税理士報酬の源泉徴収は税込? 税抜? 消費税を除いて計算するための注意点を税理士が解説
- 安田 亮
- 5月20日
- 読了時間: 9分
こんにちは!代表の安田です。
会社や個人事業主が税理士、弁護士、司法書士などへ報酬を支払う場合、一定の報酬については所得税および復興特別所得税の源泉徴収が必要になります。
実務でよく問題になるのが、源泉徴収の対象金額を税込金額で計算するのか、税抜金額で計算するのかという点です。
たとえば、税理士報酬について、次のような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
税理士報酬の源泉徴収は消費税込みで計算するのか
請求書に消費税が分かれていれば税抜金額でよいのか
契約書に“別途消費税”と書いてあるだけで足りるのか
口座振替で顧問料を支払っていて請求書がない場合はどうするのか
結論からいうと、源泉徴収の対象金額は、原則として消費税等を含めた税込金額です。ただし、請求書等で報酬金額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、消費税等を除いた税抜金額を源泉徴収の対象にできます。
今回は、税理士報酬・顧問料を支払う際の源泉徴収について、税込金額と税抜金額の判断ポイントを税理士の視点からわかりやすく解説します。
1.税理士報酬には源泉徴収が必要
税理士に支払う報酬は、原則として源泉徴収の対象になります。
法人や一定の個人事業主が税理士へ顧問料、決算報酬、税務申告書作成報酬、税務調査立会報酬などを支払う場合、支払者は報酬から所得税および復興特別所得税を差し引き、国へ納付する必要があります。
税理士報酬の源泉徴収税率は、通常、支払金額に対して10.21%です。ただし、問題は、この10.21%を税込金額にかけるのか、税抜金額にかけるのかです。
2.原則は税込金額が源泉徴収の対象
まず、基本的な取扱いを確認しましょう。
税理士報酬など報酬・料金等の源泉徴収の対象となる金額は、原則として消費税等の額を含めた金額とされています。つまり、請求書に「税理士報酬110,000円」とだけ記載されている場合、源泉徴収は110,000円を対象に計算するのが原則です。
消費税分が含まれているように見えても、報酬本体と消費税額が明確に分かれていなければ、税込金額全体を源泉徴収の対象として扱います。
3.明確に区分されていれば税抜金額で源泉徴収できる
一方で、例外もあります。
請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の額を源泉徴収の対象金額にできると整理されています。
たとえば、請求書に次のように記載されている場合です。
税理士報酬 100,000円
消費税等 10,000円
合計 110,000円
このように、報酬本体と消費税額が明確に分かれていれば、源泉徴収税額は100,000円に10.21%を乗じて計算できます。
4.「明確に区分」とは具体的な消費税額が分かること
では、どのような場合に「明確に区分」されているといえるのでしょうか。
消費税等の額が明確に区分されている場合とは、その取引に当たって課されるべき消費税等の具体的な金額が記載されていることをいうと説明されています。
つまり、単に「消費税別途」と書かれているだけでは不十分です。
必要なのは、報酬本体の金額と、消費税等の金額が具体的に分かることです。
5.請求書だけでなく契約書や支払明細書でもよい
「明確に区分」するための書類は、請求書に限られません。
請求書等には、請求書のほか、契約書、支払明細書、領収書等も含まれるとされています。
そのため、毎月請求書が発行されない場合でも、契約書や支払明細書などで報酬金額と消費税額が明確に区分されていれば、税抜金額を源泉徴収の対象にできる可能性があります。
重要なのは、支払時に、税務署へ説明できる形で報酬本体と消費税額が区分されているかどうかです。
6.「別途消費税がかかる」だけでは不十分
実務で特に注意したいのが、契約書の記載です。
税理士との顧問契約書では、「月額顧問料 100,000円(税別)」「別途消費税を申し受けます」といった記載になっていることがあります。
しかし、契約書上、各報酬の金額が税抜で記載され、消費税について「別途消費税が課される」旨の記載があるだけでは、源泉所得税の取扱い上、報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されているとはいえないとされています。
つまり、「税別」「消費税別途」という表現だけではなく、具体的な消費税額まで分かる書類を用意しておくことが大切です。
7.口座振替で顧問料を支払う場合は特に注意
税理士報酬や顧問料は、口座振替で毎月自動的に支払っている会社も多いでしょう。
この場合、通帳には支払額の記録が残りますが、毎月の請求書や領収書が発行されないことがあります。
税理士報酬の支払いが口座振替により行なわれる場合、通帳に記録が残るのみで、請求書や領収書の交付がないことが多いと指摘されています。
そして、消費税等の額を除いた金額を源泉徴収の対象にするためには、契約書等で報酬金額と消費税等の額を明確に区分することが求められると整理されています。
口座振替は便利ですが、源泉徴収の根拠資料が不足しやすい点に注意が必要です。
8.口座振替の場合の実務対応
口座振替で税理士報酬を支払っている場合、税抜金額を源泉徴収の対象にしたいのであれば、次のような対応が考えられます。
