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関連者間取引の書類保存特例と青色取消リスク|税務調査で直ちに取消されるのかを解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 14 時間前
  • 読了時間: 13分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、法人税において関連者間取引に係る書類の整理保存の特例が創設されました。


この制度は、親会社・子会社など一定の関係にある法人間で行われる取引について、契約書や請求書などに対価の額の明細や計算方法などが記載されていない場合に、その不足している事項を明らかにする書類を取得または作成し、保存することを求めるものです。


実務上、特に気になるのが、「特定事項記載書類が保存されていないと、青色申告が取り消されるのか」という点です。


結論から言うと、法令上、特定事項記載書類の保存がないことは、青色申告の承認取消事由に該当します。


ただし、税務調査で特定事項記載書類が保存されていないことをもって、直ちに青色申告の承認が取り消される運用ではなく、まずは一定期間内での書類の取得・作成・提示を求める方向とされています。


とはいえ、安心しすぎるのは危険です。法令上は取消事由に該当するため、関連者間取引がある法人では、確定申告期限までに必要書類を整理しておくことが重要です。


本日は、関連者間取引の書類保存特例と青色申告取消リスク、税務調査での対応の方向性、実務上準備しておくべきポイントを整理します。


関連者間取引に係る書類保存特例とは

関連者間取引に係る書類保存特例とは、内国法人が関連者との間で一定の取引を行う場合に、契約書や領収書などに一定事項の記載がないときは、その不足事項を明らかにする書類を保存しなければならない制度です。対象となる取引は、主に次のようなものです。

  • 工業所有権等の譲渡

  • 工業所有権等の貸付け

  • 役務提供


たとえば、親会社が子会社に対して技術指導を行い、子会社が技術指導料を支払う場合や、グループ会社からシステム利用サービス、会計・税務・法務支援、マーケティング支援などを受ける場合が考えられます。


グループ会社間では、こうした取引が日常的に行なわれることがあります。しかし、契約書や請求書に「管理料」「業務委託料」「支援料」などとだけ記載され、何の対価なのか、どのように金額を決めたのかが分かりにくいケースも少なくありません。


このような場合に、取引内容や対価の根拠を確認できるようにするため、特定事項記載書類の保存が求められることになりました。


特定事項記載書類とは

特定事項記載書類とは、契約書や領収書などに記載されていない事項、つまり特定事項を明らかにするための書類です。


たとえば、契約書には「技術指導料を支払う」とだけ記載されていて、対価の計算方法が書かれていない場合があります。このような場合には、別途、次のような内容を記載した書類を作成・保存することが考えられます。

  • 役務提供の内容

  • 対価の額の明細

  • 対価の計算方法

  • 対象期間

  • 計算に用いた基準

  • 売上高・人数・作業時間などの配賦基準

  • 関連者間での合意内容


たとえば、技術指導料を売上高に対する一定割合で計算しているのであれば、「技術指導料=対象売上高×○%」といった計算方法を確認できる資料を保存することが重要です。


なぜこの制度が創設されたのか

この制度は、関連者間取引について、税務当局が取引情報を把握しにくい事例があることを背景に創設されています。


親会社・子会社など一定の支配関係がある法人間では、第三者間取引と比べて、対価の額が恣意的に調整されやすい面があります。


たとえば、親会社が子会社に対して経営指導料やシステム利用料を請求する場合、金額の根拠が曖昧なまま処理されることがあります。また、税務調査で確認しようとしても、契約書や請求書だけでは取引内容や支払額の根拠が分からないケースもあります。


このような状況では、税務上、その費用が適正なものか、寄附金や役員給与、移転価格税制、その他の論点に関係しないかを確認することが困難になります。


そこで、関連者間取引について、取引内容や対価の根拠を確認できる書類の保存を求める制度が設けられたわけです。


過度に詳細な資料を一律に求める制度ではない

この制度で誤解しやすいのは、関連者間取引があるたびに、膨大な分析資料や詳細なレポートを作成しなければならないのではないか、という点です。


制度の目的は、あくまで取引情報の把握です。そのため、過度に詳細な資料を一律に保存させる趣旨ではないとされています。重要なのは、第三者が見ても、次の点を確認できることです。

