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マンション屋上のアンテナ設置料は課税対象? 管理組合の収益事業を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5月13日
  • 読了時間: 9分

こんにちは!代表の安田です。


マンション管理組合では、共用部分の活用により収入を得ることがあります。その代表例の一つが、マンション屋上に携帯電話会社のアンテナ基地局を設置させ、その対価としてアンテナ設置料や屋上賃貸料を受け取るケースです。


管理組合としては、得た収入を修繕積立金や管理費会計に充てるため、「区分所有者に分配していないので課税されないのではないか」「管理組合は法人ではないから法人税は関係ないのではないか」と考えることもあるでしょう。


しかし、税務上は注意が必要です。

マンション管理組合が携帯電話会社に屋上の一部を賃貸し、アンテナ設置料収入を得ていた事案について、東京高裁が、管理組合側の控訴を棄却し、法人税法上の収益事業に該当すると判断した裁判例が紹介されています。


今回は、マンション管理組合が受け取るアンテナ設置料収入の法人税課税について、税理士の視点からわかりやすく解説します。


1.マンション管理組合にも法人税がかかることがある

マンション管理組合は、株式会社のような法人とは異なります。そのため、一般の方から見ると、法人税とは無関係のように感じられるかもしれません。


しかし、法人税法では、一定の団体が人格のない社団等に該当する場合、その収益事業から生じた所得について法人税の課税対象になります。


争点の一つは、マンション管理組合が法人税法上の「人格のない社団等」に該当するかどうかでした。


2.東京高裁は管理組合を「人格のない社団等」と判断

東京高裁は、管理組合の規約内容などを踏まえ、管理組合が法人税法上の人格のない社団等に該当すると判断しました。


具体的には、管理組合が団体としての組織を備えていること、住戸1戸につき1議決権があること、総会の議事が出席組合員の議決権の過半数で決まることなどが考慮されています。


つまり、法人格がないからといって、税務上まったく課税対象にならないわけではありません。組織として活動し、一定の意思決定ルールを持つ団体であれば、人格のない社団等として取り扱われる可能性があります。


3.屋上アンテナ設置料収入が問題になった事案

この裁判例では、マンション管理組合が携帯電話会社との賃貸借契約に基づき、マンションの共用部分である屋上の一部をアンテナ基地局設置用として貸し付け、設置料等の賃貸収入を得ていました。


問題となったのは、この屋上賃貸が、法人税法上の収益事業に該当するかどうかです。


管理組合側としては、共用部分を管理しているだけで、一般的な不動産賃貸業とは違うという感覚があったかもしれません。しかし、裁判所は、実態として管理組合が主体となって屋上を賃貸し、収入を得ている点を重視しました。


4.屋上賃貸は収益事業である「不動産貸付業」に該当

東京高裁は、管理組合が携帯電話会社に対してマンション屋上をアンテナ設置用に賃貸した行為について、管理組合が主体となって行なった収益事業であり、不動産貸付業に該当すると判断しました。


ここで重要なのは、収入の使い道ではなく、取引の性質です。

たとえ賃貸収入を区分所有者に分配せず、管理組合の会計に入れて修繕や管理のために使っていたとしても、屋上を第三者に貸し付けて対価を得ている以上、不動産貸付業として収益事業に該当する可能性があるということです。


5.裁判所が重視したポイント

東京高裁は、屋上賃貸が管理組合の収益事業に該当するかどうかについて、複数の事実を確認しています。


まず、賃貸借契約は管理組合を賃貸人として締結されていました。契約書の記名押印欄には、契約締結当時の理事長の記名押捺があり、理事長が管理組合の名において区分所有者全員のために契約したものと指摘されています。


また、契約締結に先立って総会決議で承認されていたこと、賃貸収入が理事長名義の口座に振り込まれていたこと、その収入が管理組合の予算案や決算に加味され、総会で承認されていたことも重視されています。


6.区分所有者に分配していなくても課税対象になり得る

この事案では、賃貸収入は区分所有者に分配されていませんでした。管理組合の予算や決算に組み込まれ、管理組合の会計として処理されていたものです。


しかし、東京高裁は、そのことをもって課税対象から外れるとは判断していません。むしろ、収入が管理組合の予算・決算に反映され、総会で承認されていたことは、管理組合が主体となって賃貸事業を行なっていたことを示す事情として見られています。


つまり、「組合員に分配していないから法人税は不要」という考え方は危険です。


7.管理組合の通常業務と収益事業は分けて考える

マンション管理組合の本来の目的は、共用部分の維持管理や修繕、管理費・修繕積立金の徴収などです。これらの活動は、通常、管理組合の本来的な管理活動といえます。


一方で、共用部分を外部の事業者に貸し付けて対価を得る行為は、単なる管理活動とは異なり、収益事業と判断される可能性があります。


特に、屋上、壁面、空きスペース、駐車場、看板設置場所などを第三者に貸し付けて収入を得ている場合には、法人税の申告要否を確認する必要があります。


8.国税庁も注意喚起している分野

国税庁からも、マンション管理組合のアンテナ設置料収入について法人税が申告漏れとなっているケースが散見されることから、ホームページの質疑応答事例で注意喚起されています。つまり、この論点は特殊な裁判例にとどまらず、実務上も申告漏れが起こりやすい分野です。


