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特定暗号資産は20%分離課税へ|暗号資産取引業者に年間取引報告書の提出義務も創設

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5月24日
  • 読了時間: 7分

おはようございます!代表の安田です。


暗号資産取引に関する税制は、ここ数年で大きく変わりつつあります。これまで個人の暗号資産取引による利益は、原則として雑所得等として総合課税の対象とされ、給与所得など他の所得と合算して税率が決まる仕組みでした。


そのため、利益が大きくなった場合には税負担も重くなりやすく、株式や投資信託などの金融商品と比べて、課税方式の違いがたびたび議論されてきました。


こうした中、令和8年度税制改正では、特定暗号資産の譲渡所得等の課税の特例が創設されました。この特例では、一定の特定暗号資産の譲渡による所得について、他の所得と分離して20%の税率で課税することとされています。さらに、分離課税への見直しに加え、暗号資産取引業者の営業所の長に対して、取引相手の情報などを記載した年間取引報告書を所轄税務署長へ提出する義務も設けられました。


今回は、特定暗号資産の分離課税化と、暗号資産取引業者に課される報告書提出義務について、実務上のポイントを整理します。


特定暗号資産の譲渡所得等の課税特例とは?

今回の改正で創設された特例は、一定の暗号資産取引について、従来の総合課税ではなく、申告分離課税に近い形で20%課税とするものです。


居住者等が、暗号資産取引業を行なう者に対して、金融商品取引業者登録簿に登録されている「特定暗号資産」を譲渡した場合、その譲渡による譲渡所得等については、他の所得と分離して20%の税率により課税されることとされています。


ここで重要なのは、すべての暗号資産取引が一律に対象になるわけではなく、制度上の対象となる特定暗号資産に関する取引である点です。今後、どの暗号資産が特定暗号資産に該当するのか、実務では取引所や制度案内を確認する必要があります。


これまでの暗号資産課税との違い

これまで、個人が暗号資産取引で得た利益は、基本的に総合課税の対象とされてきました。


総合課税では、給与所得や事業所得など他の所得と合算して税率が決まるため、所得が大きい人ほど高い税率が適用される可能性があります。


一方、今回の特例では、対象となる特定暗号資産の譲渡所得等を他の所得と分離し、20%税率で課税します。この点は、暗号資産投資家にとって大きな制度変更です。


ただし、制度の対象となる取引や暗号資産の範囲、申告手続、損失の取扱いなどは、個別に確認が必要です。「暗号資産ならすべて20%課税になる」と早合点しないよう注意が必要です。


年間取引報告書の提出義務も創設

今回の改正では、分離課税化だけでなく、税務当局への情報提供制度も整備されています。


暗号資産取引業者の営業所の長は、その年中に居住者等との間で特定暗号資産の売買等の取引を行なった場合、一定事項を記載した報告書を作成し、所轄税務署長に提出しなければならないとされています。


これは、株式等の特定口座年間取引報告書に近い発想で、暗号資産取引についても、税務署側が取引情報を把握できる仕組みを整えるものといえます。


報告書に記載する主な事項

暗号資産取引業者が提出する報告書には、取引相手や取引内容に関する情報を記載する必要があります。主な記載事項として次の内容が挙げられています。

  • 取引相手である居住者等の氏名

  • 取引相手の住所

  • 取引相手の個人番号

  • 暗号資産取引業者の名称

  • 暗号資産取引業者の本店等の所在地

  • 暗号資産取引業者の法人番号

  • 取引に係る特定暗号資産の名称等

  • その他参考となるべき事項


このように、報告書には個人番号を含むかなり重要な情報が記載されます。暗号資産取引業者側では、本人確認やデータ管理、報告書作成体制の整備が重要になるでしょう。


提出期限は翌年1月31日まで

この報告書は、取引があった日の属する年の翌年1月31日までに、所轄税務署長へ提出しなければなりません。


たとえば、ある年中に特定暗号資産の売買等の取引があった場合、その取引情報については翌年1月末までに税務署へ報告されることになります。


この提出期限は、法定調書や給与支払報告書などと同じく、年明けの実務が集中しやすい時期です。暗号資産取引業者にとっては、年末から1月にかけてのデータ集計・確認体制が重要になります。


