは危険です。不納付加算税や延滞税が課されない場合でも、不足税額を精算しなければ、原則として税務署から強制徴収されるとされています。


④ 年末調整後の誤りはいつでも会社で再年末調整できる

これも注意が必要です。再年末調整は、翌年1月の給与所得の源泉徴収票を作成するまでに行う必要があり、2月以降は従業員に確定申告を促す対応が基本になります。


13.会社が整備しておきたいチェックポイント

年末調整で配偶者控除の適用ミスを防ぐため、会社は次の点を確認しておくと安心です。

  • 配偶者控除等申告書の記載内容を確認しているか

  • 配偶者の所得見積額の記載漏れがないか

  • 従業員に副業・投資所得も含めて確認するよう案内しているか

  • 年末調整後に誤りが判明した場合の社内対応を決めているか

  • 再年末調整が可能な期限を把握しているか

  • 2月以降に判明した場合、確定申告を案内する体制があるか

  • 不足税額を放置しない運用になっているか


まとめ

年末調整で配偶者控除を誤って適用した場合でも、会社や従業員に直ちに不納付加算税が課されるわけではありません。会社が従業員から提出された配偶者控除等申告書をもとに適正に計算したものの、後日その控除が過大だったと判明した場合、会社に責めに帰すべき事由がないとして、不納付加算税は課されないと整理されています。


また、徴収不足があった場合の延滞税についても、従業員による配偶者控除の適用ミスを人為による納税の障害とみて、会社に帰責事由がなければ免除されるとされています。


ただし、ペナルティがかからないからといって、不足税額を精算しなくてよいわけではありません。年末調整後の不足税額は、再年末調整または従業員本人の確定申告により精算する必要があります。再年末調整は翌年1月の源泉徴収票作成までに行い、2月以降に誤りが判明した場合は、従業員に確定申告を行なうよう案内するのが実務上の対応です。


配偶者控除は、配偶者の所得見込みに基づいて判断するため、年末調整で誤りが生じやすい項目です。だからこそ、会社は申告書に基づき適正に処理しつつ、従業員には副業・投資所得も含めて配偶者の所得確認を促し、誤りが判明した場合には速やかに精算することが大切です。


神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page