  • どの関連者との取引か

  • どのような取引内容か

  • 何の対価として支払っているのか

  • 対価の額はどのように計算されたのか

  • 契約書や請求書にない事項を補完できるか


つまり、実務上は、契約書・請求書・計算メモ・明細表・配賦計算資料などを組み合わせて、取引の実態と対価の計算根拠を説明できる状態にしておくことが大切です。


特定事項記載書類の未保存は青色申告取消事由に該当

今回の制度で最も注意すべき点は、青色申告との関係です。


青色申告法人において、特定事項記載書類の保存が法令の定めに従って行なわれていない場合、そのことは青色申告の承認取消事由に該当します。


青色申告の承認が取り消されると、法人にとって大きな影響があります。

たとえば、次のような不利益が生じる可能性があります。

  • 欠損金の繰越控除に影響する

  • 各種特別償却・税額控除の適用に影響する

  • 青色申告を前提とする税制優遇が使えなくなる

  • 税務上の信用面で不利益が生じる

  • 過年度の申告にも影響が出る可能性がある


そのため、特定事項記載書類の保存は、単なる事務手続ではなく、青色申告の維持に関わる重要な対応といえます。


書類がないと直ちに青色取消になるのか

では、税務調査で特定事項記載書類の保存がないことが分かった場合、直ちに青色申告の承認が取り消されるのでしょうか。


この点については、特定事項記載書類が保存されていないことをもって、直ちに青色申告の承認が取り消される運用ではない方向とされています。


税務調査で保存がない場合には、まずは一定期間内での書類の取得または作成、提示を求めるなどの対応が図られるものと考えられます。


また、保存義務違反の程度が軽微である場合には、青色申告の承認取消ではなく、指導に留まることも想定されています。


この点は、企業にとって一定の安心材料ではあります。

ただし、あくまで運用上、直ちに取消されるものではないという話です。法令上は取消事由に該当するため、最初から「調査時に作ればよい」と考えるのは危険です。


税務調査時に作ればよいわけではない

特定事項記載書類は、税務調査が入ってから作成すれば足りるものではありません。

制度上、特定事項記載書類は、関連者間取引を行った事業年度の確定申告期限までに取得または作成する必要があります。


そして、起算日から7年間保存することが求められます。

したがって、税務調査時に書類を取得・作成して提示できたとしても、法令上の本来の保存義務を満たしているとは限りません。


実務上は、関連者間取引が発生した都度、契約書や請求書だけで必要事項が分かるかを確認し、不足があれば確定申告期限までに補完資料を作成しておく必要があります。


保存期間は7年間

特定事項記載書類は、取得または作成した後、一定の起算日から7年間保存する必要があります。


一般的な法人税関係書類と同様に、税務調査時に提示できる状態で管理しておくことが必要です。紙で保存する場合は、ファイリングや保管場所を明確にしておきます。電子データで保存する場合は、電子帳簿保存法との関係にも注意が必要です。


グループ会社間取引は毎年継続することが多いため、年度ごと、取引先ごと、契約ごとに整理しておくと、税務調査時の対応がスムーズになります。


親会社が書類を保存している場合の取扱い

関連者間取引では、取引内容や対価の計算根拠に関する資料を、親会社やグループ本社が一元的に保存しているケースがあります。


たとえば、グループ共通サービスの配賦計算、ロイヤルティ計算、システム利用料の算定資料などを、親会社側だけが保管している場合です。


このような場合でも、子会社側が関連者から特定事項を遅滞なく入手し、税務調査等で提示できると認められる場合には、子会社の納税地で特定事項記載書類を保存しているものとして取り扱われる可能性があります。


ただし、親会社が保存しているから何もしなくてよい、というわけではありません。

子会社側でも、必要なときに速やかに資料を入手できる体制を整えておく必要があります。


親会社保存の場合に確認すべきこと

親会社やグループ本社が関連資料を保存している場合、子会社側では次の点を確認しておきましょう。

  • どの資料を親会社が保存しているか

  • その資料に特定事項が記載されているか

  • 子会社側で資料の所在を把握しているか

  • 税務調査時に遅滞なく入手できるか

  • 親会社との間で資料提供ルールがあるか

  • 日本語で内容を説明できるか

  • 海外親会社の場合、翻訳や補足説明が可能か

  • 資料の保存期間が7年間確保されているか


特に、海外親会社が資料を保存している場合、税務調査時に迅速に提出できないことがあります。


そのため、日本子会社側でも、少なくとも取引内容や対価の計算方法が分かる資料をコピーまたは電子データで保存しておくことが望ましいでしょう。


関連者間取引を行った都度、整理することが重要

特定事項記載書類は、確定申告期限までに取得または作成する必要があります。

しかし、実務上は、決算期末や申告直前にまとめて対応しようとすると、取引内容の確認に時間がかかることがあります。

特に、関連者間取引では、次のような問題が起こりがちです。

  • 請求書の記載が抽象的

  • 契約書が古い

  • 実際のサービス内容が契約書と異なる

  • 対価の計算方法を担当者しか知らない

  • 親会社からの配賦計算資料が届いていない

  • 海外グループ会社からの資料が英語のみ

  • 税務調査時にすぐ提示できない


そのため、関連者間取引が発生した都度、書類を整理しておくことが重要です。


実務で作成しておきたい資料

関連者間取引については、次のような資料を整備しておくとよいでしょう。

  • 関連者間取引の一覧表

  • 関連者との契約書

  • 請求書・領収書

  • サービス内容の説明資料

  • 対価の計算メモ

  • 配賦計算表

  • 売上高・人数・利用量などの基礎データ

  • 親会社から入手した計算資料

  • 取引開始時の稟議書

  • 取引条件の変更履歴

  • 価格改定の根拠資料

  • 取引実態を示すメール・報告書・成果物


これらをすべての取引で一律に作成する必要があるわけではありません。しかし、契約書や請求書だけでは取引内容や対価の計算方法が分からない場合には、補足資料を作成・保存しておくことが重要です。


