自転車の青切符反則金は会社の経費になる?令和8年4月開始の新制度と法人税の注意点
- 安田 亮
- 20 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
近年、通勤や業務上の移動手段として、自転車を利用する会社や個人事業主が増えています。都市部では、営業先への移動、近隣への配達、役所や金融機関への外出などで、自転車を使うケースも珍しくありません。
その一方で、自転車事故や交通違反への社会的な関心も高まっています。こうした流れを受け、道路交通法の改正により、令和8年4月から自転車にも交通反則通告制度、いわゆる「青切符制度」が適用されることになりました。
これにより、自転車の一定の交通違反について、反則金が課されることになります。
ここで会社実務として気になるのが、「従業員が業務中に自転車で違反し、反則金を会社が負担した場合、その金額は会社の経費になるのか」という点です。
結論からいうと、業務遂行に関連して従業員等に課された交通反則金を法人が負担した場合、その金額は法人税上、損金算入できません。今回は、自転車の青切符制度と、会社が反則金を負担した場合の税務上の取扱いを整理します。
令和8年4月から自転車にも青切符制度が導入
青切符制度とは、比較的軽微な交通違反について、刑事手続に進む前に反則金の納付を通告する制度です。
これまでは、主に自動車やバイクの交通違反に対して適用されてきました。
今回の道路交通法改正により、令和8年4月からは、自転車にもこの制度が導入されます。
自転車は免許が不要で、誰でも利用しやすい乗り物です。しかし、近年は自転車による交通違反や事故が問題視されており、交通ルールの徹底を図る観点から、青切符制度の対象に加えられました。
どのような自転車違反が対象になるのか
自転車の青切符制度では、一定の交通違反が反則行為として取り締まりの対象になります。
たとえば、次のような行為が想定されています。
イヤホンをしながらの運転
傘を差しながらの運転
携帯電話を手に持って通話しながらの運転
スマートフォンの画面を注視しながらの運転
その他、道路交通法上の一定の違反行為
反則金の額は違反内容により異なりますが、資料では、反則行為に応じて最大で1万2,000円の反則金が課されるとされています。
会社として自転車利用を認めている場合や、業務上の移動に自転車を使わせている場合には、従業員に対して交通ルールを周知しておく必要があります。
法人が罰金等を負担した場合の基本的な考え方
法人税では、法人が自己に課された罰金、科料、過料などを納付した場合、その金額は原則として損金不算入とされています。つまり、会社が法律違反により罰金等を支払ったとしても、その支払いは税務上の経費にはなりません。
これは、罰金等を損金にできると、税負担の軽減を通じて制裁の効果が弱まってしまうためです。税務上は、法令違反に対する制裁金を事業上の通常経費とは区別して扱います。
従業員に課された反則金を会社が負担した場合
では、会社自身ではなく、従業員や役員に課された交通反則金を会社が負担した場合はどうなるのでしょうか。
法人税では、その反則金が法人の業務遂行に関連して行なわれた行為等に対して課されたものである場合、会社が負担した金額は損金に算入できないとされています。
たとえば、従業員が業務中に自転車で取引先へ向かう途中、スマートフォンを見ながら運転して反則金を課されたとします。会社がその反則金を負担した場合、その違反は業務遂行に関連して行なわれたものと考えられるため、会社の損金にはできません。
なぜ業務中の反則金も損金にならないのか
業務中の違反であれば、会社の業務に関連しているのだから経費になりそうだと感じる方もいるかもしれません。
しかし、法人税上は、業務遂行に関連して役員や従業員が行なった違反に対する罰金等を会社が負担する場合、その支払いは会社の使用者責任に基づくものと考えられます。そのため、実質的には会社自身に課された罰金等と同様に取り扱われ、損金算入は認められません。
つまり、業務に関係しているから経費になるのではなく、業務に関係している罰金等だからこそ、会社の罰金等と同様に損金不算入になるという整理です。
自転車の反則金も同じ考え方
今回、自転車にも青切符制度が導入されることで、自転車の交通反則金についても同じ論点が生じます。
会社が業務用自転車を用意している場合や、従業員が業務上の移動で自転車を使用している場合、その途中で交通違反があれば、従業員本人に反則金が課されます。この反則金を会社が負担したとしても、違反が業務遂行に関連しているのであれば、法人税上は損金算入できません。たとえば、次のようなケースです。
営業担当者が顧客訪問中に自転車で交通違反をした
配達担当者が業務中にスマートフォンを見ながら自転車を運転した
会社の備品購入に向かう途中で傘差し運転をした
役員が業務移動中にイヤホンを使用して自転車を運転した
これらの反則金を会社が負担した場合、税務上は損金不算入として処理する必要があります。
業務外の違反を会社が負担した場合は給与課税
一方で、従業員等の違反が業務遂行に関連しない場合には、取扱いが変わります。
たとえば、従業員が休日に私用で自転車に乗っていて交通違反をし、反則金を課されたとします。会社が福利厚生のつもりでその反則金を負担した場合、その支払いは会社の業務に関連するものではありません。
