top of page

国税庁が食事支給の非課税限度額引上げに係る改正通達を公表|令和8年4月からの実務対応を解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4月16日
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


会社が役員や従業員に対して行なう食事支給は、福利厚生実務の中でも相談が多いテーマです。


特に、社員食堂、弁当補助、在宅勤務時の食事補助、深夜勤務者への夜食代などは、会社側としては福利厚生のつもりでも、税務上は給与課税になるかどうかを慎重に確認する必要があります。


こうした中、国税庁は食事支給の非課税限度額引上げに係る改正通達を公表しました。

従業員等への食事支給に係る所得税の非課税限度額は、月額3,500円から月額7,500円へ引き上げられます。また、深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭についても、非課税限度額が1回300円から650円へ見直されています。いずれも令和8年4月1日以後に支給すべき食事又は金銭から適用されます。


今回は、この改正通達の内容と、企業が実務で押さえておきたいポイントを整理して解説します。


食事支給は原則として給与課税の対象

まず前提として、会社が役員や従業員に食事を支給した場合、その経済的利益は原則として給与所得の対象になります。もっとも、一定の要件を満たす場合には、食事の支給による経済的利益はないものとされ、所得税が課されない取扱いが認められています。今回改正されたのは、まさにこの非課税の範囲です。


そのため、今回の改正は「新しい非課税制度ができた」というより、従来からある非課税基準が実情に合わせて引き上げられたものと理解すると分かりやすいでしょう。


食事支給の非課税限度額は月額7,500円へ

資料によれば、所得税基本通達36-38の2「食事の支給による経済的利益はないものとする場合」が改正され、従業員等への食事支給に係る非課税限度額は、月額3,500円から月額7,500円へ変更されました。


近年は物価上昇の影響もあり、従来の月額3,500円では実務にそぐわない場面も増えていました。今回の見直しによって、企業としては、福利厚生としての食事補助制度をより設計しやすくなると考えられます。


深夜勤務の夜食代も1回650円へ引上げ

今回の改正は、通常の食事支給だけではありません。資料では、深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭についても、個別通達の改正により、非課税限度額が1回の支給額300円から650円へ変更されたと示されています。


製造業、運送業、医療・介護、宿泊業など、夜間や深夜の勤務がある事業では、この改正の影響は比較的大きいといえます。夜食代の取扱いが曖昧なままだと、福利厚生費として処理していたつもりが、後から給与課税の問題になることもあるため、今回の改正を機に支給ルールを確認しておきたいところです。


適用開始は令和8年4月1日以後の支給分から

いつから新しい限度額が使えるのかは、実務上とても重要です。資料によると、食事支給・夜食代のいずれについても、改正後の取扱いは令和8年4月1日以後に支給すべき食事又は金銭から適用されます。


したがって、令和8年4月以後の支給分かどうかで、旧基準と新基準のどちらを使うかが変わります。年度の切替時期に制度を見直す会社では、給与計算や福利厚生制度の運用開始日と整合しているかを確認しておく必要があります。


タックスアンサーや在宅勤務FAQも更新

今回の改正通達で見逃せないのが、周辺資料もあわせて更新されている点です。

国税庁は通達改正だけでなく、タックスアンサー「食事を支給したとき」、「食事を支給したときの非課税限度額の判定」、さらに「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」も更新しています。いずれも、改正後の月額7,500円を前提に、判定例などの記載が見直されています。


これは実務上かなり重要です。単に通達本文だけを読めば足りるのではなく、国税庁が公表している具体的な判定例やFAQも新基準に合わせて確認する必要があるということです。


在宅勤務時の食事補助にも影響する可能性

在宅勤務が定着した企業では、出社時の社員食堂や弁当補助だけでなく、在宅勤務時の費用補助も検討対象になっています。資料でも、在宅勤務FAQの問12・問13が、改正後の月額7,500円を前提にした判定例へ更新されたとされています。


このことからも、今回の改正は単なる「社食の話」にとどまらず、働き方の多様化に伴う福利厚生設計全体に関わるテーマといえます。在宅勤務手当や食事補助の制度を運用している会社では、現行制度が新しい取扱いに合っているかを見直す余地があります。


消費税等を除いた金額で判定する点は変わらない

限度額が引き上げられたことで、判定方法まで変わったと誤解しないよう注意が必要です。資料では、改正後も従前どおり、非課税限度額以下かどうかの判定は消費税等の額を除いた金額で行うと明記されています。


この点は経理処理や制度設計で見落としやすいところです。特に、税込経理で運用している会社や、食事補助額を実務上ざっくり管理している会社では、税込金額で限度額を判断していないかを確認しておく必要があります。


企業が見直したい実務対応

今回の改正を受けて、企業としては次のような実務対応を検討しておきたいところです。

まず、食事補助制度の内容確認です。社員食堂、弁当補助、食券、在宅勤務時の食事補助など、現在の制度がどのような形で運用されているかを整理する必要があります。

次に、深夜勤務時の夜食代支給ルールの確認です。これまで300円基準を前提に運用していた会社は、650円への引上げをどう制度へ反映するかを検討できます。

さらに、給与計算・経理処理・社内規程の整合性確認も欠かせません。福利厚生のつもりでも、実際の支給方法や記録の残し方によっては給与課税リスクが残るため、制度設計だけでなく運用まで含めて確認することが大切です。


中小企業にとってのメリット

中小企業では、大企業のように大幅な賃上げが難しい一方で、福利厚生の工夫によって従業員満足度を高めたいというニーズがあります。今回の限度額引上げは、そうした企業にとって、比較的取り入れやすい福利厚生の見直し余地を広げるものといえます。


たとえば、従来は非課税枠の小ささから導入しにくかった食事補助制度も、今後は制度設計しやすくなるかもしれません。もっとも、非課税限度額の存在だけで安心せず、支給方法や判定基準まで含めて適正に設計することが前提です。


まとめ

国税庁は、会社が役員や従業員に支給する食事に係る所得税の非課税限度額引上げに関する改正通達を公表しました。これにより、令和8年4月1日以後に支給する食事について、非課税限度額は月額3,500円から7,500円へ引き上げられます。また、深夜勤務に伴う夜食代の金銭支給についても、1回300円から650円へ見直されました。


さらに、タックスアンサーや在宅勤務FAQも更新され、改正後の月額7,500円を前提とした判定例に改められています。なお、限度額判定は改正後も消費税等を除いた金額で行う点に変更はありません。


今回の改正は、福利厚生を見直したい企業にとって追い風となる一方、制度設計を誤ると給与課税の問題につながる可能性があります。食事補助や夜食代支給の制度がある会社は、支給方法・社内規程・経理処理をあわせて確認し、改正内容を適切に反映していくことが大切です。


神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page