提出しなかった場合や虚偽記載には罰則も

報告書の提出義務には、罰則も設けられています。


報告書を期限までに所轄税務署長へ提出しなかった場合や、報告書に偽りの記載等をして提出した場合には、違反者に対して1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されることとされています。


これは、特定新株予約権の付与に関する調書などに係る違反と同様の取扱いとされています。暗号資産取引業者にとって、年間取引報告書の提出は単なる事務手続ではなく、法令遵守上も重要な業務になります。


報告書提出義務はいつから適用されるのか

適用時期についても確認が必要です。資料では、特定暗号資産取引に係る報告書の提出義務化は、特定暗号資産の分離課税化が適用された年の翌年1月1日以後の取引に適用される見通しとされています。


つまり、分離課税制度の開始と同時に、税務署への情報報告制度も段階的に動き出すことになります。今後、制度開始時期や具体的な様式・提出方法について、国税庁等から追加情報が出る可能性があります。


投資家側への影響

今回の報告書提出義務は、直接的には暗号資産取引業者側の義務です。しかし、投資家側にも影響があります。


税務署に取引情報が報告されることで、投資家本人の申告内容との照合が行なわれやすくなります。これまで以上に、暗号資産取引の所得計算や申告漏れへの注意が必要です。


特に、複数の取引業者を利用している場合や、暗号資産同士の交換、海外取引所の利用、ウォレット間移動がある場合には、取引情報の整理が複雑になりがちです。分離課税化により税率面で分かりやすくなる一方、申告不要になるわけではありません。


暗号資産取引業者が準備すべきこと

暗号資産取引業者側では、今回の報告義務に備えて、次のような体制整備が必要になると考えられます。


まず、対象となる特定暗号資産の取引情報を正確に抽出できるシステム対応です。次に、取引相手である居住者等の氏名・住所・個人番号など、報告書記載事項を適切に管理する体制が必要です。


さらに、翌年1月31日までに報告書を提出するため、年次処理スケジュールを整えておく必要があります。期限後提出や誤記載には罰則があるため、内部チェック体制も重要です。


税理士として相談者にお伝えしたいポイント

税理士としては、個人投資家に対しては、次の点をお伝えしたいです。

  • 特定暗号資産の譲渡所得等は20%分離課税の対象となる制度が創設された

  • ただし、すべての暗号資産取引が対象とは限らない

  • 取引業者から税務署へ取引情報が報告される仕組みが設けられる

  • 自分でも取引履歴を保存し、所得計算を行なう必要がある


まとめ

令和8年度税制改正により、特定暗号資産の譲渡所得等の課税の特例が創設されました。この特例では、居住者等が暗号資産取引業者に対して、金融商品取引業者登録簿に登録されている特定暗号資産を譲渡した場合、その譲渡所得等について、他の所得と分離して20%の税率により課税されます。


あわせて、暗号資産取引業者の営業所の長には、その年中に居住者等との間で特定暗号資産の売買等の取引を行なった場合、取引相手の氏名・住所・個人番号、暗号資産取引業者の名称・所在地・法人番号、取引に係る特定暗号資産の名称等を記載した報告書を、取引年の翌年1月31日までに所轄税務署長へ提出する義務が設けられました。期限までに提出しなかった場合や虚偽記載等があった場合には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。


特定暗号資産の分離課税化は、暗号資産投資家にとって大きな改正です。同時に、税務署への取引情報報告制度も整備されるため、今後は投資家・取引業者の双方で、取引記録の管理と申告・報告体制の整備がますます重要になります。

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