契約書の写し・控えにも印紙税はかかる?紙で再交付する場合の注意点を税理士が解説
- 安田 亮
- 7月12日
- 読了時間: 17分
更新日:7月28日
こんにちは!代表の安田です。
契約書、注文請書、覚書、請負契約書などを作成する際、印紙税の判断で悩みやすいのが「写し」や「控え」の取扱いです。
実務では、次のようなケースがよくあります。
正本は1通だけ作成し、もう1通は写しとして保管している
契約書をPDFでメール送信し、取引先が印刷して保管している
電子で注文請書を送った後、取引先から紙でもほしいと言われた
控えだから印紙は不要だと思っていた
副本や謄本と書いてあれば課税されないと思っていた
ここで注意したいのは、写し、控え、副本、謄本と表示されている文書であっても、必ず印紙税の課税対象外になるわけではないという点です。
印紙税では、文書の名称や表題だけでなく、その文書が何を証明する目的で作成されたのか、誰に交付されたのか、署名押印や証明文言があるのかなど、実態を踏まえて判断します。
本日は、契約書の写し・控え・副本・謄本に印紙税がかかる場合とかからない場合、FAX・メール送信、PDFを印刷した場合、注文請書を紙で再交付した場合の注意点について解説します。

印紙税は「紙の文書」に課税される
印紙税は、印紙税法で定められた課税文書を作成した場合に課される税金です。
代表的な課税文書には、次のようなものがあります。
不動産売買契約書
金銭消費貸借契約書
請負契約書
注文請書
継続的取引の基本となる契約書
売上代金に係る領収書
印紙税でいう文書とは、基本的に紙に文字が記載されたものをいいます。
そのため、電子データそのものには印紙税は課されません。
たとえば、契約書PDFをメールで送信するだけで、紙の契約書を作成・交付していない場合には、通常、印紙税の問題は生じません。
一方で、PDFを紙に印刷し、その紙が契約成立や取引内容を証明する目的で作成・交付されている場合には、印紙税の検討が必要になります。
つまり、電子データか紙か、単なる保存用の印刷か、契約証明のための紙文書かを区別することが重要です。
課税文書に該当するかは実質で判断する
印紙税の課税文書に該当するかどうかは、文書の名称や形式だけで判断するものではありません。その文書に記載されている内容を確認し、記載文言の実質的な意味に基づいて判断します。
たとえば、表題が「覚書」「確認書」「合意書」「注文請書」「控え」「写し」であっても、その文書の内容が印紙税法上の課税事項を証明するものであれば、課税文書に該当する可能性があります。
反対に、「契約書」と書かれていても、実質的に契約の成立や変更を証明する内容がなければ、課税文書に該当しない場合もあります。
写しや控えについても同じです。
「写し」と表示されているから非課税、「正本」と表示されているから課税、という単純な判断ではありません。
その紙が、当事者間で契約の成立を証明する目的で作成されたものかどうかを見ます。
写し・控えはすべて非課税ではない
契約書や注文請書の実務では、同じ契約について複数の文書を作成することがあります。
たとえば、契約当事者が1通ずつ保管するために2通作成し、一方を「正本」、もう一方を「写し」や「副本」と表示するケースです。
この場合、「写し」と書いてある文書だから印紙税がかからないとは限りません。
写し、副本、謄本などと表示されていても、その文書が契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、印紙税の課税対象になります。
たとえば、写しと表示された文書であっても、契約当事者双方の署名押印がある場合や、相手方当事者の署名押印がある場合には、契約成立を証明する目的で作成されたことが明らかです。
このような文書は、正本と同じく課税対象になる可能性があります。
課税対象になりやすい写し・副本・謄本
国税庁の取扱いでは、写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、次のようなものは課税対象になるとされています。
1つ目は、契約当事者双方または文書所持者以外の一方の署名や押印があるものです。
たとえば、A社とB社の契約書で、B社が保管する「写し」にA社とB社双方の押印がある場合、その文書は契約成立を証明する目的で作成されたものと考えられます。
また、B社が保管する文書に、相手方であるA社の押印がある場合も、相手方に対して契約内容を証明する機能があります。
2つ目は、正本と相違ないこと、または写し・副本・謄本であることなどについて、契約当事者の証明があるものです。たとえば、「本書は原本と相違ありません」と記載され、契約当事者の記名押印があるような文書です。
このような文書も、契約の成立や内容を証明する目的で作成されたものとして、印紙税の課税対象になる可能性があります。