この場合、会社が負担した金額は、違反をした従業員等に対する臨時的な給与として扱われます。そのため、従業員側では給与課税の対象となり、会社側では給与として処理する必要があります。
つまり、会社が反則金を負担した場合には、まず次の区分が重要になります。
業務遂行に関連する違反→ 会社負担額は損金不算入
業務遂行に関連しない違反→ 従業員等への給与として取り扱う
いずれの場合も、単純に「旅費交通費」や「租税公課」として損金処理することは避けるべきです。
会社の会計処理で注意したいこと
自転車の反則金を会社が負担した場合、会計上は支出として記録されます。しかし、法人税申告では、その内容に応じて税務調整が必要になります。
業務中の違反に係る反則金であれば、会計上は租税公課や雑損失などで処理していても、法人税申告では損金不算入として加算調整する必要があります。一方、業務外の違反を会社が負担した場合は、従業員への給与として処理し、源泉所得税や社会保険の取扱いにも注意が必要です。
特に、少額だからといって経理処理を曖昧にすると、税務調査で指摘される可能性があります。
個人事業主の場合も注意
今回の資料は法人税の取扱いを中心としたものですが、個人事業主でも同様に注意が必要です。
個人事業主が事業中に自転車で違反し、反則金を支払った場合、その支出は事業遂行中に生じたものではあっても、罰則的な性格を持つ支払いです。通常の交通費や車両費とは異なり、必要経費として処理できるものではありません。
個人事業主の場合も、事業用の移動中に発生したからといって、安易に必要経費へ入れないようにしましょう。
会社として自転車利用ルールを整備する
令和8年4月以降、自転車を業務に利用する会社では、税務処理だけでなく、社内ルールの整備も重要になります。たとえば、次のような対応が考えられます。
業務中の自転車利用ルールを明文化する
スマートフォン操作やイヤホン使用を禁止する
傘差し運転を禁止し、雨天時の代替手段を定める
業務用自転車の使用記録を残す
交通違反時の反則金は原則として本人負担とする
会社負担とする場合の承認フローを定める
安全運転研修を実施する
税務上、損金算入できないという点だけでなく、事故防止や企業の安全配慮義務の観点からも、事前のルール整備が大切です。
反則金を会社負担にするかは慎重に
従業員が業務中に違反した場合、会社として反則金を負担するかどうかは、労務管理上の判断も関係します。
ただし、税務上は、業務遂行に関連する反則金を会社が負担しても損金算入できません。また、会社が当然に負担する運用にしてしまうと、従業員の交通ルール遵守意識が下がるおそれもあります。
そのため、会社としては、反則金の負担ルールを就業規則や社内規程で整理しておくことが望ましいでしょう。たとえば、「業務中であっても、交通法規違反に係る反則金は原則として本人負担とする」と明記しておくことで、税務処理だけでなく社内管理の面でもトラブルを防ぎやすくなります。
税務調査で確認されやすいポイント
交通反則金の支払いは、税務調査で確認されることがあります。
特に、次のような勘定科目に反則金が含まれている場合は注意が必要です。
租税公課
雑費
旅費交通費
車両費
福利厚生費
雑損失
反則金は、通常の事業経費とは異なる取扱いになります。領収書や支払記録から反則金であることが分かる場合には、法人税申告で損金不算入処理がされているかを確認しておきましょう。
また、業務外の違反を会社が負担している場合は、給与課税の処理が適切に行われているかも確認ポイントになります。
経理担当者が確認したいチェックリスト
自転車の青切符制度開始に向けて、会社の経理担当者は次の点を確認しておくと安心です。
業務で自転車を利用している従業員がいるか
業務用自転車を会社が保有しているか
交通違反時の反則金を誰が負担するルールか
会社が反則金を負担した場合の経理処理を決めているか
業務関連の反則金を損金不算入として処理できる体制か
業務外の反則金を会社が負担した場合、給与課税処理ができるか
交通安全に関する社内規程や研修が整備されているか
自転車の反則金は1件ごとの金額は大きくないかもしれません。しかし、複数件発生した場合や、経理処理を誤った場合には、税務・労務の両面で問題になり得ます。
まとめ
令和8年4月から、自転車にも交通反則通告制度、いわゆる青切符制度が導入されます。
イヤホンをしながらの運転、傘差し運転、携帯電話を手に持って通話しながらの運転、画面を注視しながらの運転など、一定の交通違反には反則金が課されることになります。
法人税上、業務遂行に関連する行為等に対して役員や従業員に課された交通反則金を法人が負担した場合、その金額は損金算入できません。これは、業務に関連する違反に係る罰金等を会社が負担することは、実質的に会社自身に課された罰金等と同様に扱われるためです。
一方、業務に関連しない私的な違反に係る反則金を会社が負担した場合には、その従業員等に対する臨時的な給与として扱われ、給与課税の対象となります。
自転車の青切符制度開始により、業務中の自転車利用についても、交通ルール違反が税務処理に影響する場面が出てきます。会社としては、反則金を安易に経費処理せず、業務関連なら損金不算入、業務外なら給与課税という基本を押さえたうえで、社内の自転車利用ルールを整備しておきましょう。




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