のれんの非償却の選択制は導入されるのか?
更新日:9月2日
おはようございます!代表の安田です。
日本企業のM&Aは年々活発化しており、その結果として貸借対照表に占める「のれん」残高が増加しています。その中で議論が続くのが、
のれんを償却すべきか?
非償却(減損のみ)にすべきか?
償却費の損益計算書上の区分を変更すべきか?
という根本的な問題です。
2024年に企業会計基準諮問会議で提案された① のれん非償却の選択制導入 ② のれん償却費の計上区分変更について、最新の議論状況をまとめます。
1.なぜ「のれん非償却」が議論されているのか?
特にスタートアップ業界では、
毎期の償却負担が重い
赤字計上の原因になり成長投資を阻害する
海外基準(IFRS・US GAAP)と扱いが異なる
といった問題意識が強く、日本基準の見直しを求める声が長年存在してきました。
しかし、日本基準では現行ルールとして規則的な償却(20年以内)+減損テストが義務付けられています。
2.諮問会議で提案された2つのテーマ
① のれん非償却の選択制
→ 日本基準でもIFRSと同様、償却せずに減損のみで評価することを選択可能にする案。
② のれん償却費の計上区分変更
現行:営業費用として認識→ 変更案:営業外費用または特別損失で計上する(営業利益の歪みを防ぐ狙い)
3.しかし「賛同意見は少数」
公聴会(6回開催)で寄せられた意見では、選択制の導入にも、償却費区分の変更にも賛同は少数派だったとされています。
主な懸念は次のとおり:
(懸念1)恣意性が高まり、財務諸表の比較可能性が低下する
償却する企業・しない企業が混在
利益水準の単純比較が困難に
指標(営業利益、EBITDA等)の統一性が損なわれる
(懸念2)計上区分変更は本質的な解決にならない
営業外費用や特損にしても利益調整疑念が生じる
利用者が混乱する可能性
(懸念3)非償却にすると減損の重大性がさらに増す
減損テストの負担が増大
経営者の判断により利益調整を行ないやすくなるリスク
これらの理由から、「テーマアップの優先度は低い」という意見も出ています。
4.今後の見通し:2026年3月の会議で方向性が示される
記事によれば、ASBJ事務局は、
非償却導入に伴う制度改正の影響
コストとベネフィットのバランス
日本基準の財務報告の質への影響
などを幅広く分析し、2026年3月の諮問会議で“一定の方向性”を提示する予定です。
公認会計士の視点:企業はどう備えるべきか?
✔M&Aを積極化する企業は見直し動向に注意
のれん非償却が導入されれば、買収後のPL負担は大きく変わる可能性があります。
✔営業利益の位置づけが変わる可能性
償却費区分の見直しが行なわれれば、
KPI
役員報酬制度
銀行・投資家とのコミュニケーションへの影響も想定されます。
✔減損テスト体制の整備が必要
非償却が導入される場合、毎期の減損テストの重要性が増すため、評価モデル・管理資料・事業計画精度などの整備が必須。
まとめ
のれん会計をめぐる議論は、
企業会計の比較可能性
スタートアップ支援
国際会計基準との整合性
など、多面的な要素が絡む難しいテーマです。
今回の公聴会では賛成意見が少なかったものの、ASBJは今後も制度的影響を分析し、2026年3月に方向性を示す予定です。
M&Aを活用する企業・スタートアップ企業にとって、今後の動向は事業戦略に大きく影響し得るため、注視が必要です。
神戸での起業や開業に関するご相談、確定申告にお困りの方、顧問税理士をお探しの方は安田亮公認会計士・税理士事務所までお問い合わせください!
<あわせて読みたい>
【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






コメント