課税対象になりにくい単なるコピー
一方、契約書の正本を複写機でコピーしただけの文書で、署名押印や原本証明などがないものは、単なる写しにすぎません。
このような単なるコピーは、契約成立を証明する目的で作成された課税文書とはいえないため、印紙税の課税対象にはなりません。
たとえば、会社内部で保管するために、押印済み契約書をコピーしただけのものです。
また、PDFで受領した契約書を、社内確認やファイリングのために印刷しただけで、取引先に交付していない場合も、通常は単なる社内控えと考えられます。
ただし、そのコピーに「原本と相違ない」などの証明を付けたり、相手方へ交付したりすると、単なるコピーとは評価されにくくなることがあります。単なる保管用のコピーか、契約内容を証明するために作成・交付された文書かを区別しましょう。
FAXやメールで送信した契約書を印刷した場合
近年は、契約書や注文請書をFAXやメールで送信することがあります。
国税庁の取扱いでは、FAXや電子メール等で契約書の正本等を送信する場合、正本等が送付元に保存され、送付先に文書が交付されていないときは、送付先で出力された文書は写しと同様であり、課税対象にはならないとされています。
たとえば、A社が押印済み契約書のPDFをメールでB社に送信し、紙の契約書そのものはA社に保存されているとします。
B社がそのPDFを印刷して社内保管しただけであれば、その印刷物は単なる写しとして扱われ、印紙税の課税対象にはならないと考えられます。
ただし、この取扱いは限定的な場面を想定したものです。
正本が送付元に保存され、送付先に紙の文書が交付されていないことが前提です。
そのため、紙で再交付する場合や、紙の出力物を契約成立を証明する目的で相手方に渡す場合には、別途判断が必要になります。
電子契約と印紙税
電子契約は、契約書を紙で作成せず、電子データにより契約を締結する方法です。
電子データには印紙税が課されないため、電子契約を導入することで印紙税コストを削減できることがあります。
ただし、電子契約のデータを後から紙に印刷した場合の取扱いには注意が必要です。
単に社内保管用や閲覧用として印刷しただけであれば、通常は印紙税の対象にはなりません。
一方、その印刷物を取引先へ交付し、契約成立や取引内容を証明する目的で使う場合には、紙の課税文書として扱われる可能性があります。
電子契約で締結したつもりでも、その後の紙の運用によって印紙税リスクが生じることがあります。電子契約を導入する場合には、紙で再交付しない運用を徹底することが重要です。
注文請書をデータ送付後に紙で再交付する場合
特に注意点として挙げられているのが、注文請書をデータで作成・送付した後、取引先の求めに応じて、改めて紙に出力して交付するケースです。
発行者側としては、「これは単なる写しだから印紙税は不要」と考えるかもしれません。
しかし、取引先の求めに応じてわざわざ出力し直し、紙で再交付している場合には、その紙が契約成立を証明する目的で作成されたものと評価される可能性があります。
この場合、署名押印の有無にかかわらず、印紙税の課税対象になることがあり得ます。
つまり、データで送った後の紙の再交付は、単なる社内控えの印刷とは異なります。
取引先に交付するために紙を作成している以上、その文書の実質的な意義が問われます。
注文請書、契約書、覚書、請負契約書などを電子でやり取りした後に紙でも求められる場合には、印紙税の要否を慎重に判断しましょう。
署名押印がなければ必ず非課税とは限らない
写しや控えの課税判定では、署名押印の有無が重要な判断材料になります。
契約当事者双方または相手方の署名押印がある写しは、契約成立を証明する目的で作成されたことが明らかなため、課税対象になりやすいです。
しかし、署名押印がなければ必ず非課税になるわけではありません。
たとえば、取引先から紙の注文請書を求められ、発行者がデータを印刷して交付した場合、その紙が契約成立を証明するために交付されたものと評価されれば、署名押印がなくても課税対象になる可能性があります。
印紙税では、記載文言の実質的な意義や作成・交付の実態を見ます。
そのため、「押印していないから大丈夫」と安易に判断するのは危険です。
押印の有無だけでなく、誰に、何のために、どのように交付したのかを確認しましょう。
「控え」と表示しても実態で判断される
契約書や注文請書に「控」「写」「COPY」「副本」と表示しておけば印紙税がかからないと考えることがあります。
しかし、表題や表示だけで課税関係が決まるわけではありません。
たとえば、「控」と表示された文書であっても、相手方に交付され、契約成立を証明する目的で作成されたと認められる場合には、課税対象になる可能性があります。
