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関連者間取引の書類保存特例とは?国税庁通達・事務運営指針から実務対応を解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 3 時間前
  • 読了時間: 15分

こんばんは!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、法人税において関連者間取引に係る書類の整理保存の特例が創設されました。


この制度は、親会社・子会社・グループ会社などの関連者との間で一定の取引を行った場合に、その取引内容や対価の額の明細、計算方法などを確認できる書類の整理保存を求めるものです。


グループ会社間では、経営指導料、業務委託料、システム利用料、ブランド使用料、研究開発費の分担、バックオフィス業務の支援料など、さまざまな取引が行なわれます。


こうした取引について、契約書や請求書に「業務支援料」「経営指導料」などとだけ記載され、実際にどのような役務提供が行なわれたのか、どのように対価を計算したのかが分かりにくいケースがあります。


今回、国税庁は令和8年度税制改正に対応した法人税基本通達等を公表し、関連者間取引に係る書類保存特例について、実務上の取扱いを明らかにしました。


本日は、関連者間取引に係る書類保存特例の概要、特定事項記載書類が必要となる場合・不要となる場合、対象となる役務提供の例、税務調査時の対応、損金算入や青色申告取消しとの関係について整理します。


関連者間取引に係る書類保存特例とは

関連者間取引に係る書類保存特例とは、内国法人が関連者との間で一定の取引を行なった場合に、契約書や領収書などの取引関係書類に必要な事項が記載されていないときは、その不足している事項を明らかにする書類を取得または作成し、保存することを求める制度です。


対象となる取引としては、主に次のようなものがあります。

  • 工業所有権等の譲渡

  • 工業所有権等の貸付け

  • 関連者間で行なわれる一定の役務提供


この制度は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度に行なう関連者間取引に適用されます。保存すべき期間は、原則として7年間です。


すべての関連者間取引で新たな書類が必要になるわけではない

この制度について、まず押さえておきたいのは、関連者間取引があるからといって、すべての取引について新たに特定事項記載書類を作成しなければならないわけではないという点です。


特定事項記載書類は、契約書や領収書などの取引関係書類に、必要記載事項の記載または記録がない場合に、その不足事項を明らかにするための書類です。


つまり、すでに保存している契約書、請求書、領収書、明細書、計算資料などにより、必要な事項が確認できるのであれば、別途特定事項記載書類を作成する必要はありません。


国税庁の改正通達でも、関連者間取引について、その内容のすべてを一つの書類に記載する必要はなく、特定事項が明らかにされていれば足りることが示されています。


複数の書類で確認できれば特定事項記載書類は不要

実務上重要なのが、必要記載事項は一つの書類にまとまっていなくてもよいという点です。

たとえば、契約書には取引内容が記載され、請求書には金額が記載され、別の計算表には対価の算定方法が記載されている場合があります。


このように、複数の取引関係書類を総合して必要記載事項を確認できる場合には、特定事項記載書類の取得または作成は不要とされています。

たとえば、次のような組み合わせです。

  • 契約書で役務提供の内容を確認できる

  • 請求書で請求額を確認できる

  • 計算明細で対価の算定方法を確認できる

  • メールや報告書で実際の支援内容を確認できる


このように、既存資料で取引の内容と対価の根拠を説明できる状態にしておくことが重要です。


特定事項記載書類とは何を書く書類か

特定事項記載書類は、取引関係書類に記載されていない事項を補うための書類です。

具体的には、次のような内容を明らかにする資料が考えられます。

  • 取引先である関連者の名称

  • 取引の内容

  • 取引の対象期間

  • 対価の額

  • 対価の額の明細

  • 対価の計算方法

  • 配賦基準

  • 売上高・人数・利用量・作業時間などの基礎データ

  • 取引の根拠となる契約や合意内容


たとえば、親会社から子会社に対して経営指導料を請求する場合、単に「経営指導料 100万円」と請求書に記載されているだけでは、何の対価なのか、どう計算したのかが分かりません。