取引一覧表を作成しておく

実務上おすすめなのは、まず関連者間取引を一覧化することです。

たとえば、次のような項目を整理します。

  • 取引先の名称

  • 関連者の区分

  • 取引内容

  • 契約書の有無

  • 請求書の有無

  • 対価の額

  • 対価の計算方法

  • 特定事項の記載有無

  • 不足している事項

  • 補完資料の有無

  • 保存場所

  • 担当部署

この一覧表を作成しておくと、どの取引について特定事項記載書類が必要かを把握しやすくなります。


また、税務調査時にも、関連者間取引の全体像を説明しやすくなります。


契約書・請求書だけで足りる場合もある

特定事項記載書類は、契約書や請求書に必要事項がない場合に、不足事項を明らかにするために作成する書類です。


したがって、契約書や請求書に、対価の額の明細や計算方法、取引内容が十分に記載されている場合には、別途詳細な特定事項記載書類を作成しなくても足りる場合があります。

たとえば、契約書に役務提供の内容、対象期間、単価、計算方法、支払額の算定方法が明確に記載されている場合です。


この場合には、契約書そのものが必要な情報を含む書類として機能します。

ただし、契約書が抽象的な場合や、請求書に金額しか記載されていない場合には、別途補完資料を作成しておく必要があります。


税務調査で確認されやすいポイント

関連者間取引の書類保存特例について、税務調査では次のような点が確認される可能性があります。

  • 関連者間取引の有無

  • 対象取引が工業所有権等の譲渡・貸付けや役務提供に該当するか

  • 契約書や請求書に必要事項が記載されているか

  • 特定事項記載書類を保存しているか

  • 対価の額の明細が確認できるか

  • 対価の計算方法が確認できるか

  • 親会社保存の場合、遅滞なく資料を入手できるか

  • 確定申告期限までに取得・作成していたか

  • 7年間保存されているか

  • 保存義務違反の程度が軽微か重大か

税務調査時に慌てて資料を探すのではなく、事前に保存場所と担当者を決めておくことが大切です。


青色取消リスクを下げるための対応

青色申告取消リスクを下げるためには、次の対応が有効です。


まず、関連者間取引を漏れなく把握します。次に、契約書や請求書に必要事項が記載されているかを確認します。


不足がある場合には、確定申告期限までに計算メモや明細表などを作成します。


また、親会社が資料を保存している場合には、必要な資料を速やかに入手できる体制を整えます。


さらに、保存状況を定期的に確認し、税務調査時に提示できるようにしておきます。


経理担当者が確認したいチェックリスト

関連者間取引がある法人の経理担当者は、次の点を確認しておきましょう。

  • 関連者間取引を一覧化しているか

  • 工業所有権等の譲渡・貸付け、役務提供があるか

  • 契約書や請求書を保存しているか

  • 対価の額の明細が分かるか

  • 対価の計算方法が分かるか

  • 契約書・請求書に不足事項がないか

  • 不足事項を補う特定事項記載書類を作成しているか

  • 確定申告期限までに取得または作成しているか

  • 起算日から7年間保存できる体制か

  • 親会社保存の場合、遅滞なく資料を入手できるか

  • 税務調査時に提示できる保存場所を把握しているか


特に、令和8年4月1日以後開始事業年度から対象になるため、該当事業年度の申告準備の段階で対応漏れがないよう注意しましょう。


まとめ

令和8年度税制改正により、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例が創設されました。


この特例では、内国法人が令和8年4月1日以後に関連者との間で行う工業所有権等の譲渡・貸付けや役務提供について、契約書や領収書などに対価の額の明細等の記載がない場合、その記載されていない事項を明らかにする特定事項記載書類を保存する必要があります。


青色申告法人において、特定事項記載書類の保存が法令の定めに従って行われていないことは、青色申告の承認取消事由に該当します。


もっとも、税務調査で特定事項記載書類の保存がないことをもって、直ちに青色申告の承認が取り消される運用ではない方向とされています。調査時に保存がない場合や記載内容に不備がある場合には、まず一定期間内での書類の取得または作成、提示を求める対応が図られるものと考えられます。また、保存義務違反の程度が軽微である場合には、青色申告の承認取消ではなく、指導に留まることも想定されています。


ただし、法令上は、税務調査時に取得・作成して提示すれば足りるものではありません。特定事項記載書類は、関連者間取引を行った事業年度の確定申告期限までに取得または作成し、起算日から7年間保存する必要があります。


関連者間取引がある法人は、契約書・請求書・計算メモ・配賦資料などを確認し、対価の額の明細や計算方法が説明できる状態にしておきましょう。特に、親会社やグループ本社が資料を一元的に保存している場合でも、子会社側で遅滞なく入手・提示できる体制を整えておくことが大切です。


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