逆に、「契約書」と表示されていても、単なる社内確認用のコピーで、相手方に交付されず、契約成立を証明する目的がない場合には、課税対象にならないことがあります。
印紙税では、文書の名称や見た目よりも実質が重視されます。
「控えだから非課税」という機械的な判断ではなく、作成目的と交付実態を確認することが大切です。
紙で交付するかどうかが重要
写しや控えの印紙税判断では、紙で相手方に交付しているかどうかが重要です。
社内保存用に印刷しただけであれば、通常は課税対象になりません。
一方、相手方に紙で交付している場合には、その紙が契約成立や取引内容を証明する目的で作成されたものかどうかを検討する必要があります。
特に、次のような場合は注意が必要です。
取引先から紙の契約書控えを求められた
電子で送った注文請書を後日紙で再交付した
PDFを印刷し、相手方へ郵送した
「原本と相違ない」と記載して紙を渡した
相手方保管用として紙の写しを作成した
契約書の写しに相手方の押印がある
紙で交付する場合には、単なる写しのつもりでも、相手方にとっては契約内容を証明する文書として機能することがあります。
社内控えとして保存する場合
会社では、押印済み契約書や電子契約データを社内管理のためにコピー・印刷することがあります。
このような社内控えは、通常、印紙税の課税対象にはなりません。
理由は、相手方に対して契約成立を証明する目的で作成されたものではなく、社内管理や保存のための資料にすぎないためです。
ただし、社内控えであることを明確にするためには、次のような運用が望ましいです。
取引先へ交付しない
原本証明を付けない
相手方の署名押印を追加しない
社内保管用であることを明確にする
電子契約データを紙で再交付しない
紙に出力する場合は「社内確認用」などの目的を管理する
社内控えの印刷そのものが問題になるわけではありません。
問題は、その紙が契約証明のために対外的に使われるかどうかです。
取引先から紙を求められた場合の対応
電子契約やPDF送付をしているにもかかわらず、取引先から「紙でも送ってください」と求められることがあります。
この場合、印紙税の観点からは注意が必要です。
紙で送ると、その紙が課税文書と判断される可能性があります。
そのため、次のような対応を検討しましょう。
まず、電子データが契約書または注文請書の正本であることを取引先に説明します。
次に、紙の交付が必要なのか、電子データの保管で足りるのかを確認します。
紙で送る場合には、印紙税の要否を検討したうえで、必要に応じて収入印紙を貼付します。
また、紙の出力物を単なる参考資料として送るのであれば、その目的を明確にし、契約成立を証明する文書として扱われないように注意します。
ただし、実態として契約証明のために交付するのであれば、「参考資料」と表示しても課税対象になる可能性があります。
業務フロー変更時は印紙税リスクを確認する
IT化や電子化に伴い、契約書や注文請書の業務フローを変更する会社が増えています。
たとえば、次のような変更です。
紙の注文請書を廃止し、PDF送付にする
契約書を電子契約に移行する
FAX送信からメール送信に切り替える
クラウドサービスで注文請書を発行する
取引先の要望に応じて一部だけ紙対応を残す
電子データを社内で自動印刷して保管する
このようなフロー変更では、印紙税の課否判定が変わることがあります。
電子化すれば印紙税が不要になる場合もありますが、紙の再交付や紙の保管用文書が残ると、思わぬ課税リスクが生じることがあります。
業務フローを変更する際には、税務担当者や税理士が関与し、どの段階で紙の課税文書が作成されるのかを確認しましょう。
電子データと紙の二重運用に注意
実務で特に注意したいのが、電子データと紙の二重運用です。
たとえば、注文請書はPDFで送信しているが、取引先から求められた場合だけ紙でも郵送するという運用です。
この場合、電子データについては印紙税がかからなくても、紙で郵送した文書について印紙税が課される可能性があります。
また、取引先ごとに紙対応の有無が異なると、印紙税の判断が属人的になりやすくなります。ある担当者は「写しだから不要」と判断し、別の担当者は印紙を貼る、といったバラつきが出ることもあります。
印紙税の漏れを防ぐためには、電子契約・PDF送付・紙交付のルールを社内で統一しておくことが重要です。
印紙税の過怠税リスク
課税文書に収入印紙を貼付しなかった場合には、過怠税が課されることがあります。
原則として、納付しなかった印紙税額とその2倍に相当する金額、つまり合計で本来の印紙税額の3倍が過怠税として徴収されます。ただし、税務調査を受ける前に自主的に不納付を申し出た場合には、軽減される取扱いがあります。
写しや控えの印紙税は、1通あたりの税額が小さい場合もあります。