このような場合には、経営指導の内容、対象期間、担当部門、計算方法、配賦基準などを説明できる資料を保存しておく必要があります。


必要記載事項は第三者が客観的に把握できる程度でよい

国税庁の事務運営指針では、必要記載事項について、関連者間取引の内容を第三者の立場から見て客観的に把握できる程度の記載が求められるとされています。


これは、過度に詳細なレポートをすべての関連者間取引について作成しなければならない、という意味ではありません。


重要なのは、税務調査などで第三者が資料を見たときに、次の点を確認できることです。

  • どの関連者との取引か

  • どのような取引なのか

  • 何の対価として支払っているのか

  • 金額はどのように計算されたのか

  • 契約書・請求書・計算資料の整合性があるか


反対に、社内の担当者しか分からない略称や、根拠不明の一括請求だけでは、客観的に把握できる資料とはいえない可能性があります。


関連者間取引に該当する役務提供の例

今回の改正法人税基本通達では、関連者間取引に該当する役務提供の例示も示されています。関連者間取引に該当する役務提供には、大きく次の2つがあります。

  • 費用分担等に係る事業活動

  • 経営の管理または指導等に係る役務提供


それぞれの内容を確認しておきましょう。


費用分担等に係る事業活動

費用分担等に係る事業活動には、研究開発、広告宣伝、グループ共通資産の利用などが含まれます。

<研究開発・広告宣伝など>

たとえば、グループ共通の商号、ブランド、商標などの価値を維持・向上させるために行なわれる活動があります。具体的には、次のようなものです。

  • グループブランドの広告宣伝

  • 販売促進活動

  • 市場分析

  • ブランド価値向上のためのマーケティング活動

また、新製品や新技術の開発、既存製品の改良など、技術やノウハウ、専門的知識を活用して行なわれる研究開発活動も含まれます。


<グループ共通資産の利用>

グループで共通利用する資産を提供・維持・管理する活動も、関連者間取引に該当する役務提供として例示されています。

たとえば、次のようなものです。

  • グループ共通の情報システム

  • データベース

  • 事務処理システム

  • グループで利用する建物

  • グループ共通の設備

これらについて、親会社やグループ会社が提供・維持・管理を行ない、その費用を関連会社に請求する場合には、関連者間取引に該当する可能性があります。


経営の管理または指導等に係る役務提供

もう一つの類型が、経営の管理または指導等に係る役務提供です。

国税庁の通達では、次のようなものが例示されています。

  • 事業計画の策定に関する助言・指導

  • 業績管理に関する助言・指導

  • 内部管理体制の整備に関する助言・指導

  • 人事・労務・法務・財務などの業務運営に関する専門的支援

  • 事業運営に資する情報を定期的または組織的に提供するもの


たとえば、親会社が子会社に対して経営指導を行なう場合や、グループ本社が人事・法務・財務・経理などのバックオフィス業務を支援する場合が該当します。


中小企業グループでも、親会社が子会社の経理処理、採用、資金繰り、法務対応、ITシステムを支援し、その対価を請求しているケースがあります。


このような場合には、取引内容と対価の根拠を説明できる資料を整えておくことが重要です。


継続的な役務提供は各事業年度で対象になる

関連者間取引に該当する工業所有権等の貸付けや役務提供が、2以上の事業年度にわたって反復または継続して行なわれることがあります。


たとえば、親会社から子会社への経営指導が毎年継続して行なわれる場合や、グループ共通システムの利用料が毎月発生する場合です。


このような継続的な取引については、その貸付けや役務提供が行なわれる日の属する各事業年度に、書類保存特例の適用があるとされています。


つまり、初年度に一度資料を作成して終わりではありません。

毎期の取引について、対象期間、対価の額、計算方法、配賦基準などが確認できる資料を保存しておく必要があります。


移転価格税制のローカルファイルがある場合

関連者間取引が国外関連者との取引である場合、移転価格税制のローカルファイルを作成している会社もあります。


事務運営指針では、ローカルファイルにより関連者間取引の内容を客観的に把握できる程度の必要記載事項の記載がある場合には、関連者間取引に係る特定事項はないこととなり、同特例は適用されないとされています。


つまり、すでに移転価格税制対応として十分な資料を作成している場合には、その資料が書類保存特例の要請を満たすことがあります。

ただし、ローカルファイルがあるから必ず追加対応不要というわけではありません。

ローカルファイルに、対象取引の内容や対価の計算方法など、必要記載事項が客観的に把握できる程度に記載されているかを確認する必要があります。


書類保存がないだけで直ちに損金不算入になるわけではない

関連者間取引について特定事項記載書類の保存がない場合、「その費用は損金算入できなくなるのではないか」と心配される方もいるかもしれません。


この点について、国税庁の事務運営指針では、特定事項記載書類の保存等がされていないことのみをもって、関連者間取引に係る費用の損金算入が直ちに認められないことになるものではないとされています。