まず、顧問契約書に、報酬金額と消費税等の具体的な金額を明記します。たとえば、月額顧問料100,000円、消費税等10,000円、合計110,000円というように記載します。
次に、消費税率や顧問料が変更された場合には、変更後の金額を記載した覚書や通知書を作成します。
さらに、毎月の支払明細書や年間の報酬明細書を発行・保存する方法もあります。
口座振替で請求書や支払明細書等の交付がない場合、消費税等の額を除いた金額を源泉徴収の対象にするためには、報酬・料金等の額に係る具体的な消費税等の額を記載した書類を取り交わし、契約書の内容を補完するなどの対応が求められるとされています。
9.具体例:税込108,000円とだけ記載されている場合
令和7年中の税理士からの請求書に「税理士報酬110,000円」とだけ記載されていた場合が紹介されています。
この場合、報酬金額と消費税等の額が区分されていないため、源泉徴収税額は110,000円に10.21%を乗じて計算します。
110,000円 × 10.21% = 11,231円
このように、税込総額だけが記載されている場合には、消費税部分を除かず、総額を基準に源泉徴収します。
10.具体例:報酬100,000円、消費税8,000円と区分されている場合
一方で、税理士からの請求書に「税理士報酬100,000円、消費税等10,000円」と記載されている場合も考えてみましょう。
この場合、報酬金額と消費税等の額が明確に区分されているため、源泉徴収税額は税理士報酬100,000円に10.21%を乗じて計算します。
このように、書類上の記載方法によって、源泉徴収税額が変わることがあります。
11.源泉徴収額の差は小さく見えても積み重なる
税込金額を対象にするか、税抜金額を対象にするかによる差額は、1回あたりではそれほど大きくないかもしれません。
しかし、月額顧問料、決算報酬、年末調整報酬、税務調査立会報酬などが複数ある場合、年間では差額が積み重なります。
また、源泉徴収税額を過少に計算していた場合には、税務調査で不足分の納付を求められる可能性があります。
そのため、支払者側は、報酬の支払方法だけでなく、請求書・契約書・支払明細書の記載内容まで確認しておく必要があります。
12.インボイス制度との関係にも注意
現在はインボイス制度が導入されているため、請求書には消費税率、消費税額、登録番号などが記載されるケースが増えています。
ただし、インボイスとして必要な記載事項があることと、源泉徴収の対象金額を税抜にできることは、似ているようで別の論点です。
源泉所得税の取扱いでは、あくまで報酬金額と消費税等の額が明確に区分されているかが重要です。
請求書や支払明細書に具体的な消費税額が明記されているか、口座振替の場合に書類が保存されているかを確認しましょう。
13.実務でよくある誤解
① 税理士報酬は必ず税抜金額で源泉徴収する
これは誤りです。源泉徴収の対象金額は原則として消費税等を含めた税込金額です。報酬金額と消費税等の額が明確に区分されている場合に限り、税抜金額を対象にできます。
② 契約書に「消費税別途」と書いてあれば十分
これも注意が必要です。「別途消費税が課される」旨の記載だけでは、報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されているとはいえないと整理されています。
③ 口座振替なら通帳の記録だけで問題ない
これも危険です。口座振替で請求書や支払明細書がない場合、税抜金額を源泉徴収対象にするには、具体的な消費税等の額を記載した書類を取り交わすなどの対応が必要です。
④ 消費税額が推測できれば税抜でよい
これも避けるべきです。税抜金額を源泉徴収の対象にするには、消費税等の具体的な金額が明確に記載されていることが重要です。あとから逆算できるというだけでは、明確な区分とはいえない可能性があります。
14.会社が確認しておきたい実務ポイント
税理士報酬や専門家報酬を支払う場合は、次の点を確認しましょう。
源泉徴収対象となる報酬か
請求書に報酬金額と消費税等の額が明確に区分されているか
契約書に具体的な消費税額まで記載されているか
「消費税別途」という記載だけで処理していないか
口座振替の場合、支払明細書や覚書を保存しているか
消費税率変更時や報酬改定時に書類を更新しているか
税抜金額を源泉対象とする根拠資料を保存しているか
源泉所得税を翌月10日、または納期の特例の期限までに納付しているか
まとめ
税理士報酬や顧問料などの報酬・料金等について、源泉徴収の対象となる金額は、原則として消費税等を含めた税込金額です。ただし、請求書、契約書、支払明細書、領収書等において、報酬金額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、消費税等を除いた税抜金額を源泉徴収の対象にできます。
ここでいう明確な区分とは、単に「消費税別途」と記載されているだけでは足りず、具体的な消費税等の金額が分かる状態をいいます。特に、税理士報酬を口座振替で支払っており、毎月の請求書や支払明細書がない場合には、通帳の記録だけでは税抜金額を源泉徴収対象にする根拠が不足する可能性があります。
税抜金額で源泉徴収したい場合には、報酬本体と消費税額を明記した契約書、覚書、支払明細書、領収書などを保存しておくことが重要です。
源泉徴収は少額の差に見えても、税務調査で確認されやすい項目です。だからこそ、支払時の請求書・契約書・支払明細書で報酬金額と消費税等の額が明確に区分されているかを確認し、根拠資料を保存したうえで源泉徴収税額を計算することが大切です。




コメント