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仮想通貨で従業員に給与を支払うとどうなる? 現物給与・源泉徴収の考え方を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6月8日
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


近年は、キャッシュレス決済の広がりに加え、仮想通貨を決済手段や資産として活用する場面も増えてきました。その流れの中で、事業者によっては、給与や報酬の全部または一部を仮想通貨で支払うケースも話題になることがあります。


もっとも、ここで実務上すぐに問題になるのが、次のような点です。

  • 仮想通貨で支払った給与は現物給与になるのか

  • 日本円で払う場合と同じように源泉徴収は必要なのか

  • 一部だけ仮想通貨で支払う場合はどう計算するのか

  • 受け取った側が後で換金したら、別の課税があるのか


今回は、仮想通貨を従業員や外部専門家に支払う場合の税務上の考え方を、源泉徴収実務も含めて整理します。


1.仮想通貨で支払う給与や報酬は「現物給与」に当たる

日本法人が従業員等に対し、労働の対価として仮想通貨を支給した場合、それは経済的利益の供与に当たり、「現物給与」として給与所得の収入金額になるとされています。


つまり、税務上は、現金で払っていないから給与ではない、という扱いにはなりません。

仮想通貨であっても、従業員が労働の対価として価値あるものを受け取っている以上、給与として課税対象になるということです。


この考え方は、賞与や各種手当を現金以外で渡した場合の現物給与と同じ発想です。形式ではなく、労務提供の対価として何を受け取ったかで判断することになります。


2.士業報酬や講演料などを仮想通貨で払う場合も、源泉徴収義務がある

この論点は従業員給与だけに限りません。

原稿料、講演料、士業の業務に関する報酬等を仮想通貨で支払った場合も、日本円による支払いと同様に、支払側には源泉徴収義務が課されると整理されています。


たとえば、税理士・弁護士・公認会計士などへの報酬の一部を仮想通貨で支払ったとしても、「現金ではないから源泉徴収の対象外」とはなりません。


つまり、仮想通貨払いは支払手段の違いにすぎず、源泉所得税のルール自体は原則として変わらないと考えるのが基本です。


3.問題になるのは「いくらで評価するか」

仮想通貨には価格変動があります。そのため、税務実務では、いつの時点の価額で給与や報酬の額を認識するのかが問題になります。


この点について、仮想通貨は24時間値動きがあり乱高下も激しいため、基本的には給与や報酬の額の「確定日」における市場の取引価額などから、合理的な方法で算出した額が、所得税法上の「収入すべき金額」になると整理されています。


つまり、給与や報酬の支払日にたまたま動いた価格ではなく、支払額が確定した時点の合理的な評価額が重要になるわけです。ここは実務上、社内ルールや契約内容を整えておくべきポイントです。


4.日本円と仮想通貨を組み合わせて支払う場合はどうなるか

実際の運用では、給与や報酬のすべてを仮想通貨で支払うより、まず日本円ベースで支払額を確定し、その一部を仮想通貨で渡すケースが多いようです。


この場合、税務上は日本円部分と仮想通貨部分を分けて考えるのではなく、その合計額を基に源泉徴収を行なうことになります。つまり、仮想通貨部分だけを別扱いにするのではなく、確定した報酬総額全体が源泉徴収の対象になるということです。


5.資料にある具体例

具体例として、税理士に対する申告業務等の報酬60万円のうち、50万円を日本円、10万円相当額を仮想通貨で支払うケースを考えてみましょう。


この場合、源泉徴収税額は、日本円50万円だけを基準にするのではなく、合計60万円に10.21%を乗じた額で計算するとされています。資料上の例では、60万円 × 10.21% = 61,260円が源泉徴収税額になります。


6.受け取った側は、後で売却すると雑所得が発生することがある

支払時点の課税だけで終わらない点も重要です。

給与または報酬として支払いを受けた仮想通貨を売却して日本円に換金した場合、その取得価額と売却価額との差額が雑所得になるとされています。


つまり、受け取った時点では給与所得または報酬に係る収入として課税関係があり、その後さらに価格が変動したうえで売却すれば、売却損益について別途雑所得が生じ得るということです。

受給者から見ると、税務上は少なくとも二段階で論点があることになります。

  • 受け取った時点

    → 給与所得または報酬に係る収入

  • 後で売却した時点

    → 値上がり・値下がり分に応じた雑所得


この点は、会社側が制度導入を検討する際にも、従業員や受給者への説明材料として重要です。


7.実務で注意したいポイント

① 仮想通貨なら給与課税の対象外と思ってしまう

これは誤りです。仮想通貨による支給は経済的利益の供与であり、現物給与に該当すると整理されています。


② 仮想通貨部分は源泉徴収の対象外と考えてしまう

これも誤りです。日本円部分と仮想通貨部分を合わせた確定額全体が源泉徴収対象になります。


③ 支払日の価格だけで適当に評価してしまう

資料では、額の確定日における市場価額等から合理的に算出するとされています。社内で評価ルールを整えておくことが重要です。


④ 受給後の売却益まで見落とす

受け取った側では、その後の売却で雑所得が発生する可能性があります。


8.会社側が制度導入時に確認しておきたいこと

仮想通貨による給与や報酬の支払いを検討する場合は、少なくとも次の点を整理しておく必要があります。

  • 報酬・給与額を何の時点で確定させるのか

  • 評価に用いる市場価格をどの取引所・どの時点で見るのか

  • 源泉徴収税額をどのように確保するのか

  • 給与明細や支払調書上、どのように表示するのか

  • 受給者へ、受領後売却時の税務も説明するのか

  • 社内規程や契約書に仮想通貨支給の条件を定めるのか


仮想通貨払いは話題性がありますが、価格変動が大きいため、税務と労務の両面で事前設計が必要です。


まとめ

仮想通貨で従業員に給与を支払った場合、それは税務上、経済的利益の供与として「現物給与」に該当します。また、原稿料・講演料・士業報酬などを仮想通貨で支払う場合も、日本円払いと同様に支払側に源泉徴収義務があります。 


仮想通貨部分がある場合でも、日本円部分と仮想通貨部分を分けず、確定した支払総額全体を基に源泉徴収税額を計算するのが基本です。さらに、受け取った仮想通貨を後で売却した場合には、取得価額との差額が雑所得になる可能性もあります。


つまり、仮想通貨による給与・報酬の支払いは、単なる支払手段の変更では済みません。支払時の評価、源泉徴収、受給後の売却課税まで含めて整理することが、制度導入の前提になります。


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