これは実務上かなり重要です。

もちろん、書類がないことは問題です。しかし、保存がないという形式的な理由だけで、直ちにその費用が損金不算入になるわけではありません。


ただし、別途、その費用が本当に発生しているのか、事業関連性があるのか、対価が適正か、寄附金や移転価格税制の問題がないかなどは当然に確認されます。


税務調査での対応

事務運営指針では、税務調査時の対応も示されています。

特定事項記載書類の保存等がない場合や、その内容が不十分な場合、調査担当者は、合理的な期間を定めて、特定事項記載書類の取得または作成と、その提示を求めることとされています。


つまり、税務調査の場で書類が見つからないからといって、直ちに不利益処分が行なわれるというより、まずは合理的な期間内に資料を整えて提示することが求められる運用が示されています。


ただし、これは「調査が来てから作ればよい」という意味ではありません。

制度上は、関連者間取引を行なった事業年度の申告書提出期限までに取得または作成・整理し、7年間保存する必要があります。


調査時に慌てて作成することにならないよう、日頃から資料を整理しておくことが大切です。


関連者が一元的に保存している場合

グループ会社間取引では、取引内容や対価の計算根拠に関する資料を、親会社やグループ本社が一元的に保存していることがあります。


たとえば、グループ共通システムの費用配賦計算表、ブランド使用料の算定資料、経営指導料の算定根拠などを親会社が保管している場合です。


事務運営指針では、このような場合について、内国法人が関連者から必要な事項を遅滞なく入手し、提示できると認められるときは、内国法人の納税地等で特定事項記載書類の保存等がなされているものとして取り扱うことが示されています。


これは、グループ全体で資料を一元管理している会社にとって実務負担に配慮した取扱いです。


ただし、子会社側が「親会社が持っているはず」と言うだけでは不十分です。

税務調査時に遅滞なく入手できる体制が必要です。


青色申告取消しとの関係

特定事項記載書類の保存がない場合、青色申告の承認取消しが問題になることがあります。


ただし、事務運営指針では、特定事項記載書類の保存等の有無のみで取消処分の要否を決めることは、青色申告制度の趣旨に照らして必ずしも適切ではないとされています。


取消処分の要否は、保存等の状況、その是正の可否、違反の程度、その他の事情を踏まえて適切に判断するとされています。つまり、書類が一部不足していることだけで直ちに青色申告が取り消されるわけではありません。