管理組合の役員は税務の専門家ではないことが多く、「管理組合だから税務申告は不要」と誤解してしまうケースもあります。


しかし、収益事業を行なっている場合には、法人税申告が必要になる可能性があります。


9.どのような収入が問題になりやすいか

マンション管理組合で法人税の検討が必要になりやすい収入には、たとえば次のようなものがあります。

  • 携帯電話基地局のアンテナ設置料

  • 屋上や壁面の賃貸収入

  • 看板設置料

  • 外部利用者に対する駐車場収入

  • 自動販売機設置料

  • 共用部分の一部貸付収入


もちろん、すべてが直ちに同じ結論になるわけではありません。ただし、外部の第三者に対してスペースや設備を貸し、継続的に対価を得ている場合には、収益事業に該当するかどうかを慎重に確認する必要があります。


10.管理組合が確認しておきたい資料

マンション管理組合がアンテナ設置料などを受け取っている場合は、次の資料を確認しておくとよいでしょう。

  • 携帯電話会社等との契約書

  • 契約名義

  • 理事長の権限や総会決議の有無

  • 入金口座

  • 管理組合の収支予算書

  • 管理組合の決算書

  • 総会議事録

  • 収入の使途

  • 過去の法人税申告の有無


これらの資料を確認することで、収入が管理組合主体の収益事業に当たるかどうかを検討しやすくなります。


11.申告漏れを防ぐための実務対応

マンション管理組合でアンテナ設置料収入がある場合、まずは法人税の申告義務があるかどうかを税理士に確認することをおすすめします。


特に、長年にわたって設置料収入を受け取っているにもかかわらず、法人税申告をしていない場合には注意が必要です。過年度分も含めて、申告漏れの有無を確認する必要が出てくることがあります。


また、新たにアンテナ設置契約を締結する場合には、契約前に税務上の取扱いを確認しておくと安心です。収入見込み額だけでなく、法人税、地方税、消費税、会計処理まで含めて検討することが大切です。


12.実務でよくある誤解

このテーマでは、次のような誤解が起こりやすいです。


① マンション管理組合は法人ではないので法人税は関係ない

これは危険です。東京高裁が、管理組合の規約や意思決定の仕組みなどを踏まえ、管理組合を法人税法上の人格のない社団等に該当すると判断しています。


② アンテナ設置料を区分所有者に分配していなければ課税されない

これも誤りです。本件では、賃貸収入が区分所有者に分配されていなかったにもかかわらず、管理組合が主体となって行った不動産貸付業に該当すると判断されています。


③ 共用部分の活用だから収益事業ではない

これも一概にはいえません。マンション屋上という共用部分であっても、携帯電話会社にアンテナ設置用として賃貸し、設置料収入を得ている場合には、不動産貸付業に該当する可能性があります。


④ 管理費会計に入れていれば申告不要

これも危険です。本件では、賃貸収入が管理組合の予算案・決算に加味され、総会で承認されていたことも、管理組合が主体となって賃貸を行った事情として考慮されています。


13.管理組合が確認しておきたい実務ポイント

マンション管理組合がアンテナ設置料収入を得ている場合は、次の点を確認しましょう。

  • 管理組合が契約当事者になっているか

  • 契約書に理事長名で記名押印しているか

  • 総会決議で契約が承認されているか

  • 賃貸収入が管理組合の口座に入金されているか

  • 収入が予算・決算に反映されているか

  • 区分所有者に分配しているかどうかにかかわらず、収益事業性を検討しているか

  • 法人税申告の要否を確認しているか

  • 過去の申告漏れがないか


まとめ

マンション管理組合が携帯電話会社に屋上の一部をアンテナ基地局設置用として貸し付け、設置料収入を得ている場合、その収入は法人税の課税対象になる可能性があります。


東京高裁の裁判例では、マンション管理組合について、規約や意思決定の仕組みなどを踏まえて、法人税法上の人格のない社団等に該当すると判断されました。そのうえで、管理組合が主体となって行なったマンション屋上の賃貸は、収益事業である不動産貸付業に該当すると判断されています。


この判断では、賃貸借契約が管理組合を賃貸人として締結されていたこと、理事長が管理組合の名で契約していたこと、総会決議で承認されていたこと、賃貸収入が管理組合の予算・決算に反映されていたことなどが重視されています。


アンテナ設置料収入は、区分所有者に分配していなくても、管理組合の収益事業として課税対象になることがあります。だからこそ、マンション管理組合が外部事業者から継続的な収入を得ている場合には、管理費会計上の処理だけで終わらせず、法人税申告の要否を確認することが大切です。


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