しかし、注文請書や契約書を大量に発行している会社では、件数が積み上がると大きな金額になります。特に、電子化の途中で紙の再交付が大量に行われている場合には注意が必要です。
印紙税と電子帳簿保存法は別の制度
契約書や注文請書を電子データでやり取りする場合、印紙税だけでなく電子帳簿保存法への対応も必要です。
電子データで受け取った契約書、注文請書、請求書などは、電子取引データとして保存する必要があります。
印紙税は紙の文書に課される税金であり、電子データそのものには課されません。
一方、電子帳簿保存法は、電子データをどのように保存するかを定める制度です。
つまり、電子データにすれば印紙税はかからない可能性がありますが、その電子データを適切に保存する義務は残ります。
電子契約やPDF送付へ移行する場合には、印紙税の削減だけでなく、電子帳簿保存法対応もセットで確認しましょう。
写し・控えの印紙税チェックポイント
契約書や注文請書の写し・控えについては、次の点を確認しましょう。
紙の文書を作成しているか
その紙を取引先へ交付しているか
社内保管用の単なるコピーか
相手方の署名押印があるか
双方の署名押印があるか
原本と相違ない旨の証明があるか
写し、副本、控えなどの表示だけで判断していないか
電子データを送信した後、紙で再交付していないか
紙で再交付した目的は何か
契約成立や取引内容を証明する目的があるか
電子契約と紙契約が混在していないか
社内で印紙税の判断基準を統一しているか
このチェックを行なうだけでも、「写しだから非課税」と誤って判断するリスクをかなり減らせます。
よくある誤解
契約書の写しと印紙税について、実務上よくある誤解を整理します。
写しと書いてあれば印紙税はかからない
写し、副本、謄本、控えと表示されていても、契約成立を証明する目的で作成された文書であれば課税対象になることがあります。
署名押印がなければ必ず非課税
署名押印は重要な判断材料ですが、取引先の求めに応じて紙で再交付した場合など、作成・交付の実態によっては課税対象になり得ます。
PDFを印刷したものはすべて非課税
社内保管用に印刷しただけなら課税対象外となることが多いですが、取引先に紙で交付し、契約証明のために使われる場合は印紙税の検討が必要です。
電子契約なら紙を後で送っても問題ない
電子契約自体には印紙税がかからなくても、後から紙の契約証明文書を作成・交付すれば、その紙が課税文書になる可能性があります。
実務上のチェックポイント
契約書や注文請書を電子化している会社は、次の点を確認しましょう。
電子データを正本として扱うルールがあるか
紙の再交付を原則禁止しているか
取引先から紙を求められた場合の対応フローがあるか
紙で交付する場合、印紙税の要否を確認しているか
写し、副本、控えの表示だけで非課税判断していないか
相手方に交付する紙に署名押印や原本証明を付けていないか
注文請書のPDF送信後に紙を再発行していないか
社内控えと取引先交付用を明確に区分しているか
電子帳簿保存法に対応して電子データを保存しているか
担当者ごとに運用がバラついていないか
印紙税は、契約書の作成部署、営業部門、購買部門、経理部門がそれぞれ関わるため、社内ルールの整備が欠かせません。
まとめ
契約書や注文請書の写し・控えは、必ず印紙税の課税対象外になるわけではありません。
印紙税では、紙に文字が記載された文書が対象となるため、正本だけでなく、写しや控えも課税文書になることがあります。
写し、副本、謄本と表示された文書であっても、契約当事者双方または相手方の署名押印があるもの、正本と相違ないこと等の証明があるものは、契約成立を証明する目的で作成されたことが明らかであり、印紙税の課税対象になります。
一方、押印済み契約書を単にコピーしただけのものや、FAX・メールで送信された契約書を送付先が出力しただけのものは、正本が送付元に保存され、送付先に紙の文書が交付されていない限り、単なる写しとして課税対象外とされることがあります。
ただし、この取扱いは限定的な場面を想定したものです。
注文請書をデータで作成・送付した後、取引先の求めに応じて改めて紙に出力して交付した場合には、発行者側が単なる写しと考えていても、その紙が契約成立を証明する目的で作成されたものとして、印紙税の課税対象になる可能性があります。
署名押印の有無だけでなく、作成目的、交付の有無、相手方に対する証明機能を総合的に確認することが重要です。
電子契約やPDF送付を導入している会社では、紙の再交付を安易に行わないようにし、取引先から紙を求められた場合の対応ルールを整備しておきましょう。
契約書の写し・控えの印紙税判断で迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。






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