一方で、法令上の保存義務がある以上、違反の程度が重大であれば、青色申告取消しのリスクは残ります。


青色取消しは過年度に遡る可能性もある

注意したいのは、青色申告の承認取消しは、場合によってはその事由がある事業年度に遡って行なわれることがあるという点です。


当初青色申告書を提出していた事業年度であっても、取消処分に係る事由に該当する事実がある場合には、その事業年度に遡って承認が取り消されることがあるとされています。


その場合、取消処分の対象となる事業年度以後の事業年度については、推計課税の適用対象となることがあります。


青色申告の承認取消しは、法人にとって非常に大きな影響を及ぼします。

欠損金の繰越控除、各種税額控除、特別償却などにも影響し得るため、関連者間取引の書類保存は軽視できません。


実務で整備しておきたい資料

関連者間取引がある法人では、次のような資料を整備しておくとよいでしょう。

  • 関連者間取引の一覧表

  • 関連者との契約書

  • 請求書・領収書

  • 取引内容を説明する資料

  • 対価の計算明細

  • 配賦計算表

  • 配賦基準の根拠資料

  • 作業時間・人数・利用量などの基礎データ

  • グループ共通サービスの内容を示す資料

  • 経営指導や業務支援の報告書

  • 親会社から入手した計算資料

  • ローカルファイル

  • 取引条件の変更履歴


最初から完璧な資料を作成する必要はありませんが、第三者が見て取引の実態と対価の根拠を理解できる状態にしておくことが重要です。


関連者間取引の一覧表を作る

実務対応の第一歩としておすすめなのは、関連者間取引の一覧表を作ることです。

一覧表には、次のような項目を入れると整理しやすくなります。

  • 取引先

  • 関連者の区分

  • 取引内容

  • 取引金額

  • 対象期間

  • 契約書の有無

  • 請求書の有無

  • 対価の計算方法

  • 配賦基準

  • 必要記載事項が確認できる資料

  • 不足している資料

  • 資料の保存場所

  • 親会社保存か自社保存か

  • 税務調査時の入手方法


この一覧表を作成することで、どの取引に資料不足があるのかが把握しやすくなります。

特に、親会社からの経営指導料やグループ共通費の配賦などは、毎期継続して発生するため、早めに整理しておくと安心です。


契約書・請求書の記載を見直す

関連者間取引の書類保存特例に対応するうえで、契約書や請求書の記載内容を見直すことも有効です。


たとえば、請求書に単に「業務支援料」とだけ記載するのではなく、次のような情報を記載しておくと、後日の説明がしやすくなります。

  • 支援業務の内容

  • 対象期間

  • 対象会社

  • 計算方法

  • 配賦基準

  • 税抜金額・消費税額

  • 添付明細の有無


契約書にも、役務提供の内容や対価の計算方法をできるだけ具体的に記載しておくとよいでしょう。契約書・請求書の記載が十分であれば、追加の特定事項記載書類を作成しなくても済む場合があります。


国外委託試験研究費の改正通達にも注意

今回公表された改正通達では、関連者間取引の書類保存特例だけでなく、研究開発税制に関する取扱いも示されています。


令和8年度税制改正では、国外委託試験研究に係る試験研究費について、一定の場合を除き、控除対象となる金額が段階的に減少する見直しが行なわれました。


改正措置法通達では、委託先が内国法人か外国法人かにかかわらず、試験研究が行なわれる場所が国外かどうかで判定することが示されています。


つまり、日本法人に委託している場合でも、実際の試験研究が国外で行なわれるのであれば、国外委託試験研究に該当する可能性があります。


研究開発税制を適用している法人では、委託先の所在地だけでなく、試験研究の実施場所を確認する必要があります。


CFC税制の改正通達も公表

外国子会社合算税制、いわゆるCFC税制についても、改正通達が示されています。

税率が所得金額に応じて高くなる国・地域について、最高税率を用いて租税負担割合を計算できる特例があります。


しかし、最高税率が適用されることが通常見込まれない場合など、その特例を適用することが著しく不適当であると認められる一定の事情がある場合には、その特例を適用できないこととされました。


たとえば、その国の経済規模を踏まえると、実際にはほとんど想定されないような高額所得区分にだけ高い税率が設定されている場合が該当し得るとされています。


海外子会社を有する法人では、単に法定税率だけを見るのではなく、実際に適用が見込まれる税率や所得区分を確認することが重要です。


大胆な設備投資促進税制の通達は今後公表予定

令和8年度税制改正では、特定生産性向上設備等投資促進税制、いわゆる大胆な設備投資促進税制も創設されています。


ただし、この制度に関する通達については、特定生産性向上設備等に関する経済産業大臣の確認手続などを定める改正産業競争力強化法の施行後に公表される予定とされています。

設備投資税制は、金額要件や確認手続、対象設備の範囲が実務上重要になります。


今後公表される通達や経済産業省の手続情報を確認しながら、設備投資を検討する必要があります。


まとめ

国税庁は、令和8年度税制改正に対応した法人税基本通達等を公表しました。


特に注目されるのが、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例です。

この特例では、内国法人が関連者間取引を行なった場合に、契約書や領収書などの取引関係書類に、その取引に関する対価の額の明細等の必要記載事項がないときは、その不足事項を明らかにする特定事項記載書類を、申告書の提出期限までに取得または作成・整理し、納税地等で7年間保存する必要があります。


ただし、すべての関連者間取引について新たな書類を作成する必要があるわけではありません。契約書、請求書、領収書、計算資料など複数の取引関係書類を総合して必要記載事項を確認できる場合には、特定事項記載書類の取得等は不要です。


また、関連者間取引に該当する役務提供として、グループ共通ブランドの広告宣伝、研究開発活動、グループ共通システムや資産の利用、親会社から子会社への経営指導、人事・労務・法務・財務などのバックオフィス支援が例示されています。


事務運営指針では、必要記載事項について、第三者の立場から客観的に取引内容を把握できる程度の記載が求められるとされています。また、特定事項記載書類の保存等がないことだけで、関連者間取引に係る費用の損金算入が直ちに認められないわけではないことも示されています。


税務調査時に特定事項記載書類の保存がない、または不十分な場合には、調査担当者が合理的な期間を定め、取得または作成と提示を求めることとされています。さらに、青色申告の承認取消しについても、書類保存の有無のみで判断するのではなく、保存状況、是正可能性、違反の程度などを踏まえて判断されます。


関連者間取引がある法人では、この機会にグループ内取引を一覧化し、契約書・請求書・計算資料・配賦資料などで取引内容と対価の根拠を説明できる状態にしておきましょう。

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